自民改憲本部 9条第1項と2項を両論併記 論点整理 - 毎日新聞(2017年12月20日)

https://mainichi.jp/articles/20171221/k00/00m/010/002000c
http://archive.is/2017.12.20-083222/https://mainichi.jp/articles/20171221/k00/00m/010/002000c

自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は20日、全体会合を開き、改憲を目指す4項目の論点を整理した。安倍晋三首相が5月3日に提起した自衛隊の存在を明記する改憲を巡っては、9条第1項(戦争放棄)と第2項(戦力不保持)を維持するか、第2項を削除するかで党内の意見が分かれているため、両論を併記した。論点整理は大筋で了承され、同党は年明けから意見集約に入る。
論点整理は「自衛隊がわが国の独立、国の平和と安全、国民の生命と財産を守る上で必要不可欠な存在との見解に異論はなかった」と記述した。
しかし、第1項と第2項を維持する首相の考え方に対し、石破茂元幹事長らは2012年の党憲法改正草案に沿って第2項を削除するよう主張。推進本部は現時点でどちらかに絞るのは得策でないと判断した。第2項削除論に関しては「自衛隊の目的・性格をより明確化する」と説明している。
大規模災害などに備えた緊急事態条項を創設することについても、(1)国会議員の任期を特例で延長(2)政府への権限集中や私権制限の規定−−という二つの意見を並べた。政府への権限集中は12年草案に盛り込まれたが、他党では批判的な意見が強い。
参院選挙区の「合区」を解消するための改憲では、3年ごとの改選で「都道府県から少なくとも1人が選出可能となるよう規定する方向でおおむね意見は一致している」と明記した。
当初、改憲項目として議論してきた教育無償化については、論点整理では「無償化」の文言を使わなかった。党内に否定的見解が多いためで、「国が教育環境の整備を不断に推進すべき旨を規定する」という方向性を示した。
自民党は当初、年内に改憲案をまとめようとしていたが、衆院選などで議論が遅れ、論点整理にとどめた。

(耕論)明治維新150年 三谷博さん、色川大吉さん - 朝日新聞(2017年12月20日)

https://digital.asahi.com/articles/DA3S13281309.html
http://archive.is/2017.12.20-074355/https://www.asahi.com/articles/DA3S13281309.html

来年は明治元年から数えて150年。政府は施策を数々用意し、「明治の精神に学び、更に飛躍する国へ」とうたう。NHK大河ドラマの主役は西郷隆盛だ。だがしかし。私たちは維新の何を知っているだろう。歴史家2人に維新の実像を問い、現代人にとっての意味を聞く。
■武力よりも公議公論を重視 三谷博さん(跡見学園女子大学教授)
明治維新の大きな特徴は、武士という支配身分が消滅したことと、外国の革命に比べ犠牲者が非常に少なかったことです。しかし、この二つには、これまであまり目が向けられませんでした。
維新は革命ではないという思い込みが強かったからだと思います。革命とは下の身分が上に挑戦し、特に君主制を打倒して、多くの犠牲が出るものとされていました。君主が復権し、大名や公家が華族として残った明治維新は革命ではない、だから比較の対象にならないとされてきました。
支配身分の武士と被差別身分がともに廃止され、社会の大幅な再編成が短期間に行われた点で、明治維新は革命といえます。また、維新での死者は約3万人で、フランス革命と比べると2ケタ少ない。暴力をあまり伴わずに権威体制を壊した点で注目すべきです。

