もんじゅ廃炉費用、1兆円超えも 使用済み燃料処理に数千億円以上 - 福井新聞ONLINE(2018年7月9日)

http://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/618098
https://megalodon.jp/2018-0711-2024-37/www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/618098

廃炉が決まっている日本原子力研究開発機構原子力機構)の高速増殖原型炉もんじゅ福井県敦賀市)を巡り、使用済み燃料の処理に数千億円以上かかる可能性があることがこのほど、関係者への取材で分かった。政府はもんじゅ廃炉費用を3750億円と試算しているが、燃料処理費は含んでおらず、廃炉の総額は1兆円を超える可能性が出てきた。
もんじゅの燃料は毒性の強い放射性物質プルトニウムを多量に含み、国内外に処理できる施設はない。海外の業者に高額で委託するしかなく、施設の新設も含め莫大(ばくだい)な費用がかかるという。
もんじゅは使った以上の燃料を生む「夢の原子炉」として期待され、1兆円を超える国費が投入されたが、相次ぐトラブルでほとんど実績を上げないまま長期停止。政府は2016年、再稼働する場合の安全対策に約6千億円が必要と試算し、費用対効果の問題などから廃炉を決めた。
原子力機構によると、使用済み燃料の処理費用は、含有するプルトニウムの量で大きく左右される。通常の原発で使われた燃料には1%のプルトニウムが含まれる。これを再処理したウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料は4〜9%で、輸送費などを含め処理費用は1体約10億円。
機構関係者によると、もんじゅの燃料は小型だがプルトニウムは16〜21%で、通常の数倍以上の処理費がかかるという。もんじゅには未使用のものも含めると処理対象になる燃料は約540体あり、費用は数千億円以上になる見通しだ。
原発の使用済み核燃料からプルトニウムなどを回収し、再び燃料として使用する再処理を委託されているフランスの業者にも、もんじゅの使用済み燃料を処理できる施設はなく、対応には新設が必要という。
同機構は22年度までに処理方法を決定し、燃料を取り出す計画。機構関係者は「具体的な処理方法は決まっていない。現実的にはフランスの業者と交渉することになるだろう」としている。

(政界地獄耳)災害よりカジノ優先の石井国交相 - 日刊スポーツ(2018年7月11日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201807110000225.html
http://archive.today/2018.07.11-013150/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201807110000225.html

自民党には魔の3回生という言葉がある。その中の政治家としての覚悟や矜持(きょうじ)のない者が、暴言を吐いたり不倫していたりするからだ。国会議員にまでなってと嘆くというより、世間知らずで持論を訴えるだけの議員になるのではと、不安になる。彼らの失敗の大半は人としても政治家としても、その発言や行動がどういう事態を引き起こすかという想像力の欠如がそうさせるのだ。
★その想像力の欠如は、党の幹部や閣僚たちにも相通じる。例の避難命令が出ている時にも、党所属若手議員を相手に宴会をし続けた想像力のない首相や党幹部、閣僚たちのその場しのぎの政治に、危機感を覚えなくてはいけない。宴席を共にしていた党総務会長・竹下亘はさすがに「どのような非難も受ける。正直言ってこれだけすごい災害になるという予想は、私自身はしていなかった」と想像力のなさを認めたものの、党政調会長岸田文雄に至っては「政府としても与党としても対応すべきことについてはしっかり対応を行う、こういったことで取り組んでいたと認識している」と人ごとだ。多くの被災者を出した広島選出の次期首相候補筆頭の発言だ。
国難突破を訴える首相・安倍晋三だが、これでは自民党国難そのものだ。10日の参院では、今やカジノ担当相とやゆされる国交相石井啓一出席の下、カジノ法の審議を続けたが、立憲民主党国対委員長代理・山内康一は「不思議なことに、国交相はカジノ担当相を兼務しています。本日(10日)参院国交相カジノ法案の審議に出ています。災害対応よりカジノ法案対応を優先する国交相はどうかと思います」とフェイスブックに書き込んだ。
共産党・辰巳孝太郎も「カジノ審議。石井国交相、広島・府中の氾濫を『昼間のニュースで知った』と答弁。国交相が河川の氾濫をニュースで初めて知る? こらアカン、やっぱりカジノの審議やってる場合じゃない」と、ツイッターでつぶやいた。自公政権から「日本を取り戻す」べきと感じた有権者が増えたのは、間違いない。これなら予定通り自民党総裁選も実施だろうなあ。(K)※敬称略

