<世界の中の日本国憲法>「世界最古」の未改正憲法 人権規定充実 平和主義貫く - 東京新聞(2018年7月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018070102000121.html
https://megalodon.jp/2018-0701-1030-31/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201807/CK2018070102000121.html


一文字も変わることなく七十年以上続いてきた日本国憲法。現存する憲法の中で、一回も改正されたことのない「未改正憲法」としては最も長い歴史を持つという。あらゆる憲法の条文を比較研究しているケネス・盛(もり)・マッケルウェイン東大准教授の研究室を訪ね、詳しく聞いた。 (高山晶一、安藤美由紀)
准教授によると、これまで世界で制定された憲法は九百本弱で、そのうち現存するのは約百九十本。今年で公布から七十二年(施行から七十一年)を迎える日本国憲法は十二番目に古いが、「約四十本ある未改正の現存憲法の中では、日本国憲法は一番古いんです」と准教授。
世界的な傾向として、憲法は時々改正した方が国民意識や政治・経済情勢の変化に対応できて長続きする。改正されないと戦争やクーデター、社会の変化に伴って廃止されやすい。過去の憲法を含め、未改正憲法の存在期間は平均七・二年。その十倍も続いている日本国憲法は、極めて珍しい存在だ。
准教授は、大きな理由として、人権規定の多さを指摘する。
言論の自由」など代表的な二十六項目の人権について、各憲法が定めた数を調べたところ、日本国憲法は十七。現存憲法の平均は一五・八で、それほど変わらないようにも見える。
しかし、日本国憲法以前に制定された憲法二百六十七本の平均は九・八。日本国憲法の人権規定は、制定当時は「とても進歩的」(准教授)だったし、今でも十分世界に通用する水準というわけだ。人権規定が充実していれば、国民は変える気になりにくい。
日本国憲法統治機構の規定が少なく、憲法を変えなくても法改正で対応できることも長寿の一因と、准教授は分析する。
戦力不保持を定めた日本国憲法は「世界一の平和憲法」とも呼ばれる。現存憲法の93・1%は軍隊の存在を明記しており、書いていないのは6・9%=表(2)=で、日本以外は欧州の小国や太平洋の島国など。「日本国憲法は軍の最高司令官や兵役、軍事裁判所も書いていない。全部ない憲法はすごく珍しい」
一方、改憲に必要な議会の承認に関しては、衆参両院の三分の二以上の賛成が必要とする日本国憲法は「一番スタンダード(標準的)」と准教授。自民党はかつて「世界的に見ても改正しにくい憲法」として、「過半数」の賛成に緩和する改憲草案をまとめたが、議会の承認を必要としている現存憲法の75・8%は「三分の二」と定めているという。

<ケネス・盛・マッケルウェイン> 1977年、東京都生まれ。アイルランド国籍。米国のプリンストン大卒、スタンフォード大大学院政治学博士。ミシガン大政治学助教授を経て、2015年から東京大社会科学研究所准教授。専門は比較政治制度、世論分析。16年度東京大卓越研究員。

週のはじめに考える 嘘とへつらう者たちよ - 東京新聞(2018年7月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018070102000169.html
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「バレている嘘(うそ)をぬけぬけと−」「国家の破滅に近づいている」。二人の元首相の嘆き節です。嘘とへつらいに満ちた権力周辺にはうんざりです。
NHKの大河ドラマ西郷どん」はまだ幕末です。西郷隆盛明治維新の後、一八七七(明治十)年に西南戦争を起こし、鹿児島で自刃しました。その頃「西郷星が見える」という評判が起こります。赤い火星のことでした。
望遠鏡でのぞくと、西郷が陸軍大将の姿で見えると新聞で報じられたりしました。今風に言えば、罪のないフェイク(嘘)・ニュースでしょう。もう一つのフェイク・ニュースがありました。

西郷隆盛は生きている
西郷隆盛は死んでおらず、シベリアに渡って、ロシア兵の訓練をしている」という流言です。九一年にはロシア皇太子・ニコライが来日予定で、西郷が一緒に帰国するとも。虚か実か、不明なまま各地に伝わりました。
さて、今の日本でも虚か実かの問題が覆っています。いや嘘がまかり通っています。森友学園加計学園の問題です。あえて疑惑と書きます。政府側が嘘をつき、国会や国民を欺いたからです。
森友学園では国有地の取得で約八億円もの値引きがされました。国会でさんざん追及されました。そのたびに当時の理財局長が「森友学園との交渉記録はない」「総理夫人の話はなかった」などと答弁をしました。真っ赤な嘘でした。
決裁文書が何と約三百カ所も改ざんされていました。交渉記録などもありました。その結果、二十人の職員が処分されました。
嘘はもっと深い所にあるかもしれません。例えば財務省記録の中に二〇一五年十一月に首相夫人の安倍昭恵氏付きの公務員が、財務省側と電話した記録です。

