ブログトップ 記事一覧 ログイン 無料ブログ開設

翻訳ミステリー大賞シンジケート このページをアンテナに追加 Twitter

第八回大賞 本投票受付中

■西東京読書会 2月25日 満席■
■金沢読書会 3月4日 残席僅少■
■名古屋読書会 3月4日 満席■
■埼玉読書会 3月12日 満席■
■札幌読書会 3月18日 開催!■
■仙台読書会 3月18日 開催!■

■各地読書会カレンダー■

※イベントカレンダーに掲載ご希望の方は事務局までメールでお知らせください。
翻訳ミステリー・イベント・カレンダー
イベント内容(案内記事リンク/=関連書アマゾン)
10 【対談】翻訳家と編集者のしごと(朝日カルチャーセンター新宿教室) 講師:ドイツ文学翻訳家・酒寄進一 東京創元社編集者・佐々木日向子
22 第八回翻訳ミステリー大賞授賞式&コンベンション(大田区産業プラザPiO)
20 【注目】 第八回翻訳ミステリー大賞 本投票締切
25 『悪魔の星』刊行記念ジョー・ネスボ トークショー(聞き手:三橋曉/八重洲ブックセンター) 2/17刊行・最新刊『悪魔の星』→
24 ジョー・ネスボ&堂場瞬一 トークセッション(司会・杉江松恋/ノルウェー王国大使館) 2/17刊行・最新刊『悪魔の星』→
23 ロビン・スローン氏ゲスト参加・東京創元社 2017年新刊ラインナップ説明会 応募締切2月5日(日)


2017-02-22

第八十二回は文学刑事サーズデイ・ネクスト・シリーズの巻(その2)(執筆者・東野さやか)

 みなさん、こんにちは。たいへんお待たせいたしました。先月につづき、ジャスパー・フォードの文学刑事サーズデイ・ネクストのシリーズ第5弾、"First Among Sequels"(2007)をご紹介します。

 

First Among Sequels: Thursday Next Book 5

First Among Sequels: Thursday Next Book 5

 

 ジェフリー・アーチャーの "First Among Equals"(邦題『めざせダウニング街10番地』)をもじったと言われるこのタイトル、そのまんま訳せば〈続編その1〉といったところでしょうか。それからわかるように、第1作の『ジェイン・エアを探せ!』から第4作までを第1シーズンとすれば、"First Among Sequels" は第2シーズンの幕開け的な存在です。

 

 前作 "Something Rotten" での一件から14年がたち、時代は一気に2002年に飛びます。その間に特別捜査機関(通称スペックオプス)は解体されてすでになく、30代後半だったサーズデイ・ネクストもいまや52歳。根絶から復活したランデンとスウィンドンで幸せな日々を送っています。もう危険なことはしないとランデンと約束したため、文学内務保安機関(ジュリスフィクション)の仕事からも足を洗い、カーペットや床材の専門店を経営している……のですが、実はこの店、解体されたはずのスペックオプスが隠れ蓑として利用していて、カーペットを販売し、床材の張り替えを請け負ういっぽうで捜査活動にも従事しています。

 しかし、サーズデイがランデンに秘密にしているのはそれだけではありません。彼女はいまもジュリスフィクションの仕事をつづけており、店に出勤するやいなや本の世界にジャンプして、物語内のトラブルを解決すべく奮闘しているのです。いまは、自分を主人公にしたシリーズ第5作『サミュエル・ピープスの大失態』でサーズデイを演じているサーズデイ5を保安員として育成する仕事もまかされ、現場に出るときはいつも彼女が一緒です。このサーズデイ5、最初の4作でサーズデイを演じたバイオレンス大好きで奔放な性格のサーズデイ1−4とは異なり、性格はおとなしめで機転が利かず、大きな危険をともなう保安員の仕事などとてもこなせそうにありません。彼女の行動のひとつひとつにサーズデイは調子をくるわされてばかり。

 そんなある日、『ピノキオの冒険』でピノキオが火鉢に足をのせたまま眠りこんでしまう場面に、アンテナとレンズがついたグレープフルーツ大の金属球が突如現れます。駆けつけて調べたところ、金属球の表面に〈ゴライアス〉の文字が……。あのにっくき巨大企業ゴライアス社が、なぜ本の世界にジャンプできるのか? ゴライアス社に出向いたところ、なんと……おっと、これ以上は言わないでおきますね。

 