「共謀罪」法施行1年 廃止求める動き続く - 東京新聞(2018年7月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071102000142.html
https://megalodon.jp/2018-0711-0916-48/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071102000142.html


犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法は、十一日で施行から一年となった。この一年間、野党が廃止法案を提出し、各地の地方議会が廃止を求める意見書を可決するなど、廃止への動きが依然続いている。 
改正法は昨年六月十五日に成立し、同七月十一日に施行。捜査機関による不当な監視や、一般の市民団体や労働組合の活動が事実上対象になりかねないなどの懸念が指摘されている。立憲民主、共産、自由、社民四党と衆院会派「無所属の会」は昨年十二月、改正法から共謀罪の部分を削除する法案(「共謀罪」廃止法案)を、衆院に共同提出。今年の通常国会衆院法務委員会に付託されたが、審議されない状態が続いている。
衆院は今月六日時点で、十八都道府県の四十一議会が可決した意見書(改正法の成立前に可決された意見書も含む)を受理。鳥取県北栄町議会の意見書が「撤回・廃止をし、改正前の状態に戻す」ことを求めるなど、多くの意見書が廃止や慎重な運用を求めている。
法曹界も声を上げ続けている。日本弁護士連合会によると、全国に五十二ある弁護士会のうち四十一の弁護士会が改正法の成立に抗議し、廃止を求める声明や談話を発表している。
一方、上川陽子法相は十日の記者会見で、この一年間に検察当局が「共謀罪」を適用した事例はないと説明。菅義偉(すがよしひで)官房長官は、テロなどの情報収集で国際社会との連携が容易になったと強調した。
これについて日弁連秘密保護法・共謀罪法対策本部事務局長の山下幸夫弁護士は「適用されていないから問題がないということではない」と指摘。「安易な適用は許さないという市民の声が、法律の適用を限定的にし、市民運動労働組合への適用を抑制する」と、国民が乱用をチェックし続けることが大切と訴えている。(清水俊介)

<「働き方」どう変わる>(4)年休と残業代 環境整備 働く側に利点も - 東京新聞(2018年7月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071102000178.html
https://megalodon.jp/2018-0711-0921-32/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071102000178.html


「働き方」関連法には、労働者の働き方や待遇改善につながる内容も盛り込まれた。代表的なものは、年次有給休暇(年休)の取得促進と、中小企業の残業代の引き上げだ。
労働基準法により、年休は仕事を休んでも給与が発生する休日で、働いた年数に応じて日数が与えられる。例えば、一年六カ月働いたら十一日、六年六カ月以上だと二十日与えられる。
年休取得は労働者の権利だが、「職場に負担をかける」といった心理的なためらいから十分な取得は進んでいない。厚生労働省の調査によると、二〇一六年の取得率は49・4%で五割に満たない。独立行政法人が一一年に行った調査では、一年で一日も年休を使わなかった人は16・4%いた。
今回改正された労働基準法では、年十日以上の年休がある労働者に対して、このうち五日は必ず取得することとし、企業側は労働者の希望を聞いた上で時季を指定する。年五日の有休を消化できない労働者がいる企業には罰金を科す。
政府は二〇年までに年休取得率を70%とすることを目標にしており、今回の義務化で社員が休みやすくする環境を整える。一九年四月から施行する。
中小企業の残業代の引き上げでは、現在は大企業に比べて低く抑えられている月六十時間を超えた分の割増賃金率を大企業と同等にする。
具体的には、月六十時間超の残業に対する割増賃金率を現在の25%から50%にする。時給が千円の労働者の場合、残業が月六十時間を超えた分は千五百円となる。二三年四月から施行となる。
残業代が引き上げられることで労働者にとっては収入増や残業の減少などのメリットがあるが、企業側にとっては人件費増につながる可能性がある。 =おわり
(この連載は、木谷孝洋が担当しました)

<核なき世界目指して>(3)まず核兵器の役割低減 - 東京新聞(2018年7月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071102000173.html
https://megalodon.jp/2018-0711-0923-18/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018071102000173.html

