塩の匂いを孕んだ熱い風が吹き荒れる中、 大海原に二隻の船が相対していた。 「黒竜丸」は、その名の通り漆黒の帆を広げ、 荒波を切り裂く竜の如く進む。 船首には禍々しい龍の彫刻が施され、 船体には無数の刀傷が刻まれていた。 甲板に立つは、黒竜丸の船長、鬼の半蔵。 その顔には大きな刀傷が走り、 眼光は獲物を狙う野獣のようだった。 遥か彼方に見えるのは、宿敵「赤獅子丸」の真紅の帆。 夕陽を浴びて、血の色のように不気味に揺れている。 「野郎ども、準備はいいか!」 半蔵の低い声が、波の音に負けじと響き渡る。 「あの獅子野郎どもに、黒竜の爪痕を刻んでやれ!」 船員たちは雄叫びを上げ、 刀を抜き放ち、火縄銃を…