JR奈良駅から三条通へ出て、東へ歩く。観光客の声が流れ、土産物屋が並び、道の向こうには奈良公園や古刹の気配がある。奈良の中心にありながら、その店の前だけ、少し時間の流れが違って見える。 「今西本店」 白い瓦屋根の下に、深く年を重ねた木の看板が掲げられている。大きく書かれた金色の文字は、派手ではない。けれど、年月に磨かれたような力がある。看板の左には「元祖製造元 今西本店」とある。古い木目の上に置かれた文字が、単なる店名ではなく、ひとつの来歴のように見える。 店の建物は、築400年。軒の低さ、黒く沈んだ梁、入口の奥に見える暗がりを眺めていると、その長さが少しずつ現実のものになってくる。そこには、…