小さな引き出しには、預かった鍵が二つ入っていた。 8月のカレンダーには、猫の名が三匹、家主が留守にしている日付のところに記されていた。そのうち二匹は同じ屋根の下で暮らす。留守の家主に代わって、ご飯の用意をするのは私の役目だ。 友人宅の猫の世話の話をすると、彼は”うちも頼もうかな”と冗談半分で言う。”いいですよ”と答えた私に、彼はスマホに収められている猫の写真を見せてくれた。この猫の写真は、つい最近も見せてもらった気がする。 預かった鍵で玄関を開けると、彼の匂いがした。家主は留守だが、”お邪魔します”と声を掛けた。いつもなら続けて彼の名を呼ぶが、今日はしない。私を待ち構えて出迎えてくれる彼は、も…