核兵器禁止条約が昨年七月に国連で採択された当時に外相を務めていた。なぜ条約交渉に参加しなかったのか。
核兵器のない世界を実現する議論には、積極的に参加すべきだと思っていた。だが核兵器保有国や、日本と協力してきた中道国(核抑止力に依存する国)が条約に反対という実態が明らかになった。交渉が進めば関係国の対立がより深刻になると判断した。核なき世界実現のため、辛抱強く核保有国を巻き込み、非保有国と協力しなければならない」

−禁止条約には広島、長崎の被爆者の声も反映されている。

被爆者や自治体、推進NGOとは広い意味で目標は共有しているものの、それぞれ役割がある。核保有国、中道国と直接議論して協力する政府として、ぎりぎりまで考えた」

−今後も禁止条約への参加は難しいか。

「日本は(禁止条約のような)法的枠組みを否定していない。安全保障に対する冷静な認識と、核兵器の非人道性に対する正確な認識の下、(まず)核兵器の数、役割、意義の低減を訴える。それらがある程度下がったところで、法的枠組みを導入する」

−米国の核抑止力に頼る日本が、米国に対して核軍縮を主張できるのか。

「対話や議論はしている。どこまで強く言えるかは、その時の国際情勢や米政府の対応による。たとえばオバマ政権とトランプ政権では違う」

北朝鮮の非核化問題をどう見通すか。

米朝首脳会談は一つの大きなきっかけだが、非核化の行程、期限も明らかになっておらず、楽観できない。急に制裁緩和や経済支援の話まで出る雰囲気があり、心配に思う」

−日本はどう取り組むべきか。

北朝鮮の中・短距離弾道ミサイルや日本人拉致問題は日本独自の課題。直接交渉を考えていかなければならない。非核化を議論する推移の中で、日本としてどう議論に加わるのか知恵を出したい」

北朝鮮の非核化の行方は、日米の安保関係にも影響するか。
「可能性はある。行方次第では日本で核なき世界と逆行する(核保有)議論が巻き起こるかもしれない。注視する必要がある」 (聞き手・大杉はるか) 

<きしだ・ふみお> 1957年、東京都生まれ。早稲田大卒業後、銀行員を経て、93年衆院選で旧広島1区から立候補し初当選。9期目。2012年末から昨年8月までの4年8カ月にわたって外相を務め、16年のオバマ米大統領(当時)広島訪問の実現に尽力した。

最高裁 強まるトランプ色 判事に保守派 - 東京新聞(2018年7月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201807/CK2018071102000161.html
https://megalodon.jp/2018-0711-0926-00/www.tokyo-np.co.jp/article/world/list/201807/CK2018071102000161.html


【ワシントン=石川智規】トランプ米大統領は九日、連邦最高裁の新たな判事に保守派の若手ブレット・カバノー連邦高裁判事(53)を指名する人事を発表した。議会上院で承認されれば最高裁の勢力図は保守派に傾くことになり、銃規制問題などで「トランプ色」の強い政策が支持を得られやすくなりそうだ。野党民主党は承認を阻止する構えで、十一月の中間選挙に向け与野党の対立激化が予想される。
最高裁は長官と判事八人の計九人で構成。現在は保守派五人、リベラル派四人に色分けされるが、七月末での退任を表明したアンソニーケネディ判事(81)は、保守派ながら人工妊娠中絶の権利を認めるリベラル寄りの判断を示したこともあり「中間派」と評された。このため、実質的には保守派とリベラル派が拮抗(きっこう)する形だった。
米メディアによると、カバノー氏は人工妊娠中絶に否定的なほか、銃規制に反対の立場を取る典型的な保守派だ。就任すれば判決の右傾化が予想され、LGBTや同性婚など米国世論を二分する問題で分断が一層深まることにつながる。
米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、カバノー氏は一九九八年の論文で「大統領は刑事訴追の対象になるべきではない」と主張。ロシア疑惑で揺れるトランプ氏にとって追い風となり得る。
最高裁判事は終身制のため、就任後は自ら辞任するか死亡または弾劾されない限り職務を続ける。カバノー氏は五十三歳と若く、承認されれば今後数十年間は在職する可能性が高い。
民主党上院トップのシューマー院内総務は「人工妊娠中絶の権利を認めないカバノー氏では女性の権利が脅かされる。超党派で承認に反対する必要がある」と呼びかけた。上院の議席数は共和五一、民主四九と拮抗。共和党内にはコリンズ議員ら中道派の女性議員もおり、秋の中間選挙に向けた与野党の駆け引き材料ともなる。

