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2016-12-06

機材は進化したけれど…… ブレア・ウィッチ

| 22:04 | 機材は進化したけれど…… ブレア・ウィッチを含むブックマーク

 昨年のベストである「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の第1作目、最初の「マッドマックス」は長年「もっとも少ない予算でたくさん稼いだ映画(経済効率のいい映画)」としてギネスに認定されていたらしいのだが、それを追い抜いたのが1999年の「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」と言われている。この作品は「森で遭難した学生たちの撮影した映像が発見されたので、それを粗編集しただけで公開してみました」という体の、いわゆる「POV(ポイント・オブ・ビュー)」というジャンルの作品。もちろんそれ以前にも「食人族」とか同様の形式の映画はあったのだが、本作以降同様の形式の「低予算のホラー」が大量に作られこのジャンルの中興の祖とでもいうべき作品となった。今では「POVだけどきちんと予算もかけ、めっちゃ構成も考えられた作品」なんかもあって(このブログで取り上げた作品だと「クローバーフィールド」「トロール・ハンター」「クロニクル」など)、ジャンルとして定着しているがそれもこの「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」あればこそ。そんな記念碑的作品の正統続編が登場。「ブレア・ウィッチ」を観賞。

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物語

 かつてブレアの森で失踪した学生の一人ヘザーの弟ジェームズはYouTubeで姉らしき人物が映った動画を発見。まだ姉が生きていると確信したジェームズは動画の投稿主にコンタクトを取り、同時に森に姉を探しに出かけることを決め、仲間のリサはその様子を卒業制作ドキュメンタリー映画として収めようとする。ジョーンズとアシュリーの4人でバーキッツヴィルへ向かう。

 動画の主レーンとタリアを加え6人で森の奥深くへ進む一行。アクシデントがありながらも一日目は順調に進み夜を迎えるが…

 えー、「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」は公開当時、実際にあった出来事(本当に発見されたフィルム)という売り文句で宣伝されたと思うのだけれど、もちろん全部創作です。モデルになった事件はあるのだけれど、ブレアの魔女の呪いも、コフィン・ロックの事件もラスティン・パーの事件も映画のために作られた伝説。当然映画は純然たるフィクションです。行方不明になった3人は全員役者できちんと脚本もあったらしい。ただ実際にテントで寝てる時に音を立てたりして出演者をびくつかせた、脚本といってもアドリブも多い、みたいなのはあるようだけど。

 今回特に過去作(「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」と「ブレアウィッチ2」など)を見返すことはなく、馴染みの単語が出てくることで思い出しながら観ていたのだが、自分は映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」は決してつまらなくはなかったけれど、本編よりその背景となる「ブレアの魔女の伝説」の方が面白かったな、と記憶を呼び起こした。ちょっとタイトルは失念したけれど、普通に都市伝説としてのバーキッツヴィルに伝わる魔女伝説を追ったドキュメンタリー(地元の歴史家のインタビューなどで構成される)の方が興味深かった記憶がある。確か元は「発見された学生のフィルム」と「インタビューなどで構成されるドキュメンタリー」の2つを組み合わせて一つの作品とするところを「発見された学生のフィルム」だけで本編としたんじゃなかったっけかな?

 映画は特にラスト近くのヘザーのどアップの自撮り映像が象徴的に扱われ(ポスターやソフトのパッケージにもなっている)、多くのパロディも産んだ。もう一つの象徴であるスティックマン(今回も出てくる)は漢字の「文」にしか見えなくてあんまり怖くなかったけれど。ただなんといっても低予算の作品なので結局何が起きたかはよくわからないし、何かクリーチャーが出てくるわけでもなく、消化不良に感じたひとも多いのではないかと思う。

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 今回は「正統続編」とのことだが、前作の直後にも続編があって、こちらは普通の劇映画である。ただ監督は「ウェスト・メンフィス3」*1の事件を追ったドキュメンタリー監督のジョーバーリンジャーで、「ブレア・ウィッチの呪い」におけるコフィン・ロックの事件はこのウェスト・メンフィスの事件がモデルとされているので、ある意味本家の監督に続編を託した形となったのだが、完全な劇映画として撮られたことが良くなかったのか、この続編は不評で、ブレア・ウィッチ・プロジェクトブームは終わりを告げた。当時(ソフトになってから見た)は確かにそんなに面白くなかった気がするけれど、POVでなきゃ!って前提が必要ない今見たらまた評価は変わるかも。

 だからかどうか、本作は1作目同様POVの「行方不明になった学生の残した映像を粗編集したもの」というオリジナル同様の体裁を取っていて、さらに主要登場人物の一人に1作目のヘザーの弟という人物を配することで正当性を高めている。

 前作から20年後(前作は製作は1999年だが設定は1994年に行方不明なった学生のフィルムが1年後に発見されたというもの)、の2014年に行方不明になった設定なので、POVと一口に言っても前作からいろいろパワーアップはしている。まずは動画を撮影する機材が小型化して増えたこと。4人は自分の視点で撮影できるウェアラブルのカメラをつけているし、それとは別に通常のカメラもある。またキャンプの時などは定点カメラも設置したりする。そのため、1作目は基本的に一つのカメラだけだったと思うが、本作はめまぐるしく視点は変わる。また、ドローンが登場して高く俯瞰の映像もあったりする。この撮影された映像はそれぞれの機材にカードとして記録されているのか、一つのパソコンにデータとして集められてるのかは分からないが、もしもそれぞれの機材にデータが収められているなら、「発見された映像」という設定とは矛盾もあるかもしれない。

 映像としてはいろいろ見せ方も工夫しているのだけれど、1作目から15年以上経った現在、そんなに新味のある映像というわけでもない。ちょっとだけクリーチャーっぽいのも出てきたりはするんだけどね。

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 登場人物は主に6人だけで、4人の学生と地元のカップルに分けられる。主人公といえるのはヘザーの弟ジェームズと発見された映像の監督であるリサの二人で仲間として黒人のカップル、ジョーンズとアシュリー、そしてきっかけとなる動画をYouTubeに投稿した地元のカップル、レーンとタリア。

 レーンとタリアは自分たちもヘザー探索に加わることを条件に映像を撮影した場所をジェームズたちに教えるが、この二人は部屋に南部連合の旗を飾っているような連中でそれを見たジョーンズとアシュリーが嫌な顔をするシーンなんかは細かい。

 森のなかで神経がすり減らされていくうちに仲間内で揉め始め、やがて一人づつ姿を消していく定番の流れなのだが、よくわかんないながらも手間がかかっているな、という感じは伝わってくる。

 ただ、個人的にはこの登場人物の中では主人公格であるジェームズとリサより、途中で別行動を取るレーンとタリアのカップルの方が面白かった。浅利陽介ナオミ・ワッツを若くしたような感じの二人は地元の人間だけあって「ブレアウィッチの呪い」にも詳しい。4人と別れた後は基本的に彼らの視点にはならないのだが、どうやらジェームズたちが1日過ごした間の森で迷って5日間過ごしたらしいことが示されたり(後半にレーンが登場するときも一人だけヒゲモジャになっていて、違う時間速度を過ごしていたことが暗示されていたりする)、絶対レーンとタリアの撮影した映像のほうが面白いよなーとか思ったりした。