     *

明治維新には、はっきりとした原因が見当たりません。黒船来航は原因の一つですが、米国や英国は開国という小さな変化を求めただけで、日本を全面的に変えようとしたわけではなかった。個々の変化は微小なのに、結果として巨大な変化が起きたのが維新です。
歴史に「必然」という言葉を使うべきではないと思います。歴史の事象には無数の因果関係が含まれていますが、複雑系研究が示すように、それが未来を固定するわけではない。飛び離れた因果関係が偶然に絡み合って、大きな変化が生じることもあります。
維新でいえば、安政5(1858)年政変がそれです。外国との条約問題と将軍の後継問題が絡み合い、井伊直弼(いいなおすけ)が大老になって、一橋慶喜ひとつばしよしのぶ)を14代将軍に推す「一橋派」を一掃した。それが徳川体制の大崩壊の引き金となり、同時に「公議」「公論」や王政復古というアイデアも生まれました。
公議とは政治参加の主張です。それを最初に構想したのは越前藩の橋本左内(はしもとさない)でした。安政4年に、大大名の中で実力がある人々を政府に集め、同時に身分にかかわらず優秀な人間を登用すべきだと書いています。左内は安政6年に刑死しますが、公議公論と王政復古は10年かけて浸透していき、幕末最後の年には天皇の下に公議による政体をつくることがコンセンサスになった。最初はゆっくり進行したけれど、合意ができてからは一気に進み、反動も小さかった。
フランス革命は逆で、最初の年に国民議会がつくられ、人権宣言が出されます。3年後には王政を廃止しますが、そのあと迷走します。第三共和制で安定するまでに80年かかってしまった。
大大名のうち、越前藩や薩摩藩は暴力でなく、政治交渉で幕府を説得し、政権参加を実現しようとした。一方、水戸藩長州藩は言論と暴力の両方を使おうとした。
1868年の王政復古クーデターを主導したのは薩摩と土佐藩で、軍事衝突を避けるため、会津藩と長州の兵力引き離しに努めました。それでも鳥羽・伏見の戦いが起きましたが、ごく小規模で終わった。関ケ原以西の大名は天皇を担いだ新政府に従ったので、東北と箱館以外では内戦にならなかった。
維新のプロセスは一直線には進まず、危ない分岐点が多くありましたが、常に戦争を避けようとする選択が行われた。東北、箱館西南戦争では回避に失敗したとはいえ、政治家が暴力の行使より公議公論を重視したからこそ、結果的には犠牲者が少なくてすんだ。

     *

社会のひずみを直そうとするとき、言論だけでなく、暴力もしばしば使われます。幕末の水戸はそれで自滅する悲惨な経験をしました。しかし、維新を主導した人々は公議公論によって乗り越えた。
どうやって言論と暴力を分離するかは、人類の未来にとって非常に重要です。150年を前に、明治維新をただ持ち上げるのではなく、考える材料にすべきと思います。(聞き手 編集委員・尾沢智史)

     ◇

みたにひろし 1950年生まれ。専門は日本近世・近代史。東京大学名誉教授。著書に「明治維新を考える」「愛国・革命・民主」、近刊予定に「維新史再考」。



■民衆のエネルギーが原動力 色川大吉さん(東京経済大学名誉教授)
1968年の「明治100年」を、当時の佐藤栄作首相は政府主催の式典で祝いました。「近代国家発展の源になった明治の国民エネルギーを再認識し」「日本の第二の飛躍に役立たせたい」と、政府は意義をうたいました。
だが、そのころ国内外の情勢は、大学紛争やベトナム反戦、パリ5月革命など、近代化・合理化を至上価値とする現代の資本主義や管理社会への反発が若者の間に噴出し、大荒れでした。
長州奇兵(きへい)隊を創った高杉晋作のような維新の志士たちも、同様に幕藩体制に抵抗し、新しい日本の近代化の道を開こうと悪戦苦闘し斃(たお)れた若者です。その志士たちの成果を、近代の負の側面に無反省な首相らが横取りする。「むかし晋作、いま栄作」と並称して。

     *

それは許せないと私たちは、自由民権運動時代に西多摩の青年らがつくった五日市憲法草案をあの年に見つけ、対抗的にぶつけた。
草案は、国民や議会の権利を重視し、個人の権利保護の仕組みを詳しく定めた実に優れたものです。美智子皇后も草案の人権規定を称賛し、話題になりました。
この草案こそ、草の根の民衆が生み出したものです。そんな民衆の力がなかったら、明治維新のような一連の社会変革を起こしえなかったと私は考えています。維新期には、幕末の未曽有の農村危機に負けず、寺子屋などで知識を積み、生活打開の姿勢を打ち出してきた民衆、とりわけ中農以上の層が大きな役割を果たしました。
これら民衆が自分たちの幸福を実現してくれる歴史の発展方向へと動く。その中で幕末の打ち壊しや世直し一揆の運動も起きる。そうした民衆のエネルギーと、倒幕の志士たちが結びつき、明治の新政府を作ることができました。
しかし、新政府ができてもその後の歴史は民衆の望んだ方向に進まなかった。富国や強兵は強調されたが、政治の民主化や個人の解放といった近代の重要な課題は取り残された。そこで明治10年代になって豪農層を中心に、自由民権運動が強力に展開されたのです。
明治の為政者たちは、西欧列強の植民地政策に対峙(たいじ)するために強力な中央集権国家を作り出すことに全力を注いでいた。当然、民権勢力と激しく対立し、加波山秩父のような民衆によるすさまじい武装蜂起事件を引き起こした。
とはいえ伊藤博文大久保利通らは、歴史の渦の中で鍛えられている。幕藩権力を倒す過程で同志らと死線を乗りこえてきた。変革や民衆のエネルギーがどういうものか、身にしみていました。
だから権力を握っても、ある程度自分にブレーキがかけられた。西欧まで行って勉強し、議会を開いて皆の意見を聞こうと、その根本的な法として憲法も必要だと考えた。民のエネルギーをくみ取る仕組みを、それなりにつくったんです。
だが、その後の日本は結局、民衆の幸福を実現する方向ではなく、「富国強兵」という軍国主義の道を進んで1945年の敗戦に至りました。