参院選挙の改変 民主主義の土台壊すな - 東京新聞(2018年7月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018071102000186.html
https://megalodon.jp/2018-0711-0927-55/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018071102000186.html

政権与党の傲慢(ごうまん)さが極まったのではないか。自民党が今国会成立を目指す参院選挙制度改革案。民主主義の土台である選挙制度を、自党の都合を優先して強引に変えることが許されてはならない。
これほど露骨な選挙制度の改変が、かつてあっただろうか。自民党が提出し、参院政治倫理・選挙制度特別委員会で審議されている公職選挙法改正案である。
参院議員定数を埼玉県選挙区で二(三年ごとの改選数では一)、比例代表で四(同二)増やし、比例代表の一部に、各党が定めた順位に従って当選者を決める「特定枠」を導入する内容だ。
一票の格差」是正のための定数増を一概には否定しないが、依然、三倍近い格差が残る。
特定枠は提案した自民党の動機がそもそも不純だ。二〇一六年の前回参院選から「合区」が導入された「鳥取・島根」と「徳島・高知」両選挙区で公認に漏れた現職議員を比例で救済する狙いだからだ。自党の議席維持を優先する党利党略と批判されて当然である。
国会は三年前の前回改正で、一九年の参院選に向けて「選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする」と改正法の付則に明記し、抜本改革を約束していた。
最高裁が前回一六年参院選での格差三・〇八倍を「合憲」と判断したのも、抜本改革という国会の意思を評価したためだろう。
国会は、国民との約束である抜本改革を怠ったばかりか、司法判断をも顧みない高慢さである。
伊達忠一参院議長も役割を果たしたとは言えない。野党側が求めていたあっせん案の取りまとめを拒み、各党に法案提出を促し、審議するよう求めただけだからだ。
確かに、選挙制度をめぐる各党間の隔たりは大きく、意見を集約し、各党が受け入れ可能な案を提示するのは容易ではない。
しかし、困難な仕事に取り組んでこその議長ではないか。数に勝る自民党案の成立を容認するだけでは、三権の長としての責任の放棄にほかならない。
自民党はきょうにも参院特別委で可決し、二十二日までの会期内成立を図る構えだが、民意を正しく測るための選挙制度を幅広い合意もなく、拙速に決めてはならない。
審議を通じて各党案も明らかになった。自民党案の今
国会成立は見送り、秋の臨時国会で仕切り直しすべきだ。周知期間は短くなっても、真剣な議論の末での結論なら、有権者の理解も得られる。

(筆洗)名優が亡くなった。加藤剛さん。 - 東京新聞(2018年7月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018071102000143.html
https://megalodon.jp/2018-0711-0929-40/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018071102000143.html

司馬遼太郎の『関ケ原』で描かれる石田三成切れ者だが、どうも、不器用な人物である。よく言えば、真面目で筋が通っている。悪く言えば、融通が利かぬ。そして関ケ原で大敗する。
ドラマ「関ケ原」で三成を演じた俳優のところに母親から電話がかかってきた。「わたしは辛(つら)いよ。切なくて口惜しいよ。かわいそうで涙がとまらんけよ」と泣く。「どう見てもおまえの方に理があったに」。三成本人をつい混同させてしまったその名優が亡くなった。加藤剛さん。八十歳。
持って生まれた面白みをフラというが、この人には持って生まれた、生真面目さと悲しみがあった気がする。
決して不快な悲しみではない。人間のどうしようもない悲しみを理解し、いたわる、温かい悲しみとでも言うのか。だからその人が演じた三成に、暗い過去を必死に隠すため人を殺(あや)めた「砂の器」の和賀英良に見る者は泣かされた。
当たり役の「大岡越前」。大岡裁きに子を奪い合う女の話がある。一人は強く手を引く。もう一人は子が痛かろうと手を放す。越前は手を放した方を実母と認めた。
加藤さんも痛みと悲しみにその手を放す方なのだろう。「人の痛みがわかる人間になりなさい。他人の為(ため)に涙を流せる人になりなさい。そうすれば、世の中に戦争という愚かなものは無くなるから」。そう教えてくれたとは、ご長男のコメントである。