 こう書くと、その謎を解明するため、サーズデイがあれこれ捜査をする話と思われてしまうかもしれませんが、そこはもうフォードさんですから、そんな一直線な話にはなりません。ただでさえくねくねしている道を、さらにあっちにこっちに寄り道しながら、話は予想の斜めはるか上に向かって進んでいきます。本の世界では日々、大小さまざまな事件や問題が起こっていて、保安員が問題解決に駆けつけたり、会議で解決策を検討したりしています。たとえば、本を読む人が減っていることへの対策として、物語を読者の意向に沿った形に書き換えていく双方向型書籍が提案され、その第一弾として『高慢と偏見』の書き直しがおこなわれそうになったり、シャーロック・ホームズが殺されてその対応にあたふたしたり。

 また、過去に保安員としては不適格とされたはずのサーズデイ1−4がふたたび訓練生となり、その教官役にサーズデイが任命されます。前述したようにサーズデイ1−4はバイオレンス大好きで奔放な性格なうえ、傲慢で自分勝手。サーズデイ本人ともサーズデイ5ともそりが合わないのはもちろん、やることなすことすべてが保安員らしさに欠けるのだから始末に負えません。物語に登場するピアノを管理する部門に出向いたときには、物語の設定上、ピアノの椅子に隠しておかなくてはいけない銃を盗んでしまい、たいへんな騒ぎを引き起こすことに。

 いっぽう、現実の世界では、16歳になる息子のフライデイが、迫りつつある時の終わりを阻止できる唯一の人物とされ、時間警備隊(クロノガード)への入隊を嘱望されているのですが、本人はまったく興味を示さず怠惰な日々を送るばかり。ついにはまともなバージョンのフライデイが登場して、やる気のないフライデイと入れ替わるなんて話にまでなり、サーズデイは気が気じゃありません。

 

 こんな感じで、現実の世界と本の世界の日常がモジュラー型に描かれていくのですが、そのひとつひとつがおかしくてたまらないのです。もうね、本筋にまったく関係ない部分も手を抜かないんですよ、フォードさんて人は。

 たとえば本の世界の会議で、ハリー・ポッターのビデオゲームについて話し合う場面でのこと。出席者全員がハリー・ポッターのサインをもらおうとこっそり本を用意していて、「ハリー・ポッターさんは著作権の関係で本会議には出席できません」とアナウンスされると、がっかりしたように本をしまうなんてくだりがありますし、先に出したピアノの管理の話も、ディケンズの『荒涼館』で使用中のグランドピアノが数分後にはジョージ・エリオットの『フロス河の水車場』に移動し、そこで何場面か使われたらジョゼフ・コンラッドの『闇の奥』に移動するといった描写にたっぷり時間をかけているんです。なんでも、本の世界にあるピアノは全部で15台しかなく、それをあっちにこっちに移動させているとか(しかも何台かは点検中)。よく考えれば、突っこみどころ満載なんですが、まあ、細かいことは気にしない、気にしない。

 

 そして最後の最後になっての怒濤の展開。ゴライアス社の悪だくみを阻止すべく、ロングフェローが難破した帆船ヘスペラス号を題材に書いた「ヘスペラス号の難破」という詩のなかに入るのですが、そこにいたるまでも紆余曲折あり、読者をじりじりとじらしてくれます。それまでに登場したいろいろなエピソードのあれこれもちゃんと回収して、きれいに収束……と思いきや、ラストで呆然。というか、ちょっとそこでやめないで!

 

東野さやか(ひがしの さやか)

兵庫県生まれの埼玉県民。洋楽ロック好き。今年最初のライブはスラッシュとダフが復帰したガンズ・アンド・ローゼズでした。最新訳書はローラ・チャイルズ『アジアン・ティーは上海の館で』(コージーブックス)。その他、ジョン・ハート『終わりなき道』(ハヤカワ・ミステリ)、ブレイク・クラウチ『ラスト・タウン―神の怒り―』(ハヤカワ文庫NV)など。埼玉読書会および沖縄読書会世話人。ツイッターアカウントは @andrea2121

 

●AmazonJPで東野さやかさんの訳書をさがす●

【原書レビュー】え、こんな作品が未訳なの!? バックナンバー一覧

 

めざせダウニング街10番地 (新潮文庫)

めざせダウニング街10番地 (新潮文庫)

Something Rotten: Thursday Next Book 4

Something Rotten: Thursday Next Book 4

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 上 (ちくま文庫 お 42-1)

高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

高慢と偏見 下 (ちくま文庫 お 42-2)