 後は1作目も2作目も有名な俳優は出ていないのだけれど、役者のファーストネームと役の名前が同じだったりしてその辺でリアルさと臨場感が出ていたのだが、本作はキャスト名と役名がバラバラだったのもマイナス点といえばマイナス点。

 作品世界の原作者で1作めの監督だったダニエル・マイリックとエドゥワルドサンチェスは製作総指揮に周り、監督はアダム・ウィンガード。脚本のサイモン・バレットとのコンビで主にスリラーやホラーを撮っているようです。

D

 結果としては今回も何も分からないのですよ。一応カイルくん(ラスティン・パー事件の生存者)や1作目の誰かがなんで壁の方、向いてたのか?とかはなんとなく分かるようにはなってるんだけど、あくまでPOVとして「実際にあったこと」を気取ってるので物語的な解決はないです。

 個人的に観ていて、この「ブレアウィッチの呪い」のキーワード(エリー・ケドワードとかラスティン・パーとか)が出てくるたびに「あ、オレが面白いとおもったのはこの都市伝説にまつわるドキュメンタリーモキュメンタリー)の方でPOVの本編じゃないや」とか思っていたので正直、元々期待していたわけでもないけれどやはり物足りなかったなあ。

 まだ「実際にあったこと」として「発見された映像」に真実味があった1作目直後の続編であればPOVの形式にこだわるのもわかるけれど、あれから15年以上経って、もう誰も「実際にあったこと」とは思っていないのだから、きちんと劇映画として製作したほうが良かったと思う。その意味では「ブレアウィッチ2」と本作「ブレア・ウィッチ」は制作する順番を間違えたのかもしれない。

当時購入した記憶。

 この「ブレアウィッチの呪い」という魔女伝説自体は十分魅力的なので、この世界観に基づく物語は今後も観たい気はするのだけれど、それはちゃんとした劇映画であってほしいなあ、と思う(でなきゃPOVでないモキュメンタリー)。

*1アーカンソー州のウェスト・メンフィス1993年に起きた殺人事件で3人の少年が犯人として捕まった事件において、冤罪の可能性が高いその3人の少年の通称

2016-11-26

人類の歴史は戦争の歴史! 戦争映画ベストテン!(小覇王・選)

| 22:38 | 人類の歴史は戦争の歴史! 戦争映画ベストテン!(小覇王・選)を含むブックマーク

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 子供の頃から現在まで簡単な怪我をすると思わず「衛生兵衛生兵!」と叫んでしまう習慣を持つ小覇王です!さて、年末も近くなってきたので、恒例のワッシュさん(id:washburn1975)のベストテン企画ですよ。今年は戦争映画とのこと。一口に戦争映画と言ってもいろいろあるなあ、と思ったんですが、なんだか今年は思い浮かぶ作品が少なくて苦慮すると言う感じになりました。別にフィクションとしての戦争題材の作品は嫌いとかではないんですけど。

 ランキングや作品選択の公式ルール(そんなお硬いものじゃありませんが)は上記リンク先のワッシュさんのサイトを見てもらうとして、悩んだのは主に時代設定ですね。一応SFなんかもOKということで未来を舞台にした架空の戦争を題材にした作品は全然問題なしです。ただ「戦争映画」と言った時に多くの人が思い浮かべる戦争は南北戦争普仏戦争(同時期の我が国の戦争なら戊辰戦争)辺りから始まって第二次世界大戦ベトナム戦争当たりの近現代戦だと思うんですよね。紀元前ペルシャ戦争や、三国志赤壁の戦いを題材にした作品を思い浮かべる人はそんなにいないのでは?と思ったりします。史劇との境が曖昧というか。とはいえ広く戦争ということでその辺からもピックアップしました。

 後は戦争というと人類の愚行なわけで、必ずしも見て楽しい!だけでは終わらないんですが、でもまずは楽しい作品を選んだつもりです。その上で各作品、少しは考えるところがあればいいかな、と。

 それではまずはランキングから。

  1. 大脱走1963年 ジョン・スタージェス監督 アメリカ 第二次世界大戦
  2. フルメタル・ジャケット1987年 スタンリー・キューブリック監督 アメリカ ベトナム戦争
  3. 地獄の黙示録1979年 フランシス・フォード・コッポラ監督 アメリカ ベトナム戦争
  4. 300<スリーハンドレッド>(2007年 ザック・スナイダー監督 アメリカ ペルシア戦争
  5. ブラックホーク・ダウン(2001年 リドリー・スコット監督 アメリカ ソマリア内戦)
  6. 機動戦士ガンダム掘,瓩阿蠅△け宙編(1982年 富野喜幸監督 日本 一年戦争
  7. 西部戦線異状なし1930年 ルイス・マイルストン監督 アメリカ 第一次世界大戦
  8. 戦火の馬2011年 スティーブン・スピルバーグ監督 アメリカ 第一次世界大戦
  9. スターシップ・トゥルーパーズ1997年 ポール・バーホーベン監督 アメリカ アラクニド・バグズとの紛争*1
  10. レッド・クリフ(2008年 ジョン・ウー監督 中・香港・日・韓・台湾 赤壁の戦い

 

 一位は圧倒的大差でダントツなんですが、後はむりくり順位付けましたが、実際のところそれほど差はありません。邦画はアニメが一本で、意外にも第二次世界大戦ものが一本だけ、と言う感じ。古代から2本、未来が2本。ほとんどがアメリカ映画ですが最後は東アジア連合とでもいった感じに。では各作品の紹介を簡単に。

大脱走

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 いきなり戦闘描写が殆ど無く、しかも唯一の第二次世界大戦を舞台にした作品。でもやっぱり「大脱走」は外せないのですよ。オールスターキャストによるドイツ捕虜収容所からの脱走劇。実際にあった出来事を元に上手くアレンジ(独立記念日の出来事は他の収容所でのエピソード)を加えて痛快娯楽作に仕上がっています。最後に明らかになる脱走した捕虜たちの結末は史実通りなのですが、暗くなること無く希望を残した最後は見事だと思います。

 詳しくは以前書いた記事で。

フルメタル・ジャケット

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 リー・アーメイ演じるハートマン軍曹のもと行われる新兵の訓練が鮮烈なキューブリック作品。このシーンは「人は殺しちゃ駄目」っていう社会でのルールが染み付いた新兵を一旦バラバラにして、戦場で人を殺せるようにするっていうとても残酷な儀式なんですよね。そして戦争から帰ってきてもそれが染み付いてると「ランボー」みたいになってしまう。マシンガンのようなトークも裏を返せば残酷。

 ちなみに「ほほえみデブ」ことヴィンセント・ドノフリオMCUデアデビル」ではキングピン!)はいつまで経ってもこの「ほほえみデブ」の印象が忘れられなく、他の作品で見かけても(それが悪役ならなおさら)「あのほほえみデブがこんなに立派に(悪く)なって……」と感慨深くなってしまいます。

 前半が好きで前半だけ見て終わる、ということも多いんですが後半のベトナムでの狙撃戦も見どころです。

地獄の黙示録

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 続いてもベトナム戦争。原作ジョゼフ・コンラッドの「闇の奥」はアフリカコンゴが舞台だが、ベトナムを舞台に翻案。こちらも「フルメタル・ジャケット」同様前半のキルゴア大佐のシーンが強烈で、僕の場合後半は殆ど見ないんだけど、それでもその前半だけでベストテンのこの位置につけるぐらい印象強いです。

