我が町のどこの農家もそうだが、農閑期になると男達は出稼ぎに行った。父さんは山の飯場に泊まり込み木の伐採の仕事をしていた。母さんは隣町の製材所に手伝いに行っていた。僕の町は田舎でA市やF市から遠かったので買い物にはなかなか行けなかった。当然、僕たち子どもはお菓子を食べる機会が少なかった。 そこで母さんは仕事が休みになるとたまにお菓子を作ってくれた。母さんが作るお菓子はかりんとうと羊羹で蒸しパンも作ってくれた。かりんとうは生地をのばし丁度良い大きさに切り、油で揚げて黒砂糖と水あめで作ったタレで絡めて乾燥させて完成だった。僕は完成品を待っていられず揚げたての生かりんとうを母さんに怒られながらも食べた…