南九州が梅雨入りしたという報道を耳にした日、庭の紫陽花がふくらみ始めた。葉の間からそっと顔を出す蕾。その姿に、鹿児島で過ごした子どもの頃の梅雨、「ながし」や「さだっ」という言葉の記憶がよみがえる――。季節のはざまで、静かにめぐる命の時間について綴ってみたい。 紫陽花の蕾が教えてくれること 庭の紫陽花が、ようやく小さな蕾を見せ始めた。まだ黄緑色で、粒のような花芽が固く閉じている。まわりには綿毛のような柔らかな毛がふわりとついていて、まるで梅雨入り前の空気を感じ取っているかのようだ。春から夏へと移るほんの短い時間。その境目に咲くこの小さな命の営みが、毎年のように季節の移ろいを教えてくれる。 「なが…