◆「首相も議員も辞める」
昭恵氏は子どもが教育勅語を暗唱していることに「感動した」とありました。名誉校長にも就きました。土地の値引きに、どんな力学が働いたのか。安倍晋三首相は「私や妻は土地の払い下げに関与していない」と言います。
なら、なぜ財務省文書は改ざんされたのでしょう。「わからない」。これが麻生太郎財務相の答えです。嘘でしょう? 安倍首相は「私や妻が関係していたなら首相も国会議員も辞める」と述べています。これが契機かと問えば、麻生氏は否定します。本当ですか? 嘘ではないの?
加計学園の疑惑では、愛媛県から決定的な資料が出ました。一五年四月に首相官邸で当時の首相秘書官と愛媛県などの担当者が面会した際の備忘録です。「本件は首相案件となっており」と明記された文書です。中身は一口で言えば、加計学園へのサポートです。実際にその通りに国家戦略特区での獣医学部開設が実現しました。
愛媛文書は安倍首相と加計学園理事長との会食で獣医学部の新設が話題になったと記しています。首相が「いいね」と語ったとも。
でも、安倍首相が学部開設を知ったのは「一七年一月二十日」と国会答弁しています。どちらかが嘘をついている−。そんな状況の中、加計学園幹部が「県への説明は嘘だった」と謝罪しました。そして、加計孝太郎理事長も突然、記者会見をして追認しました。それにしても県に対し嘘とは。
虚偽で自分の名前を使われ、安倍首相は怒りを感じないのでしょうか。しかも嘘によって税金を獲得したとも言えるのです。でも、六月二十七日の党首討論で首相はそれを聞かれて「あずかり知らない」と答えるのみでした。税の行方なのに。
さて、西郷隆盛の話に戻ります。ロシア皇太子の来日の際、滋賀県大津事件が起きました。巡査の津田三蔵がニコライをサーベルで切り付けたのです。動機は何か。ロシアの強硬姿勢への不満とされますが、異説もあります。作家吉村昭の「ニコライ遭難」にこう記述されています。
「西郷モ共ニ帰ル由。西郷ガ帰レバ、我々ガ貰(もら)ツタル勲等モ剥奪(はくだつ)サルベシ。困ツタコトダ(調書)」

◆明治の国難は嘘から
ニコライ来日前に親類宅で語った言葉です。津田は西南戦争で戦い勲章を受けました。西郷生存説という嘘を信じ、勲章の剥奪を恐れたのでしょうか。
強国ロシアの報復が予想されました。嘘が明治の国難を生んだのです。現在の二つの疑惑でも、嘘は必ず民心を腐らせ国難となるはずです。冒頭の「バレている嘘をぬけぬけと」は小泉純一郎元首相が週刊朝日に、「国家の破滅に近づいている」は福田康夫元首相が共同通信に語った言葉です。
権力にへつらう者たちが見ざる・聞かざる・言わざるでいる限り、国は滅びの道です。

(放送芸能)戦争の悲惨さ、日常の大切さ TBSドラマ「この世界の片隅に」 ヒロインすず役・松本穂香 - 東京新聞(2018年6月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2018063002000188.html
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戦時下の広島県を舞台にしたTBSドラマ「この世界の片隅に」(日曜午後九時)が七月十五日から放送される。ヒロインすず役を演じるのは、NHK連続テレビ小説ひよっこ」(二〇一七年)で注目された女優松本穂香(ほのか)(21)。「苦しいときでも明るく生きる、すずを通して元気を与えたい」と語る。 (砂上麻子)
「この世界−」は、漫画家こうの史代の同名漫画が原作で、二〇一六年公開のアニメ映画が大ヒットした。軍港を臨む広島・呉に嫁いだヒロインすずや家族の日常を通して、かけがえのない日々を描く。
松本はオーディションで三千人の中から選ばれた。すず役に決まった時は「ヒロインのタイプではないと思っていたので、うれしいというより正直、ポカーンとして、信じられなかった」と振り返る。
あらためて原作を読み返した。「戦時中というと、別世界のような感じがしていましたが、日常の大切さが描かれていて時代を感じさせない。すずさんのように明るく前向きに精いっぱい楽しんで頑張りたい」と意気込む。
作品の舞台となった呉市広島市を訪ね、原爆ドームで戦争の悲惨さを痛感したという。「(夫役の)松坂桃李さんも言ってましたが、私たちが忘れないことが大事なんだと思います」
脚本は「ひよっこ」の岡田恵和(よしかず)が手がける。岡田からは「また一緒に頑張ろうな」と声をかけてもらい、心強かったという。「『ひよっこ』で澄子というステキな役をもらった。一つの役を長期間演じたことは初めてで、女優として大きな経験になった」
ゴールデンタイム(午後七〜十時)のドラマのヒロインは、これまでとは違うプレッシャーもある。「電車に乗っていても、周りの人がドラマを見てくれるかなと考えるようになった」と意識の変化を語る。「先輩の女優さんもこういう経験を乗り越えてきたのだと思うので、頑張ろうと思います」とたくましさをのぞかせた。

