~ 追憶 武仲 ~ あいつの後ろ姿は、もうとっくに見えなくなっていた。 俺はもう、どうしたって遅刻だ。 目の前の信号機が点滅を始めた。走っている速度を、少し上げるだけで簡単に渡りきれるのは解っていたけれど、俺はあえてそうせず、走る速度を、緩めた。 足を止め、赤に変わった信号機を見ながら呼吸を整える。 そうすることに、最早何の意味もないのだということは解っているのだけれど、それでもケータイで時間を確認する。 うん。遅刻。 着信が入っていたので履歴を見る。 サリからだった。 何の電話だろうか? 解らないけれど、ちょっと怖い……。 信号が青に変わったので、俺はまた走り出した。もう遅刻は免れないけれど…