きょう、ぼくは土を掘ったんだ。ちゃんと手で、そっと、このあたりだったはず……って場所を。だってね、6月の終わりに、たしかに種をまいたんだ。封を切って、3粒ずつ、そっと 土の穴の中に置いた。そのときの手の感触も覚えてる。証拠もあるよ。豆の袋には、ちゃんと日付が書いてある。封は切られて、種はもうない。「記録」と「記憶」が、ちゃんと整合してるんだ。でも──掘っても、掘っても、どこにもいなかった。あれ……?もしかしてぼくの記憶、まちがってるの?それとも、だれかが記憶をすり替えた?いや、そうじゃない。きっとあの子たちは、ぼくの見えないところで、出てこられなかっただけなんだ。カラになった土を見つめながら、…