断捨離の一小部門である忘書離(恥かしながら、わが造語)の続きである。 新劇の当り演目のひとつだったアーサー・ミラー『セールスマンの死』は、再演再々演を重ねてくれたおかげで、私はかろうじて、滝沢修のウイリー・ローマンに間に合った。妻役は小夜福子だった。長男役は垂水悟郎だった。 しかし当方はなにぶんにも高校生だ。ウイリーが保険金を目当てに自殺を図るにいたった人生苦についても、幕切れに舞台前面に進み出た妻が独りさめざめと涙を流す心情についても、とうてい理解及んだとは云いがたかった。 ただこのウイリー役と木下順二『オットーと呼ばれる日本人』の尾崎秀実役とをとおして、滝沢修独特の歌うがごとき台詞がいかよ…