お茶大が出願資格を変更 性的少数者の権利広げた - 毎日新聞(2018年7月11日)

https://mainichi.jp/articles/20180711/ddm/005/070/199000c
http://archive.today/2018.07.11-002250/https://mainichi.jp/articles/20180711/ddm/005/070/199000c

お茶の水女子大が2020年4月から、戸籍上の性が男性でも自らを女性と認識するトランスジェンダーの学生を受け入れると発表した。国内の女子大では初めてのことだ。
同大は、これまで出願資格を戸籍上の女子に限っていた。このため、2年ほど前にトランスジェンダーの受験生からの入学希望を断っている。他方で「心が女性」の人の権利を守る社会的な認知が広がってきたとして、学内で検討を重ねてきた。
同大は出願資格を「戸籍または性自認が女子」と変更し、委員会を設け認定方法などを検討するという。
明治期、女子大は女子教育の機会を広げる理念で誕生した。今回は、女性の定義を広げたという点で大きな意義がある。
体と心の性が一致しないトランスジェンダーに関しては、小中高校で対応が先行していた。
文部科学省は15年に、トランスジェンダーのひとつである性同一性障害の児童生徒への配慮を各教育委員会に通知した。校内にサポートチームを設けることや心の性と一致した制服の着用、職員トイレの使用などを例示している。翌年には教職員向けの手引も作っている。
大学などの研究者らで作る日本学術会議も、文科省通知に従って女性と自認する生徒が女子大に進学できなければ「学ぶ権利の侵害になる」と指摘してきた。女子大もいずれ乗り越えなければならない壁だった。
米国では複数の女子大が入学を認めており、国内でも日本女子大や奈良女子大などが検討中だ。受け入れは確実に広がるだろう。
もちろん、他の学生との関係や更衣室、トイレなどの施設への配慮は不可欠だ。一方で、部活の参加や寮などをどうするかといった課題もあろう。学生に負荷のかからない対応を検討してほしい。
トランスジェンダーを含む性的少数者(LGBTなど)への支援や対応は社会で広がりつつある。
早稲田大はセンターを設け、支援体制を作って相談に応じている。東京都渋谷区など、同性カップルを認める条例も複数の自治体でできた。企業でも相談窓口や治療のための休暇制度を設ける動きがある。
こうした取り組みの積み重ねが性的少数者への支援を広げていく。

心の性 多様さを認める社会に - 朝日新聞(2018年7月11日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13579410.html
http://archive.today/2018.07.11-002558/https://www.asahi.com/articles/DA3S13579410.html

戸籍上は男性だが、自ら認識する性(心の性)が女性であるトランスジェンダーの学生を、再来年度から受け入れるとお茶の水女子大学が表明した。
日本女子大など他の大学も検討を進めている。多様な性のあり方を認め、学びの場を保障する動きが広がるのは意義深い。
文部科学省は15年、性的少数者の児童・生徒への「きめ細かな対応」を求める通知を全国の小中高校に出した。この問題は教科書でも取りあげられるようになり、千葉県柏市の市立中が性別に関係なく着用できる制服に切りかえるなど、目に見える変化が出始めている。
自らを女性と認識する人が、女性として教育を受けたいと願うのは当然だ。女子大が門戸を開くのも時代の流れに沿うものといえる。むろん入学を許可して終わりではない。講義や日常生活、スポーツ、就職活動など様々な場面でサポートが必要になる。当事者の声に耳を傾け、準備を整えてほしい。
日本学術会議の分科会が昨年まとめた提言「性的マイノリティの権利保障をめざして」でも、教育機関に対し、通称名の使用やトイレ、体育・健康診断での配慮、カウンセリング体制の充実などを要請している。
進路指導をする高校の側も、正しい知識が求められる。文科省など関係機関は連携を密にして、切れ目のない支援体制を築いていかなければならない。
性的少数者が自分らしく生きられる社会づくりは、まだ緒に就いたばかりだ。
文科省の通知と同じ年、東京都渋谷区は同性カップルに、結婚に準じた関係を認める「同性パートナーシップ制度」をつくった。福岡市、大阪市などが続き、さらに準備している自治体もある。だが諸外国では法律で同性婚を認めるなど、より強い形で権利を保護している。主要7カ国でそうした法整備をしていないのは日本だけだ。
この国会では、40年ぶりに相続制度を大きく見直す改正民法が成立した。長年連れ添った配偶者や介護に貢献した人に、これまでよりも多くの財産が残されることになったが、事実婚や同性のパートナーはその対象ではない。政府・国会には大きな宿題が残された。
性の認識や家族の姿に「正解」はない。多様な考えや生き方が現にあり、それを認め合うことが、人権が守られ、誰もが生きやすい社会につながる。
既存の制度や慣行はその妨げになってはいないか。常に意識を持って点検し、着実に見直していくことが大切だ。