300<スリーハンドレッド>

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 一気に時代はさかのぼり、紀元前ギリシアペルシア戦争の最大の見せ場「テルモピュライの戦い」を描いた筋肉絵巻。敵も味方も裸、裸。裸・裸・裸・LOVEソング!原作はフランク・ミラー先生のグラフィック・ノベルで絵作りもほぼ忠実に再現。まあスパルタの奴らが「民主主義のために!」とかいってもなんだかなあ、と言う感じだし、誇張も多い(というかほぼ全般的に誇張されている)し、クセルクセスはじめとするペルシア軍の描写がアレでイラク(当時のペルシア領域)から非難されたり問題の多い作品ではあるんだけど、面白いことは確かなのです。戦争映画としてみた場合、続編である「サラミスの海戦」を描いた「帝国の進撃」の方がよく出来ているような気もしますが、面白いのは断然こちら。

過去の感想記事はこちら(続編の方についての記事ですが1作目についても触れています)。

ブラックホーク・ダウン

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 ソマリア内戦に派遣された米軍の悲劇を描いた作品。出動してすぐに衛生兵のお世話になるほど混乱した事態に。「プライベート・ライアン」での「とにかく観客をいきなり銃弾が飛び交う戦場に放り込む」という作劇が生きた映画。不謹慎な見方だけどハッパ決めたソマリア民兵が多少の銃弾を受けたぐらいでは平気の平左で向かってくるさまはちょっとしたゾンビ映画のよう。

機動戦士ガンダム掘,瓩阿蠅△け宙編

 もう何度目かのベストテン入り。宇宙世紀ガンダム銀河英雄伝説、そしてスタートレックの3作品は架空の未来史のなかでもほぼ現実の歴史に近いくらいの感じで自分の血肉となっているのだけれど、やはり完成度ではこちらかと。

 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになってすでに半世紀。宇宙世紀0079、地球から最も遠い月の裏側にある宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り地球連邦独立戦争を挑んできた。総人口の半数を死に至らしめ、人々は自らの行為に恐怖した…

 後に一年戦争と呼称される戦争の後半部分を描いた更にその最終幕。主人公こそスーパーメカに乗る超人(便宜上の言い方)だけれど、それだけでなくきちんと一兵卒の悲劇も描かれている。多分今後も何かあるたびランキングするであろう一作。

 

西部戦線異状なし

 第一次世界大戦ドイツ兵士の視点で描いた異色作(というか第一次世界大戦物の先駆けであり決定版)。最初はちょっとした英雄になれるという程度の軽い気分で志願した若者が帰ってくると戦場の悲惨さを知らない扇動屋がまだ若者を煽っていた、という今でも十分に通じる視点。

西部戦線異状なし [Blu-ray]

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戦火の馬

 その第一次世界大戦を舞台にした作品をも一作。当時のヨーロッパは半世紀近く戦争がない仮初めの平和状態で、戦争開始当初は比較的牧歌的な雰囲気で年内には終わると思われていたので、戦争が終わる頃には、ちょうどクリスマスで帰ってきたら英雄扱いされて女の子にモテモテみたいな気分で若者たちがこぞって兵役に志願したが、この戦争は世界中を巻き込み何年も続くのであった。「戦火の馬」は初期のその牧歌的な騎馬戦闘に始まり、悲惨な塹壕戦、そして戦車や毒ガス兵器といった新兵器の登場といった第一次世界大戦の流れを徴用された馬の立場から描いています。イギリスフランスドイツと割と全立場を公平に描いていると思います。

 過去の感想記事はこちら。

 他第一次世界大戦の悲劇を描いた作品だと「ジョニーは戦場へ行った」もオススメ。

スターシップ・トゥルーパーズ

 こちらももう何度もランクインしてますね。宇宙の昆虫型生物アラクニド・バグズとの戦争を描いた未来史。意思疎通の取れない相手との戦争という地球だけを舞台にしていたのではありえない作品(「ブラックホーク・ダウン」の民兵とか割りとそれに近い視点だったとは思うのだが)。未来だけど戦場では歩兵が叫んで突撃!という人命軽視な作戦が基本戦術。その全体主義軍国主義的な未来社会も見どころ。最もその描写は割りとぬるく、アメリカ人の考えるファシズム社会ってこんなもんか、って感じではあるのですが。軍国主義賛美な部分は原作のロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士」では割りとガチな感じで論争になったりしたのですが、映画の方は「ロボコップ」のスタッフが手がけているだけあって皮肉を重視したものに(でも誤解する奴がいるんだよなあ)。

レッド・クリフ(前後編の二部作だけど、あえてランクインさせるが一本だけならPart2の方で)

 我が国でも古くから需要されてきた中国後漢末期〜三国時代を舞台にした「三国志三国演義)」の中でもクライマックス、赤壁の戦いを舞台にした一大歴史絵巻。男(漢)を描かせたら天下一、ジョン・ウーが手がけていて、戦争の理由に曹操小喬への横恋慕を持ってきてるのはあれだし、黄蓋周瑜の苦肉の策が無かったり注文つけたいところも多いのだけど、やはり周瑜と呉をきちんと主人公として描いた作品は稀、ということで(当方、小覇王というHNからわかる通り三国志では呉推しです)それだけで賞賛に値する作品だったりするのです。

過去の感想記事はこちら(共に旧ブログです)。

レッドクリフ PartI&II DVDツインパック

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鳩も出ますよ!

 第二次世界大戦を舞台にした物が一作だけで、太平洋戦争、特に日本映画がないのは自分的には意外でもなんでもなく、あんまり邦画の戦争モノは好きじゃないです。前回感想を書いた「この世界の片隅に」は面白かったけれど、更新はされないかなあ。後は見たつもりになってるて実は見てない映画もこのジャンルは結構多かったことが今回改めて選んでみて反省。つまり過去の作品でも見てない有名作品はいくらでもあるわけで、今後新作に加えてそういう過去の作品も見て改めて入るかもしれませんね。

 前回のベストテンはこちら(それ以前はこの記事のリンクからさかのぼっていただけると助かります)。

*1:正式名不詳

2016-11-21

日常が非日常になる時 この世界の片隅に

| 21:31 | 日常が非日常になる時 この世界の片隅にを含むブックマーク

 今年は奇跡的な邦画の当たり年だそうで、「シン・ゴジラ」がヒットしたと思ったら次はアニメ映画君の名は。」がそれを越える大ヒット。この2つは夏公開なのに今も上映が続いてますね。もちろん例年邦画のヒット作はあるのだけれど、ここまでロングランになったのって体感的には「もののけ姫」以来かも。他にも「貞子VS伽椰子」や「聲の形」などもヒットしているみたいです。

 ただ、残念なことに個人的にはあんまりその勢いには乗れずちょっとひねくれた状態が続いています。「シン・ゴジラ」は僕も劇場に観に行って面白かったけれど、応援上映とかああいうノリには至らず。というか僕はあの作品、登場人物で人類側には全く興味が湧かなかったんですよね。なのでゴジラの暴れぶりは観たいけれど人間ドラマに歓声を上げる見方は全くできなかった。「聲の形」は原作漫画は連載で読んではいたけど、アニメで観たいとは思わなかった。「貞子VS伽椰子」に至っては多分今年のワースト1です……