     *

敗戦後、日本は軍国主義を完全に否定する平和憲法を持ち、70年以上も、戦争で一人も死なない平和な時代を保ち続けてきた。それと、市民生活がどれだけ内面的にも豊かになったか、社会福祉が充実したものになったかを誇るべきではないかと思います。
それでも先の総選挙では、改憲を唱えて戦後の平和の誓いを怪しくしている安倍晋三首相が大勝しました。その彼らが「明治150年」を祝う官製の行事をやるのなら、私たちは断固反対したい。安倍首相も大叔父の佐藤栄作にならって「むかし晋作、いま晋三」と言いたいところかもしれませんが、仮にもそんなことを言えば、歴史を歪曲(わいきょく)するようなもので、許されません。高杉晋作は革命に命を懸けたのですから。

 (聞き手・大野正美)

     ◇

いろかわだいきち 1925年生まれ。学徒出陣し、戦後は新劇運動、水俣病調査などにかかわる。専門は日本近代史、思想史。著書に「明治精神史」「自由民権」など。

大飯原発1・2号機の廃炉 22日にも正式決定へ - NHK(2017年12月20日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171220/k10011265361000.html
http://archive.is/2017.12.20-062301/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20171220/k10011265361000.html

運転開始から再来年で40年となる福井県にある大飯原子力発電所の1号機と2号機について、関西電力は22日にも廃炉を正式に決定する見通しであることが、関係者への取材でわかりました。廃炉が決まれば、出力が100万キロワット以上の原発は全国で初めてとなります。
東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、原発の運転期間は原則40年と定められましたが、国の特別な審査に合格すれば最大で20年間の延長が認められます。
これについて、関西電力は、再来年に運転開始から40年を迎える福井県にある大飯原発1、2号機について、運転延長を申請するかどうか検討を進めてきました。
その結果、関西電力は、22日にも臨時の取締役会を開き、廃炉を正式に決定する見通しであることが、関係者への取材でわかりました。
大飯原発1、2号機はいずれも出力が117万キロワットあり、これまで廃炉を決めた原発と比べて大型ですが、格納容器のサイズが同じタイプの原発より小さく、緊急時に原子炉を冷やす方法が特殊です。
このため、関西電力は、運転延長のために国の規制基準に合わせて改修すると、多額の費用と時間がかかると判断したものと見られます。
大飯原発1、2号機の廃炉が決まれば、原発事故のあと廃炉になる原発福島第一原発を除いて8基となり、出力が100万キロワット以上の原発の廃炉は全国で初めてとなります。

自民、自衛隊明記へ両論 改憲、他党の提案「真剣に検討」 - 東京新聞(2017年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017122001001281.html
https://megalodon.jp/2017-1220-1511-23/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017122001001281.html

自民党憲法改正推進本部(本部長・細田博之前総務会長)がまとめた改憲4項目に関する論点整理案の全容が20日、判明した。憲法9条への自衛隊明記について、戦争放棄の1項と戦力不保持などを定めた2項を維持する案と、2項を削除して自衛隊の目的や性格をより明確化する案を両論併記した。改憲発議に向け「各党から具体的な意見・提案があれば真剣に検討するなど建設的な議論を行っていきたい」と強調した。
党は午後に憲法改正推進本部の全体会合を党本部で開いた。幹部側は論点整理案を提示し、了承取り付けを目指す。

(共同)

ダレス米長官が改憲支持=「相互防衛に必要」−船田氏らに56年伝達・外交文書公開 - 時事ドットコム(2017年12月20日)

