漫画家。 1974年生まれ。山口県出身。女性。 講談社アフタヌーン誌に「蟲師」を連載中。 旧ペンネーム:志摩冬青
1998年の四季賞冬のコンテストにて現在の連載の原型となる「蟲師」で大賞を受賞。 同作品にてアフタヌーンシーズン増刊に連載開始。 同誌の廃刊後アフタヌーン本誌にて連載継続。 平成15年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を同作品で受賞。 関連キーワード 漫画 漫画家 アフタヌーン 四季賞 蟲師 リスト::漫画家
ネタバレします。 「光の緒」 奇妙なものを見るせいでいじめられる話はよくあるが力がありすぎて困るこどもの話。 しかしこれほどきれいに丸く収まった話もないようだ。 乱暴なゲンの怒りは母に会えない為だった。 が、その母は天女の姿となっていつもゲンを見守っていた。 母はゲンを産んだ時から”蟲”が見える能力を持った。 その能力で紡ぎ織った着物は他の者には見えなかったがギンコには見えた。 母は赤子のゲンから出ている光の糸を何気なく抜き取るとゲンは生気を失ってしまう。 ギンコは母親の作った着物をゲンに着せることで命を救ったがその日から父親は母親にゲンと会わせることを禁じたのだった。 命を救われたゲンは少年…
ネタバレします。 「残り紅」 日本のマンガにはめずらしい老夫婦を題材にした作品。 多くの(日本制作)マンガはほぼ十代次に二十代か一桁世代を主人公にしているのでこうした長いスパンの物語はなかなかできない。 漆原氏にしても十代二十代一けた代が多いとはいえしっかり描けてしまうのがすごいところ。 夕暮れ時、大禍時に”のまれた者”は本体のない影のみの姿で現れてその影に踏まれたり踏んだりすると影の本隊と入れ替わりに大禍時にのまれてしまう、という。 老人がまだ子どもの頃、妹がそんな目に会って入れ替わりに現れた少女と共に育ち夫婦となった。 幸福な人生を歩んだふたりの前にギンコが現れ老人は妻が突然現れた謎を知っ…
ネタバレします。 「潮わく谷」 実はこういうひたすらに頑張る人の話が苦手である。 「キライ」とかそういう冷静な感じではなく「ヒュッ」とするような寒気を感じてしまうのだ。 とはいえそのこと自体物語で描かれていてギンコはそれを制止しようとするのを男は理解して続けるのだからどうしようもないのだろう。 漆原氏の小話に「段々畑に感動する」というのがあったからそこからの発想であの物凄く美しい畑を作り上げるにはこのような話があったのではないか、となったのだろう。 7巻ではどうしても息子を愛せなかった母が登場したがこの物語は愛しあう夫婦の中で作られている。 それなしにはあり得ないのだろう。 「冬の底」 一転し…
ネタバレします。 「花惑い」 桜の美しさに狂った男の話。 サクラそして”ソメイヨシノ”を検索すればどうしてこの物語がこのような設定と展開になったのかが理解できる。 美しい桜そのものである佐保を生きながらえさせるために「強いのだけが取り柄」という(あまりきれいではない)若い娘と首を挿げ替えようとする。 これまでの漆原作品にはないような過激な行動はそうした桜の特徴から起因しているのだろう。 接ぎ木をする、樹木としてはあまり長命ではなく三百年ほどで老木となっている、ことなど。 男は庭師であるがゆえに桜の美しさをあきらめきれずなんとかしてその美を保ちたいと願ってしまう。 もうひとりのショウ・タッカーで…
ネタバレします。 「天辺の糸」 天から垂れ下がる糸を引っ張ったら飛んで行ってしまった娘の話。 吹(ふき)は夜泣きする幼児の子もりのために雇われた娘だった。 その家の息子セイジロはいつも星を眺めているような男で自分の側で子守をする吹を嫁にしたいと思うようになった。 いつものように望遠鏡で星を観察するセイジロの横で幼児を遊ばせていた吹は天から垂れていた糸を引っ張った。 その途端、吹の体は天高く舞い上がってしまったのだ。 吹は一山超えた山の中に落ち記憶を失ってぼうっとしていたのギンコに救われる。 ギンコは吹が蟲に取り込まれそうになっているのを忠告し人間でなくなってしまわないように導く。 翌日吹は記憶…