ハリー・ポッターシリーズ全巻セット

ハリー・ポッターシリーズ全巻セット

荒涼館〈1〉 (ちくま文庫)

荒涼館〈1〉 (ちくま文庫)

荒涼館〈3〉 (ちくま文庫)

荒涼館〈3〉 (ちくま文庫)

闇の奥 (光文社古典新訳文庫)

闇の奥 (光文社古典新訳文庫)

2017-02-21

第42回 一気通読の巨体萌えパラダイス―『完全記憶探偵』(執筆者・♪akira)

 

 全国の腐女子の皆様とそうでない皆様、こんにちは! 今までイケメンペアとか美老人とかいろいろ取り上げてきましたが、今回は初の“巨体萌え”(デブ専とは言わない)案件! ニューヨークタイムズのベストセラーリスト1位、徹夜必至の面白本、デイヴィッド・バルダッチ『完全記憶探偵』(関麻衣子訳/竹書房文庫)は、XLラヴァーの方が必読の本なのですよ!

 

 主人公のエイモス・デッカー(42歳)は、ヴァーモント州バーリントン署の元刑事。相棒のメアリー・ランカスター刑事と、署内でもトップの逮捕歴を誇るほど優秀な刑事だったが、15ヶ月前、妻と9歳の娘、そして義理の兄が自宅で惨殺されてしまう。署は総力を挙げて犯人を捜すが、数ヶ月経ってもいっこうに見つからず、自暴自棄になったデッカーは警察を辞職する。差し押さえられた自宅を離れ、アパートからモーテルへ、さらに友人宅を追い出された後に身を寄せたホームレスのシェルターは不況で閉鎖され、公園や駐車場で野宿をするまでになる。しかしある日、太り過ぎで不潔な世捨て人のような自分を見て、死んだ妻と子ががっかりすると思い直し、日雇い仕事で貯めた金で私立探偵の仕事を始める。

 

 実はデッカーには特殊な能力があります。それは、目の前のすべてのことについて、細かい点まで頭のなかに取りこむことができ、脳がそれを整理していくという超記憶症候群です。世界でも数人と言われるその力がデッカーに備わったのは22歳の時、NFLの開幕戦の衝突事故でした。念願かなっての一軍入り、ついにスタメンで出場できたデッカーは、相手チームの新人の強烈なタックルで身体ごと吹っ飛び心肺停止、全身を怪我した上に、使っていない脳の領域が解放されたのです。

 

 プロ選手としての将来が断たれたデッカーは、警察官の道を選びます。その記憶力が大いに役に立ち、順当に昇進した彼を待ち受けていたのは家族の悲劇。気力を失った後、彼は196センチで158キロの肥満体ホームレスとなってしまったわけなのですが、このサイズ感、まったく想像できないと思っていたら、あとがきで訳者の関さんが「これに近い体型は白鵬関」と書かれていて、なるほど!と納得。ちなみに196センチで私が思い出したのは、ロック様ことドウェイン・ジョンソン。こちらは約120キロだそうですが、いやー、同じ身長で100キロ超えでも、そこまでシルエットが違うとは驚きです。

 

 話を物語に戻しますと、家族惨殺事件に突然の転機が訪れます。なんと犯人がバーリントン署に自首してきたのです。デッカーはいてもたってもいられず古巣に向かったところ、出身校でもある地元の高校で銃乱射事件が発生、多数の死傷者が出ていました。同僚の家族も大勢巻き込まれた未曾有の事件に、かつての上司ミラー警部の頼みで、デッカーはコンサルタントとして雇われることになります。

 

 捜査が進むうちに、銃乱射と家族惨殺、全く異なる2つの事件のつながりが見えてきます。そこからは、デッカーの特殊能力と相棒とのチームワークという、王道の犯罪捜査ミステリに突入。さらには、野心あふれる地元紙の女性記者が邪魔をしたり、FBIの介入があったりと、ハラハラドキドキの展開もてんこもり。真犯人の目星がついてからというものは、お腹が減ろうが電車を乗り過ごそうが、最後まで読まずにはいられない怒濤のエンタメです!