(書評)最終獄中通信 大道寺将司 著 - 東京新聞(2018年7月1日)

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https://megalodon.jp/2018-0701-1034-40/www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018070102000192.html

◆自責と人々の憤怒を句に
[評者]福島泰樹歌人
著者大道寺将司は、三菱重工爆破事件(一九七四年八月)を起こした「東アジア反日武装戦線<狼(おおかみ)>」の実行犯として逮捕され、一九八七年三月、死刑が確定された。
以後は家族、弁護人を除く一切の交流が遮断され、死刑執行のためにのみ生かされ拘禁される。氏の声を獄外に伝え、友人たちの声を獄内に届けるために交流誌「キタコブシ」の発信が開始されたのは、一九八七年五月。以後、母(死後は、妹)に宛てた私信は、著者が多発性骨髄腫のため東京拘置所で死去する二〇一七年五月まで、三十年にわたり発信し続けられる。
本書には、先に刊行された『死刑確定中』以後二十年の内省が、深い歴史的視野をもって、書き誌(しる)されている。その行間に滲(にじ)み出るものは、政治犯大道寺将司の息苦しいほどの誠実である。自ら殺(あや)めてしまった人々への、償いきれない思いは、俳句となって言葉を得た。

<棺一基四顧茫々(かんいつきしこぼうぼう)と霞(かす)みけり>。窓のない独房もまた「棺一基」、自らの寝姿にほかならない。この壮絶な自己断罪、昼夜に襲い来る脈動の責め苦が、この絶唱を生むに至ったのである。 

<蒼氓(そうぼう)の枯れて国家の屹立(きつりつ)す>。人民が批判力を喪(うしな)うと国家が力を増す。いまの国会を見よ。<胸底は海のとどろやあらえみし>。東北地方を襲った大震災詠である。実に、律令制以来千数百年の歴史を俯瞰(ふかん)、一句という思想に収斂(しゅうれん)する力技をやってのけたのである。幾時代幾億の底ごもる人々の憤怒が、言霊となって氏の体を貫く。
そう、実人生のすべてといってよい四十二年間を氏は獄中にあって、常に虐げられている人々の側に身を置き、言葉によって世界の非理非道に立ち向かい、言葉を研ぎ続けることによって、死刑囚として戦い続けたのである。
「国家が法に基づいて人を殺すことは、国家の構成員たる一人ひとりが死刑囚の首を少しずつノコギリで引いてゆくことだ」。終わることない戦争や災害に心を痛めつつ、極度に制限された情報の中から、こう言い遺(のこ)した。

河出書房新社・2052円)

1948〜2017年。連続企業爆破事件の死刑囚として東京拘置所で死去。

最終獄中通信

最終獄中通信

◆もう1冊
大道寺将司著『棺一基 大道寺将司全句集』(太田出版

(書評)経済学者たちの日米開戦 秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く 牧野邦昭 著 - 東京新聞(2018年7月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2018070102000195.html
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◆回避の可能性はあったか
[評者]根井雅弘(京都大教授)
副題にある「秋丸機関」とは、昭和十五年一月末、陸軍省の主計中佐だった秋丸次朗を中心に設立された「陸軍省戦争経済研究班」の通称である。旧満州国関東軍参謀部付として経済建設の仕事を経験していた秋丸は、軍の内命を受け「陸軍版満鉄調査部」のような機関をつくることを構想した。日米の経済戦力を測定し、その優劣を比較検討することが緊急の課題だった。秋丸がいまだ思想問題で係争中だった統計学者でマルクス経済学者の有沢広巳に声をかけたのはそのためである。
ほかにも理論経済学者の中山伊知郎慶應義塾大学の教授をつとめながら現役の陸軍主計将校として活動した武村忠雄など、錚々(そうそう)たるメンバーがそろった。
問題は、十六年七月に作成された秋丸機関のすべての報告書の所在が、はじめはよくわかっていなかったことである。そのすべてを特定し、綿密な資料解読によって報告書の実像を詳細に明らかにしたのは著者の功績である。
報告書の内容は、せんじ詰めれば、日米の国力には圧倒的な格差があり、アメリカと戦争して有利な条件で講和が結べるとすれば、南方の資源を確保するとともにインド洋方面に進出してイギリスと植民地との連絡を絶ってイギリスを弱体化させるほかない、という「極秘」というよりはむしろ当時の「常識」とほとんど変わらないものだった。
だが著者は、秋丸機関の置かれた状況を考えると、日米の経済格差を指摘するのみではなく、日米開戦を回避できるような「ポジティブなプラン」を作り上げることも可能だったのではないか、と想像力をふくらませるのである。
希望的観測にすぎないという批判もあるだろうが、経済や統計ばかりでなく、国際政治や戦略的思考にも通じた多くの学者や官僚を集めた秋丸機関の記録を、詳細に検討した著者の言葉として注目したい。
膨大な文献の解読、それを再構成し、歴史や経済を多方面から検討する柔軟さ、どれをとっても一流の研究者の作品である。

