眼が醒めてみると、開け放して寝た窓から心地好い風が吹きこんで来ている。身を起すと、寝汗もたいしたことないようだ。気のせいか躰も軽い。 夏を送る。そんな言葉が、ふと思い浮んだ。 軽くは感じても、躰の芯がだるい。猛暑にあぶられた疲労が背骨や腰骨のあたりにグリースのようにこびり着いていて、急に楽になった躰に溶け出してきたかのようだ。無我夢中の危険が去った直後の、虚脱状態のようでもある。例年この季節に特有の体感である。 やれ助かった、この夏も生延びた、さて作業開始せねばと自分を奮い立たせようとしてはみても、すぐさま実行に移せない。気力の耄碌だ。 昨日は買い食いと、間食と、少しばかりの酒肴とで済ませてし…