 また「君の名は。」は予告編の段階で、キャラクターデザイン声優、音楽、予告編から伺える物語&演出のそのどれもが自分の感覚と惹かれ合うものがなかったのでどんなに話題になっていようとスルー。観ていないので何も言えませんが、アニメはこういう実際の良し悪し以前に絵で受け付けないとか多くて*1、「君の名は。」はそのどれもが当てはまってしまった感じ。もしかしたら観て大満足する可能性もあるけれど。ただ僕が11月半ばに劇場で入場券を買っている時に隣の窓口で80歳ぐらいのご婦人が「『君の名は。』一枚」とチケット買っていたので、「ああ本当に大ヒットしているんだなあ」と思い知った次第(真知子巻きの方の「君の名は」と間違えていないことを願う)。もちろん邦画のヒットは喜ばしいことです。

 で、そんな中、ツイッターのTLで話題になっていて、興味が触れたのが今回観に行った作品。「この世界の片隅に」を観賞。

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物語

 1944年(昭和19年)広島市から呉の北條家に嫁いだ浦野すず。ちょっとのんびりしたところがあり失敗もいいけれど持ち前の性格から夫・周作の家族ともうまくやって細やかに幸せに暮らしていた。軍港である呉は米軍による空襲も多く、また徐々に生活も苦しくなっていく。すずも爆撃で右手と姪の晴海を失う。やがて昭和20年8月6日が…

 原作はこうの史代の2006年から2007年に連載された漫画作品。この感想を書いている時点ではまだ原作は読んでいないが熱心なファンを持つらしく、本作はクラウドファンディングで制作費を集め制作されたらしい。

 僕は映画になるまで存在を知らなかったので、ツイッターのTLでは漫画家著名人が絶賛していたのを見て知った形。ただどうしてもこういう絶賛攻勢には身構えてしまうところもあって、特に邦画の場合著名人がそのまま原作者だったり制作者だったりの友人・身内だったりすることもあって、そのまま口コミが信用出来ない感じではあった。何しろ去年のことがあるからね。きっかけとなったのは次の漫画家とり・みきツイート

 自分はまさにこの「「観ねえ」と思うへそ曲がり」だったのだが、わりとこのツイートがきっかけで観に行った部分はあります(後は後述するけれど作品外のところの騒ぎもちょっと嫌だった)。

 なので、まあハードルあげて、ちょっと構えて観た部分はあったのだけれど、作品自体は悠々とこちらのハードルを飛び越える出来でした。

日常としての戦中とサスペンス

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 実は最初キャラクターの絵柄を観た時にはこの原作者のこうの史代という人自体を知らなかったので「シャーロッキアン!」の池田邦彦の絵柄に似てるなあ、と思ったのだった。この人も戦後すぐぐらいの舞台を多く描いているし。ただ全然関係はないようですね。

 いわゆる太平洋戦争中を描いた作品だけれど、ことさらそれが強調されることもなく、基本は庶民の生活という日常を描きながら徐々に生活が戦争に侵食されていく。作中では生活が苦しくなっていくのは敗戦の1945年に入ってからという感じだが、日本軍の敗北がほぼ決まったミッドウェー海戦は1942年の6月なので、ここで止めておけば良かったのに、と思わずにはいられないのだが、軍港である呉というちょっと特殊な土地(空襲も多かっただろうが他の地域よりは優遇もされていただろう)を舞台に丁寧に日常が描かれていく。アニメーションであり記号的な表現(すずが失敗した時の表情とか)もあるがその日常描写が上手い。全く飽きない。また基本的に悪い人が登場せず、一見意地悪な小姑と思われた周作の姉なんかも実はいい人だ。

 事前に知っていたのは戦時中の広島を舞台にした物語、というぐらいで具体的なストーリーは知らなかったのだがなんかオープニングからちょっと涙腺がうるうる。最初はちょっとファンタジーだったりするのかな?と思ったりもしたのだがあくまで地に足の着いた描写が続く。戦前の呉での軍艦の解説とかちょっとマニアックな描写も。いわゆる軍国少年とかってそういう艦船知識に詳しい少年って意味じゃないよな。

 その他、空襲や爆撃における描写とか動きのアニメーションとしても優れていると思う。主人公すずがナレーションも担当しているため、基本的には説明過多な印象もあるが、原作では説明あるところも省略されたりもしているらしい。途中すずが迷う地域が実は遊郭であるとか説明されないけれど、あれは別に原作読んでなくても分かるよなあ、とか思うのだけどどうなんだろう。

 そしてこの物語はカウントダウンの物語でもある。登場人物は知らないが、観客は昭和20年8月6日に何が起きるか知っている。この作品では細かく今が何年の何月何日か表示されるが、それは広島への原爆投下という最悪の事態へのカウントダウン。だから日常が平和であればあるほどその後やってくる悲劇との落差が際立つ。基本的に戦前の広島を舞台(の一つ)にした作品というだけでそこにサスペンスが生まれる。まさかその辺の知識を持たない観客を想定しているとも思えず日常系といいつつ、その辺は狙いだろう。

2つの政治的話題

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 この作品僕が観る前には作品評価の本筋を離れて、主に2つのことで話題になっていた。ひとつは「これは単純な反戦映画ではない」というもの。玉音放送の直後すずは呉の町にひるがえる太極旗(李氏朝鮮国旗で現在の大韓民国国旗)を見るシーンがある。これは普通に日本の敗戦を知った朝鮮から来た人たちが日の丸を改造して手書きの太極旗を掲げ朝鮮半島の独立を祝ったことに由来する。ただそれだけなのだが、これを「朝鮮進駐軍の暴虐が始まることを暗示したシーン」みたいなことを言っている人たちがいて呆れてしまった。原作では右腕を失ったあとすずが米軍に「暴力で従えられると思うな」と言うシーンがあって、この太極旗を見た後で「暴力で従えとったということか」「じゃけえ暴力に屈するということかね」と言う台詞があるそうだ(僕は断片的にこのシーンの頁を見ただけで全体としては未読)。普通に考えたらこれは「自分たちは米軍の暴力の一方的な被害者のつもりでいたけれど、実は自分たちも別の誰か(この場合は植民地化した朝鮮半島)からみたら暴力の加害者だったのだ」ということを悟るシーンだろう。それを朝鮮進駐軍がどうこうというのは全く読解力が足りないと思わざるをえない。アニメの方では同様のシーンでの「暴力で〜」のすずの独白がないので「自分たちもまた加害者だった」というとこまでは読み取れないにしても少なくともあの太極旗一つで「朝鮮進駐軍」とか言っちゃうのは馬鹿らしいとしか思えない。というか朝鮮進駐軍ってデマですから!

