ブログ版『ユーリの部屋』

2007年6月から11年半綴ったダイアリーのブログ化です

見えない糸のようなもので

シオニストの仕事は、一日中きりがない」ということを身を持って知ったのは、ダニエル・パイプス先生と昨年1月半ばに知り合ってから(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120114)。とにかく、毎日スケジュール満載で、椅子を温めている暇もないというのが実態ではないでしょうか(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120405)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120713)。ご自身でも、そのように書いていらっしゃいます。

イスラエルの業務は、準フルタイムの事業である。朝の読書から夕方の社交スケジュールまで、あらゆることを駆り立てるものだ」(http://www.danielpipes.org/12732/

特に、寝ても覚めても同胞ユダヤ人とイスラエルの存続に全人生を賭けて(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120710)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120713)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130117)、イスラーム動向にも鋭く目を光らせながら日々を過ごされているダニエル・パイプス先生なので、文章書きのネタには困らないでしょうが、それをどのように表現し、有効に働きかけられるかは、また別問題。
一応は安定した独立国の日本でさえ、毎日忙しく働いても際限なく仕事が追いかけてくるのに、ましてや、常に不安定で何が起こってもおかしくない中東で、敵国に囲まれながら必死に国造りと見事な発展を遂げつつあるイスラエルを遠方の米国からしっかりと見守り(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130121)、情報収集と分析を日々怠らず(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120113)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130322)、文章書きとメディア出演でメッセージを発信して世論形成を試み(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130524)、国内外で支援者を広げ、資金を集めて独自の業務を開拓し継続する仕事は、並大抵の能力や体力ではできません。
特に、私が昨年から痛感するのは、インターネットの利便性と同時にせわしなさ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20100922)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120713)。面識がなくともメールだけで連絡が取れるのは、便利と言えば便利。でも、いちいちの確認やミス発生時の連絡など、時差もあるので、なかなか大変です(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121012)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121117)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130125)。
パイプス先生は、子ども時代からの並外れた多読生活と、お父様のリチャード先生の影響を直接受けた知的環境のおかげで、混沌とした状況の中で鋭く本質を見抜く明快な分析力と、すばやく説得力に満ちた魅力的な文章を次々と書き上げる才能に恵まれていらっしゃいます(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120113)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120124)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120131)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120424)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120429)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120505)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120507)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120514)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120516)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120521)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120522)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120608)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120612)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120616)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120626)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120917)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120922)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121003)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121007)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121026)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121109)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121111)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121113)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121128)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130105)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130116)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130117)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130203)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130207)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130312)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130402)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130613)。恐らくは、何ワードを何分で書くという若い頃の訓練の賜物でもあるのでしょう。(これは私の受けた日本の平均的な教育では徹底的に欠けていた側面だと思います。)それでも、ここ数日で気づいたのは、735語ほどの隔週コラムを1本書き上げるのに、総計3時間弱をかけていらっしゃるということ。しかも、4日間ぐらいかけての完成。その上、完成原稿としてウェブ上のオンライン新聞に掲載された文章には、また何ヶ所か修正が加わっています。編集者から指摘されてなのか、ご自分でより完成度を高めたいからなのか、あるいはその両方なのかもしれませんが、いずれにせよ、大変な作業です。
今でこそ隔週コラムですが、2008年頃までは毎週コラムを書き綴って来られたのですから、圧倒されます(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120729)。そのコラムたるや、日本で目にするコラムとは全く違って、内容が濃く、毎回新鮮度が高く、しかも歴史的視点にぶれのない、読者の目を覚ますような刺激的なものばかりでした。吸引力の高さも見事でした。
時事的な内容であれば、微細な変化にも対応した文章に仕上げなければならず、しかも、ご自身の主張に首尾一貫性を持たせなければならず、ハイパーリンクも同じ情報源だけではすぐに飽きられてしまうので(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120505)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120524)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120628)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120731)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121117)、さまざまなものに目を光らせていなければなりません。
これは、ただオリジナル文章を英語でさっと読んでいるだけではわからない、大変さ。一文ずつ逐語訳的に日本語に直してみて初めて気づく、筆者の苦労や息づかいなどがあります。