(新潮選書・1404円)

1977年生まれ。摂南大准教授。著書『戦時下の経済学者』など。

経済学者たちの日米開戦:秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く (新潮選書)

経済学者たちの日米開戦:秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く (新潮選書)

◆もう1冊
加藤陽子著『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫

(書く人)民間人攻撃の起点に 『沖縄からの本土爆撃 米軍出撃基地の誕生』 関東学院大教授・林博史さん(63) - 東京新聞(2018年7月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/kakuhito/list/CK2018070102000191.html
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第二次世界大戦末期の沖縄戦で、米軍は壮絶な攻防の傍ら沖縄本島の各地に飛行場を建設し、日本本土を猛爆撃した。本土空襲といえば、サイパンやグアムから飛来した爆撃機B29のじゅうたん爆撃か、空母艦載機の機銃掃射というイメージが強い陰で、見過ごされてきた無差別攻撃。その加害実態を本書が明らかにしている。
沖縄から本土への爆撃は当初、沖縄の攻略に邪魔な日本軍機の排除が主な目的だった。しかしやがて、次の段階である南九州進攻の地ならしへ性格を変えたという。本書ではそれを「テロ、重大な戦争犯罪」と厳しく断じた。「目標は早い段階から軍事施設に限定されず、九州の民間人に恐怖を与え、精神的に屈服させる、まさに無差別の要素が加わっていきました。明らかに民家と分かる建物や馬車まで襲っていますから」
基地は戦後も残り、沖縄には今なお在日米軍専用施設の七割が集中する。この問題を考えるなら、基地がどう造られ、使われたかを知る必要がある−そんな思いから、本書の執筆に当たっては米国立公文書館が所蔵する戦闘報告書をはじめ、膨大な史料を分析した。
政府が普天間飛行場辺野古移設を強行する中、基地問題を考える材料を一日も早く提供するために、調査の開始から一年で書き上げた。探り当てた事実を、出典を明示しつつ淡々と紹介する構成が、爆撃のむごさを際立たせている。
専門は現代史で、戦争や平和に関する諸問題を追い続ける。原点は中学生の時。本土復帰前の沖縄を家族で旅した。芝生が美しい米軍基地内と、どろんこのフェンス外との落差。火炎放射の焼け跡。そして飲み物を買った店の女性が料金を「十セント」と言ったときの衝撃を心に刻み、以来、関心を寄せてきた。
その沖縄を足がかりに、米軍は戦後も朝鮮半島ベトナム、中東と、世界へ展開し続ける。「沖縄から飛んでいって攻撃する、その最初のターゲットが日本人でした。それを日本は『戦争だったから』で処理してしまい、米国も無差別爆撃の反省がないまま今も空から爆弾を落としている」
歴史を振り返り問題点を考えることが、より良い社会づくりにつながると信じる。「反省なき者は同じ過ちを繰り返す。忘れることが未来志向だなんて、あり得ません」
吉川弘文館・一九四四円。 (谷村卓哉)

<金口木舌>19年前とは様変わりしていた。・・・ - 琉球新報(2018年7月1日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-750101.html
http://archive.today/2018.07.01-014926/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-750101.html

