秘めた恋心 私の故郷の町では、毎年七夕祭りが盛大に行われます。商店街には色とりどりの吹き流しが飾られ、家々の軒先には、願い事を書いた短冊が結ばれた笹が飾られるのです。その町に、美咲という少女がおりました。手先が器用で、折り紙や切り絵で美しい笹飾りを作るのが得意な、物静かな娘でした。彼女には、健太という幼馴染がいました。明るく快活な健太は、いつも美咲を気遣ってくれる優しい少年。美咲が淡い恋心を抱くのは、ごく自然なことでした。毎年、七夕が近づくと、二人は一緒に笹飾りを作るのが恒例でした。美咲が作った飾りを、健太が背伸びをしながら高い枝に結びつけてくれる。その時間が、美咲にとっては一年で一番幸せな時…