(米軍事件の被害補償)地位協定の欠陥見直せ - 沖縄タイムズ(2018年7月11日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/281959
https://megalodon.jp/2018-0711-0931-52/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/281959

米軍関係者による事件事故の被害者は、二重に犠牲と苦痛を強いられている。1度目は事件事故そのものによって。2度目は損害賠償請求を巡って。
公務外の事件事故の場合、米政府が補償する仕組みになっているが、被害者やその家族が「迅速」で「十分」な補償を受けるのは難しい。
日米両政府は1996年、日米特別行動委員会(SACO)の最終報告で、損害賠償の手続きを巡る地位協定の運用見直しに合意した。
運用改善措置として打ち出されたのが「SACO見舞金」である。米政府による支払い額が裁判所の確定判決による額に満たない場合、日本政府がその差額を見舞金として支給するという仕組みだ。
だが、現行制度には依然としてさまざまな不備がある。
そのことをあらためて浮き彫りにするケースが最近、立て続けに表面化した。
2008年1月、沖縄市で起きた米海兵隊員の男2人によるタクシー強盗致傷事件。
家族は沖縄防衛局を通じて米軍側に損害賠償を求め続けてきたが、米軍側からは何の回答もなかった。 
昨年、ようやく慰謝料を支払う旨の示談書が示された。中身を見て驚いたという。慰謝料は約145万円。加害者を永久に免責するとの条件までついていた。家族は損害賠償請求訴訟を起こした。
那覇地裁沖縄支部は5日、請求をほぼ認め、米兵2人に遅延損害金を含む計約2640万円の支払を命じた。
SACO合意に基づく手続きがようやく動き出す。

■    ■

事件発生から今年で10年。被害者救済の視点を忘れた、あまりにも悠長な対応というほかない。
裁判所の確定判決額と米側の示した補償額の間には毎度、大きな開きがある。それなのに政府はこれまで、遅延損害金は支給の対象にしない、との方針をとってきた。
被害者の補償を受ける権利を明文化し、日米が法的義務として損害を賠償する仕組みを導入すべきである。
昨年4月、うるま市で起きた女性暴行殺害事件で、米政府は当初、被害者側から地位協定に基づく補償金の請求があった場合、支払わない考えであることを日本政府に伝えていた。
地位協定は補償対象を「合衆国軍隊の構成員または被用者」と定めている。被用者とは米軍に直接雇用されている者のことで、加害者は軍属ではあるが被用者ではないので補償の対象外、というのが米側の言い分だ。

■    ■

軍属として地位協定に基づく優遇措置は受けながら、被用者ではないので補償はしない−遺族感情を逆なでするような理不尽な話である。
結局、裁判で示された賠償額を日米双方が分担することに合意した。近く遺族に支払われるという。ただし、米軍の支払いは地位協定に基づく補償金ではなく「特例的な見舞金」で、日米の負担割合も明らかにされていない。
「迅速」で「十分」な補償を実現するためには、運用改善ではなく、地位協定の改定が必要だ。

(大弦小弦)自動車工場などで働く派遣労働者の過酷な実態や格差社会を描いた… - 沖縄タイムズ(2018年7月11日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/281960
https://megalodon.jp/2018-0711-0933-22/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/281960