https://www.jiji.com/jc/article?k=2017122000392&g=pol

ダレス米国務長官が1956年3月に来日した際、鳩山一郎政権要人との会談で、日本の憲法改正を支持する考えを伝えていたことが、20日公開の外交文書で分かった。集団的自衛権の行使容認を念頭に「相互防衛」に言及。同時に、軍国主義復活につながらないようくぎを刺すことも忘れなかった。(肩書、国名は当時)
ダレス氏は56年3月18日、東京の米国大使館で重光葵外相、船田中防衛庁長官河野一郎農林相、岸信介自民党幹事長らと会談。同党は55年11月の「保守合同」で発足したばかりで、改憲を党是に据えた。
東西冷戦の緊張が続く中、ダレス氏はソ連の動向などに触れた上で、「日本が世界の進化の責任を再び西太平洋方面で担うことを希望する」と発言。これを受け、船田氏が「しからば憲法改正が重要だ」と訴えた。
ダレス氏は「憲法上、直ちに相互防衛(の体制)をつくることはできぬ状況だから、憲法は改正する必要がある。改憲保守合同の次に重要なことはよく知っている」と述べた。会談録によると、個別の条文への言及はなかったが、9条改正で集団的自衛権行使に道を開き、日米の相互防衛を可能にしたいとの思惑があったとみられる。
当時は終戦から11年余りで、警察予備隊、保安隊を前身とする自衛隊が54年に発足。ダレス氏は「日本が強国となることが米国の希望だ。しかし、これは決して軍国主義に帰ることにあらず、その反対だ」と強調した。
岸氏の孫に当たる安倍晋三首相は2014年、憲法解釈の変更で集団的自衛権行使を容認。これを具体化した安全保障関連法を15年に成立させた。現在は、改憲で9条に自衛隊を明記することなどを目指している。
船田氏の孫は船田元・自民党憲法改正推進本部長代行、河野氏の孫は河野太郎外相。

「森友」国有地 売却協議の詳細判明 「9メートルまでごみ混在、虚偽にならぬ」 - 東京新聞(2017年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017122090070453.html
https://megalodon.jp/2017-1220-0912-36/www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017122090070453.html


学校法人「森友学園」への国有地売却を巡り、昨春行われた学園側と財務、国土交通両省との協議の詳細が本紙が入手した音声データで判明した。八億円超の値引きの根拠となった地中のごみについて、学園側の工事業者は「三メートルより下にあるか分からない」と主張し、虚偽報告の責任を問われかねないと懸念。これに対し、国側は「九メートルまでの範囲でごみが混在」しているとの表現なら、虚偽にならないと説得し、協議をまとめていた。 (望月衣塑子、清水祐樹)
音声データには、昨年三月下旬に行われたとみられる学園側と財務省近畿財務局職員、国交省大阪航空局職員らとの協議などが記録されている。
データでは、国側が「三メートルまで掘ると、その下からごみが出てきたと理解している」と発言。これに対し、工事業者が「ちょっと待ってください。三メートル下から出てきたかどうかは分からない。断言できない。確定した情報として伝えることはできない」と主張した。
さらに国側が「資料を調整する中でどう整理するか協議させてほしい」と要請すると、工事業者は「虚偽を言うつもりはないので事実だけを伝える。ただ、事実を伝えることが学園さんの土地(価格)を下げることに反するなら、そちらに合わせることはやぶさかでない」とやや軟化した。
この後、学園の代理人弁護士(当時)が「そちら(国)側から頼まれてこちらが虚偽の報告をして、後で手のひら返されて『だまされた』と言われたら目も当てられない」と懸念。工事業者は「三メートル下からはそんなに出てきていないんじゃないかな」と付け加えた。
国側は「言い方としては『混在』と、『九メートルまでの範囲』で」と提案したものの、工事業者は「九メートルというのはちょっと分からない」と難色を示した。
しかし、国側が「虚偽にならないように、混在していると。ある程度、三メートル超もある。全部じゃないということ」と説得すると、工事業者がようやく「あると思う」と同意。国側が「そんなところにポイントを絞りたい」と決着させた。
国が算定した地中のごみの量を巡っては、会計検査院が最大七割過大に算定されていた可能性を示した。大阪航空局は、建設用地から実際に撤去したごみが国の算定の百分の一だったことを明らかにしている。
音声データは十一月二十八日の衆院予算委員会財務省が存在を認めた内容を含む、より詳細なもの。本紙が著述家の菅野完(たもつ)氏から入手した。
本紙の取材に財務、国交両省から回答はなく、学園の当時の代理人弁護士は「一切コメントしない」と回答。工事業者の代理人弁護士は電話取材に「国と学園側の落としどころの金額に沿ったものを出したが、根拠が十分ではなかった。こちらの試算では、ごみを完全に撤去する費用は九億数千万円だった」と述べた。

