哲学の一分野。 倫理学はさらに、メタ倫理学(meta-ethics)と規範倫理学などに分かれる。また、倫理学研究の中から出てきた成果を現代的な諸問題に応用しようとする、応用倫理学なども注目を集めている。
入手しやすい入門書としては、加藤 尚武『現代倫理学入門』(講談社,1997)や川本隆史『現代倫理学の冒険―社会理論のネットワーキングへ』(創文社,1995)などが定評がある。
スコット・ジェイムズ『進化倫理学入門』名古屋大学出版会 新・読書日記8 – ラボ読書梟 (旧 はてなブログ大学文学部)
(お気持ち表明的な文章なので、以下の記述に飛躍や暗黙の前提はたくさんあると思う) 功利主義は最大幸福だけを求める薄っぺらい思想であり、何かと合理主義や資本主義と結び付けられ、人格の別個性を無視する浅はかな思想であり、マイノリティに抑圧的である、などと言われる。功利主義に対して否定的な哲学者、思想家は、このような功利主義に対して対抗的な立場を打ち出す。それは、その思想の構成要素それ自体に、上記にような批判を回避するための要素が組み込まれている。だから自身の理論が功利主義に対する批判を回避できるのは自明である。その分、その思想は分厚く、理論的なコミットメントが多くなる。 私は、功利主義が理論的に薄…
AIの知能と目的――ボストロムの『直交仮説』を検討する AIの知能と目的――ボストロムの『直交仮説』を検討する 0. はじめに 1. ボストロムの直交仮説 2. カント主義からの直交仮説への反論ルート 3. 道徳的実在論からの直交仮説への反論ルート 4. 自然科学的知見からの直交仮説への反論ルート 参考文献 0. はじめに AI倫理のテーマとして、われわれ人間はAIを道徳的被行為者とするのだろうか(するべきか)という問題と、われわれはAIを道徳的行為者として道徳的コミュニティの一員にするのか(するべきか)という問題が議論されている。しかし、本論では、それとは微妙に位相の異なる第三の問題を議論す…
読んだ本 小坂井敏晶『格差という虚構』ちくま新書 (2021) 國分功一郎『目的への抵抗』新潮新書 (2023) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 『格差という虚構』を再読。 概ねマイケル・サンデル氏と同じように、能力というものは統計データから大局的に見れば環境や遺伝に起因するので、格差というものはそもそも決定論的に、不動の「ヒエラルキー」のように存在しているという見方であった。(流動性がないこと) 小坂井氏は「能力の差を正当化するために格差という虚構がつくられる」と書いている。 では何のために能力の差を正当化したいのか? 今日はよく分からなか…
読んだ本 アラスデア・マッキンタイア『依存的な理性的動物:ヒトにはなぜ徳が必要か』法政大学出版局 (2018) カント『道徳形而上学の基礎づけ』光文社古典新訳文庫 (2012) つづきを読み進めた。 nainaiteiyan.hatenablog.com ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 『実力も運のうち』を書いたマイケル・サンデルはコミュニタリアニズムの陣営に属する。あと有名どころではチャールズ・テイラーも属する。そしてマッキンタイアもその陣営にいるとされる。 『美徳なき時代』は結局積読になってしまった。ひとまず共通善について考えてみたくな…
世界文学をケアで読み解く 作者:小川 公代 朝日新聞出版 Amazon 『世界文学をケアで読み解く』小川公代著を読む。 これまでケアについて書かれた本が理論編だとすると、この本は展開編、応用編ってとこかな。作者は内外の作品(小説から映画まで)からケアマークを認定してもいい作品を選択。その理由を挙げている。 読んだ本や見た映画もあるし、そうでないものもかなりある。作者のケアという切り口から見ると、そーか、そういうことだったんだと新しい気づきが得られる。 一般的なケアの捉え方は、いわば氷山の一角。海上に浮かんでいる部分。ところが、ケアは見えない海中に沈んでいる部分、その裾野の広いことったら。で、一…
メタ倫理学入門 作者:佐藤岳詩 勁草書房 Amazon 佐藤岳詩『メタ倫理学入門:道徳のそもそもを考える』勁草書房、2017年