ネタバレします。 「沖つ宮」 『猿の手』もしくは『ペットセマ(メ)タリー』の亜種でもあるのだろうか。もうひとつ『DUNE』も加えたい。 それが漆原作になると随分やさしくなるようだ。 というか仏教もしくは日本神道とキリスト教の対比なのか。 愛する「人の死」もしくは「ペットの死」を悲しみその復活を願ったことでおぞましい結果となるキリスト教圏の作品と比べ日本の作品のゆるい幸福感よ。 しかし私だけが違うのかはわからないが(いや多くの日本人もそうだと思うんだが)本作、他のどの話よりも禁忌に触れているように感じてコワイ。 なぜなんだろう。 結局はこの島だけの話なのがほっとする。 「眼福眼禍」 目が見えなく…
ネタバレします。 「虚繭取り」 幼い双子姉妹と蚕の繭のお話。 愛らしい少女たちと真っ白な繭玉が天井から幾つも吊り下げられている情景が美しい。 兎澤家一族の中で”ウロさん”が見える者は山中で孤独な”ウロ守り”という仕事を継がねばならない。 素質あるものは長年出なかったが二歳となった双子姉妹はふたりともソレが見えた。 一人きりでは寂しいだろうとふたりともが山の爺様のところへ行き”ウロ守り”に必要なことを学んでいく。 木の葉につく“玉繭”は二匹の蛹が一緒に作った大きな繭でありそれを煮ながら二つの棒でからめとり二つの繭に作り直す。 薄くなった元の玉繭の中にいる”ウロさん”は混乱して出てくる、ところを捕…
ネタバレします。 「硯に棲む白」 これはクリエイター冥利に尽きるという話。 子どもたちが病となり大人が死亡するほどの作品を作る、ということ。 むろん本当に死にそうになり死ぬわけではなくそれほど惚れ込み夢中になれる作品を作り上げたということ。 そして化野はそれを知っていながらもその作品を手放したくなく苦しみ、ついには作者にもうひとつの作品を注文する。 収集家の化野が悶え苦しむほどの美しい作品とは。 からかうギンコがおもしろい。 「眇の魚(すがめのうお)」 ギンコが幼い頃の話。 ギンコはヨキという名前であった。 母親と共に行商をするため山道を歩いていたがそこで崖崩れに遭い母は死んでしまう。 残され…
ネタバレします。 「錆の鳴く聲」 いつものことだが不思議な話だ。 ”しげ”という娘が声を発するとそれを聞いた人々が錆びつき動けなくなっていくという。 はっきりと証明されているわけではないが村人は皆その娘の声が原因だと思っている。 それはしげ自身は錆びついていないがその家族は錆びついて動けなくなっているからでもある。 村人はしげのせいで家族が動けなくなっていったと恨んでいる。 そうなってから十年前しげは話すことをやめた。 が、その病は進行し続けている。 その治療のためギンコは呼ばれた。 村でまったく錆びついていない若者テツに出会う。 まったく錆びついていない男の名が”テツ”というのが面白い。一番…
ネタバレします。 「露を吸う群」 現在ベストセラー1位になっている本の帯「コンサル栄えて国滅ぶ」の言葉を思い出させる。 そしてその本のタイトル『過疎ビジネス』というのも本作をそのまま指示している。 失礼ながら(というか金銭的問題で)上の本は未読ながらタイトルと帯だけで唸ってしまうものだ。 過疎で貧しいからこそ人はなんとかそこで生き延びようとして、いやさらにそこに住む人々のわずかに残った生き血を搾り取ろうとしてビジネスを考える。 本作においては実の娘の体に「蟲」を寄生させ生き神様として村民のわずかな食糧をも差し出させようとする「ビジネス」である。 しかしここでギンコが言う通り「どのみち奴らは長く…