◆口裏合わせ はっきり記録
<解説> 会計検査院の検査では、学校法人「森友学園」への国有地売却で八億円超の大幅値引きの根拠となった地中ごみの処分量が最大七割も過大に算定されていた可能性が示された。一方で、契約に至る資料の一部が廃棄されたことなどが壁となり、価格決定の詳しい経緯は解明できなかった。
しかし、今回、財務省が存在を認めた音声データの全容を詳細に分析すると、地中ごみが地下三メートルより下からはほとんど出ていないにもかかわらず、地下九メートルまであるという形にまとめようと、国側が口裏合わせを求めたともとれるやりとりがはっきりと記録されていた。学園側が、国側のストーリーに合わせて報告を行えば、虚偽にとられかねないと不安視している発言も含まれていた。
なぜ財務省職員らがそんな無理をして値引きしようとしたのか。安倍晋三首相の妻の昭恵氏が小学校の名誉校長に就いたことや、首相夫人付きの職員が国有地について財務省に照会したことが影響した可能性はないのか。
学園側への国有地の売却では、分割払いや価格の非公表などさまざまな特例がなぜか付されていた。その理由も政府はいまだに明らかにしていない。この音声データが明るみに出たのを機に、関係者を国会に呼ぶなどして、もう一度調査をやり直すべきだ。 (望月衣塑子)

「森友」協議 音声データ詳報 - 東京新聞(2017年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122002000124.html
https://megalodon.jp/2017-1220-0940-07/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201712/CK2017122002000124.html

学校法人「森友学園」への国有地売却問題で、地中のごみを巡る学園側と国側の協議の詳細が記録された音声データ。協議には、学園側は籠池泰典(かごいけやすのり)理事長と、妻の諄子(じゅんこ)・幼稚園副園長、学園の代理人弁護士、小学校建設業者、国側は財務省近畿財務局の統括国有財産管理官とその部下、国土交通省大阪航空局職員が出席していたとみられる。 (肩書はいずれも当時)
学園は二〇一五年五月、小学校建設を予定する国有地について国側と定期借地契約を締結。翌六月から十二月にかけて、土壌改良と地中のごみの撤去工事を実施した。
しかし昨年三月十一日、学園側が財務局に「地中から新たなごみが見つかった」と連絡。籠池氏が財務省国有財産審理室長と面会後の同月二十四日、学園側の代理人弁護士が財務局に土地の購入を申し出た。音声データに記録された協議はこの後の三月下旬に行われたとみられる。協議の詳細は次の通り。



学園の代理人弁護士(以下、弁護士) 「うちはリスク負ってやっている。今、口約束できないのは分かるが、鑑定額はこちらの納得いくような金額じゃなかった場合、相当な話になる。そうならないよう資料の作成の仕方とか話の持っていき方は、知恵を絞ってもらわなければいけない。●●さん(工事業者)に見積もり出してくれとか、いろいろ言ったら頑張って出してくれると思うし、こういうのが要るんだというものを詰めて、ピックアップしてほしい。(中略)どういう理屈で、土地の評価を下げようと考えているのか教えてほしい。どうやるのが一番勘所がいいのか。(中略)土壌汚染があるかどうかの調査報告書がほしいなら調査はできる」
工事業者 「分析の状態によって少しずれる可能性、後ろにずれる可能性も。もちろん前にいく可能性もあるが」

(中略)

国側の職員 「われわれ土壌汚染調査も、(大阪府豊中市にも一応手続きをして終わっている整理。まだ出てくるが。現状の考え方は、こういう状況を現認をしたうえで、これを地価に反映させるかして整理ができるのが一番ありがたい。(中略)もっと問題も発生するので、こういったものが内包されていることをもって反映させた形で提示をさせていただければありがたい」

(中略)

弁護士 「調査報告書を二週間、三週間でできるものを出した方がいいのか。(中略)白黒はっきりさせない方がいいんじゃないのかという考え方もある」

国側の職員 「そこはわれわれが現場確認した上で、いかに評価上反映させるか。冒頭話のあった●●さん(工事業者)に『こういう資料出ますか』とお願いしながら作業させていただくのがありがたい」

(中略)

国側の職員 「僕はこの現場だけを見て、写真を撮って、内部にも早く要望を伝えていきたい。僕と●●(部下)は現場へ行って、写真だけ撮らしてもらって、そのうえでいろいろと手続きを進めたいと」

(中略)

弁護士 「先ほど言ったように、土地の価格から処分費用を引いてもらえる話として、土地の評価ができるんだったら。そしたら、その時点で売買代金を処理するし、引けないと言うなら後で請求するしかない」

国側の職員 「金額をまず提示して、それでどうかというところになる。それで合意に至らなければ当然、国が請求を受けるという話になると思う」

(中略)

弁護士 「そういう値段と、そこから処理費用を引けるような形で話をもっていってもらうように。仮に引けなかったとしても、後で請求できるような形にしてもらいたいし、土地の値段もできるだけ低くということでお願いする」

(中略)

籠池理事長 「棟上げの時に、首相夫人来られることになっている。だから日にちの設定をした。設定をしててこんなになってしまった。どうするの、僕の顔は。サミットが終わったついでに、こっち寄ろうかと。あほとちがうか」

