猫が逃げた朝 臆病な彼が選んだもの たくさんの思い出 自由と責任と、ほんの少しの寂しさ 帰ってきたら、何も言わない 空っぽの空間 きっと、大丈夫 扉の隙間から、臆病な愛猫がふらりと外へ出てしまいました。あれだけ可愛がったのに──という寂しさと、それでも自由を選んだ彼の気持ちを想像しながら、今はただ静かに、帰りを待っています。 猫が逃げた朝 気づいたときには、家の扉がわずかに開いていた。 胸の奥が、すっと冷たくなる。 彼──私の大切な猫──の姿が、どこにもない。 また、日のあたる場所で日向ぼっこでもしているのだろう。最初はそんなふうに、気楽に考えていた。 けれど、家の中を探しても、庭を探しても、…