「自分が射るのではない、"それ"が射る」——ドイツ人哲学者が弓道で掴んだ禅の奥義 「考えるのをやめなさい」 師範・阿波研造のこの一言に、ドイツの哲学者オイゲン・ヘリゲルは何年もの間、答えを見つけられなかった。論理と言語で世界を理解してきた哲学者にとって、「考えずに射れ」という命題は矛盾そのものだったから。 しかしこの問いこそが、『弓と禅』の核心であり、禅という思想の本質でもある。 ヘリゲルはなぜ弓道を選んだのか 1924年、ヘリゲルは東北帝国大学の講師として来日する。目的は哲学を教えることだったが、彼には別の渇望があった——禅を理解したい、という欲求だ。 しかし周囲の日本人からは「禅はキリスト…