(政界地獄耳)モリカケ疑惑に触れない百合子氏に不信感 - 日刊スポーツ(2017年10月2日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201710020000193.html
http://archive.is/2017.10.02-020525/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201710020000193.html

希望の党民進党がのみ込まれるという党代表・前原誠司プランの先行きが、あやしくなってきた。「おっさん政治打破」「しがらみのない政治」は結構だが、「希望の党代表・小池百合子を信用していいのか」という声が民進党内に広がり始めている。「無論安倍政権を倒すため、野党がまとまらなければという前原の思いも分かるが」と、ある民進党議員が言う。「小池はいまだに森友・加計疑惑にも言及しないし、安倍政権打倒も一言も言わない。そもそも首相・安倍晋三が言うように、『小池さんとは考えが近い』のだろう」。
民進党や連合、同党支援者には「民進党は解体の覚悟で臨むが、リベラルを選別・排除するという小池に、憲法改正、安保関連法推進の踏み絵を踏まされ、党と連合の金と動員力だけを利用されている。黙っていていいのか」の声も多い。「政治家の出処進退は自ら決めるはずが、自民党政治一つ批判しない、ウルトラ右翼政党に入れてやるから、金持ってこいというありさまだ。前原の言うオール・フォー・オールのかけらもない」。
★先月28日、前原は両院議員総会で「どんな手段を使っても、安倍政権を止めなければならない」としたが、実行されたのは「どんな手を使っても」の部分だけ。「安倍政権を止める」は衆院解散以来、聞こえてこない。ただの金づる扱いの連合会長・神津里季生も、希望の党に反発を強める。
民進党関係者は言う。「参院民進党を利用して、民進党を生かせばいい。手続き的に可能ならばすべてをご破算にして、民進党から出たい候補者があれば、戻して公認すればいい。希望に行きたい候補者は行けばいいが、連合を含め支援は打ち切り。手弁当でやってくれ。ただ、そうなると希望サイドも、彼らを公認しないかもしれない。欲しいのはカネと連合の組織だったことが、はっきりする。とにかく直ちに森友・加計疑惑追及を再開し、安倍政権打倒を打ち出すべきだ」。希望の党の化けの皮がはがれつつある今、民進党は新たな求心力を持つかもしれない。(K)※敬称略

<衆院選>争点埋没 危機感強く 市民ら「リベラル新党期待」 - 東京新聞(2017年10月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017100202000117.html
https://megalodon.jp/2017-1002-1009-52/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017100202000117.html

民進党が「希望の党」への合流に突き進む中、民進リベラル系前衆院議員らによる新党結成の模索の動きが出ている。安倍晋三首相と希望代表の小池百合子都知事との対立構図に注目が集まる一方、護憲や安全保障関連法反対の主張の埋没を危惧する市民からは「護憲の受け皿になって」など新党に期待する声が相次いだ。ただ、衆院選公示は間近に迫っており、時間切れを懸念する声も漏れた。(清水祐樹、辻渕智之)
希望の党の政策は安倍政権寄り。選挙に向け、リベラル派を吸収する器ができてほしい」
衆院解散後初の日曜日となった一日。秋晴れの下、東京・新宿駅周辺では、安倍政権反対を訴えるデモ行進が展開された。主催した「新しい未来を求めるデモ実行委員会」の井手実代表(37)は「リベラル新党」への期待感をにじませた。
国会論戦で安保法反対を打ち出した民進だが、希望との事実上の合流を決定。希望を率いる小池氏は、安保政策や改憲で考え方が合わない民進前職らを排除する方針も示した。これに対し前職らは「憲法や安保法で踏み絵を迫るのは度量が狭い」などと反発。新党への言及も相次いでいる。
デモに参加した市民団体「未来のための公共」のメンバー、近藤隆太さん(20)は「選挙戦が安倍対小池の構図となり、改憲や安保法制、共謀罪などの是非が埋もれることが一番心配だ」と危ぶむ。「これらの争点による対立軸を示すことが課題。新党ができれば応援したい」と話した。ただ「時間がなく、どこまで影響力を持てるだろうか」との心配も明かした。
デモの集合場所である公園には「リベラル新党」結成を視野に入れる民進枝野幸男代表代行が急きょ登場。枝野氏は「民主主義や立憲主義など、安倍政権が壊してきた社会の軸となる基本は守り、戦う」と述べるにとどめ、憲法や安保法には触れなかった。しかし、会場からは「枝野」コールが巻き起こり、新党への期待感をうかがわせた。
一方、民進を含めた野党共闘を後押ししてきた市民団体「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」は、選挙構図の急変を受け、この日都内で予定した街頭集会を中止した。
市民連合に参加する「安保関連法に反対するママの会」発起人の西郷南海子(みなこ)さん(30)は「野党共闘の枠組みが崩れたのは残念。新党ができた場合の対応も含めて市民連合内で協議を重ねている。誰を応援するかは、各地の市民と候補者との信頼関係が大きいのではないか」と話している。
一方、市民団体「田園調布九条の会」メンバーの酒井正嘉(まさよし)さん(88)は「安倍首相は戦前回帰を目指す保守反動に映るが、小池氏の安全保障観も大差ない。だからこそ、それに対抗する中道のリベラル勢力は必要。彼らの立候補する選挙区には共産や社民は候補を立てずにすみ分け、共闘の枠組みを守ってほしい」と話した。