19年前とは様変わりしていた。宮森小ジェット機墜落事故を取り巻く状況だ。1999年、石川支局長として、遺族らに取材をしたが話を聞けた人はわずかだった。事故から40年を経ても、町全体が口をつぐんでいる印象を受けた
▼上間義盛さん(75)がこの事故で末弟を亡くした経緯を知ったのは、2010年になってからだ。遺族らが語りだし、初めての証言集が発行されたのもこの年だ。事故を語ることができるまで、長い時間を要した
▼加えて99年当時が米軍普天間飛行場の名護市移設計画の浮上時期だったことも無関係ではないだろう。移設への賛否で世論は割れていた。基地を話題にしにくい雰囲気は確かにあった
▼久しぶりに宮森小墜落事故の取材に関わった。遺族らの「基地はなくならないといけない」「沖縄県民が本当に一緒になって反対するのはいつなのか」という言葉に時代の流れを感じた
▼政府は新基地建設を強引に進めるが、新たな基地はいらないというのが大多数の県民の思いだ。米軍による事件や事故が後を絶たないことを理由に、新たな基地建設に反対してきた県民もいる
▼6月23日に行われた沖縄全戦没者追悼式。浦添市立港川中学3年の相良倫子さんは平和の詩の朗読でこう訴えた。「戦力という愚かな力を持つことで、得られる平和など、本当は無いことを」。遺族らの言葉と重なる。

(余録)ドイツ若手哲学者の「なぜ世界は存在しないのか」という本が… - 毎日新聞(2018年7月1日)

https://mainichi.jp/articles/20180701/ddm/001/070/164000c
http://archive.today/2018.07.01-013837/https://mainichi.jp/articles/20180701/ddm/001/070/164000c

ドイツ若手哲学者の「なぜ世界は存在しないのか」(講談社選書メチエ)という本が売れている。驚くことは書かれていない。多様なものの見え方やあり方そのものが実在し、その全てを包み込む世界と呼ばれるような意味が存在するのではないと説く。
思えば科学や経済学は、誰も知らないはずの全体があると想定し、数字と論理で空白を埋める営みだ。それではうまくいかないと皆が疑う今、不安に答えようとした哲学が読者を引き付けるのか。
セカイ系」という造語がある。超能力少女や巨大ロボットが、セカイの存亡を懸けて戦うアニメやゲーム、音楽などのサブカルチャーを指す。バンド「SEKAI NO OWARI」や映画「君の名は。」などが人気だ。
社会や歴史の文脈を飛ばして一気にセカイへ結びつける歌や物語は幻想的だが、科学的な思考の外枠だけをまとう。それを楽しむのも現代社会の感性である。
世界は存在しないと言われても、不安は薄らぐどころか増すばかりだろう。サッカーに沸くロシアをはじめ各国に強権指導者が台頭し、民衆の支持で在任期間は長引く一方だ。いずれも自国第一主義を掲げ、路線を巡って各国内に敵か味方かの分断が生じている。それは国境を越え、世界の分断へつながる。
全体がなければ分断もない。分断の政治は、世界や国家が実在するという楽観を前提にしている。敵と味方がそれぞれ民衆の支持を取り付け合う時代、分断を解く力は民主主義に備わっているだろうか。

先生忙しすぎ、解決策は?「仕組みだけで満足しないで」 - 朝日新聞(2018年7月1日)

https://www.asahi.com/articles/ASL6V4R9DL6VUTIL020.html
http://archive.today/2018.07.01-014143/https://www.asahi.com/articles/ASL6V4R9DL6VUTIL020.html