 この作品は「はだしのゲン」みたいな戦前から主人公の父親が警察に捕まって暴行を受けたりするような作品ではないし「火垂るの墓」のように死を念入りに描く作品でもない。当時の庶民の日常を淡々と描いた作品だ。でも当時を忠実に描けば描くほど戦時中はロクデモナイ時代だったな、というのはわかると思う。

 毎年8月になると戦中戦後を描いたドラマなどが多く作られるが、確かに現代的目線のものは多い。でもね、別に戦国時代じゃない、わずか70年ほど前のことなんだから一般市民の感覚がそう異なるわけでもない。当時が困難な時代だったのは確かなので普通に描けば「もう二度とあんな戦争やあんな戦争を是とする時代は嫌だな」と思うものだと思う。問題は日本人が(ドラマなどで)あの時代を振り返る時、もっぱら被害者としての意識ばかりで加害者視点を持たないことだろう。すずが自分もまた加害者であると知らなかったように。

 どっちにしろこの作品が「反戦映画ではない」などというのは馬鹿らしいとしか思えない。戦争や戦争下の生活を忠実に描いた優れた作品は全て「反戦映画」である。そしてそれは優れた娯楽作品であることと矛盾しないのだ。

 もう一つはすずの声を担当したのん(能年玲奈)の件。ナレーションも担当した本作では抜群の出来でした。本作は声の演技となるわけだが、上手いとか下手といいうよりも役者と役柄が一体化してそれで上手くいったパターンだろう。元々この人は憑依型の演技者というかアドリブは全く利かないが、脚本に書かれたことはどんなに困難な役であってもきっちりやり遂げるというイメージ。それでも声優としては声の印象も強く残るのでどんな役でもこなせるというよりはのんとすずがぴったり一体化したのだろう。その意味でははまり役。

 この「のん(能年玲奈)」と言う表記から分かる通り彼女は元々本名で活動していたが、この「この世界の片隅に」から「のん」名義となった。この件には「あまちゃん」でブレイク後に発生した事務所移籍騒動がある。なので「本名が使えないのは事務所(レプロ)の横槍だ」という意見があったりするのだが、この騒動自体はどっちが一方的に悪いとは言えない気がする。芸名が使えないから本名でというならともかく(加勢大周とか芸名を巡る騒動は過去にもあった)、本名の使用禁止などという横槍を今どきするだろうか?単に心機一転といったほうがいいのではないだろうか。

 TVではこの映画の宣伝が一切なされていない、という意見もあって、それもこの騒動で干されているからだ、という意見も見た。僕は情報番組のたぐいはほとんど見ないので本当にTVに露出が一切ないのかは分からないけれど、週刊誌など雑誌のたぐいでは普通に見かけたのでそれほど干されているとかNG案件になっているとかいう印象はない。大体この規模の邦画ならもとより宣伝なんてこんなもんじゃないかなあ、という気もする(もちろんTVのほうが雑誌より権力におもねりやすいということはあるだろう)。こう書くと一方的にレプロの肩ばかり持っているように思えるかもしれないが(元アイドリング!!!菊地亜美大川藍の他にも清水富美加9nineベイビーレイズJAPANなど好きなタレント、アイドルにレプロ所属の人が多いというのは確かにある)、無理にこの件をぶり返してレプロを攻撃する形で本作やのんさんを応援してもあまり本作のためにはならない気がするのだ。もちろん本編とは一切関係ないわけだし。本当に干されているのならそれはそれで問題にすればいいのだしせっかく心機一転新しい芸名で歩みだしたのんの邪魔にしかならないのでは?と思う。

 娯楽作品に政治を持ち込むな、というのはよく言われたりするが(主に右側から)、本作に限れば戦争は悲惨だ、とかそういう反戦的な部分は政治以前の段階だろう。むしろこの作品を観て「反戦映画じゃない」とかいう方が映画に政治を持ち込んでいると思う。そしてこの作品から離れた部分での過剰な主演女優擁護や映画が宣伝されてないといった被害者的立場もまたいらない政治の持ち込みだ。作品自体は最高によく出来ているのでそういう部分で揉めるのは残念だと思う。

原爆

 長い余談。僕の地元福島県福島市は戦時中一発だけ爆弾が落ちた。その一発は市内でもまさに祖父母の家の近くに落ち、爆弾の破片は寺に展示してあって、子供の頃はその破片を持てるかどうかで力比べ等をしたものだ。子供の頃は郡山など周辺都市と比べても一発だけというのがむしろ笑いの対象となっていたりしたのだが、近年実はその一発の爆弾が模擬原爆だったことが判明。長崎に落とされたものと同型のものであることが分かった。死者は一名。畑仕事をしていた少年だ。だだっ広い田畑に落ちたため大きな被害はなかった。僕の父は昭和11年生まれ。多分「この世界の片隅に」における晴海ちゃんと同い年ぐらいだろう。そしてもしかしたら亡くなった少年は父だったかもしれない。少なくとも本当の原爆だったならほぼ亡くなっていただろう。そんなことも思い出したりした。

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この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 中 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)

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*1:実写映画でも美術などでありえないわけではないんだけどアニメに比べるとこのへんの敷居は低い

カタワレカタワレ 2016/11/25 22:04 結局右翼批判ですか。

susahadeth52623susahadeth52623 2016/11/26 20:18 別に結論に右翼批判を持ってきたつもりはありませんが、基本的に当ブログは反右翼がモットーですから多少なりとも政治的な話題に触れればそういう方向になりますね。気に入らなければ他をあたってください。

2016-11-10

旅半ばにして再び始まる… スター・トレック BEYOND

| 20:39 | 旅半ばにして再び始まる… スター・トレック BEYONDを含むブックマーク

 さあお待ちかね。僕の一番好きなSFシリーズ、「スタートレック」の最新作!1966年のTVシリーズから続く壮大なシリーズを、でも新規ファンのために新しく作りなおしたその第3弾。でも一応シリーズとしても物語としても過去のシリーズときちんとリンクしていて、知らなくても楽しめるけど、古くからのファンにはもっと楽しめる、というある意味理想的な作品。前2作は序章とでもいうべきか、USSエンタープライズ号が5年間の深宇宙探査飛行に出る(つまりTVシリーズの本編)に至るまでを描いた話なのに対して、本作はやっと本編開始とも言えます。大体長く続くシリーズ(特に3部作とか決めてないもの)だと3作目ぐらいでやっとフォーマットが固まって以降の良くも悪くも定形が出来上がるのだよ。というわけで「スター・トレック BEYOND」を観賞。

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物語

 23世紀、USSエンタープライズ号の人類初となる5年間の探査飛行も3年目を迎えた。惑星連邦領域辺境の宇宙ステーションヨークタウンに立ち寄ったクルー一行は一時の休息を取る。艦長ジェームズ・T・カークはヨークタウンの副提督となる異動願いを出していて、自らの任務に揺らぎを感じていた。一方スポックのもとには未来からやってきた自分〜スポック・プライムの死の知らせが届く。

 まだ知られぬ異星人の乗る救命ポッドヨークタウンに流れ付き救出され、乗っていた女性のいうことにはまだ未知である星雲の向こうで挫傷し、そこにいるであろう仲間たちを助けて欲しいとのこと。エンタープライズがその任務につく。

 目的地と思われる惑星アルタミッドに辿り着いたエンタープライズ。しかしそこに無数の小型宇宙船が現れエンタープライズは襲撃される。乗り込んできた異星人の目的はどうやらエンタープライズに積んであった古代の兵器らしい。応戦虚しくエンタープライズは破壊され、墜落を余儀なくされる。救命ポッドで脱出するクルーたち。カークたちは無事脱出できるのか?そしてエンタープライズを襲った異星人の真の狙いは?