民進リベラル、希望不信 露骨な選別に反発 - 東京新聞(2017年10月1日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017100102000106.html
https://megalodon.jp/2017-1002-1011-07/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201710/CK2017100102000106.html

「新たな独裁はいらない」−。小池百合子東京都知事率いる新党「希望の党」への不参加を表明したリベラル系民進党出身者から、「小池批判」が相次いでいる。安保法制への賛成などを条件に公認を「選別」する方針に反発が強まっている。 (布施谷航、今村太郎、荘加卓嗣)
憲法や安保法制で踏み絵を迫るのは、小池さんは度量が狭い。参加しない」。神奈川12区で出馬を予定している党副代表の阿部知子さんは三十日、JR藤沢駅前で街頭演説に立ち、対立姿勢をあらわにした。
阿部さんは社民党出身。護憲の立場を一貫して主張し、野党共闘にも積極的に関わってきた。希望への合流方針が決まった直後は、迷いを見せていたが、この日の演説では「安倍首相に代わる新しい独裁はいらない」と小池氏を批判した。
演説後、本紙などの取材に「民進を丸ごと受け入れない以上、合流の話はご破算にするべきだ。(与党に対抗する)戦術はまだある」と話し、リベラル系の議員による新党結成を模索する動きにも触れた。
「筋を曲げてまで合流することは考えていない」。愛知5区から立候補を予定する、旧社会党出身の元衆院副議長、赤松広隆さんは同日、名古屋市内で記者団の取材に語った。
どんな立場で衆院選に臨むかは迷いがある。無所属では比例に立候補できない上、政見放送も行えないなど、選挙戦では不利になる。「無所属の方が戦いやすいが、比例で仲間を惜敗率で救うためには、新党を考えた方が良いと思う」
党内グループ「リベラルの会」代表世話人で党副代表の近藤昭一さん(愛知3区)も当初、合流の方針に一定の理解を示していたが、露骨な選別方針を示す希望側の動きを懸念し、この日、本紙の取材に「対応は検討中だ」と話し、慎重な姿勢に転じた。

「解散権は首相の専権、は誤り」 衆院選巡り専門家対談 - 朝日新聞(2017年10月2日)

http://digital.asahi.com/articles/ASKB15WRYKB1ULZU007.html
http://archive.is/2017.10.02-011158/http://www.asahi.com/articles/ASKB15WRYKB1ULZU007.html

衆院総選挙が10日公示される。安倍晋三首相による唐突な解散に正当性はあるのか。結果次第で大政翼賛的な政治が生まれる危険性をもはらむ総選挙に主権者はどう向き合うべきか。長谷部恭男・早稲田大教授(憲法)と杉田敦・法政大教授(政治理論)に語り合ってもらった。
杉田敦・法政大教授 今回の解散に正当性があるのか、まずは考えてみましょう。憲法53条には、内閣は一定数の国会議員の要求があれば臨時国会を開かなければならないとある。にもかかわらず、安倍内閣は3カ月も放置しました。