教育現場で深刻化する先生の働き方の問題について、現場の教員の話などを通して、これまで3回にわたり、みなさんと一緒に考えてきました。最終回は、激務の教員だった夫を亡くした妻の訴えや先進的な対策などを紹介し、問題解決の方向性を探ります。
改善の検証 国が踏み込んで 神奈川過労死等を考える家族の会・工藤祥子代表
11年前の6月、中学教員だった当時40歳の夫を亡くしました。くも膜下出血でした。夫は子どもと接することが大好きで、教え子にも、とても好かれていたようです。
勤務先では生徒指導専任として子どもの対応や地元警察などとの関係作り、体育の授業に修学旅行の引率、会議の資料作成にサッカー部の指導と、本当にたくさんの仕事を抱えていました。夫の死後、倒れる前に担当していた仕事内容を調べて表を作った時、その量に驚き「これは1人でする仕事量じゃない」と思いました。5年かかって、公務員の労災にあたる公務災害が認定されましたが、倒れる1カ月前の時間外労働の半分以上は認定外になりました。
夫が亡くなった11年前に比べて、教員の働き方改革の議論が高まってきたと感じます。国は勤務時間管理を各自治体に促したり、教員の仕事を仕分けして外部人材を導入したりと、対策をとろうとする姿勢は評価できます。
ただ、外部人材を雇う場合、適切な人材をどんな方法で雇用し、その指導は誰がするのか、というところまで国が具体的に示し、実際にケアをしなければ、結局その仕事も現場の教員任せになりかねません。
また、働き方改革の仕組みを作ったことに満足せず、それによって学校現場では実際に改善が進んでいるのかという具体的な検証や、時間管理などができていない場合のペナルティーはどうするかまで踏み込むべきです。
現場で改善の動きが浸透するには時間がかかります。研修などで働き方改革の仕組みを説明したり、全国的な教員の残業時間を調査して結果をフィードバックしたりと、教員が改善を自覚できるようにすることも大切です。子どもの数は減っていても、英語やプログラミング導入など仕事は増えています。教員の人数を増やすなど、働き方改善も含めた教育分野へ予算をかけるように、変えなければならないと思います。(聞き手・円山史)
8月に16日連続学校閉庁へ 岐阜市教育委員会 早川三根夫教育長
児童・生徒の成長という仕事のやりがいが、生きがいにもなり、教員は際限なく努力してしまいがちです。勤務時間はセブンイレブン(午前7時〜午後11時)と言われるほどですが、やりがいに裏付けられた大変さであり、時間管理の意識が希薄なのが現状でした。
しかし、それも「過労死ライン」を超えて働く教員が増え、放置できない状況になり、市教育委員会として16項目にわたる「教職員サポートプラン」を2月にまとめました。その一つが、小中学校の夏休みにおける16日間連続の学校閉庁日です。
8月4日から19日まで日直を置かず、会議や補習、研究、部活など通常業務を行わない期間とします。教員は必ず休まなければならないのではなく、自主研修の時間に使ってもらっても結構ですし、自由に過ごせる時間という位置付けです。2年ほど前からこの期間に市や県の会議や研修を無くしていたので、環境も整っていました。教員の大変さばかりが強調される中、新たな仕事の魅力として発信できればと思います。
PTAや地域の方の協力もあって、市民から「16連休」の趣旨は理解してもらっています。ただ、その間の郵便物の受け取りやウサギの餌やり、放課後児童教室の利用など課題も出ました。教委として想定しうることは事前にまとめ、学校に対応をお願いしています。また、部活動も8月の全国大会に出場する学校を除き原則休みにします。緊急時の電話対応などは教委が窓口になって反射神経よく対応します。
というものの、初めてのことですので、想定外のことが起きるかもしれません。一体、どんなことが困ったのか、教員がどれぐらい休めたかなど取り組みを振り返り、全国に発信したいと考えています。
今後、学校閉庁日は全国的に増える流れです。次々起こる新たな課題に対して、いち早く動き、教育の質を維持しながら、ルールを作る側になる意気込みで対策を進めていきたいと思います。(聞き手・峯俊一平)


人員減反対・教科担任制に
アンケートに寄せられた声の一部を紹介します。

      ◇

●「土日も休みなく勤務し、飲み会があれば、半強制的に参加。参加しなければ、気持ちがないと説教する先輩たち。平日も夜遅くまで仕事して、家庭での時間もあまり取れず、かと言って、早めに帰ると教材研究が十分に出来ず評価に響く。これじゃあプライベート潰して仕事しろと言われているようで。せめて残業代は正しく支給しようよと思います。残業しても残業代もなく」(学校の先生 沖縄県・30代男性)

●「自分より学校を優先するのが教員の美徳だと思っている教員が多い。が、そんな教員は人間としての魅力が全くない。生徒たちもそれは感じとっている。特に退職してもまだ教員をやりたがる再任用の教員はそれしか能がないので嫌われる」(学校の先生 茨城県・40代女性)

●「教師が多忙だと、子供の変化に気づくことができず、困っている子供に対しても敏感になることができない。貧困家庭の子供に対して学校も巻き込んだ支援を行うには、働き方改革が必要だと感じる」(児童、生徒 東京都・10代女性)

●「少子化だからと先生の定数を減らそうとする国の方針には反対。先進国の多くは学級規模が十数人〜30人程度。日本は40人上限。先生が個別対応に追われると授業の準備に時間が割けず子どもの学力が下がる。先生が職場だけでなく私的に様々な活動をできたら人としての深みを増すことができ、子どもにとってもよい影響をもたらすだろう」(保護者 千葉県・40代女性)

●「私は教育学科の大学生ですが、教員の働き方(特に超過勤務)は大きな課題となっていることが授業でも挙げられています。卒業後は教員になるつもりですが、教員の働き方については不安が残ります」(大学生、大学院生 兵庫県・20代女性)

●「教育委員会と校長が、本来、学校教員の職務でないにもかかわらず、これまでの慣例として教員が担ってきたことを、バッサリと切ってしまう英断が必要。特に服務監督権をもつ教育委員会は、各校のPTA、保護者、地域に対して、現状の課題と改善の必要性を、教育行政の責任として訴え理解を求めなければならない。学校任せにしていては、責任の放棄である」(学校の先生 京都府・50代男性)

