この小説は、あなたの倫理観を根底から揺さぶるかもしれない 今回ご紹介するのは、岸川真さんの短編小説『蹴る』です。この物語は、2015年に文芸誌『文藝』で発表され、後に作品集『暴力』に収録されました。タイトルが示す通り、本作が描くのは、ひたすらに生々しく、そして目的が見えない「暴力」そのものです。 物語は、主人公である中学生の康平が、先輩のケンと共に、夜の河川敷で一人のサラリーマンに暴行を加える場面から、不穏な幕を開けます。読者は、康平の視点を通して、まるでその場にいるかのような息苦しさと、得体の知れない恐怖を味わうことになるでしょう。しかし、この物語の本当の恐ろしさは、単なる暴力描写に留まりま…