長谷部恭男・早稲田大教授 53条の規定が設けられた趣旨については、現憲法草案が議論された第90回帝国議会金森徳次郎国務大臣が説明しています。当時は国会常設制、つまり、内閣に召集されなくても、国会自身がいつ活動を開始していつ終わるのか決められるようにすべきだという意見が有力でした。これに対し金森は、常設制は現実的ではないので、代替手段として、一定数の国会議員の要求があれば国会を召集しなければならないことにしたと言っている。召集要求を無視する内閣が出てくることは想定していなかっただろうと思います。
杉田 憲法施行後に出された政府見解は、53条に基づく要求があったとしても、内閣は諸般の条件を勘案して、合理的に判断して召集の時期を決めることができるとしています。では今回のような、森友、加計学園をめぐる疑惑を追及されたくないというのは、勘案してしかるべき「諸般の条件」に含まれるのか。
長谷部 常識で考えれば、含まれません。
杉田 国権の最高機関である国会の審議機能を実際上、行政の長が妨害した。憲法違反ではないですか。
長谷部 53条との関係で言えば、合理的と考えられる時期、準備に必要な2、3週間を超えて召集を引き延ばすのは憲法違反だというのが学界の通説です。
杉田 そしてようやく国会を開いたら、何の審議もせずに冒頭解散です。解散権は首相の「専権事項」と言う人もいますが、憲法にそんな規定はありませんね。
長谷部 首相の専権事項というのは間違いです。政府の有権解釈でも、実質的な解散決定権は内閣にあると言っている。現実には、首相は解散に反対する閣僚がいれば罷免(ひめん)して解散を決めることはできるので、首相に主導権があるとは言えますが、専権ではない。首相が自由に議会を解散できるという主張が臆面もなくなされる日本は、主要先進国の中では例外的な存在となりつつあります。
杉田 かつて日本は、首相の権力が弱いと言われていた。派閥の力が強かったり、慣行上、内閣の合意を重視したりしていたためで、だったら最後、伝家の宝刀として解散権ぐらいは持たせてやろうという類いの議論でした。ところがその後、1990年代の政治改革などで首相に権力が集中していくのに解散権は制約されず、首相が過剰に強くなってしまった。少なくとも、党派的利益に即した解散を制約する必要があります。
長谷部 上策は、憲法改正してその旨の条文を加えることですが、かなりの時間と労力を要します。現実的な策は、解散権の行使を制約する法律をつくることでしょう。政府や首相に与えられた憲法上の権限を法律で制約している例は、内閣法等にも散見されます。
杉田 野党側は当初、この解散自体を争点化しようとしていました。選挙の構図が流動化するなか後景に追いやられた感もありますが、選挙ではしっかりと問われなければなりません。
長谷部 憲法違反すれすれの無体な解散をした政党には、主権者国民がお灸(きゅう)をすえるしかないというのが、52年の吉田茂内閣による「抜き打ち解散」の合憲性が争われた「苫米地(とまべち)判決」の趣旨です。高度に政治的な事柄なので司法に判断はできない、主権者国民が最終的に判断しろと。
政党政治が劣化/無党派の棄権、自公に好都合
杉田 お灸をすえるには「受け皿」が必要です。小池百合子都知事を代表とする希望の党が結党され、野党第1党だった民進党が合流へ動いた。この間の動きに、政党政治の劣化を感じます。自民党民進党希望の党も、意思決定過程が不透明です。自民党は、党内論議を経ないまま、首相が勝手に消費増税分の使途変更など選挙の争点を設定した。民進党は、選挙で選ばれたばかりの代表がいきなり解党を主導する。希望の党も、何をどこで決めているのかさっぱりわかりません。そもそも政党や政治家は自己利益のためでなく、公的利益の実現のために存在しているという建前を掲げておかなければまずい。ところがいま、みんな自分の生き残りしか考えていないことを白日の下にさらしてしまっている。
長谷部 社会の利益より政治家の利益。それがとても端的な形で表れているのが、憲法を改正して「合区」を解消しようという自民党の議論です。政治家が自己保身のために憲法を変える。すごいことです。
杉田 政党は本来、理念や政策を共有する人たちの集まりです。政党は単なる選挙互助会だと言ってしまうと、そんな特定の「業界」のためになぜ何百億円もの税金を使って選挙を行い、人々がわざわざ投票しに行かなきゃならないのか、理由を説明できなくなる。政治的シニシズム冷笑主義)が広がり、民主主義が成り立ちません。
