愛鳥週間に椋鳩十の作品を『小社会(250512)』は思う。児童向けの動物文学で知られる椋、太平洋戦争開戦の年の「嵐を越えて」は主人公がツバメ。海を渡る群れがハヤブサに襲われ、戦った1羽が傷つき、落ちた先は日本の軍艦。水兵たちは傷ついたツバメを胸に抱いて寝る。元気になって放つときは〈おれの家は、金沢の雑貨屋だ。そこの軒に巣をつくるんだぞ〉〈おれは鹿児島の漁師だ。いいか、かやぶきの家だ〉。「死が賛美されるような戦争の時代に心を痛め、生命の尊さとかけがえのなさを、動物物語のなかで描いていた」。戦後の「マヤの一生」は、特攻機や米軍機が飛ぶ空の下、ヒバリがのびやかにさえずる。その声を聞くと、戦争のむごい…