読んだ本 加藤尚武『現代倫理学入門』講談社学術文庫 (1997) 仲正昌樹『哲学JAM:現代社会をときほぐす [赤版] 』共和国 (2020) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 日記 「正義は時代によって変わるか」の章を読んだ。 加藤尚武氏によれば、価値判断は本質的には変わらないという。 昔であればタバコは「健康に良い」と思っている人がいたかもしれないが、今はほとんどいないだろう。しかし「健康に悪いものは摂取しないほうがいい」という価値判断は変わっていない。事実(タバコは健康に害である)が変わっただけである。 人間の価値観には非常に多様性があると思う…
功利主義とは、倫理学の規範倫理学の一派であり、行為や政策の正しさを、その行為や政策がもたらした結果によって判断する考え方です。功利主義の基本的な考え方は、**「最大多数の最大幸福」**です。すなわち、できるだけ多くの人に最大の幸福をもたらすことが善であり、その幸福を最大化するために、行為や政策を判断すべきであるとする考え方です。 功利主義の代表的な人物は、19世紀のイギリスの哲学者、ジェレミー・ベンサムです。ベンサムは、功利主義の基本的な考え方を「幸福の量が善の量である」と表現しました。幸福とは、快楽の増大と苦痛の軽減であるとし、その幸福を最大化することが、すべての行為や政策の目的であると考え…
倫理学の命題で、最も有名なものといえばーーー 【トロッコ問題】をあげる人が多いと思います。 トロッコ問題の概要はこちら トロッコ問題 - Wikipedia ①暴走機関車が、今まさに線路上の作業員5人を轢き飛ばそうとしている。 ②あなたはたまたま、線路の切り替えレバーの前に立っている。 ③あなたがレバーを操作し、線路を切り替えれば、5人は助かりそう!! ④ただし、切り替えた先の線路には、1人、線路上で作業している人がいる。 ⑤あなたがレバーを切り替えれば、5人は助かる代わりに、切り替えた先の線路にいる1人は死んでしまうでしょう。 ⑥あなたはどうする? 倫理学や哲学的な諸問題を考えるにあたって、…
こんにちは。冨樫純です。 哲学や倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。 そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。 タイトル 原発事故を未来に伝えるための「観光地化」 2012年10月の28日と29日、福島県南相馬市に行ってきました。 現地でワークショップを開くためです。 ぼくが発行している『思想地図』は、次号で「福島第一原発観光地化計画」という特集を予定しています(のち2013年秋に発売)。 25年後の福島第原発跡地を観光地に変えてしまおうという計画です。 なぜ25年後かというと、チェルノブイリが関わっています。チェルノブイリは1986年に原…
出会いと思い出 愛することは理解すること 理解することは愛すること 認める心 信じる心 支える心 育てよう 健全育成 愛のスコール ようこそ完全愛情物語へ 安寧愛情物語より 愉快愛情物語と共に 貫く愛心愛情物語 愛好愛情物語を込めて 寄り添う愛嬌愛情物語 ときめく恋愛愛情物語 励まし合う愛 崇高な童心愛情物語 満ちる愛想愛情物語 愛の塊=自然笑顔=笑顔満開 夢体系 水産学磨きをする=農芸化学磨きをする=生命科学磨きをする=児童学磨きをする 経済学磨きをする=音楽磨きをする=商学磨きをする=幼稚園課程磨きをする 教育学磨きをする=地理学磨きをする=国際関係学磨きをする=小学校課程磨きをする 業界…
世界は常に戦争や紛争という影を背負ってきた。その影響は社会に大きな傷を残し、人々の心に深い傷跡を刻んできた。そんな中、かつての偉大なる歴史上の人物たちが、戦争の影響を回避する方法について知恵を授けてくれる。キリストや釈迦、アリストテレス、織田信長、そしてレオナルド・ダ・ヴィンチ。彼らが説く言葉には、歴史の教訓と人間の智慧が宿る。戦争や紛争がもたらす悲劇を乗り越え、社会がより平和で調和のとれた場所になるための道筋を示してくれる。悩みを共感し、希望を与える歴史の教え。その導きを信じて、未来への光を見つけることができるのだ。果たして、彼らの教えが社会に及ぼす影響とは何か。その答えがここにある。キリス…