長谷部 しかし安倍さんはむしろ、政治的シニシズムが広がることを狙っているのかもしれません。どの政党にも風が吹かなければ、公明党とタッグを組んでいる自民党は有利です。今回の民進党をめぐる騒動を受けて、左派リベラルの無党派層が、くだらない、自分の受け皿はどこにもない、棄権するぞと思ってくれれば好都合だと。善悪を別にすれば、極めて合理的な判断です。
杉田 日本政治の将来を考えると、その時々に急ごしらえの新党を待望するのではなく、普段からまともな野党を育てるという意識を有権者が持つ必要があるのでは。政党政治の基本は多元性です。各政党が異なる価値観をぶつけ合うことによって初めて妥当な結論が導き出せます。
長谷部 フランスの政治学者・トクビルは、それぞれの部分利益を追求する政党や結社が競合することが、ひいては人民一般の利益を確保することにつながると言っています。
杉田 そこに、政権党とは異なる部分利益を代表する野党の存在意義がある。ところが、民進党は長期にわたり支持率が10%に満たなかった。野党第1党がここまで弱っては、小選挙区制の下で頑張れない。解党が決まってから、リベラルの受け皿がなくなると懸念の声が出ていますが、客足の落ちたレストランが閉店を決めると急に惜しむ人たちが出てくるのと同じです。だったらなぜ、育てなかったのか。結局人々は、自民党が暴走した時に、お灸をすえるという役割の範囲でしか野党を求めていないのではないか。
長谷部 ただ、民進党が支持されなかったのは、やはり政権を担った時のパフォーマンスがあまりにも悪かったからでしょう。官僚組織とけんかして、自分たちで電卓たたいて予算案を書き直すとか、そうしたことへの嫌気がいまも相当残っていると思います。
杉田 民主党政権交代する際、ハードルを上げ過ぎたことも否めません。政策実行に必要な財源の根拠を全部示せ、マニフェストに何をいつまでやるか全部書き込めと。そんなこと、できるはずがありません。
長谷部 メディアも世論も子どもでしたね。初めて政権を担当させて、うまくいかなかったから全否定するというのは、確かに諦めが早すぎます。
中道左派置き去り/右回転止めないと
杉田 希望の党は、最終的にどうなるかはわかりませんが、憲法改正と安全保障を「踏み絵」にしてリベラル派を排除し、右に位置取りをしようとしているようにも見える。しかし自民党安倍時代に右に傾いた結果、世論分布では中道左派有権者が取り残されている。そこにリベラル新党をつくる余地があるという声も出ていますが、どうでしょう。無党派層はリベラルな政策との親和性が高いが、理念にこだわる人たちだから、小さなスタンスの違いが気になる。大きく支持が広がるとも思えません。風を吹かせたいなら右に寄った方が有利で、少なくとも小池さんはそれしか勝つ方法はないと判断しているのでしょう。
長谷部 風を吹かせるためには理念も政策綱領もあいまいにしておく必要があります。左派はおおむね、政策や綱領を明確にしなければならない、いい政策をつくれば支持者が増えると思っている節がありますが、それでは風は吹きません。ポピュリズムは全否定されるべきものではなく、世界的にみれば、右派の専売特許でもない。ぼんやりしたポピュリズムでいけば、フランス大統領選で圧勝した中道のマクロンのように集票できる。風をなんとかうまく吹かせて、可能な限り良い結果に向けて努力する。もちろん結果について責任は問われますが。
杉田 自民党高村正彦副総裁は「理念・政策を磨いて実行していく責任政党がいいのか、理念・政策を捨てて、票のために野合する政党がいいのか、を選んでもらう選挙だ」と言っています。自己都合で解散しておきながら……ということはさておき、「安倍政権を終わらせる」は、野党が選挙を戦う上での大義になり得るでしょうか。
長谷部 なり得るのでは。政策があいまいなまま、とにかく何かの旗の下に結集するのはポピュリズムの常套(じょうとう)手段です。「いまなら勝てる」と解散した首相に対抗し、組織力以上の議席を獲得するために、風にはためく旗を立てる。選挙至上主義は問題ですが、選挙に勝たなきゃ始まらないのも一面の真理です。
杉田 ただ、選挙結果次第では、自民、公明と希望の大連立など、様々な動きが出てくると思われます。大政翼賛的な政治が生まれ、憲法改正が「数の力」で成される危険性も大いにはらんでいる。リベラルな有権者ほど投票先に迷ったり、棄権に走ったりするかもしれません。
長谷部 安倍さん自身が、今回の選挙では私への信任も問われると言っている。いま右回転しているモーターの電源を切るかどうかが最大の焦点です。ひとつ切ったところで、また別のモーターが右回転し出すかもしれない。その時はまた切るしかありません。次なる夜が訪れることを恐れて、朝が来なくてもいいと考えるのはおかしい。夜が明けないことには何事も始まりません。(構成 編集委員高橋純子)