 前作の感想はこちら。

 シリーズ全体の解説は前回結構な文量書いたので今回はできるだけ本作に絞って感想を。前作は2013年の自分のランキングでは実写映画一位でした(総合一位は「パラノーマン」)。新作のバックに広がる過去の作品からの引用やオマージュ、設定を活かした上で、でも知らなき人でも楽しめるという作品で、何度も言っているけれど、これはスポックたちが未来(24世紀)から過去(カーク生誕時点)にタイムトラベルしてきた事によって生まれた新たなタイムライン(スタッフやファンの間では遭遇したカークの父が乗っていた船の名前からケルヴィンタイムラインと呼ばれているらしい)で、パラレルワールドになっているものの、過去のシリーズともきちんと地続きなのです。この辺は「X-MEN」の1〜3作目とFCの関係とも似ているかな。もちろん知らなくても問題はないです。

 で、今回使用したポスターは映画1作目「スタートレック ザ・モーション・ピクチャー」(TMP)を意識したこちらを。今回もこのポスターにかぎらず過去作のオマージュ、引用、設定の再活用はたくさん出てきます。

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 前2作はTVシリーズであるTOSの放送前にあたるいわば前日譚。本作はTVシリーズそのものの時代の出来事になります。

 前2作のJ・J・エイブラムスが製作に周り、監督は「ワイルド・スピード」シリーズのジャスティン・リンに交代。アクション映画を多く手がけたkん特に変わったことで本作もよりアクションシーンが際立つ作品となった。元々このスタートレックの劇場版シリーズはTVでは無理だったSFXやアクションを!と言う期待と、でもTVの描写から離れすぎても変、というジレンマがあったのだが、ケルヴィンタイムラインになったことでその辺のジレンマは解消。宇宙での艦船による戦闘シーンでも、生身のアクションでも過去のシリーズとは段違いにテンポ良くなっていて、ある意味これが一番新シリーズの特徴ともいえるかも。

 リンは自身が熱心なトレッキーだそうで、その辺はエイブラムスとは異なるところ。トレッキー脚本家が溢れる思いを脚本に込め、それをそれほどファンでもない監督が一般ウケするように演出する、というのがこの手の作品の妙ともいえる部分なのだが、さて、本作ではどうだったか。脚本はスコッティでもあるサイモン・ペッグが手がけていて、「宇宙人ポール」などでもスタトレ愛は炸裂していたが、その割にはまあ自分の出番も控えめであったかなあ(もちろん旧シリーズに比べると元からスコッティの出番は多い)。

 エンタープライズ惑星への不時着シーンは映画の「ジェネレーションズ」、設定的には「スタートレックエンタープライズ」とのつながりが強く、ラストには「スタートレック 未知への世界」とつながる。

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 カークは前2作ほど血気盛んな若者という印象は薄くなり、よくも悪くも成長して落ち着きを増した頼れる艦長という感じに。今回は長きに渡る宇宙での艦長任務に疲れ地上勤務を願い出たりするのだが、これは「ジェネレーションズ」でカークがピカードにいう「どんな昇進の誘いがあろうと艦長の椅子から離れるな」というやりとりとの対比だろう。実は劇場版の「TMP」以降のカークって正確にはエンタープライズの艦長ではなく旗艦として乗船している提督なんだよね(艦長はスポックだったりする)。でTMPでも自分で指揮しないと気に食わなかったり上昇志向の強いカークだけど、その一方で宇宙船の艦長という立場にこだわっているのもカークなのだ。この手の艦長でいるか更に上の提督を目指すか、という話は後のTNGなどでも出てきて、ピカード自身はその時々に応じたやりがいがある、と艦長に椅子にこだわらない立場を示しながら、他の同年齢の士官が出世する中、現場主義を貫いたりして面白い。なので、ここでのカークの悩みが一時的な気の迷い、本当に宇宙ステーションの副司令官になったりしたら死ぬほど後悔するぞ!というのはファンならすぐ分かる。

 途中で、カークとチェコフ、スポックとマッコイ、ウフーラとスールー(&その他のクルー)、スコッティと新キャラクターであるジェイラと別れて物語が進むのだが、このなかでもスポックとマッコイのコンビがオススメ。元々TOSの会話劇としての特徴は熱情的な地球人であるマッコイと冷静なヴァルカン人(地球人とのハーフ)であるスポックが言い争ってその中間にカークが位置するのが基本だったのだが、これまでまだそこまでマッコイとスポックの会話は多くなかった。今回はこの二人がコンビとして組まされたことで、二人の会話とそれに拠る個性の違いも際立った。相反する性格の者同士が険しい自然を乗り越えていく様子は「ディープ・スペース・ナイン」の107話、フェレンギ人クワークと真面目な警備主任オドーが二人で苦労する「あの頂きを目指せ」を連想したりした。

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 敵となるクラールは実は元は宇宙艦隊の人間で、連邦設立前、地球がズィンディやロミュランと争っていた頃に活躍した軍人であったが、惑星連邦が成立して以降、軍人という立場ではない宇宙艦隊士官としての立場に不満を持っていたところで未知の惑星で不時着したため連邦に恨みを募らせた人物。2009年の「スター・トレック」では未来から、「スタートレック イントゥ・ダークネス」ではカーンと言う過去から敵がやってきたが、本作も前作に引き続き過去から現れた敵ということになる。この時のロミュランはスタートレック世界では比較的有名な宇宙人*1だがズィンディは本作の約100年前を描いた「スタートレック エンタープライズ」で出てきたエイリアン。一つの惑星に複数の知的生命体が存在していてその連合体である。これらのロミュラン戦争やズィンディ騒乱を乗り越えて2161年に惑星連邦が成立するのである。前作でもマーカス提督がクリンゴンと間に戦争を起こして宇宙艦隊軍隊にしようと企てていたが、そこでも分かる通り宇宙艦隊は純軍事的な存在ではない。防衛だけでなく多種族との外交、宇宙の探査、研究なども重要な使命だ。クラールは元は軍人だったがそこから軍人でない立場になったことで不満を募らせたパターンで前作のマーカス提督の裏表といったところ。

 クラールは他の生物の生命エネルギーを吸収することで長生きし容姿を変化させていたという設定なので幾つか姿形があるのだが、どれも個人的にはいまいち。典型的なハリウッドの爬虫類型人間の造形という感じ。演じているのはイドリス・エルバだが、かなり後半になるまでそうとは気づかない。ちょっともったいない感じ。前作のクリンゴンもそうだが、宇宙人の造形にかけては旧シリーズの方が独創性に富んでいたとは思う。

 新キャラジェイラは「キングスマン」で義足の女殺し屋ガゼルを演じていたソフィア・ブテラ。こちらも全面真っ白なメイクで彼女だとは気づかないぐらいだったけれど、一人でサバイバルしながら生きてきた、ちょっと変な感じが伝わってきて良かったです。今後レギュラーキャラクターになるんだろうか?彼女の提案から始まった音楽を大音量でかけて敵の連携をぶち壊すシーンはちょっと「マクロス」シリーズ」っぽくても白かった。