それに、国内外も頻繁に旅行されている中での執筆作業となれば、いくら社交とは言え、人付き合いも悠長にしていられませんし(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120713)、ご家族の深い理解や周囲のスタッフの密接な協力なしにはできない事業です。
また、2004年頃からの長い付き合いだったフランス語訳者の女性アンヌ=マリー・デルカンブル先生が(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120505)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120521)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120525)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120607)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120628)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120922)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130105)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130106)、4月を最後に、ご家族の事情で仕事から一切手を引かなければならなくなったそうです。ふと気づいて、いつかはこうなるだろうとわかっていたこととはいえ、何だか淋しく残念に思いました。70歳の彼女は、アラビア語イスラームの研究者でオリエンタリストだと自称。イスラーム法がご専門で著作もあるそうですが、元気で活発なパイプス・ファン。おとなしく訳業だけに専念されているのかと思いきや、パイプス公式サイトで、時々、一般読者のコメントにさり気なく混じって、英語で賑やかにパイプス・コラムを応援したり感謝したりしていました。
2008年春にはパイプス先生も手術をされましたが(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120729)、同じ年の数ヶ月後に彼女もベルギーで瀕死状態となって入院。たまたま欧州滞在中だったパイプス先生は、もう一人のフランス系スイス人の男性翻訳者と一緒にお見舞いに行かれたそうです(http://pub.ne.jp/itunalily/?search=20519&mode_find=word&keyword=Author+and+his+translator+)。ところが、三人で仲良くしているのかと思いきや、実は熱心なパイプス読者でファンでもある仏語翻訳者同士は犬猿の仲で、パイプス公式サイトの読者コメント欄で、時々「ムッシュー」「マダム」と皮肉たっぷりに喧嘩をしていました。
結局のところ、前世紀の植民地支配の負の遺産として引き継いだ西洋とイスラーム世界の対峙が欧州にはくっきりと現存し、移民流入と統合欠如が日常問題となった今、どのように西欧文化を維持した上でムスリムとの共存を模索していくかが焦眉となっているわけです。その現象そのものは、既に随分前から日本でも観察され研究されてはいるものの、日本と一種異なる点は、欧州では左派思想(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130105)と保守思想との対立も絡んでいるために、イスラーム問題は日本で考える以上に、センシティブかつ緊急の問題だということです。
なので、本来は喧嘩すべきではないところで、つい感情が入ってしまい、相互に言葉尻をあげつらって喧嘩腰になっている仏語訳者二人についても、私としてはおもしろく楽しませていただきました。つまり、イスラーム問題は基本的に、ムスリム世界内部の重要課題であると同時に、西洋の問題でもあるということです。
ただし、ユダヤシオニストのパイプス氏が「イスラームが問題なのではなくて、イデオロギーとしてのイスラーム主義が問題だ」とイスラーム圏内にまだ在住している同胞ユダヤ人を気遣いながら論陣を張っているので(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130613)、お二人としてもそこは承知した、と黙らざるを得ない事情があったようです。
と、話はつい逸れてしまいましたが、欧州(フランス、ドイツ、スイス、オランダ、デンマークなど)、カナダとオーストラリア、イスラエル、そして米国と、幅広く飛び回っているようでいて、案外に限られた人脈でがっちりとニッチを埋めつつ、活発に言論活動してこられたのがダニエル・パイプス先生(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120623)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121202)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130212)。対論を挑むにしても、目立つイスラミスト論客を選別して、挑発的に話を持ちかけ、注目を浴びるように仕掛けているようです。というのは、本来、学問としてイスラームを勉強していたならば、パイプス先生のおっしゃっていることは、古典的な意味で当たり前のことであって(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120528)、何ら特に問題がないはずだからなのです。なのに、これまで非難囂々浴びたのはなぜかといえば(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120516)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120827)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121111)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130109)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130508)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130521)、反ユダヤ主義、反イスラエル主義もさることながら、一方でパイプス先生側から世間にメッセージが届くようにわざわざ仕掛けたからだとも言えます(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120729)。結果論なのか意図的にしたのかは、私にはわかりませんが。
さて、まだ訳したい文章が250本ほどあって、本当に魅力的なダニエル・パイプス著述なのですが、このところ困っていることが幾つかあります。
1.このブログでも昨年から毎日のように書き綴ってきたように(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121003)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130106)、一年半ぐらい経った今、徐々に理解を深めつつ、ようやくパイプス先生の人となりや個性と共に業務内容の全体像と方向性がつかめてきた。一方で、訳業が追いつかないほど次々に量産される映像と著述だということ。ある程度は時間をかけて没頭しないと、細切れではわからない背景事情などもあったため、昨年はパイプス路線で来た。もともと興味があった分野で非常に勉強になるのでおもしろくて刺激的な一方、本来のマレーシアに関する研究のまとめが開店休業中。このバランスをどう取るかが、今の課題。
2.お父様が、80代後半になっても、イスラエルで講演されたり新しく本を執筆されたりしていたので(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121026)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130105)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130117)、恐らくはダニエル先生も、気力が続く限りずっと、最後までお仕事をされるつもりだろう。面識のない私にとっては、いつかはお目にかかってきちんとご挨拶したいと思う反面、果たしてその機会が到来するのかどうか、あるとすればタイミングはいつなのかが不明だということ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120811)。
3.彼の著述だけに没頭しているのではなく、周辺の関連書籍(人脈のある方達の著作や引用されている書籍など)にも、興味があれば入手して並行して読んではいるが、本を読んでいると訳業が遅れ、訳業に没頭すると本が読めない。どのように時間の配分を割り振るかは喫緊の課題。
4.実は、整理したいと願っている資料や本などが家の中で山積みで、何とかすっきりさせたいのだが、なかなかまとまった時間やきっかけがつかめない(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091102)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120710)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120819)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121101)。
5.ブログに書くつもりでメモだけは残してあるクラシック演奏会なども、結局は後回しになってしまい、ほとんど書く時間が確保出来ない状態(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120422)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121225)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121231)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130517)。

