「経済」4月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■巻頭言「原発と地震」
(内容要約)
地震大国日本で原発継続など無理なことは東日本大震災で起こった福島原発事故で明白なはずだという批判。全く同感だ。
ま、地震問題がなくても「放射性廃棄物問題」だけでも原発は早期にやめるべきだが。
■随想「『風と共に去りぬ』の神話のつくり方」(衣川清子)
(内容要約)
小生、『風と共に去りぬ』(以下、「去りぬ」と略す)を読んだこともなければ、1939年にビビアン・リーがアカデミー主演女優賞を受賞した映画版を見たこともないし、宝塚歌劇団のミュージカル版も見たことはない*1。たぶん死ぬまで読まないし、見ないと思う。
したがって衣川氏の指摘が正しいのかどうかよくわからない。
一応、彼女の指摘をオレ流に紹介しておく。
1)ウィキペディア「風と共に去りぬ」には次のような指摘がある。衣川氏もウィキペと同様の指摘をしている。
あくまで南部の白人の視点からのみ描かれたこの小説は、黒人からは「奴隷制度を正当化し、主人公オハラの様な白人農園主を美化している」として根強い批判と抗議を受け続けている。特に黒人奴隷の描写に関しては非常に強く批判されており、また白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)を肯定している点が強い批判を受けている(主人公スカーレットの周囲にいる白人男性たちは、レット・バトラー以外のほぼ全員がKKKのメンバーである:青木冨貴子*2『「風と共に去りぬ」のアメリカ:南部と人種問題』(1996年、岩波新書)参照)。
この小説に対抗して、『風と共に去りぬ』の黒人奴隷達を主観に据えた黒人からの批判的パロディー小説、『風なんぞもう来ねえ』(The Wind Done Gone)が黒人女性作家アリス・ランデルによって2001年に著されている。この『風なんぞもう来ねえ』は、ミッチェル財団から「著作権侵害」として提訴された。
この訴訟について、いったんは連邦地裁が出版差し止め命令を下したものの、2001年5月25日、アトランタの連邦高裁によって「著作権侵害に当たらず」として却下されている。
しかし衣川氏曰く「『去りぬ』をめぐるそうした複雑な状況は日本人にはまず伝えられない」(そうした数少ない指摘がウィキペが紹介する岩波新書の青木本だろう)。
結果、「ビビアン・リー映画」「宝塚歌劇団のミュージカル」で大感動という「麗しい世界」が続くわけである。これを衣川氏は「『風と共に去りぬ』の神話のつくり方」と呼び問題視するわけである。もちろん「『去りぬ』を娯楽として楽しむ事を否定している」わけではなく、作品が黒人から批判されてることに無知で、無神経に楽しむのはいかがなものかという話である。
2)なお衣川氏は「神話の誕生」には日本語翻訳(新潮文庫の大久保康雄訳)の影響もあるのではないかとしている。
「I don't give a damn」
レット・バトラーがオハラから去るときに吐く捨て台詞である。これを大久保訳は「君を恨んではいない」と訳してるそうだが衣川氏曰く誤訳らしい。氏の訳だと「(君のことなど)もうどうでもいいんだ」。
つうか俺がググっても衣川氏の似たり寄ったりの訳しか出てこないんだけどね。
たとえば「(君のことなど)僕には関心が無い」「勝手にするがいい」。
オレ流に言うと「お前がどうなろうと知ったことか、ボケ」
本当に大久保訳ってそんな酷いの?