 

 でも、巨体萌えっていう割には一人しかいないんだけど!と思った方、すみません! 実はまだまだいるのです! まずは元上司のミラー警部、50後半で、ウシガエルのような体型と肌の色(ってどんな色なんだ!)、でっぷりとせり出した腹の持ち主なんですが、この人のデッカーに対する態度はちょっと萌えます。それからFBIのボガートは身長180センチ強で、デッカーよりも50キロぐらい軽いとのことですが、それでも100キロ超えてますしねえ。しまった身体で肩幅のひろい40代だそうです。最後は殺された義兄。この人も180センチですが、デッカーと同じ体格で、建設現場の作業員をしていたそうで、トラックをベンチプレスできるぐらい、と説明があります。

 ものは試しに著者の画像をググってみたところ、ご本人は太ってはおらずガッシリ体型で、二の腕もかなり鍛えているようで、ボガートに近いかな? それにしても元相棒2人、性格的にも体型的にも『LAW & ORDER クリミナル・インテント』のゴーレン(ヴィンセント・ドノフリオ)とエイムズ(キャスリン・アーブ)を思い出さずにはいられません。ランカスター刑事、クールでかっこいいですよねえ。

 

 この本のおかげで、体重と体格は恐ろしい武器になる、ということがよくわかりました。あと、ファスト・フードはほどほどにしないと(以下略)。すでに続編は本国でベストセラーだそうなので、もう少しシェイプした(?)デッカーの活躍(と邦訳)に期待しています!

 

f:id:honyakumystery:20170220160127j:image:w450

 さて、同じく記憶をテーマにした映画、『クリミナル 2人の記憶を持つ男』が2/25(土)に公開になります。

 CIAロンドン支局のエージェント、ビル・ポープ(ライアン・レイノルズ)は、すべての米軍の兵器を遠隔操作できるプログラムを開発した天才ハッカー(マイケル・ピット)と接触し、取引する任務を遂行中、富豪のスペイン人テロリスト一味に捕まり殺されます。ロシアの介入も浮上し、一刻も早くハッカーを見つけなければなりませんが、潜伏先は死んだビルしか知りません。焦るCIA支局長ウェルズ(ゲイリー・オールドマン)は、まだ開発途中の記憶移植手術でビルの記憶を取り戻そうと、研究者のフランクス博士(トミー・リー・ジョーンズ)に執刀を要請しますが、博士が移植先に選んだのは、服役囚の死刑囚ジェリコ(ケヴィン・コスナー)の脳だったのです。

 

f:id:honyakumystery:20170220160128j:image:w260 f:id:honyakumystery:20170220160129j:image:w260

 まだまだ未知の領域と言われる記憶と脳、なのでこんな奇想天外な物語もまったく否定できないとはいえ、まずびっくりしたのは、CIAの予算ってすごいな!!でした(笑)。だって、わざわざアメリカからイギリスまで極秘に死刑囚を運んできちゃうんですよ! でもそれには理由があって、ジェリコは子供の頃に脳に損傷を受けたおかげで、罪の意識もなく犯罪を繰りかえすソシオパスになったのですが、脳の多くが発達していないため、その空いている領域が他人の記憶を受け付けるのに最適だと選ばれたわけです。

 

f:id:honyakumystery:20170220160130j:image:w260 f:id:honyakumystery:20170220160131j:image:w260

 手術は成功したかのようでしたが、ビルの記憶は断片的にしか現れず、ブチ切れたジェリコは逃走し、ロンドン市内で暴虐の限りを尽くします。この暴走還暦オヤジのケヴィン・コスナーが、もうほんと凶悪すぎて笑っちゃうんですよ!<? 下手に記憶が植え付けられたのでビルの妻子も巻き込まれるわけですが、それに逆上するウェルズ支局長の方も、こんなにアグレッシブなオールドマンを観たのは久しぶりでは(笑)。

 

 さて、ここまで来ればおわかりかと思いますが、この映画、中年オヤジ版『君の名は。』なのですよ!<宣伝さん命名 まさに「What's your name!?」と迫るシーンや、「入れ替わっちゃった〜!?」と脳内で付け加えたいシーンが満載!

 

f:id:honyakumystery:20170220160133j:image:w260 f:id:honyakumystery:20170220160132j:image:w260

 

 監督はアリエル・ヴロメン『ICEMAN 氷の処刑人』も激しく面白いので未見の方はぜひ!)、ガル・ガドットが妻役、スコット・アドキンスも脇役で出演と、豪華キャスティングも楽しいスパイアクション、ラストもびっくりしてください!