弁護士 「そういう目に見えない所で今回の件があるので、私から言えるのは、それはもう分かって、死ぬ気で、値段を下げるところに取り組んでほしい、知恵を絞ってほしいということ。(中略)『お願いします』と言って値段は下がらない。ちょっと失礼かもしれないが、下がる理屈を考えないといけない」

籠池理事長 「信用できるのか。(中略)引っ返すことないの?」

諄子副園長 「●●さん(設計業者)言っていた。『僕は、近財も航空局も信じてない』と言っていた」

(中略)

国側の職員 「前の●●さん(工事業者)、三メートルまで掘ると、その後で、柱状改良というのをやって、その下からごみが出てきたというふうに理解している。(中略)その下にあるごみというのは、国が知らなかった事実なんで、そこはきっちりやる必要はあるというストーリーはイメージしている。三メートル以下からごみが噴出しているという写真などがもし残ってたら」

工事業者 「ちょっと待ってください。そこは語弊があるので。三メートル下から出てきたかどうかは分からない。下から出てきたとは確定、断言できてない。そこにはちょっと大きな差がある。認識をそういうふうに統一した方がいいのであれば合わせる。でもその下から出てきたかどうかは、工事した側の方から、確定した情報としては伝えるのは無理」

国側の職員 「●●さん(工事業者)からそういう話は聞いている。●●さん(設計業者)からもそういうふうに聞いている。どこの層から出てきたか特定したいのでこういう聞き方をしてきた。●●さん(設計業者)もどこから出てきたか、判然としないという話で今までは聞いている。ただ今後、資料を調整する中でどういう整理をするのがいいのか協議させていただけるなら、そういう方向で話し合いをさせていただければありがたい」

工事業者 「虚偽をわれわれは言うつもりもないので、事実だけを伝える。ただ、その事実を伝えることが(森友)学園さんの土地(の価格)を下げることに反するならそちらに合わせることはやぶさかでない」

弁護士 「虚偽という表現があったが、それは●●さん(設計業者)も一緒で、そちら側から頼まれてこちらが虚偽の報告して、後で手のひら返されて、『だまされた』と言われたら、これは目も当てられない話になるので、それは嫌だという話。だから逆に、●●さん(工事業者)とか●●さん(設計業者)の方に、●●(以前の工事業者)がやった三メートルのところから全部出てきたか、と言われたらそれもノーだ」

工事業者 「三メートル下より三メートルの上からの方がたくさん出てきてるので、三メートル下からはそんなにたくさんは出てきていないんじゃないかな」

国側の職員 「言い方としては混在と。九メートルまでの範囲で」

工事業者 「九メートルというのはちょっと分からない。そこまでの下は」

弁護士 「そこは言葉遊びかもしれないが、九メートルの所までガラが入っている可能性を否定できるかと言われたら否定できない。そういう話だ」

工事業者 「その辺をうまくコントロールしてもらえるなら、われわれは資料を提供させてもらう」

国側の職員 「虚偽にならないように、混在していると。ある程度、三メートル超もあると。全部じゃない、ということ」

工事業者 「あると思う」

国側の職員 「そんなところにポイントを絞りたい」

(中略)

弁護士 「言い方悪いが、まず半分はこういう事態が起きたので、損害を最小限にするために一生懸命やっていただけるということで信頼している。もう半分の問題は責任問題に発展しないように頑張っていただけるという意味での信頼を持っている。半分はわれわれのためにやってもらえると。半分はご自身のために頑張ってくださいと」

(中略)

弁護士 「希望としては一億五千万かかるという報告をもらって、それより低い金額で買いたい」

国側の職員 「理事長が考えているマイナスという話になるかというのは、金額の評価に関しては、やるだけやってみて、見ていただいて、判断していただくしかない。いくらと確約できる話でもない。●●先生(学園側代理人弁護士)からも言われて、最大限反映できるような形の手続きをやっている」

行政文書管理 事後に検証できるよう - 東京新聞(2017年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017122002000162.html
https://megalodon.jp/2017-1220-0939-14/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017122002000162.html