「tomorrow is another day」
「明日は明日の風が吹く」あるいは「明日は明日の日が昇る」ですな。これ、最初聞いたときは「行きあたりばったりの女やな。どこの橋下徹だよ」「橋下か、お前は。反省の二文字はお前にはないのか」と思ったが衣川氏曰く実はその解釈で正しいらしい。なぜか、「何があろうとくじけない不屈のオハラ」と理解(衣川氏の立場だと誤解)されてるようだが。
【追記】
コメ欄ではいろいろと追記したいと書いたのだが長くなりそうなので別エントリ(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20130316)を書くことにする。
■世界と日本
【フランス軍のマリ介入(夏目雅至)】
(内容要約)
夏目氏は赤旗記者なので赤旗記事を見てみる。赤旗はフランスの軍事介入について「かえって事態を混乱させている」と批判しており当然、夏目氏もフランスに批判的だ。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-21/2013012107_01_1.html
仏のマリ軍事介入、周辺国 テロ拡散懸念
ガーナのコフィ・アナン国際平和維持訓練センターのクウェジ・アニング氏は、仏軍介入に伴って過激派がマリから周辺国へ拡散することを危惧。「フランスは(マリから)過激派を追い出したいという。しかし、どこに追い出すのか。モーリタニアとニジェールが苦難に陥るかもしれない。ブルキナファソは脅威にさらされる」と述べました。
仏軍のマリへの直接介入で、マリ政府軍が劣勢を挽回したとき、オランド仏大統領は「全世界や全アフリカから歓迎された」と自賛しました。
しかし、仏軍の空爆や戦闘から逃れようと多くの避難民が生まれ、その数は今後70万人にのぼると見込まれています。一時的な軍事的勝利が問題の根本解決にならないことは過去の例をみても明らかです。
米国は、2001年の9・11同時多発テロの報復として、同年アフガニスタンに侵攻し、当時のタリバン政権を崩壊させました。ところが、タリバンは現在、勢いを復活し、カルザイ政権の基盤を揺るがす情勢です。
カタールのハマド首相兼外相は15日、仏軍の介入について「力で問題は解決しない」と発言しました。アフガンの教訓は生かされず、2011年、米英仏はリビアに軍事介入して旧カダフィ政権を打倒。一方で、同政権が所有した武器は周辺国に流出し、マリを含む西アフリカ諸国の武装組織を活発化させたとの報道もあります。
次にフランスの軍事介入には利権がある、単純な人道主義ではないと指摘する毎日新聞記事を見てみよう。小生が思うにフランスの軍事介入は到底支持できないと思う。もちろんそれは「反政府勢力が正しいこと」を全く意味しないので念のため。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130204ddm003070129000c.html
質問なるほドリ:マリ介入、なぜフランスなの?
Q
フランスの介入目的に、経済権益はないの?
A
オランド仏大統領は1月16日の演説で「経済、政治的計算ではなく、平和のために尽くすのだ」と述べました。ただし、マリの隣国ニジェールには、仏原子力大手アレバ社が採掘するウラン鉱山があります。同社のウラン産出量の3分の1、仏国内の原発で使用するウラン燃料の3分の1以上をまかなっています。西アフリカの不安定化は、原子力大国フランスの足元を揺るがす可能性があります。
【ボーイング787機の事故(平澤歩)】
(内容要約)
GSユアサのリチウムバッテリー電池が怪しいと言われてるわけだがそれはさておき。今後の調査が必要としているが筆者は事故の遠因として「飛行機の複雑化とそれによる外注化」があるのではないかとしている(飛行機が複雑化することや外注化が悪いと言っているのではない)。
飛行機の安全性や快適さを高めるためにシステムを複雑化すると、全ての部品をボーイングが製造することは難しくなり、たとえばリチウムバッテリーについては専門メーカーGSユアサに頼んだ方が低価格で高品質の物が得られると言うことになりやすい。
ただその場合、GSユアサのバッテリーに問題がないことをボーイング側がきちんとチェックする必要があるがそれがおろそかになると今回のような事故につながるのではないかというのが筆者の指摘である。
参考
赤旗『B787事故 危ない電池、発火性高いリチウムイオン、10年に火災墜落も』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-31/2013013101_04_1.html
【2030年の世界予測(田中靖宏)】
(内容要約)
アメリカ国家情報会議の未来予測「グローバルトレンド2030」の紹介。もちろん予測が当たる保障はないがアメリカが未来をどう見ているかという参考にはなる。筆者に寄れば内容は次の通り。
