踏切のそば、 私はのんびりと地面の匂いを嗅ぎながら歩いていた。 「今日は何か美味しいもの、落ちてないかしら」 遠くから電車の警報音が聞こえ、 遮断機がゆっくりと降り始める。 空気が少しひんやりと締まるように感じた。 そこへ、スキンヘッドのおじさんが、 慌てた様子でやってきた。 カーキ色のワークジャケットに色あせたデニムジーンズ、 長年履き慣らしたワークブーツ。 がっしりした体つきで、 つぶらな瞳がどこか犬のように優しい。 遮断機の棒がゆっくりと降りてくる中、 おじさんは急ぎ足で踏切を渡ろうとした。 そのとき、棒の先がそっと彼の頭の側面に触れた。 かすかな「トン」という音がしただけだったが、 痛…