突然倫理学のあいつが、自分の証明写真のキーホルダーを見せてきました。なんだそれ、俺にくれ。 ゼミと中国語はあまり面白くなかった。
「結局、法って何なんですか?」こんな問いが、この前の連続テレビ小説の中で投げかけられていた。法とは何か、これは法学を学ぶものに限らず、誰でも一生かけて考えられるテーマであろう。しかしトマス・アクィナスの『神学大全』の中で、法論を読んでいくと、「私ならこう答えるかな」と言えるようなヒントは見つかった。 まず、人間的行為の第一の根源は理性である。これはアリストテレスの倫理学でも言われていることである。そして法lexは規則、拘束という性質を持っており、規則は第一の根源に属するので、法は理性に属している。そして、人間的活動の究極目的は共同体の共通善なのだから、法は共通善に秩序づけられている。また、法は…
こんにちは。冨樫純です。 哲学や倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。 そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。 タイトル ネットでは見たいものしか見ることができない 日本では、戦後の高度成長期が終わって昭和が終わって冷戦が終 って、うこれ以上新しいことはなにも起きない、みたいな気分が支配的です。 「終わりなき日常」と言われる感覚ですね。 3・11の震災が起きても、その気分は強固に残っている 「この世界はどこもかしこも同じで、新しいことなんかない」 「海外に行くんだったら、アニメのDVDを買って家で見たほうがいい」みたいな感じ。 個人の趣味に…
こんにちは。冨樫純です。 哲学や倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。 そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。 タイトル 旅は「自分」ではなく「検索ワード」を変える ぼくらはいま、ネットで世界中の情報が検索できる、世界中と繋がっていると思っています。 台湾についても、インドについても、検索すればなんでもわかると思っています。 しかし実際には、身体がどういう環境にあるかで、 検索する言葉は変わる。 欲望の状態で検索する言葉は変わり、見えてくる世界が変わる。 裏返して言えば、いくら情報が溢れていても、適切な欲望がないとどうしようもない。 いまの…
記事の内容 私が興味を持っている分野、テーマを紹介します。そして、そのテーマごとに、読書記録をまとめることが狙いです。 つまり、この記事が、私自身の知の歩みのガイドラインとなります。ゆえに、極めて個人的な記録という傾向が強いです。 目次を見て興味がわくテーマがあれば、ぜひそのテーマの紹介記事をご覧ください。誰かの役に立つことを祈ります。 記事の内容 読書しているテーマ 言語と論理 思考法 哲学・思想全般 仏教哲学・瞑想 宗教論 神社・神道 心の哲学 人工知能・認知科学 脳科学・神経科学・意識の科学 心理学全般 進化心理学 身体性、身体知 生物学 進化論 数学読み物 大学数学入門 数理論理学 不…
300年前の今日、イマヌエル・カントは当時の東プロイセン ケーニヒスベルクで生まれました。ドイツでは今日、カントの生誕300年を祝う式典が行われます。哲学思想の金字塔とも言われるカントの代表作「純粋理性批判」など、いくつかは日本の学校でも習ったことがある方が多いのでは? pic.twitter.com/tiranMqngb — ドイツ大使館🇩🇪 (@GermanyinJapan) 2024年4月22日 simmel20.hatenablog.com▼小島准教授の「陽明学的心性」は、マックス・ウェーバー風にいえば、「結果倫理」ではなく「心情倫理」にあたるものであろう。明治になって、この「陽明学的…