●「先生の仕事にはキリがない。子どものことを考えるといくらでもやりたいことは浮かんでくる。しかし、勤務時間内には到底終わるはずがない。小学校も教科担任制にしていくべきだ」(学校の先生 奈良県・50代女性)

●「小学校の教員です。子供が好きでこの世界に飛び込み、よかれと思うことを精いっぱいやってきた。我が子が、『教員になりたい』と言い出した時、正直、賛成できない残念な自分がいた。学校に対する期待、教員の責任等々、多くのことを学校で請け負うのならば、教職員を増やして、学校を『子育て』の中心にすればいい。子供の親も忙しく、子育ての覚悟もなく国全体・企業全体がブラックなのだから、中途半端な働き方改革も勤務時間削減も、外部委託もする必要はない。学校教育に予算をまわし、優秀な人材を集め、がっちり学校教育を進めたほうが、合理的ではないかと……」(学校の先生 福島県・40代男性)

●「最近先生方が疲れているなと思う。やはり先生方の仕事の多さがつながっているのだろう。私の両親も教師だが、休みの日も学校に行き、仕事をしている日々だ。また、帰宅も遅く、自宅でもパソコン片手にいつも仕事。一緒に買い物に行ったり、遊んだりなんて当然出来はしない。学校の先生方はよく相談に乗ってくださったり、分からないことを放課後まで教えてくださったり……そんな先生が私は大好きだ。そのため、生徒たちの中で先生を少しでも楽にさせたいという考えが広まり、終礼を早く始めたり、注意をさせないように自分たちで呼びかけたりするようになった。悪いことではないと思うが社会全体が何か政策を作ることは出来ないのだろうか」(児童、生徒 福岡県・10代女性)

●「質のいい先生、悪い先生がいて、先生がまとまらないから子供へ目が向くことに落ち度がある。先生の教育から指導するべきだ! どの仕事も人材不足の中大変なのは教員だけではない。向き合わないで問題があっても見て見ぬふりをしている教員が増えている」(保護者 群馬県・30代女性)

まずは授業以外の仕事仕分けから
学校現場の多忙を解消するには「教職員定数を増やすことが最も効果的」と関係者は口をそろえます。しかし、少子化や財政事情が厳しい中、実現へのハードルは高い状況です。そこで、文部科学省は「今できること」から手を付けています。

まずは学校や教員が担ってきた授業以外の仕事の仕分けです。「登下校の見守り」や「給食費などの徴収や管理」は自治体や教育委員会、ボランティアが、「校内清掃」や「休み時間の子どもへの対応」は教員以外がそれぞれ担うことも検討する。「進路指導」や「学習評価と成績処理」の一部は事務職員や外部人材が担う方がいい、という具合です。

文科省はこの仕分けをベースにして、先生の仕事の範囲を示す「モデル案」を作る予定で、各教育委員会が学校運営のあり方を定める「学校管理規則」に反映してもらいます。また、タイムカードなどを使った勤務時間の管理の徹底や夏休みなどに教職員が一斉に休む「学校閉庁日」の設定なども各教委に促しています。

先生の働き方改革を巡っては、文科相の諮問機関である中央教育審議会で議論が続いています。今後は管理職も含めて負担を減らす学校の組織や、残業の抑制に向けた勤務時間に関する制度のあり方について方向性を示す予定です。(峯俊一平)

木村草太の憲法の新手(83)虐待 親制裁だけでは解決せず - 沖縄タイムズ(2018年7月1日)


http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/275786
https://megalodon.jp/2018-0701-1042-05/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/275786