1)貧困層の減少と中間階層の増加
各国の貧困対策により貧困層が減少に中間階層が増加する。
こうした中間階層は「台湾や韓国」などで民主化を求めたように民主化を求め、各国の民主化の進展が期待される。一方、生活の向上で、食料、エネルギーの需要が今より40%程度増加することが危惧される。
2)西側先進国(欧米、日本)の地位の低下と中国、インドの地位上昇
なお、報告は中国の地位上昇に対し、中国との協調をどう進めていくかが大事としている(もちろん人権問題について何の批判もしないというわけではない)。
■対談「日本経済をどうする!」(大瀧雅之*3、小池晃)
(内容要約)
「今日のしんぶん赤旗紹介(1/27分) (追記・訂正あり)」(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20130127/2504978316)で紹介した対談の詳細なものが収録されている。箇条書きで書いてみる。
・現在の不況の大きな原因は「労働者の雇用の不安定化」「労働者賃金の減少」にある。結果、労働者が生活不安から消費を減らし、不況を深刻化させている。「雇用の安定」「賃金の上昇」を目指すことは労働者福祉の面だけでなく景気対策にもなるが、そうした理解が財界や安倍政権にあるかははなはだ疑問である。
・インフレを目指すと安倍政権は言うが、労働者にとって賃金上昇無しのインフレは物価上昇による生活苦を意味する。賃金上昇についての政策があるとは思えない安倍政権は問題だ。
・金融緩和といいながら中小企業を支援してきた金融円滑化法を3月の期限切れで延長しない方針というのはおかしいのではないか。方針変更による延長を求める。
・不況だからと言って財政規律を無視していい訳ではない。金融緩和のためには日銀の国債引き受けもどんどんやるべし、公共事業もどんどんやるべしという論には賛同できない。
・安倍政権が慰安婦問題で韓国との関係を悪化させていることは経済の面からも問題である。日韓関係がぎくしゃくすることは韓国の経済力が増す中、日本経済にも悪影響を与えると思われる。
特集「原発ゼロの日本をつくる(1)」
■「脱原発・エネルギー政策転換のいまを考える」(石川康宏)
(内容要約)
・まず指摘しなければならないことは安倍首相と甘利経済再生担当相(題意1知事安倍内閣で経産相)こそが福島原発事故に責任を負うA級戦犯の一人だという事実である。
赤旗『「安倍内閣、反省なき原発推進、事故を招いた「A級戦犯」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-13/2013011301_04_1.html
・しかし彼らにその反省はなく、今まで以上の脱原発運動の発展が求められる。
赤旗『原発ゼロ見直し表明、首脳会談で安倍首相』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-24/2013022402_02_1.html
・脱原発への動きは福島事故の発生により、原発事故が「机上の空論」ではないことが実感されてから、以前に比べ強まりつつあるが、自民党が政権に返り咲いたことでわかるように脱原発の道は楽な物ではない。ここではいくつかの注意ポイントを指摘しておく。
脱原発がなかなか形にならない理由としては以下のことが上げられる。
1)「二大政党自民・民主のどちらも原発推進派」であること(自民の方がより原発推進の度合いが強いが)。その意味でも小選挙区の導入は大きな間違いだったと言える。
これを変えるには困難なことであるが、理屈の上では「二大政党のいずれかをまともな脱原発派に生まれ変わらせること」「二大政党に変わる脱原発の第三勢力を形成すること」のいずれかを実現する必要がある。
2)政財官界の圧力もあってか、東京新聞など一部の「脱原発」に好意的なメディアを除き、多くのメディアが脱原発に冷淡もしくは敵対的であること。こうしたメディア状況下では脱原発の情報に接すること自体が困難であり、原発に批判的な意識は持続しにくい。
「原発に親和的なメディアを批判し報道の改善を求める(場合によっては不買運動なども考えられるだろう)」「原発に批判的なメディアを応援する」「インターネットなど既存メディアとは違った形での情報発信」と言った形でのメディア状況の改善が必要だろう。
3)脱原発世論は増えつつあるが、多くは「2030年までに」などかなりタイムラグがある。「放射能の危険性を考えればタイムラグは小さければ小さいほどいい」「タイムラグが小さくても再生可能エネルギーなどで対応可能であると言うこと」を精緻に説明する努力がいっそう重要である。
■「『原発ゼロ』と立地地域経済の再生:北海道・泊原発から考える」(小田清*4)
(内容要約)
・脱原発が語られる場合、「原発の危険性」や「脱原発してエネルギー需要に対応できるのか」といった事に議論が集中している。
