いなくなったその日、世界はまるで、何も変わらないように動いていた。 バスは時間通りに走っていて、カフェには笑い声が溢れていて、空は少し青すぎるくらいに澄んでいた。 …なのに、自分の中だけ、すべてが止まっていた。 家族を失うというのは、その人が“この世から消える”ことじゃない。 自分の中の「当たり前」が、すべて壊れることだった。 朝、起きてもLINEは来ない。 仕事帰りに電話をかける相手もいない。 ご飯を食べながら「これ、あの人も好きだったな」とふと思う。 思い出すたびに、胸の奥がギュッと締めつけられる。 無理に笑ったあとで、ひとりの帰り道に涙が出る。 誰にも言えずに、ただ、時間だけが過ぎていく…