孫から預かった金魚が、一年足らずで死んでしまってから三週間がたった。 空っぽになった金魚鉢は、いまだに玄関の同じ場所にある。毎日そこを通るたびに、自然と目がいく。「あ、餌をあげなきゃ」と、もういないはずの小さな命を思い出してしまう。遅く帰った日には、起こさないようにと電気を点けずにそっと玄関を開ける――そんな習慣も、まだ体に染みついたままだ。 たった一匹の金魚だったのに、いや、だからこそだったのかもしれない。自分以外の”生”あるものと過ごした時間は、思いのほか大きかった。はじめは「もう生き物は飼わない」と決めていたのに、成り行きで預かったあの金魚。それでも可愛くて、気づけば毎朝の声かけが日課に…