一方で「原発立地地域は過疎地が多く、そのため脱原発後に補助金が打ち切られることを恐れて原発に賛成していることにどう対応するか」という問題、つまり脱原発後の原発立地地域の経済振興が語られることは少ないように思う。「原発補助金があるから原発に賛成する」というのは本末転倒である。また地域振興問題は本来原発問題とは関係ない。だからこそ「原発地域の経済振興問題」は語りづらいという点があることは否定できない。
・しかし、現に「原発補助金があるから原発に賛成する、脱原発派が脱原発後の地域振興プランを出さないなら、たとえ『原発』という毒まんじゅうでも生活のために食べる」という地域住民が居る以上、地域振興策について考える必要があるだろう。ここでは泊原発のある泊村を事例に考える。
・泊村の主要産業は炭鉱と漁業であった。しかし炭鉱は炭鉱不況の中1965年に閉山。漁業も伸び悩み、そうしたことから地域振興策として原発が誘致された。泊村には多額の原発補助金が投入され、村は北海道唯一の地方交付税不交付団体である。
・しかし、泊村の過疎化には歯止めはかからなかった。原発産業は村の労働力を吸収するには至らなかった。泊村の人口減少率は、「当初、泊村同様原発立地計画があった住民運動で計画が阻止された*5」隣町・共和町と大して変わらない。
・原発には廃炉があり、廃炉後に同じ場所に新設することはまず考えられないことを思えば永続的な地域振興策とは言い難い(是非はともかく廃炉後模範永久的に補助金を投入するなら話は別だが。)
・なお、原発計画から撤退した共和町は農業に力を入れ「らいでんスイカ」のブランドを確立している。共和町も過疎は深刻なため、過大評価はできないが、原発に頼らない地域振興の可能性を示していると言える。
らいでんスイカ(ウィキペ参照)
北海道岩内郡共和町でJAきょうわ(きょうわ農業協同組合)によって生産・出荷される地域ブランドのスイカ。北海道を代表するスイカであり、共和町は北海道最大のスイカ生産地である。 名称「らいでん」の由来は、ニセコ・積丹・小樽海岸国定公園である景勝地『雷電海岸』がスイカ・メロンの耕作地から一望できることから命名された。夕張市の夕張メロン、当麻町のでんすけスイカ*6と共に、メディアに取り上げられるようになっている。近年ではメロンやそのほかの農産物にも「らいでん」の名前がつき、らいでんブランドが確立されつつある。
JAきょうわ公式サイト:http://www.ja-kyouwa.jp/
■「原子力発電所と自治体財政:福井県若狭4市町*7の事」(三好ゆう)
(内容要約)
若狭4市町が原発銀座化している背景には「原発立地補助金に自治体財政が依存している」「地域経済が原発産業に依存している」という実態がある。「原発補助金にかわる自治体財源」「原発産業にかわる地域経済を支える産業」がない限り、脱原発を推進することは若狭4市町にとっては「自治体財政の逼迫」「地域経済の沈没」を意味することとなる。脱原発を原発立地自体住民に納得させるためにはそうした「脱原発の苦しみ」を如何にしてゼロないしできる限り小さくするかという問題が重要である。
国家が国策として原発を推進した以上、「脱原発によって原発立地自治体が受ける経済的ダメージの軽減」は国民全員に責任があるといえるであろう。
■「『アベノミクス』と日銀の独立性」(建部正義*8)
(内容要約)
・アベノミクスによるインフレターゲット推進の手法は日銀の独立性を定めた日銀法3条の精神に反しており、そのことが白川総裁の抗議辞任をまねいたのではないかという批判。
・筆者は日銀は「アベノミクス支持派」の主張と異なり、日銀は一定の金融緩和を行ってきたのであり、にもかかわらず、景気回復という意味ではその成果は認められなかったとする。現在、一定の株価高、円安が成立しているがこれを「アベノミクス支持派が唱えるような論理展開(金融緩和による景気回復)」で理解することに否定的である。
■「インタビュー: 無償教育を前進させるために」(三輪定宣*9)
(内容要約)
・民主党政権下で高校無償化が実現し、「初等中等教育の無償化*10」について定めた国連人権規約A規約13条の留保が撤回されたことは運動の成果でありよかった(ただし朝鮮学校無償化除外という点については批判が必要)。
・しかし政権に復帰した自民党は高校教育無償化、高等教育無償化に敵対的でありさらなる運動の展開が必要である。
・無償化実現の前段階としてできることとしては奨学制度の充実が上げられる。日本の奨学金制度の多くは「有利子の貸与」であり「無利子貸与」「給付」の奨学金に切り替えていくことが望ましい。
■「金融円滑化法の打ち切りは中小企業に何をもたらすか」(鳥畑与一*11)
(内容要約)
赤旗の記事紹介で代替する。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-15/2013021502_04_1.html