 

映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』予告編

D

 

映画 『クリミナル 2人の記憶を持つ男』特別映像【1】

D

 

映画 『クリミナル 2人の記憶を持つ男』特別映像【2】

D

 

映画『クリミナル 2人の記憶を持つ男』特別映像【3】

D

 

  • 監督:アリエル・ヴロメン『THE ICEMAN 氷の処刑人』 
  • 脚本:ダグラス・S・クック、デヴィッド・ワイズバーグ『ザ・ロック』
  • 出演:ケヴィン・コスナー、ゲイリー・オールドマン、トミー・リー・ジョーンズ、ガル・ガドット、ライアン・レイノルズ
  • 公式サイトhttp://criminal-movie.jp/
  • 配給:KADOKAWA
  • © 2015 CRIMINAL PRODUCTIONS, INC. All Rights Reserved.

 

    

♪akira

f:id:honyakumystery:20130409071809j:image:left

  BBC版シャーロックではレストレードのファン。『柳下毅一郎の皆殺し映画通信』でスットコ映画レビューを書かせてもらってます。トヨザキ社長の書評王ブログ『書評王の島』にて「愛と哀しみのスットコ映画」を超不定期に連載中。

本の雑誌404号2017年2月号

本の雑誌404号2017年2月号

  

黙殺

黙殺

THE ICEMAN 氷の処刑人 [Blu-ray]

THE ICEMAN 氷の処刑人 [Blu-ray]

   

【偏愛レビュー】読んで、腐って、萌えつきて【毎月更新】バックナンバー

2017-02-20

NY Timesベストセラー速報20170226(執筆者・武藤陽生)

アメリカのベストセラー・ランキング

2月26日付 The New York Times紙(ハードカバー・フィクション部門)


1. NORSE MYTHOLOGY    New!

Neil Gaiman ニール・ゲイマン

Norse Mythology

Norse Mythology

『サンドマン』で世界幻想文学大賞を受けたニール・ゲイマンが自らの創作の原点に立ち返り、北欧神話を下敷きにして書いた一作。オーディン、トール、ロキといったおなじみの神々が登場する。


2. ECHOES IN DEATH    New!

J.D.Robb J・D・ロブ

Echoes in Death: 44 (English Edition)

Echoes in Death: 44 (English Edition)

ニューヨーク・タイムズのベストセラー常連作家によるイヴ&ローク・シリーズ最新作。ニューヨーク市警に勤めるイヴ・ダラスが富豪の夫ロークと車で帰宅している途中、全裸で血まみれの女性がふらふらと車の正面に飛び出してきた。ロークは慌ててブレーキを踏み、イヴはすぐさま女性を保護しようとするが――21世紀なかばの近未来を舞台にしたSFサスペンス・シリーズ第44作。


3. NEVER NEVER    Down

James Patterson and Candice Fox ジェイムズ・パタースン、キャンディス・フォックス

シドニー警察の刑事ハリエット・ブルーは、兄が殺人容疑で逮捕されたことからシドニーを追われてパースへ異動、オーストラリア内陸部の荒野アウトバックで鉱山労働者の失踪事件の捜査にあたることになる。やがて鉱山では過去にも失踪者が出ていたことが明らかになり……


4. THE WHISTLER    Up

John Grisham ジョン・グリシャム

The Whistler

The Whistler

裁判官への苦情を調査する仕事について9年、フロリダの弁護士レイシーの平穏だった日々は、インディアン・カジノをめぐる組織犯罪と、それにからむ判事の不正を伝える密告者との出会いによって一変する。


5. RIGHT BEHIND YOU    Down

Lisa Gardner リサ・ガードナー

Right Behind You (FBI Profiler Book 7) (English Edition)

Right Behind You (FBI Profiler Book 7) (English Edition)

FBI犯罪心理捜査官を引退したクインシーと妻レイニーに里子として迎えられた少女シャーラ。彼女の兄は8年前、酔った父親をバットで殴り殺して妹の命を救ったが、目下は銃撃殺人事件の最有力容疑者として追われている。ヒーローだった兄はモンスターと化したのか。クインシー&レイニー・シリーズの第7作。


6. THE UNDERGROUND RAILROAD    Down

Colson Whitehead コルソン・ホワイトヘッド

The Underground Railroad

The Underground Railroad

19世紀、奴隷制がまだ認められていた南部諸州からの黒人奴隷たちの逃亡を手助けした組織「地下鉄道」。本当に地下を走る逃亡奴隷のための鉄道が存在していたら……という設定のもとで、ジョージア州の綿花プランテーションから逃げだした十代の黒人奴隷の少女の旅を描いたスペキュレイティブ・フィクション。早川書房より邦訳刊行予定。