こんにちは。冨樫純です。 哲学や倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。 そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。 タイトル 日本にいて「ケーララ」と打ち込む可能性 旅行は世界遺産めぐりです。 デリー、アーグラー、ジャイプルと、世界遺産だらけの三都市を廻りました。 雑踏に塗れることもなく、自分探しもしていません。 リキシャーに乗って町を廻るぐらいはしましたが、娘は牛糞と汚水にれた道を本気で嫌がってました。 子どもはそんなもんです。 休暇旅行ですから、三日に一日はホテルのプールで子どもを遊ばせながら仕事もせずにだらっとしてました。 そういうときは…
二度寝して少し遅めに起床。朝、しばらくメールの返事その他。 近所の某喫茶店でモーニングを食べながら仕事。 お昼ごろに大学へ。某オンライン会議。 昼下がり、某オンライン研究相談。それからさらに某オンライン会議。 夕方、某大学病院にお見舞いに行く。それから某パブで一杯飲みながらメールの返事など。 夜、帰宅して夕食。食後、しばらく某仕事など。 夜中、早めにシャワーを浴びてスイッチなど。勉強しないと。 京都大学文学研究科思想文化学系では、5月11日(土)に大学院入試説明会を開催! 以下のフォームで参加申し込み。https://t.co/vQ9h1XUuQq9時 倫理学専修10時 日本哲学史専修11時 …
こんにちは。冨樫純です。 哲学や倫理学に興味があり、それに関連する本を読んでいます。 そこから、個人的におもしろいと感じたところを引用し、感想を書きたいと思います。 タイトル 行ってみなければわからない 2012年の秋に台湾に行って来ました。 ぼくの本、『動物化するポストモダン』の中国語版が刊行されることになり、向こうの出版社に招かれたのです。 台湾の人は日本好きが多い、というのはよく聞きます。けれども本当はそれほど単純ではありません。 台湾には、台湾人(本省人)と外省人という区別があります。台湾人というのは、日本の植民地時代からずっと台湾に住んでいるひとです。 外省人は、第二次世界大戦後、国…
Hans Jonas さんの名はJean-Pierre Dupuy「ありえないことが現實になるとき ――賢明な破局論にむけて」2002 - .。oO(さっちゃんですよヾ(〃l _ l)ノ゙☆)で「責任という原理: 科学技術文明のための倫理学の試み」の著者と見知ってゐたゐた。東京は目黑の古本屋でこの「グノーシスと古代末期の精神」を見掛けた時、この人はこんな本も書いてゐたのかと思ひ、分厚さと見知った名の譯者に惹かれて購入した。 グノーシス (γνῶσις) は、永らく續けてゐる人類の思想の蒐集の、對象の一つとしてのみ關心を持って來た。しかし一般に輕んじられてしか論じられないこの對象は、知られざる考…
コメント返し 仮面とペルソナ=坂部恵『仮面の解釈学 新装版』 飛び出し坊やと歩んだ50年 人を単純作業から解放した信号機の歴史. 海上信号から現在の信号機まで | 試作.com 見えない人は夢を「見る」か - 考えるメディア 全盲の私が眠った時に見る、夢とは? 近視・遠視・乱視 講義 視覚的(visual)なもののリテラシーとコミュニケーション 「見る」ことと「分かる」こと 部落差別に苦しみ続けた女性 大人になって文字を身に付けて得たこと - 岸慶太 - ライブドアニュース オリヴァー・サックス「『見えて』いても『見えない』」(火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者 (ハヤカワ文庫 NF…
4月22日は哲学者イマヌエル・カント(1724-1804)のお誕生日です。小社の新刊『カントの「噓論文」を読む』(小谷英生著)『カントの「噓論文」を読む』カントの「噓論文」を読む | 白澤社 (hakutakusha.co.jp)はこの日を記念して奥付の発行日をそろえてあります。カント先生、おめでとうございます。 小社刊行物で最初にカントが登場したのは、2000年に刊行した小社の最初の出版物、大越愛子ほか著『フェミニズム的転回』(フェミニズム的転回 | 白澤社 (hakutakusha.co.jp))の第2章「倫理学とジェンダーの視点」(志水紀代子)と第3章「美的判断力の可能性」(持田季未子)…