円滑化法延長求める、佐々木氏 「中小企業の倒産防ぐ」
日本共産党の佐々木憲昭議員は14日の衆議院内閣委員会で、今年3月末で打ち切られる中小企業金融円滑化法の期限延長を求めました。
佐々木氏は金融円滑化法を利用した中小企業は30万〜40万件、一方、企業再生支援機構を利用した企業はJALを含めて28件で、そのうち中小企業はたった11件だと指摘。圧倒的多数が利用している金融円滑化法をやめ、中小企業がほとんど利用していない企業再生支援機構を延長する理由はどこにあるのかと追及しました。
甘利明経済再生相は「中小企業を機構が全部カバーすることはできない」と釈明するのみで、まともに説明できませんでした。
佐々木氏は、「金融円滑化法が中小企業の倒産防止に大きな役割を果たしてきた」と強調。打ち切りを前に、金融機関による中小企業の選別が始まっており、東京商工リサーチによると3年間の潜在的倒産件数を2万〜3万件と推測している事実をあげ、「弱体化した中小企業が金融機関の選別にさらされ、倒産しかねない。貸し渋りや貸しはがしが再び起こり、日本経済に重大な影響を与える可能性がある」と指摘しました。
寺田稔内閣府副大臣は、経営改善計画が策定されないモラルハザードが起きているなどと決めつけ、「金融円滑化法の精神を盛り込みつつ、新たな利用者支援などを用意した」とのべました。
佐々木氏は「それは、融資をする銀行の側に立った説明だ」と厳しく批判。「経済状況が厳しい中、貸し付け条件の変更を銀行に促し倒産を防いできたのが金融円滑化法だ。この円滑化法を再延長するべきだ」と主張しました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-17/2013021701_05_1.html
主張『金融円滑化法、中小企業の「命綱」断ち切るな』
中小企業の資金繰りを確保するための金融円滑化法がこの3月末で打ち切られようとしています。経営環境が厳しい中小零細企業の資金繰りだけでなく、住宅ローン利用者の支援としても喜ばれてきた制度です。中小企業、国民にとっての「命綱」ともいえる仕組みを断ち切るべきではありません。
金融円滑化法は中小企業が金利の引き下げなど貸し付け条件の変更を希望する場合に、金融機関に応じるように義務付けた法律です。2008年のリーマン・ショック以降、経営が悪化した中小企業を支援するために09年12月から施行されました。中小零細企業のうち30万〜40万社が利用したとされ、条件変更は300万件を超えます。毎月の返済負担を軽減することで資金繰りが行き詰まる倒産を減らしたと評価されています。
活用は中小企業にとどまりません。金融庁によると、12年4月から9月までの6カ月間で住宅ローン利用者からの貸し付け条件変更の申込件数は3万4911件にのぼります。そのうち金利引き下げの申し込みが1572件で1305件が実行されました。中小企業だけでなく国民に利用されている制度を、期限がきたからといって、中止する道理はありません。
金融円滑化法の打ち切りは、中小業者の資金繰りの破綻を招き、廃業や倒産を増やしかねません。
一部に「本来なら倒産すべき企業を延命させているのは問題の先送り」などという論調もありますが、あまりに冷たく一面的な見方です。倒産は「販売不振」を中心とした「不況型倒産」が大半を占めています。「放漫経営」が原因というのはごくわずかしかありません。不況の克服こそが大切であり、それは政治の責任です。
中小企業をめぐる状況は依然厳しいものがあります。1月の倒産件数も運輸業などを中心に増加に転じています。電機大企業がすすめるリストラが労働者だけでなく広範な下請け中小企業にも深刻な影響を与えることは明らかです。金融機関の貸し渋りも続いています。中小企業の経営環境が苦しい時に、金融機関が返済条件などを緩和して支援するというのは当然の社会的責任です。金融円滑化法は当面延長し、さらに使い勝手を良くすることが必要です。
中小企業への思い切った対策が求められているにもかかわらず、政府の中小企業対策はあまりにも貧弱で、中小業者の願いに応えるものにはなっていません。13年度予算案の中小企業対策費は1811億円にすぎません。4兆7千億円規模に膨れ上がった軍事費の伸び率を下回り、負担する義務のない米軍への「思いやり」予算と米軍再編経費を合わせた額よりも少ないというのが現実です。
日本共産党の市田忠義書記局長は1日の代表質問で、中小企業を「経済のけん引力」と位置付けた中小企業憲章の立場を強調し、金融円滑化法の延長と中小企業金融の抜本的な強化を求めました。
企業の99%を占め、雇用の7割を支える中小企業への支援を抜本拡充することは「デフレ」不況から脱却して内需主導の経済を実現するためにも重要です。安倍政権は“大企業が良くなれば中小企業も良くなる”という破綻した政策にしがみつくのはやめるべきです。
