今日もおつかれさま。 今日は中野重治の『歌』を贈ります。 おまえは歌うな おまえは赤ままの花やとんぼの羽を歌うな 風のささやきや女の髪の毛の匂いを歌うな すべてのひよわなもの すべての風情を擯斥(ひんせき)せよ もつぱら正直のところを 腹の足しになるところを 胸さきを突きあげてくるぎりぎりのところを歌え たたかれることによって弾(は)ねかえる歌を 恥辱の底から勇気を汲みとる歌を それらの歌々を 咽喉をふくらまして厳しい韻律に歌いあげよ それらの歌々を 行く行く人びとの胸郭にたたきこめ 歌はなにもカラオケで歌うものだけはありません。 会話の言葉も、ひとりごつ言葉も、書き殴る言葉も、私から生まれる…