政府は行政文書の管理ガイドラインを改定する。確かに学校法人加計学園問題などでも役所の文書の扱いが注目された。だが本当に「改正」なのか。文書を国民の目から遠ざけるのなら許されない。
行政文書とは何か。これは法律上の定義がある。(1)職員が職務上、作成、取得した文書で、(2)組織的に用いるものとして、(3)行政機関が保有しているもの−だ。
政府が考える改正ガイドラインの最も大きく変わる点は「文書管理者」の役割だろう。これは役所の課長級が担い、文書の正確性を確保するため、複数の職員による確認を経た上で、同管理者が確認する。その上で「共用の保存場所に保存」と定める。
だが、正確性とは何か。作成の形式的な手順をいうのか、中身の内容まで指すのか。不明だ。さらに課長級が確認したもののみ、行政文書とされ、その他の文書は不存在扱いとされる恐れはないだろうか。不安に思う。
加計学園問題にあてはめてみると、「総理のご意向」などと書かれた文書が文部科学省から見つかった。内閣官房長官が「怪文書」と言った文書だ。文意が確かと言えないとしても、官僚が必要性を覚え、作成した文書であるには違いない。
前川喜平前文科事務次官も読んだのだから、冒頭に記した行政文書の定義を満たしていよう。改正ガイドラインだと、課長級が仮に内容の正確性に疑問を持つと「総理のご意向」は行政文書に該当しなくなろう。表に出ない。
だから正確性はなかなか定義が困難なはずである。政策決定に紆余曲折(うよきょくせつ)があった場合など、正確性の判定は余計に難しくなる。公文書管理法の目的は「現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすること」である。
つまり、紆余曲折のすべて、意思決定に至る過程を残すことであろう。幸い現代はデジタルの時代だ。「原則一年以上」の保存とする文書も無期限にパソコンに蓄積し、廃棄など無用である。
役所が今でも廃棄するのは、都合の悪い情報なのではと疑うほどだ。今回の改正でも、業務連絡や日程表などは一年未満で廃棄できる。政治家や外部との打ち合わせも重要なデータと考えて、ぜひ保存すべきだ。
歴史的な大事件では、一枚の文書が決定的な意味を持つことがある。検証の意義は大きい。公文書は民主主義の知的資源である原則を忘れないでほしい。

生活保護減額 最低限を支えているか - 東京新聞(2017年12月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017122002000161.html
https://megalodon.jp/2017-1220-0938-23/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017122002000161.html

生活保護のうち食費・光熱費などに充てる生活扶助は来年度から段階的に減額される。利用者の生活を支えられるのか。そもそも基準の決め方が実態に合っているのか、疑問が残ったままの改定だ。
「もうこれが限界ではないか」 保護基準の見直しを検討していた厚生労働省の審議会委員から、その手法に対しこんな声が続いた。保護基準の決め方を根本的に考え直す時機が来ている。
制度は憲法二五条の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障するためのものだ。五年ごとに基準を見直している。
まず最低限度の生活を支える基準を決め、給付額を定めるのが自然な考え方である。だが、現状では一般の消費動向など相対的な比較で基準の増減を決めている。一九八〇年代からこの手法だ。
比較するのは低所得層の消費動向である。この中には本来、保護を受けられる状態の人も多い。制度を利用できる人のうち、実際に利用している人の割合は二割程度といわれる。そうなると保護基準の方が高くなる場合が多く、いきおい引き下げられることになる。
低所得者への経済支援は別途必要だが、前回の基準見直しで生活扶助は平均6・5%減額された。各地で訴訟にもなっている。
経済が成長し賃金が上がる時代では消費の伸びに合わせて基準も上げられた。今は賃金は上がらず消費も縮んでいる。家族の形やライフスタイルも多様化した。社会経済情勢の変化に対応できていないのではないか。
審議会は現在可能な手法で検討を重ねたが、限界も表明した。見直し案を盛り込んだ報告書は、最低限度基準の必要性を指摘し年次計画を立てて手法を検討することを厚労省に強く求めた。
実は前回見直しの際の報告書も同じ指摘をしている。この間、厚労省に検討する姿勢は見えない。
確かに妙案はないようだ。ただ、例えば戦後間もなくは、食費や被服費など個々の費用を積み上げて必要額を決めていた。今回の審議会の議論でも、新手法の試案なども提供された。複数の手法を使って基準を決めることはできないものだろうか。
今は約百六十四万世帯が保護を利用し高齢世帯は53%を占める。今後も無年金・低年金で制度を利用する高齢者は増えるだろう。
安倍政権は、格差是正や貧困の連鎖を断つ政策を柱に掲げる。ならば「最低限度」を定める検討を正面から取り組むべきだ。 

記者の目 NHK受信料 最高裁「合憲」判決 自ら「公共性」の意義示せ=犬飼直幸(東京学芸部) - 毎日新聞(2017年12月20日)

https://mainichi.jp/articles/20171220/ddm/005/070/006000c
http://archive.is/2017.12.20-001502/https://mainichi.jp/articles/20171220/ddm/005/070/006000c