■座談会「世界資本主義の危機と新自由主義」(高田太久吉*12、萩原伸次郎*13、友寄英隆*14)
(内容要約)
・民主党政権への失望による反動で「新自由主義政策」が息を吹き返しつつあると言える。衆院選挙での新自由主義派の議席増(自民、維新の会、みんなの党)はそれを示していると言える。
・ただし新自由主義政策を安倍政権が一路、実現できるかは未知数ではある(十分な警戒が必要ではあるが)。安倍が新自由主義とは本来反する「公共事業の大規模実施」や「大企業への賃上げ要請(たとえ形式的な物に過ぎないとしても)」を行っていることから、安倍が新自由主義政策の実施による国民の反発を恐れていることが読み取れる。
■「欧州労働組合の新自由主義反対闘争の新段階」(宮前忠夫*15)
(内容要約)
EUにおける労組の「新自由主義反対闘争」の紹介。
参考
赤旗
『スペイン 航空労働者がスト、賃下げ・大量解雇に反対』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-20/2013022007_01_1.html
『英労組会議、EU指令敵視に反撃、競争より労働者の権利』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-21/2013012107_02_1.html
■「貸金業者の上限金利規制緩和の動き:ヤミ金被害の再燃を許さない」(和田聖仁)
(内容要約)
自民に規制緩和論者がごろごろ居ることを考えると大いに警戒が必要だろう。
まず規制緩和論に対する筆者の批判をQ&A式で紹介。
Q「規制のために資金を必要とする人がお金を借りられないというサラ金擁護派の批判は正しいの?」
A「規制によってサラ金の貸出金額が減っていることは事実だが、それをサラ金擁護派のように『必要なお金が借りられていない』と見なすのは不適切である。むしろサラ金批判派の主張するように『収入を考えたら到底返済不可能なため』サラ金から借りるべきでない人間の借金が減ったと見なすべきだろう(つまり借金せずに生活を質素にしたりサラ金以外から借りていると言うこと)。批判派のようにサラ金貸出金額の減少を肯定的に見なすことが間違いだという正当な根拠を擁護派は何ら提示できていない」
Q「ヤミ金被害は増えてるの?」
A「警察庁の検挙件数上は明らかにヤミ金被害は減少している。規制強化が効力を発揮したと見るべきだろう。これに対し、規制緩和論者(例:サラ金特区を計画していた橋下府知事時代の大阪府やサラ金擁護派の堂下浩東京情報大教授*16)は『いわゆる暗数(摘発されないヤミ金被害)があるので検挙件数が減ったからと言ってヤミ金被害が減ったとは言えない』としているが彼らは『暗数もカウントすれば増加している』という説得的な根拠を出せないでいる。そもそも暗数の算出自体、簡単ではないことに注意が必要である。また、『警察が摘発するなど表面化したヤミ金被害が減少しているのに表面化しない被害は増加し、トータルでは増加している』などと言うことがあり得るとも思えない」
最後に赤旗の記事紹介。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-07-29/2011072901_05_1.html
主張『サラ金議員「勉強会」、“高金利地獄再び”目指すのか』
サラ金など高利貸しの深刻な被害を防ぐため2006年の国会で全会一致成立した改正貸金業法が昨年6月に完全施行されて1年余が過ぎました。返済しきれないほどの借金を背負った「多重債務者」は100万人以上減り、個人破産、多重債務を原因とする自殺者もはっきり減少するなど、改正法は大きな力を発揮しています。
ところが国会で、「規制が過剰で業者が苦しんでいる」と、同法を骨抜きにする法「再改正」を目指す超党派の議員の動きが起きています。重大な“逆流”です。
改正貸金業法は、▽借り過ぎ・貸し過ぎを抑えるため借入残高を年収の3分の1までとする「総量規制」▽金利の法定上限を29・2%から15〜20%にする「上限金利の引き下げ」―の二つが大きな柱です。法改正当時、サラ金業界はこれに激しく抵抗し、全国貸金業政治連盟からの政治献金、パーティー券購入など大規模な政界工作を行いました。
反対勢力の言い分は、「借りたくても借りられない人が出る」「ヤミ金融がはびこる」というものでした。しかし、改正法施行後も、融資申込者の7割は希望通りの融資を受けています。ヤミ金被害は顕著に減少しています。反対派の主張が破綻していることは事実で証明済みです。にもかかわらず、改正時と同じ反対論をくり返しているのが超党派の一部国会議員による「勉強会」です。
