昴と川崎亮介は、ふたたび山寺を訪れていた。 和尚の護摩祈祷に、正式に申し込みをしての参座だった。 炎の前に座るのは、川崎にとっては二度目。 昴も、心に迷いが生じたとき、ここへ足が向くようになっていた。 だが、この日の護摩は、いつもと何かが違った。 ――太鼓の音が、鼓膜ではなく、胸の内側に直接響いてくる。 ――法螺の音色が、風のように自分の背中をなでていく。 ――火は確かに燃えているはずなのに、目を閉じると白い光に包まれているような感覚が湧く。 昴は自分の意識が、どこか深い層へと引き込まれていくのを感じていた。 火が唸る。木が爆ぜる音が、なぜか心の痛みを打ち砕いていくように聞こえる。 祈祷が進む…