手中の本は彼を虜にした。いや、安堵させた。知らぬことなど何も書かれていないともいえるが、それがまた心を惹き付ける。自分のちらばった思考をまとめることができるとするなら、この本はまさしく彼の代弁をしている。彼とよく似た精神の持ち主が生み出した本だが、遥かに力強く、ずっと筋道が立ち、恐怖に囚われてもいない。 最高の本当はすでに知っていることを物語ってくれる本なのだ、と彼は確信した。 ジョージ・オーウェル著のSF小説『1984』を読了。 11月から読み始めて、移動の電車内で読んでいたが読み終わるまでに3ヶ月もかかったとは… 大学時代に読んでおきたかった本だった。 政治・社会・個人の心理について学べる…