自民党の平将明衆院議員を中心とした「『貸金業法改正』の影響と対策に関する勉強会」は今年2月に始まりました。呼びかけ人に、民主党から樽床伸二、田村謙治両衆院議員、大久保勉、藤末健三両参院議員、自民党から竹本直一、平沢勝栄、河野太郎各衆院議員、公明党から遠山清彦衆院議員、西田実仁参院議員、みんなの党から桜内文城参院議員、国民新党から下地幹郎衆院議員が名を連ね、これまで7回、毎回30人程度の国会議員が参加しています。
7月になって「勉強会」がまとめた「提言」は、上限金利をかつての29・2%と同水準に引き上げる、総量規制を大幅に緩和するというものです。サラ金が取り立てた「過払い利息」の返還についても、業者の救済を図るべきだとしています。だれのための法「再改正」なのか、あけすけです。
「勉強会」では、「いまの金融行政は消費者保護に偏りすぎている」「金利は自由にすべきだ」といった暴論が交わされています。「市場原理主義」「規制緩和万能論」ですすめた「構造改革」の政治が貧困と格差の大きな傷痕を残し、新たな経済的・社会的ルールの構築が必要なときに、無責任で時代錯誤の主張といわざるをえません。
「勉強会」は、「提言」の内容で政府や各党への働きかけを強め、議員立法による法「再改正」を目指すとしています。こうした企みを芽のうちに摘む、世論と運動が求められています。
改正貸金業法は、自殺や家庭崩壊、破産など「多重債務」問題の悲惨さに世論の批判が高まり、サラ金被害者や幅広い市民、法律家の大きな運動が実を結び、多くの圧力をはねのけて実現したものです。高金利被害を生まない社会を目指し、逆流を許さず、社会的な合意を大きく広げるときです。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-07-08/2012070804_01_1.html
貸金業法改悪許さない、クレサラ対協など3団体 緊急集会開く
完全施行から今年6月で2年となった改正貸金業法をめぐり、一部国会議員の間に同法の改悪を狙う動きが強まっています。
全国クレジット・サラ金問題対策協議会(クレサラ対協)、全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会(被連協)、全国ヤミ金融対策会議の3団体は7日、仙台弁護士会館で「貸金業法の改悪を許さない!」緊急集会を開きました。
クレサラ問題に取り組む各弁護士から、自民党の小委員会で利息制限法の上限金利の見直しや総量規制の撤廃など、大幅に規制緩和をする改正案がまとめられ、民主党や公明党内からも同様に改悪を狙う動きが出ていると報告されました。
日弁連で多重債務問題に取り組む和田聖仁弁護士は、「貸金業法は改正されたが、相手側の巻き返しもあり、問題に終わりはない。永遠の綱引きをやる覚悟で臨まなくてはいけない」と話しました。
被連協の山地秀樹会長は、声を詰まらせながらサラ金問題で苦しんできた自身の経験を語り、「私の周りでも借金に悩んで自殺した人がいる。これ以上私たちのように苦しむ人を増やしてはいけない」と訴え、壇上に上がった発言者からは、次々と改悪の動きに対し、断固たたかっていく決意が語られました。
集会には日本共産党の大門実紀史参院議員、民主党の岡崎トミ子参院議員が参加しました。
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-02-22/2013022214_02_1.html
「金利下げよ」 攻勢的に、多重債務被害考える集会、大門氏あいさつ
日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会などが21日、多重債務被害と改正貸金業法について考える集会を国会内で開き、市民ら110人が参加しました。
改正貸金業法は、サラ金による「多重債務」の被害が深刻化するなか2010年6月に完全施行されました。借入残高を年収の3分の1までとする「総量規制」、金利の法定上限を29・2%から15〜20%に下げる「上限金利の引き下げ」が柱で、「多重債務者、自己破産者とも激減し改正法は著しい効果をあげた」(日本司法書士会連合会・細田長司会長のあいさつ)状況です。
集会では、多重債務が原因の自殺者の減少、新たな高利貸被害を生む「偽装質屋」対策、世界の金利規制の状況など多面的な報告がされ、熊本県弁護士会の青山定聖弁護士は「多重債務の背景には貧困、格差の広がりがある。それが解決されないなか、前のような高金利をかぶせれば、また多重債務問題が広がる」とのべました。
会場から発言した全国クレジット・サラ金問題対策協議会の本多良男事務局長は、年利18%の銀行カードローン利用者の債務相談の経験を報告。「現在の利息上限ですら高すぎる。まして金利の引き上げや総量規制の撤廃などの議論が出ていることはおかしい」とのべました。
日本共産党の大門実紀史参院議員が「いま、『金利を下げよ』という攻勢的なたたかいをすすめる必要がある。みなさんとともにがんばる」とあいさつ。自民、民主、みんな各党の議員もあいさつしました。