目黒の幼児虐待死が報じられてから、(1)警察との情報共有(2)一時保護、親権停止−など親子切り離しの拡充が議論されている。前回に続けて、掘り下げてみたい。
まず(1)について。以前に虐待があった家庭など、虐待リスクが高いにもかかわらず、不自然に安否確認を拒否する場合など、強制的な措置や、警察との協力が必要なケースがあるのは確かだ(もちろん、強制的な措置をとるなら、裁判所による令状をセットにせねばならない)。ただ、「虐待が疑われる全事案」や「通報があった場合」について警察と全件共有すべきかについては、慎重に考えるべきだ。
警察は基本的には犯罪捜査機関であり、警察の介入は、「犯罪者だ」との嫌疑を社会に表示することになる。不用意に警察が介入すれば、親が地域社会や雇用の場で偏見の目にさらされ、かえって養育環境が悪化する危険もある。また、「児童相談所に通報すると、即座に警察にも伝わる」という前提では、今でもしづらい通報を、さらに躊躇(ちゅうちょ)してしまうことにならないだろうか。
21日、東京都で全庁横断の会議が開催され、情報共有の拡大が議論されたが、そこでも「通報全共有」ではなく、安否確認ができない場合と、虐待が確認されたケースの情報共有が必要と議論されている。
次に(2)について。親子の切り離しは、「体罰教員を学校から追い出せ」との主張ほど単純な話ではない。
まず、親子を切り離そうにも、子どもを保護する施設が足りない。入所できても、複雑な事情を抱えた子どもが集団で生活するため過度に厳しい規律を課しており、子どもにとって心休まる場所とは言えないケースが多々あるという。個室を用意し、一人一人のケアを丁寧に行えるだけの物的・人的援助が必要だろう。
さらに、教育が家庭の経済力に過剰に依存している現状では、家庭からの切り離しは、教育へのアクセスに大きな障害をもたらす可能性がある。例えば、里親や児童養護施設で社会的養護を受けた子たちに、大学進学への十分な機会が与えられるだろうか。虐待は必ずしも貧困家庭だけのものではなく、元の家庭の方が経済的に恵まれていることもある。このような状況で、親子の切り離し拡大だけを進めても、子の最善の利益は実現できない。
私はこの頃、ひどく気にかかっていることがある。虐待を受けた子どもが、自らの親を非難するのは当然だ。しかし、他人が虐待親を非難し、刑罰を科し、子どもから切り離したとして、子どもが救われるのだろうか。
厚生労働省の把握した「虐待死」の3分の1程度は、「心中」の事案だ。心中は、社会保障がうまく機能しないときに起きることが多い。2014年、銚子市で、生活保護が受給できず、公営住宅からの強制立ち退きを迫られた母が、中学生の娘を殺してしまう事件が起きた。
親を虐待に追い込んでいるのは、子どもを育てるのに十分な金銭的、時間的、精神的な余裕を与えない社会だ。親への制裁だけでなく、子どものための社会保障充実にも、ぜひ目を向けてほしい。(首都大学東京教授、憲法学者

働き方改革法成立 労働者置き去りの悪法だ - 琉球新報(2018年7月1日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-750099.html
http://archive.today/2018.07.01-014546/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-750099.html

この法律が掲げる「働き方改革」とは誰のための改革なのか。政府は今国会の最重要課題と位置付けた働き方改革関連法案を成立させた。
法案の目的は残業抑制や過労死防止だったはずだ。しかし過労死や残業代ゼロにつながる高度プロフェッショナル制度高プロ)の創設が盛り込まれている。労働者保護よりも使用者の企業を優先した法律と言わざるを得ない。
同法は時間外労働(残業)に初の罰則付き上限規制を設け、非正規労働者の待遇を改善する「同一労働同一賃金」など、働く人の保護策も盛り込んだ。残業上限では特別な事情がある場合は例外的に年720時間まで認めるが、単月ではどれだけ長くても100時間未満、複数月の平均で80時間以内とする上限を付けた。
しかし月100時間という水準は労災事案で働き過ぎと脳・心臓疾患との因果関係が認められる「過労死ライン」ぎりぎりだ。これで本当に働く人の命を守れるのか。
同一労働同一賃金」についても、正社員の処遇を下げて非正規と同じにすることにつながる懸念も指摘されている。
高プロは2014年、経済界代表らが参加する産業競争力会議で打ち出された。対象を年収1075万円以上の研究職などに限り、年104日の休日取得を義務付ける措置も設けたと政府は強調する。
類似制度があった。2006年、労働時間規制の適用を除外する「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入を求める計画を小泉純一郎政権が閣議決定した。この時に対象とされたのは「管理監督者の一歩手前」の年収800万〜900万円のホワイトカラー労働者だった。しかしサラリーマン層の反発が強く、07年の第1次安倍晋三政権時に導入を見送っている。
今回、年収を引き上げ、名称を変えた上で制度創設を実現させた。政府は「働く人のニーズがある」と説明するが、その根拠となった当事者への意見聴取の大半は法案提出目前に実施されていた。
人数もわずか12人で、9人は今年1月31日と2月1日に聞き取りをした。加藤勝信厚生労働相参院予算委員会で野党から「働く側の要請があるのか」と聞かれた当日と翌日だ。つまり法案の骨格をつくる作業では、当事者の意見をほとんど聞かなかったことになる。これで「働く人のニーズがある」と主張できるのか。あきれるほかない。
政府は当初、一定時間を働いたとみなす「裁量労働制」の適用業種拡大も含めていた。深夜や休日の勤務以外は割り増し賃金を払わない制度だ。厚労省の不適切なデータが見つかり、断念した。
安倍首相は成立後に「今後も働く人々の目線に立ち」と述べたが、実際は企業の目線に立っている。労働者を置き去りにした悪法は見直す必要がある。