木村草太の憲法の新手(65)昨年参院選「合憲」判決 現在の合区、一部の県だけを犠牲に - 沖縄タイムス(2017年10月1日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/150158
https://megalodon.jp/2017-1002-1015-46/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/150158

最高裁は9月27日、2016年7月に行われた参議院選挙における一票の格差は合憲との判決を示した。
最高裁は過去に、10年参院選(5倍)と、13年参院選(4・77倍)の格差を違憲状態と判断した。これを受け、国会では選挙区割りや定数が見直され、15年に島根と鳥取、徳島と高知をそれぞれ合同選挙区とする公職選挙法改正がなされた。一票の格差は、改正時で2・97倍、選挙実施時点で3・08倍にまで縮小された。
この選挙について、高裁レベルでは、全国16のうち10の高裁が違憲状態と判断していた。これに対して最高裁は、(1)人口の少ない一部の選挙区を合区するというこれまでにない手法を導入して行われたものであること(2)改正法はその“付則において”次回の通常選挙に向けて選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い必ず結論を得る旨を定めていることを理由に、違憲状態とは言えないと結論した。
しかし、この最高裁判決の理由付けは妥当でない。まず、(1)投票価値の不均衡の合憲性を判断するのに、格差是正の手法がこれまでにないものか否かを考慮要素とするのはそもそもおかしい。最高裁の言うことを真に受けると、例えば、「合区なしでの3倍」は違憲状態、「合区ありでの3倍」は合憲という不合理な帰結になりうる。また、(2)この付則があることは、現在の格差が、抜本的な見直しのために、引き続き検討が必要な状態にあることを国会が自白するようなものであり、格差合憲の根拠になりようがない。
今回の選挙は違憲状態だとした東京高裁16年11月2日の判決も、この付則は選挙区間における議員一人当たりの人口の較差の更なる是正が検討課題であることを明らかにしているものと指摘し、むしろ格差を違憲状態と評価する根拠としている。
近年、最高裁は、衆議院選挙においては、おおむね格差が2倍を超えると違憲状態と判断してきた。このことは、高裁の過半数違憲状態と判断したことにも一定の影響を与えているように思われる。最高裁が、今回の参議院選挙について3倍を超えているにもかかわらず合憲と評価するなら、衆議院選挙と参議院選挙とをなぜ区別するのか、具体的な説明が必要だろう。しかし、判決文に、その説明はなかった。
合区となった4県では、ごく一部の県だけが合区対象とされたことに反発の声が強いと聞く。選挙法改正時には、22府県を11の合区とする案も提示され、その案ならば格差は1・83に収まったはずだというのだから、不満を持つのも当然だ。
格差是正を重視するなら、参議院にも格差2倍未満を要求して、他地域の合区を促すべきだ。もしも、参議院格差是正以外に尊重すべき事情があるとするなら、例えば、都道府県代表の要素を尊重するなら、すべての合区を解消すべきだ。今の制度は、日本中でたった4県にのみ、過度な負担を課している。
最高裁の論理は、一部の県だけを犠牲にする現状を固定化しかねない危険なものだ。今後は、一票の格差是正とは別に、最高裁の論理そのものの是正も必要だろう。(首都大学東京教授、憲法学者