■「インタビュー: 東日本大震災復興のために 日本学術会議の取り組みを聞く」(大沢真理)
(内容要約)
・日本学術会議の震災復興での取り組み(http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/shinsai/shinsai.html)について日本学術会議東日本復興支援委員会「産業振興・就業支援分科会」委員長をつとめる大沢真理東京大学社会科学研究所所長にインタビュー。
・大沢氏が委員長を務める「産業振興・就業支援分科会」は提言「被災地の求職者支援と復興法人創設―被災者に寄り添う産業振興・就業支援を―」(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-t-shien3.pdf)を発表しているが、この提言のポイントは大沢氏曰く次の3つである。
1)求職者支援制度の円滑化、柔軟化
具体的には「地域別・属性別の就職率目標の設定」「他の雇用復興推進事業との連携」「世帯単位要件の緩和」
2)いわゆる中小企業グループ補助金を使いやすい制度に改善する
具体的には「手続きの簡素化」「地域経済にとって重要な企業については個別企業でも補助を認める」
3)復興法人制度(仮称)の創設
■岩井忠熊*17さんの研究余話 (4)「天皇制研究へのアプローチ」
(内容要約)
天皇制研究においては「近代天皇制」と「前近代の天皇制」には継続とともに断絶があることに注意が必要だろう。明治新政府によって天皇制は再構築されたのである。
■コラム
【IGメタルが組合員増】
(内容要約)
組合員の減少傾向はヨーロッパでも深刻な問題だがドイツ最大の産別労組IGメタルが微増ではあるが組合員の増加を達成した。IGメタルの取り組みからはいろいろと学ぶべき面があるのではないか。
*2:著書『アメリアを探せ:甦る女流飛行家伝説』(1995年、文春文庫)、『目撃 アメリカ崩壊』(2001年、文春新書)、『731:石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く』(2008年、新潮文庫)、『占領史追跡:ニューズウィーク東京支局長パケナム記者の諜報日記』(2013年、新潮文庫)、『ライカでグッドバイ:カメラマン沢田教一が撃たれた日』(2013年、ちくま文庫)、『GHQと戦った女 沢田美喜』(2018年、新潮文庫)など
*3:著書『景気循環の読み方:バブルと不良債権の経済学』(2001年、ちくま新書)、『平成不況の本質:雇用と金融から考える』(2011年、岩波新書)
*4:著書『地域開発政策と持続的発展:20世紀型地域開発からの転換を求めて』(2000年、日本経済評論社)
*5:計画当初は泊・共和原発と名付けられたが共和町の反対運動によって泊原発となった
*6:名称「でんすけ」の由来は、当時の喜劇俳優・大宮敏充が演じたキャラクター「大宮デン助」と、水田の転作が始まる時代でもあり、「田を助ける(田助)」の二つの由来がある。
*7:敦賀原発のある敦賀市、美浜原発のある美浜町、大飯原発のあるおおい町、高浜原発のある高浜町のこと
*8:著書『はじめて学ぶ金融論』(2005年、大月書店)、『金融危機下の日銀の金融政策』(2010年、中央大学出版会)
*9:著書『教育の明日を拓く:いじめ克服、少人数学級、教育無償化、反動教育阻止のために』(2013年、かもがわ出版)
*10:初等教育は義務教育、中等教育は高校に当たる。日本では高校無償化が実現してなかったため長く留保がされた
*11:著書『略奪的金融の暴走:金融版新自由主義がもたらしたもの』(2009年、学習の友社)
*12:著書『金融恐慌を読み解く』(2009年、新日本出版社)
*13:著書『アメリカ経済政策史』(1996年、有斐閣)、『通商産業政策』(2003年、日本経済評論社)、『米国はいかにして世界経済を支配したか』(2008年、青灯社)、『日本の構造「改革」とTPP』(2011年、新日本出版社)、『TPP:第3の構造改革』(2011年、かもがわブックレット)、『TPPと労働者、労働組合』(2012年、本の泉社労働総研ブックレット)
*14:著書『「新自由主義」とは何か』(2006年、新日本出版社)、『変革の時代、その経済的基礎:日本資本主義の現段階をどうみるか』(2010年、 光陽出版社)、『「国際競争力」とは何か:賃金・雇用、法人税、TPPを考える』(2011年、かもがわ出版)、『大震災後の日本経済、何をなすべきか』(2011年、学習の友社)
*15:著書『人間らしく働くルール:ヨーロッパの挑戦』(2001年、学習の友社)
*17:著書『天皇制と歴史学』(1990年、かもがわ出版)、『明治天皇:「大帝」伝説』(1997年、三省堂)、『近代天皇制のイデオロギー』 (1998年、文理閣)