ヒカル・スール

 公開前にいろいろ話題に鳴っていた要素の一つにスールーが同性愛者として描かれる、というものがあった。ヒカル・スールーは人気キャラクターで「スールー艦長率いるエクセルシオールの冒険を描いたTVシリーズを作ろう」署名運動などもあったほど。オリジナルシリーズでスールーを演じたジョージ・タケイはアメリカの俳優の中でも早く同性愛者としてカミングアウトした人物で、かつ、第二次世界大戦中には日系人収容所に入れられた過去も持つことからアジア系の社会的地位の向上を訴えてきた人でもある。そんなジョージ・タケイへのリスペクトを込めての設定なのかもしれないけれど、ジョージ・タケイ自身はこの改変に否定的なコメントをした。もちろん作品中に同性愛者を出すな、ということではなくて、出すなら新しい登場人物として出せばよいのであって、違う設定だったキャラを無理やり同性愛者にするのはいかがなものか。というのがタケイの主張だろう。僕も半分ぐらいはこの意見に近くて、スタートレック同性愛のキャラを出すのは全然いい、いやこの作品のコンセプトからしたらむしろレギュラーキャラクターでいないのはおかしいくらいだ、とも思う。ただ一方ですでに確立されたキャラの設定を変えるのではなくて、出すなら新しいキャラにするべき。ちなみにタケイはジーン・ロッデンベリーの設定に忠実で、日本ではTV放送された時の吹替版からスールーはミスターカトウとしても知られているのだが、本人はこの名前には不満だそうだ。スールーはフィリピンスールー海に由来し、設定もフィリピンと日本をルーツに持つアメリカ生まれ。これをカトウだけにして日本人(日系人)の部分だけ強調するのはロッデンベリーの趣旨に合わない。だからもちろんこの改変に否定的なタケイの意見もロッデンベリーの設定に忠実に行こうよ、というだけなのだと思う。

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 ただ、出てきた描写ヨークタウンで待っている娘と同世代の若い東洋系男性というだけでにとどまり特に細かく説明されるわけではない。言われなければ、この男性とスールーが恋人だとも思わない人も多いのではないだろうか。どうなんでしょう?今後シリーズが続くとより詳細に描かれたりするんだろうか?ちなみにこのスールーの娘さん、おそらく名前はデモラ・スールーで、後にエンタープライズBのクルーとなります(ジェネレーションズ)。

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 この作品は二人の人物に捧げられていて、一人は交通事故で亡くなったアントン・イェルチン。そしてもう一人はオリジナルのタイムラインからやってきたスポックであるレナード・ニモイ。カークが自分の進むべき道を見失って地上勤務を望んだように、スポックもこのスポック・プライムの死を知ってニューヴァルカンでの彼の仕事を引き継ごうと揺れることとなる。彼の遺品の中にはエンタープライズAのクルーの集合写真があり、それは映画「スタートレック彩っ里寮こΑ彁のもの。ニモイのスポック以外でもきちんとウィリアム・シャトナーはじめ、オリジナルのクルーがケルヴィンタイムラインに登場したことに。

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 本作はTVシリーズで言うところの第3シーズン、あるいは打ち切られなかったら続いていたかも知れない第4シーズンにあたるエピソードなのだが、オリジナルより早くエンタープライズが失われ、ラストは同じ名前を受け継ぐUSSエンタープライズAが建造されているシーンで終わる。ここからはTOSでは描かれることのなかったTOSとTMPの間をつなぐ物語となるだろう。すでに続編の企画は上がっていて、クリス・ヘムズワースのカークの父が再登場するらしい。ヘムズワースはMCU主演俳優では当時無名に近くて、この2009年の「スター・トレック」で父カークを演じて注目されたということなので今だともっと出番も多くなるか?

 アントン・イェルチンが亡くなったことでチェコフがどうなるのだろうか。役自体いなくなるのか、別の役者に変わるのか。

 後はTVシリーズのほうが23世紀の宇宙艦隊アカデミーを舞台にナンバーワン(TOSのパイロット版でメイジェル・バレットが演じた女性副長)をメイン主人公とした新シリーズが待機していると言われています(どっちのタイムラインなのかは不明)。50週年を迎えて、スタートレック宇宙はまだだ広がるぜ!

Engage!

レナード・ニモイアントン・イェルチンのご冥福を祈ります。

LIVE LONG AND PROSPER

Space...the final frontier.

These are the voyages of the Starship Enterprise.

Its five-year mission : to explore new worlds,

to seek out new life and new civilization,

to boldly go where no man has gone before...

 

宇宙――それは人類に残された最後の開拓地である。

そこには人類の想像を絶する新しい文明、

新しい生命が待ち受けているに違いない。

これは、人類最初の試みとして5年間の調査飛行に飛び立った

宇宙船U.S.S.エンタープライズ号の脅威に満ちた物語である。

ラストはクルー全員がそれぞれこの有名なナレーションを一節ずつ語りかける。まだ冒険は始まったばかりだ。

*1バルカン人とルーツを同じくする宇宙人で22世紀地球と戦争状態になった

2016-10-31

トリックスター多くして船山昇る? スーサイド・スクワッド

| 21:50 | トリックスター多くして船山昇る? スーサイド・スクワッドを含むブックマーク

 例によってお久しぶりでございました。さて、今年のアメコミ映画を締めるのはDCエクステンデッドユニバース(DCEU)の「スーサイド・スクワッド」となります。とはいえこちらももうほとんど公開は終わっているのかな。いっそ「シビルウォー」みたいにソフト発売まで書くのを待とうかな?とかも思ったりしたけれど、まだ記憶が残っているうちに感想を書こうと思います。世間での評価は映画そのものはいまいちだけどキャラ、特にハーレイ・クインは最高!という感じだったのかな?DCEUとしては第3弾。アメコミ映画としてもちょっと特殊なヴィラン大集合の映画「スーサイド・スクワッド」DEATH!

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物語

 スーパーマンの死によって緊張感を増す世界。特殊な力を持つメタヒューマンの存在も多数確認されるようになってきた。スーパーマンは味方だったが、スーパーマンと同じような力を持つものが敵だったら?米国の秘密機関ARGUSの高官アマンダ・ウォーラーは塩漬けになっていた計画タスクフォースX」を進めようとする。それは一筋縄では行かない犯罪者たちによる特殊部隊計画の要となるのは古代の魔女〜現在は発見した考古学者ジューン・ムーン博士の中にいる〜エンチャントレスの存在。アマンダは彼女の心臓を手にすることでエンチャントレスを操ることに成功。エンチャントレスの監視・警護役リック・フラッグ(ムーン博士と恋に落ちたがこれもアマンダの計算のうちだ)を指揮官に選ばれたのは一癖も二癖もある犯罪者たち。しかしエンチャントレスはアマンだとフラッグを欺いて弟を復活させ、ミッドウェイティ駅を占拠する。