7. TWO BY TWO    Down

Nicholas Sparks ニコラス・スパークス

Two by Two

Two by Two

幸せなはずだった結婚生活が破綻し、華やかなPRの職も失った32歳のラス。6歳の娘ロンドンを抱えてシングルファザーとなり、想像もつかなかった新しい生活と新しい恋に踏みだす。


8. THE GIRL BEFORE    Down

J P Delaney J・P・ディレイニー

有名建築家エドワードが所有する、ロンドンのモダンなミニマリスト・アパートメント。つらい過去を乗り越え新しい生活をはじめようとこの部屋に住みはじめたジェインに、不可解な出来事が起こりはじめる。過去の住人エマ、現在の住人ジェインの語りから、部屋の恐ろしい秘密が明かされていく。ロン・ハワード監督で映画化の予定。


9. MY NOT SO PERFECT LIFE    New!

Sophie Kinsella ソフィー・キンセラ

My not so Perfect Life: A Novel

My not so Perfect Life: A Novel

『レベッカのお買いもの日記』シリーズ作者の最新作。何ひとつパッとしないケイティ・ブレナーはインスタグラムに逃げ場を求め、“盛った”写真を投稿することで父親の歓心を買おうとしていた。そんなある日、突然仕事をクビになってしまい、実家の農場に帰ることになる。ラブストーリーでもあり、職場のドラマでもあり、ウィットに富んだ小説。


10. UNIVERSAL HARVESTER    New!

John Darnielle ジョン・ダーニール

Universal Harvester

Universal Harvester

1990年代後半のアイオワ州を舞台にした一作。主人公のジェレミーは半年前の交通事故で母を亡くし、父とふたり暮らしをしている。そんな彼にとって、ビデオレンタル屋での仕事はいっときの逃避だ。ある日、ビデオを返却しにきた客たちから、「ビデオに妙なものが映っていた」という苦情を立て続けに受ける。念のため、ビデオを家に持って帰って再生してみたところ、どのビデオにも中盤あたりに数分間のホームビデオが収められていた。暗く、暴力的で、心かき乱すホームビデオが……


【まとめ】

今週は1位、2位、9位、10位と4作の新作がランクインしました。堂々1位ランクインの“NORSE MYTHOLOGY”の作者ニール・ゲイマンは、アメコミ好きなら知らない人はいない『サンドマン』の作者です。2位の“Echoes in Death”はタイトルに必ずin Death がつく“In Death”シリーズ(日本での名称はイヴ&ローク・シリーズ)の最新作です。J・D・ロブはノーラ・ロバーツ名義で200作以上のロマンス小説を書いているほか、ジル・マーチやサラ・ハーデスティといった名義も使い分ける多作家です。“In Death”シリーズは通算44作目で、その大半が邦訳されており、先日、41作目の『孤独な崇拝者』(原題“Obsession in Death”)が発売されたばかりです。9位はSNS中毒の主人公をシニカルな視点で描いた小説とのことで、同じ作者による、買いもの中毒のレベッカ・ブルームウッドを描いた『レベッカのお買いもの日記』シリーズと共通のテーマがあるのかもしれません。10位の“UNIVERSAL HARVESTER”は個人的に一番気になる新作でした。作者のジョン・ダーニールはミュージシャンでもあるようです。


武藤陽生(むとう ようせい)

2/23に早川書房より発売される映画『アサシン クリード』の公式ノヴェライズ版を翻訳しました。映画を観るだけではわからないあれやこれやに加えて、4本の特別篇が収録されています。この特別篇にはこれまでのゲームシリーズのキャラクターが登場するため、ファンなら見逃せない一作になっています。

また、3/9に同じく早川書房より拙訳『ポクスル・ウェスト 最後の飛行』が発売されます。第二次世界大戦中にイギリス空軍でパイロットとして活躍した“おじさん”の半生と、イライジャという少年との交流を描いた作品で、愛と哀しみにあふれるジュヴナイル的戦争小説です。


サンドマン (1) (DC COMICS VERTIGO)

サンドマン (1) (DC COMICS VERTIGO)

サンドマン (2)

サンドマン (2)

サンドマン (3) (DC COMICS VERTIGO)

サンドマン (3) (DC COMICS VERTIGO)

サンドマン (4) (DC COMICS VERTIGO)

サンドマン (4) (DC COMICS VERTIGO)

サンドマン (5) (DC COMICS VERTIGO)

サンドマン (5) (DC COMICS VERTIGO)