これより一席、あい務めまするの図。 これからユーチューブ収録である。ほぼ月一ペースで、機材一式が詰まったトランクを提げて、ディレクター氏がご来訪くださる。当方は待ち受けて、講釈師の物真似よろしく昔噺を語るだけだ。新たに勉強した成果を視聴者さまがたに問うわけではない。ほとんど消失してしまった記憶の塵箱から、わずかに消え残った断片を拾い集めては継ぎはぎして、なんとか時間内の小噺に仕立てるだけだ。跳んだり脱線したりの与太噺である。 語った後も、バリを削ったり、要所を繋げたりの編集作業は、ディレクター氏にすべて任せっきりだ。語り損なっても修正すらしない。語り間違いはすべて、耄碌演者の勘違いとして放置す…