衆院選 原発政策 各党は具体策を示せ - 朝日新聞(2017年10月2日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S13161269.html
http://archive.is/2017.10.01-212121/http://www.asahi.com/articles/DA3S13161269.html

原発を将来にわたって使い続けるのか。それとも、なくしていくのか。
衆院選では原発政策が主な争点の一つになりそうだ。国政選挙では他の政策の陰に隠れがちだったが、今回は新党「希望の党」が脱原発を打ち出し、注目を集めている。
原発問題は社会のあり方を左右する。各党は、再稼働や中長期的な位置づけについて、公約で具体的に示すべきだ。
甚大な被害を出した福島第一原発の事故から6年余り。避難者は今も5万人を超え、廃炉作業などの後始末もいつまで続くのか見通せないままだ。
一方で、再稼働の動きは進む。世論調査では反対が多数を占める状況が続くが、すでに12基が原子力規制委員会の審査を通り、うち5基は再稼働した。
まず問われるのは、「原発回帰」を進めてきた与党である。
自民党は、原発を基幹電源と位置づけて活用する姿勢だ。「原発依存度を低減させる」ともうたってきたが、安倍政権は30年度に発電量の2割を原発でまかなう方針を示す。30基ほどを動かす計算だ。「低減」はまやかしと言うほかない。
連立を組む公明党の姿勢もわかりにくい。「原発ゼロをめざす」と公約してきたが、実際は自民のやり方を追認しているようにしか見えない。
自公は30年度以降を含め将来の姿を詳しく示すべきだ。原発を使い続けるのなら、「核のごみ」の最終処分や核燃料サイクルについても、いっそう説得力のある解決策が求められる。国民に不人気だからといって、説明や議論を避けてはならない。
一方、与党への対抗勢力をめざす希望の党は、小池百合子代表が「30年までに原発ゼロにする行程を検討する」と語る。
党自体が急ごしらえだけに、本気度が問われる。脱原発には、地球温暖化対策と両立させるために再生可能エネルギーや省エネをどう普及させるかや、予想される発電コスト増加への対処など、難しい課題がある。
候補者選びと公約づくりを並行して進めるあわただしい展開で、衆院選までの時間も少ないが、原発をなくしていく道筋をできるだけ具体的に描く必要がある。
公約の具体性や実効性を求められるのは、脱原発を訴える他の野党も同様だ。
本来、エネルギー政策には幅広い国民の理解が大切だが、福島の事故以降、信頼は失われたままだ。有権者がしっかり考えて将来像を選べるように、活発な論戦を期待したい。

東芝原発損失 虚偽記載か 数千億円、監視委調査へ - 産経新聞(2017年10月2日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171002-00000048-san-soci
http://archive.is/2017.10.02-011339/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171002-00000048-san-soci