仮に、英語が少しわかるからというので依頼されて訳しているだけだとしたら、生活そのものはもっとすっきりしているのかもしれませんが、多分、それでは受け身で長続きせず、恐らくは形式的で苦痛だっただろうとも考えます。つまり、人生を賭けた彼の仕事内容に本当に興味があり、彼のように情熱的で誠実なシオニストを自分の力の及ぶ限りで支援したいという必然性を(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120524)、自分の研究遍歴から知的に、そして子ども時代からのユダヤ的なるものへの関心から情的にも痛感するからこそ(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20070929)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20091110)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120608)、ここまで没頭できたのだろうと思うのです。
逆に言えば、私自身のマレーシア経験や研究遍歴がもし計画通りにスムーズに行っていたら、ダニエル・パイプス氏の思想や経歴にも惹かれなかった可能性が高いのです。なぜ、彼があそこまで熱心に活動しているのか、左派リベラルやイスラミスト達から非難や悪口を浴びせられながらも、なぜ決して動じず引くことさえなかったのか、その理由が極東の一個人、地方在住の一日本女性に過ぎない私にも充分に納得のいくものだからこそ、心から協力したいと願っているわけです。
このブログで、もっとパイプス先生についてお伝えしたいと思うことはあります。最近のメールのやり取りでも、「あなたの書いてくることは何でも、全部とっても興味深いねぇ」「僕はね、20世紀が確証したように、変化は歴史的に間違いかもしれないんじゃないかと懸念しているよ。僕は伝統に価値を置く。例えば、同性愛結婚にひどく反対しているのは、それが理由なんだよ」などと、ますます意気投合中。もっとも、短いメールのやり取りを通して、訳文の参考補充になればと考えたためでもありますが、最初は全く雲の上の方で専門が異なるのに突然の依頼を受けた上、そもそも面識がなかったのと、あまりにも名指しの非難や批判が日本の中東研究者の一部からも出ていたために、様子を探る意味もありました。今ではすっかりなじみ、2007年3月にエルサレムに関する明快な論文で初めて彼を知った時の驚きと関心(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120115)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120608)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121117)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121202)、2011年11月頃に見た2004年のインタビュー映像から得た安定感や安堵感や信頼感が(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120113)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120115)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120126)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120505)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120809)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20121012)、今でも全く裏切られていないことをうれしく思っております。

つまりは、変化の激しい現代アメリカにおいて、今でも一貫して保守性を大切に生きている一人の知識人が、その率直さと真っ直ぐな言動で私を捕らえたということです(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120125)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120126)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120131)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120424)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120429)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130405)。紳士的な学者だと評判だったお父様から、見事にその紳士性と学究肌を受け継いだダニエル先生(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120129)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120208)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120227)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120505)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120521)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20120804)(http://d.hatena.ne.jp/itunalily/20130521)。なぜ私などに、と今でもつくづく不思議に思いますが、上記の仏語訳者のお二人を見てもわかるように、何か目には見えない糸のようなもので、お互いに知り合うよう導かれていたのかもしれません。