テレビがあると、なぜNHKに受信料を払わないといけないのか−−。疑問を持ったことがある人は少なくないだろう。1950年にNHKが「公共放送」として発足して以来、長く議論されてきた問題に、最高裁が6日、決着をつける判決を言い渡した。放送法に基づく受信料制度を合憲として、テレビを持つ人の受信契約や支払いに法的義務があるとする初判断を示した。
この判断自体は、地裁・高裁で同様の判決が続いていただけに、予想の範囲内だった。むしろ、放送を担当する記者として、判決前に学者や政府関係者らと注目していたのは、最高裁が大法廷まで開く以上、NHKだけに特権的な受信料徴収が許される理由について、そのよりどころとなる「公共性」の中身まで踏み込んで説明するのではないか、ということだった。
しかし、最高裁が示した合憲の理由付けは、受信料を財源とする公共放送と広告収入で賄う民放による「二元体制」の中で、NHKには「国民の知る権利」などに貢献する目的があるとしただけだった。これは大事な使命だと思うが、民放にも当てはまる役割だし、具体的内容にも触れず、正直言って拍子抜けした。若者らの「テレビ離れ」に伴ってインターネットでの視聴が進む時代に、NHKが事業拡大を図るネットでの「公共性」への言及もなく、総じて現状の追認にとどまった。では、6769億円もの巨額の受信料(2016年度)を徴収し得る根拠としての「公共性」とは何だろうか。

自主自律の報道、実態に疑問多く
そもそもNHKの目的は、放送法に「公共の福祉のために、あまねく全国で受信できるように豊かで良い番組を放送する」と記されている。NHKは、財源が税金でも広告収入でもなく、視聴者からの受信料だからこそ、特定の利益や視聴率に影響されずに政府から独立した「公共放送」として、「公平公正の報道機関の役割を果たせる」と説明しており、最高裁も同様の認識を示した。
ただ、NHKの上田良一会長が11月の記者会見で「公共性」について「いろんな解釈がある」と話したように、「NHKの存在意義は何か、国民的な合意はできていない」(幹部)状況だ。
例えば、法務省が4月に最高裁に出した意見書では、合憲の根拠として、NHKの災害・有事放送の意義を挙げた。災害や有事の際の放送義務は民放にも課されており、政府やNHK内からも「放送法には、NHKが文化の向上に努めることなども書かれているのに、役割を狭め過ぎだ」と疑問の声が上がった。
公共性を保ち続けるには自主自律が必要であり、時に権力に対する手厳しい批判も求められる。この点、NHKが役割を果たしているかは疑問だ。6月には安倍晋三首相の友人が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題を巡り、前川喜平・前文部科学事務次官が「最初にNHKにインタビューされたのに放送されない」と明かすなど、政権への配慮があったのではないかと指摘された。
NHK予算は国会承認が必要で、経営委員や会長の人選について総務相経験者は「実質的に政府主導」と明かす。首相側近も人選に関与した籾井(もみい)勝人前会長は、外国向け放送について「政府が右といっているものを左というわけにいかない」と話すなど政権寄りの言動が目立ち、トップ自ら「自主自律」への不信を招いた。視聴者である市民に沿う顔を見せながら、予算承認などで政権与党にも配慮せざるを得ない構造を抱え、NHKの姿勢や役割が分かりにくい原因になっている。番組面でも民放との視聴率競争を意識した内容や編成が目立つ。

ネット事業などで「肥大化」懸念も
最高裁判決での受信料制度の合憲性の根拠付けはあいまいだが、NHKの役割として、災害・有事での「狭義の公共性」よりも幅広い価値を認めようとした。受信契約についても「申込書が届いただけで成立する」とのNHKの主張は退け、未契約者に「公共放送」の意義を説明しながら承諾を得るのが基本とした。私は、NHK自身が視聴者の信頼を得る努力の中で、不断に「公共性」を錬磨せよとのメッセージととらえた。
上田会長はネットも活用した「公共メディア」への進化も見据え、来年1月に議決される18〜20年度の経営計画で「公共放送の価値を定義したい」との意向を示す。
受信料収入は3年連続で過去最高を更新しているが、値下げはしない方向だ。「公共メディア」の柱として19年度開始を目指す番組のネット常時同時配信の実現などに使うためだという。しかしネット事業の収益化に苦労する民放は「NHKに採算度外視で乗り出されると『二元体制』が崩れかねない」と警戒する。
私自身は、「国民の知る権利」に応えるべきNHKの報道機関としての実践に不満はあるが、Eテレのような教育番組は民放では見られないし、大河ドラマなども見るので受信料を払う。しかし、納得のいかない人も多いと思う。「肥大化」の懸念も強まる中、NHKが説得力のある「公共放送」の在り方を示せるかが問われており、今後も取材を通してチェックしたい。