東芝米原発事業による巨額損失をめぐり、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が調査する方向で検討していることが1日、関係者への取材で分かった。東芝は平成29年3月期決算に約6500億円の損失を計上したが、監視委はこのうち数千億円については28年3月期に計上すべきで利益の過大計上の疑いがあるとみているもようだ。
東芝は27年4月に発覚した国内部門の不正会計で過去最高となる約73億円の課徴金納付命令を受けたが、調査の結果、虚偽記載と認定されれば、再び課徴金納付命令勧告が出される。
虚偽記載の疑いがあるのは、米原発事業の子会社だったウェスチングハウス・エレクトリック(WH、経営破綻)が27年12月に買収した米原発建設会社で発生した損失約6500億円の会計処理。
損失は認識した時期に計上するルールがあり、東芝は28年秋頃に認識したとして、29年3月期に約6500億円の損失引当金を計上した。これに対し東芝の監査を担当したPwCあらた監査法人は、27年12月の買収直後から28年3月までに、相当程度か全てを認識できたはずだとし、28年3月期の訂正を求めた。
東芝はPwCあらたから監査意見をもらえないため、6月の有価証券報告書提出期限を8月に延期。最終的にPwCあらたは28年3月期に計上しなかったのは誤りだと指摘した上で、決算全体への影響は限定的として「限定付き適正意見」を出し、東芝は有報を提出した。
関係者によると、監視委はPwCあらた同様、損失認識の時期が28年3月期中で、同期の利益が過大に計上された疑いがあるとみている。数千億円規模の損失額についても決算全体への影響は小さくなく、投資判断に重大な影響を与えたとの見方を強めており、決算の不正を調査する開示検査を実施する方向で検討しているという。
東芝をめぐっては、パソコン事業での不正会計が悪質な粉飾に当たるとして、監視委が歴代3社長の金商法違反罪での刑事告発に向け調査を続けている。

基地の子どもたち、チビチリガマに千羽鶴贈る 「心の痛みを思うと…」 - 沖縄タイムス(2017年10月1日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/150159
https://megalodon.jp/2017-1002-1013-47/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/150159

72年前の沖縄戦で「集団自決(強制集団死)」が起きた読谷(よみたん)村波平のチビチリガマが荒らされ、10代の少年4人が器物損壊容疑で逮捕された事件を受け、米軍基地内の子どもたちやその家族らが30日、ガマを訪ね、1万6千羽の千羽鶴を手向けた。遺品や千羽鶴が壊されたことを知り、「沖縄の人と一緒に心の痛みをなくせる活動をしたい」との願いを込めた。
嘉手納基地に夫が勤めているヘザー・イエイツマンさん(42)が事件発覚後にフェイスブックなどを通じ、「千羽鶴を贈ろう」と呼び掛けた。賛同した在沖縄米軍基地内の小中高10校の児童・生徒が鶴を折り、平和を願って署名したメッセージカードも添えた。
チビチリガマには約30人が訪問。千羽鶴を平和の像に手向けた後、壕の中に納めた。キンザー小学校4年のミナ・ハイアットさん(9)は「10代の子が壊したと聞いてびっくりした。自分たちが鶴を折って返さないといけないと感じた。壕に入ったら悲しくなった」と話した。
遺族会の與那覇徳雄会長は「恒久平和は世界共通の願いだと実感した」と感謝。「ここでは亡くなった人が苦しみ、生き残った人も遺族も今また苦しんでいる。みなさんと平和を学んでいきたい」とあいさつした。事件後、本土の個人や障がい者施設からも千羽鶴の寄贈があったという。
1万6千羽の中には沖縄県内の小学校や幼稚園、海外から届いた鶴も含まれているという。事件前から「集団自決」について学んでいたイエイツマンさんは「こうした活動で歴史を知ることができる。沖縄の人の心の痛みを思う、鶴を贈ったみなさんの気持ちが集まった」と話した。手元にはまだ鶴が残っており、近く再訪するという。

(沖縄県民意識)世代間の溝を埋めよう - 沖縄タイムス(2017年10月2日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/150315
https://megalodon.jp/2017-1002-1014-58/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/150315

