ほぼ半世紀前に書かれた小説が、いま静かな人気になっていると知り、「青い壺」(有吉佐和子、文春文庫)を手にしました。 無名の陶芸家が焼いた、美しい青磁の壺。売られ、贈られ、盗まれ、京都の露天の骨董市に並び、果てはスペインに渡り。転々とする青い壺と関わる人たちを描いた13話の小説です。 多くが、戦争を体験した世代の話。またそんな社会背景が舞台であっても、古びた感がありません。喜怒哀楽の人間模様は、時代と関係がないから。いまとなってはむしろ、薄く歴史のベールに飾られて、作品に面白さを加えている気がします。出来のいい壺が、時を経るほど味わいを増すのに似ていますね。 第一話は壺の誕生です。陶芸家自身が驚…