自動車工場などで働く派遣労働者の過酷な実態や格差社会を描いた小説「ガラパゴス」(相馬英雄著)。大企業の都合や不正などが背景に絡むストーリーが現代の問題と重なって胸をえぐる

▼自動車メーカーなど大手製造業の不正問題が明らかになるたびに思い出す。今回もそう。日産自動車が排ガス測定値や燃費データを改ざんしたという新たな不正を公表した

▼昨年、無資格者の従業員による完成車の不正検査が発覚したばかり。今回は国内六つの工場のうち5カ所で不正が行われており、会社全体の体質と言わざるを得ない

▼なぜ不正は続くのか。他社に同様の不正検査があったことをきっかけに把握したというが、無資格者検査問題が発覚した後も見過ごされていたことになる。認識の甘さにがくぜんとする

▼新たな不正の要因を幹部は「書き換えても法に抵触しないと検査員が思ったのでは」「再検査で走行距離がかさむことへの不安もあったのでは」などと釈明した。安全を脅かす推測でしかない。無資格者検査問題では、コスト削減や規模拡大による現場の疲弊感なども指摘された

▼労働の実態、生産現場の管理態勢、法令順守はどうなっているのか。消費者は信頼と安全に投資する。ものづくりの根幹を揺るがす不正を絶つ構図と経緯を洗い出さなければ、信頼は取り戻せない。(赤嶺由紀子)

未就学児調査 社会挙げて親の支援を - 琉球新報(2018年7月11日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-759438.html
http://archive.today/2018.07.11-003003/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-759438.html

県の子ども貧困調査が、一昨年の小中学生、昨年の高校生に続いて未就学児について実施され、結果が公表された。県内の1歳、5歳の未就学児を持つ親の2割以上が経済的に困窮しており、困窮度が高いほど制度やサービスを利用できていないことが浮き彫りになった。背景に親の低賃金、長時間労働などの問題が横たわっている。
「乳幼児期は人間形成の核になる時期であり、この時期に親が仕事に追われて子どもに十分関わることができないことの影響は大きい」と加藤彰彦沖縄大名誉教授は指摘している。労働問題を含む貧困対策を柱に据えて、乳幼児の親を支援する仕組み・制度を整えることを、社会の共通認識にしなければならない。
今回の調査で、保育所などの施設に通っていない子どもは低所得層ほど割合が高く、一方で低所得層ほど「すぐにでも通わせたい」というニーズが高いことが分かった。親が低所得であるほど子どもが保育所に入りにくい現実がある。
ひとり親世帯は特に深刻だ。低所得層の割合は、ひとり親では格段に高くなる。ひとり親の抑うつ傾向が高いことも今回の調査で示され、経済的困難が精神的負担につながっていることも裏付けられた。
調査では児童扶養手当生活保護など四つの社会福祉制度を利用した経験についても尋ねた。その結果「利用の仕方がわからなかった」「制度やサービスについてまったく知らなかった」という答えが低所得層ほど多かった。支援が必要な人々ほど情報を持っておらず、必要な制度・サービスに行き着いていない。
「共働きをしないと生活できない」「子どもを預けられないので働けない」という矛盾の中で、親は低賃金の長時間労働を余儀なくされている。そして経済的不安もあって医療機関に子どもを連れて行けない、自分も行けないという実態がある。親の労働問題は、子育てや教育だけでなく、健康も犠牲になるという悪循環を生んでいるのである。
沖縄の子どもの貧困率が29・9%に上ることを2016年に県が発表、衝撃が走った。その後、保育所の待機児童問題は一定の改善が進んだ。保育料や医療費の減免、給付型奨学金の創設など教育費の負担軽減が取り組まれ、民間の努力もあって子どもの居場所づくりも成果を上げている。報告書のまとめで島村聡沖縄大准教授は「妊娠期や子育て時の不安に即応できる人的体制と場づくりがこの先さらに重要になる」と強調した。
貧困対策と子育て支援を進めるには、保育所の整備や各種の負担軽減をさらに充実させるだけでなく、人的支援も強化する必要がある。加えて、乳幼児期の親の育児を支えるための賃金上昇や労働環境の改善に、社会を挙げて取り組むべきである。