復帰後の45年間で今ほど本土と沖縄の溝が深くなっている時期はないが、沖縄内部でも、世代間の意識の溝が深くなっている。
読谷村波平のチビチリガマが荒らされた事件は、警察の調べで、「心霊スポットへの肝試し」を試みた少年4人による「悪ふざけ」の行為だったことが分かった。
チビチリガマは、沖縄戦で「集団自決(強制集団死)」が起き、住民85人が犠牲になった場所である。だが、その歴史的事実も、事実の持つ重みも、若い世代には伝わりにくい。
県内高校生を対象にした平和教育に関するアンケートで、「身近に沖縄戦について話してくれる人はいるか」との問いに対し、2015年調査で初めて、「いない」が多数を占めた。
石嶺傅實読谷村長は「子どもたちに平和教育が行き届かず、沖縄戦が風化しつつある」と懸念する。
世代間の意識の溝は、基地問題にも表れている。
NHKが4月に実施した「復帰45年の沖縄」調査によると、沖縄に米軍基地があることについて、復帰前世代では「否定」が過半数だったのに対し、復帰後世代では「容認」が多数を占めた。
米軍普天間飛行場辺野古移設については、男女別でも世代別でも「反対」が多数を占めたが、世代間で比較すると、復帰前世代で「反対」がより多くなっている。
県が行った15年度の「地域安全保障に関する県民意識調査」でも、同じ傾向がみられた。

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NHKの調査で注目されるのは、基地と沖縄振興策との関連である。
復帰後世代では「振興予算は必要なので、基地があってもよい」と答えた人は45%、「振興予算がなくなっても、基地がない方がよい」は44%で、ほぼ拮抗(きっこう)している。
復帰前世代では「あってもよい」が27%だったのに対し、「ない方がよい」は61%に達し、復帰前世代と復帰後世代の間に大きな意識の隔たりがあることが分かった。
賃金水準が低く、非正規雇用の多い沖縄の若者にとって、いい就職口を確保することは、将来を左右する死活的な問題だ。
歴史体験の違いと、直面する現実の違いが、世代間の意識の違いを生み出しており、その隔たりは想像以上に大きいというべきだろう。
スマホというメディアの存在も、世代を超えた規範や価値の共有を妨げている側面がある。

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沖縄大学客員教授の仲村清司さんは「若い世代に沖縄問題を語る大人への無関心と無視が広がっている」と指摘し、発想の転換を促す。
「埋めるべき溝は『本土』より前に『沖縄』の内部にある」(雑誌『Journalism』)。
復帰前世代の言葉は若者に届いているだろうか。平和教育を上から押しつけたり、「辺野古反対」を一本調子で語るだけでは、世代間の意識の溝を埋めるのは難しい。若者が直面する現実を踏まえた、新たなアプローチが求められている。

(筆洗)「モナリザ」の秘密 - 東京新聞(2017年10月2日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017100202000128.html
https://megalodon.jp/2017-1002-1012-05/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2017100202000128.html

夏目漱石の「永日小品」の中にこんな場面がある。亭主が古道具屋で一枚の西洋画を買ってくる。細君に見せると、「しばらく物も言わずに黄ばんだ女の顔を眺めていたが、やがて、気味の悪い顔です事ねえと云(い)った」。加えて、「この女は何をするかわからない人相だ」と口が悪い。
この絵、レオナルド・ダビンチの「モナリザ」の模写である。その名を聞けば、謎めいたほほ笑みをたたえる美女のイメージしかないが、先入観なく、この絵を初めて目にすれば、存外と、この明治期の女性と同じ感想を持つかもしれない。
モナリザ」に関する新発見というべきか、それとも、新たな謎というべきか。パリ近郊の美術館が所蔵する木炭で描かれた、裸婦画「モナバンナ」(モナは「夫人」の意)。ダビンチの弟子による作品とこれまで考えられてきたが、調査の結果、ダビンチ自身が「モナリザ」の下絵として描いた可能性が出てきたそうだ。
事実とすれば、「裸のモナリザ」である。写真を見る限り、左腕に右腕を添えた独特の姿勢が「モナリザ」に確かに似ている。
ただ、お顔の方はほほ笑み方が少し違うか。顔に限れば、同じダビンチの作品でも「洗礼者ヨハネ」の方をなんとなく思い浮かべる人もいるだろう。
チームはさらに調査を続ける。成果を祈るが、衣を脱いだとて「モナリザ」の秘密は深まるばかりかもしれぬ。