 要人の救出を目的として集められた犯罪者達によるタスクフォースX。狙撃の達人フロイド・ロートン=デッドショット、元精神科医で犯罪王子ジョーカーの情婦ハーリーん・クインゼル=ハーレイ・クイン、ワニのような肌と力をもつミュータントウェイロン・ジョーンズ=キラークロックオーストラリアからやって来たブーメラン強盗ディガー・ハークネ=キャプテンブーメラン、人体発火ギャングチャト・サンタナディアブロ、投縄の達人クリストファー・ワイス=スリップノット。そして彼らが裏切った時の処刑人として夫の魂が込められた刀をふるうカタナがいた。各々それぞれの条件を付け参加。ミッドウェイティに向かう。そこで出てきたのはもはや人とも言えない敵だった!決死部隊(スーサイド・スクワッド)の運命や如何に!そしてハーレイを取り戻すべくジョーカーも…

 DCEU第三弾はかなり毛色の変わった物となった。主役級の二人デッドショットとハーレイクインにウィル・スミスマーゴット・ロビーの「フォーカス」のコンビを迎え、その他にも豪華な人物を迎えたピカレスクロマンとなった。やっぱり「バットマンVSスーパーマン ジャスティスの誕生(BVS)」で唐突にバットマンが登場した印象は拭えず、バットマンの主演映画を間に作ったほうが良かったんじゃないかな、とは思うのだけど、DCEUの闇鍋感は今回も健在。冒頭でくどいようにキャラクター紹介されてるにも関わらず、なんか必要な描写入れ忘れてないか?ッて思うような展開も多い。

 冒頭にアマンダ・ウォーラーが他の高官に説明する形で各キャラクターの紹介映像が順繰りに出てくる。デッドショットのプロフェッショナルな仕事ぶり、娘を溺愛しつつバットマンに捕まる顛末。ハーレイがどのようにしてジョーカーに魅入られてハーレイクインとなったか。そしてバットマンに捕まる顛末。ブーメラン野郎がフラッシュに捕まる顛末エトセトラエトセトラ…

 僕なんかは「うへえ。これ全員分やんのかよ」とか思ったのだが評価は様々で「この紹介シーンは最高だったけど本編は微妙」と言う意見も多いみたいだ。僕は逆にこの紹介映像はたるかったけど、本編始まったらそれなりに見れたと思ったのだが。

 監督はデヴィッド・エアーで僕はこの前にシュワルツェネッガー主演のやはりちょっとイカれた麻薬取締部隊を描いた「サボタージュ」を劇場で観ている。あの時は「シュワ主演で『ダークナイト・リターンズ』を実写映画化すればいいんじゃないかな?」とか書いたのだが、程なくDC作品を手がけることとなった。もちろんバットマンベン・アフレック)も出てきます。

 この作品はマーベルの方の「デッドプール」とよく比較されるが、確かに共にアンチ・ヒーロー映画ともいえる代物だが、あちらはR指定だったのに対してこちらは全年齢の模様。そのせいか、悪党を主人公にしてる割には描写がぬるい、というような意見も見られた。日本では公開が遅れたが、本国ではほぼ同時期公開。先に「デッドプール」の成功を受けて制作したのだったら、こっちもR指定上等でもっと表現もキャラの設定も過激になっていたかもしれない。

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 主役となる悪党たちは長い歴史を持つDCユニバースのヴィランたちで、ヴィランと言っても世界征服を狙うとかそういうのよりは犯罪者がメインなので、中心となっているのはバットマンを宿敵とするキャラクターたち。後はアーカム精神病院行きよりはもうちょっとまともなタイプか(彼らが収容されているのはベル・レヴという刑務所)。主人公格はデッドショット。バットマンヴィランの一人で百発百中の腕を誇る殺し屋。原作では白人だが、今回は黒人のウィル・スミス。オレ様であるウィル・スミスが演じるということで悪党としては骨抜きにされているんじゃないかと不安視されていた。それは半分ぐらい的中と言う感じか。今回は敵が超常現象的な存在になっているので作戦自体でそれほど悪党と言う感じはしない。ただ娘を溺愛しつつ、別れた妻のことはロクデモナイ奴ぐらいに思ってるのはなんか家族だけは偏愛しつつ、他者には思いっきり冷酷になれる悪人という感じはする。バットマンは娘と一緒にいるデッドショットを襲撃して捕らえる。このシーンでも「バットマンならそんな酷いこと(娘の前で父を捕まえる)しないのでは?」という意見も見たが、この娘(ラストにも出てくる)の年齢からして、それほど昔の出来事ではなく、スーパーマン登場によってより自警行為が過激化したバットマンのしわざと考えればそれほど矛盾はしないのでは?と思う。

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 後は個人的にお気に入りのキャラクターはキャプテンブーメラン。コミックスの方では主に「フラッシュ」の宿敵の一人でブーメランの達人だが常人。僕は詳しく知らないがオーストラリアからやってきた犯罪者という設定はそのまま。演じているのがなぜかハリウッドで抜擢され続けている印象のあるジェイ・コートニーで、他には「ターミネーター:新起動」ではカイル・リースを演じている。悪い役者とは思わないが、これといって華があるわけでもないのでアクション大作で主人公のヒーローを演じるのは結構見てるほうが辛かったり。ただ今回のブーメラン野郎は最低すぎて最高!今まで見た中でもベスト・オブ・ジェイ・コートニー志はなく、すきあらば酒を飲み、自分でヤる前にまず他人に試させ(スリップノットあえなく死亡!)、コトあればまっさきに逃げ出し、手当たり次第に女を口説き、そしてユニコーンののぬいぐるみを大切に肌身離さず持っている。ハーレイやデッドショットがある程度主人公としての制約を背負っているのに対し全然大物ではないけれどそのチンピラぶりがいっそ清々しいです。あとフラッシュが出てくるんだけど、正直日本の特撮ヒーローみたいなデザインは90年代のTVドラマ版や今も展開してるTVの「FLASH/フラッシュ」に比べるとダサい……まあ来たる単独主演のタイトル作での見せ方とかで今後いくらでも印象は変わると思うけれど。

 今年のハロウィンでもおそらく仮装人気が高いであろうハーレイクインは1992年のブルース・ティムによるアニメバットマン」のオリジナルキャラクター。ヴィランとしては最も古いキャラであるジョーカーの情婦というありそうでなかったキャラクター。アニメバットマン」を象徴するキャラクターでその人気から原作コミックのほうにもすぐに登場することとなった。

 今回の映画ではもうキャストと彼らが扮した姿を見た時点で個人的には及第点な作品だったのだが、その中でも一番はやはりハーレイということになるのだろう。ただ僕にとってはやはりハーレイはブルース・ティムの描くものこそベスト。劇中でもちょっと出てくるが全身タイツのピエロ姿のハーレイがいいんですよ。アメコミの場合多くの作家によって描き綴られていくのが普通なので、その時代その人それぞれのバットマンジョーカーがあっていいのだが、ハーレイだけはブルース・ティムの絵柄じゃないと受け入れづらいのです。

 映画ではクライマックス近くエンチャントレスによって自身が理想とする世界を幻覚として見せられてハーレイの場合薬品槽に落ちることなく素顔のハーレイとジョーカーが幸せな家庭を築く、というものなのだが、これはちょっと解せませんでしたね。多分この幻覚はコミックスの「MAD LOVE」(アニメの人気を受けてブルース・ティムポール・ディニがコミックスとして書き下ろした作品で後にアニメ化された)での似たようなシーンが参考にされてるのかな?と思うんだけれど、こっちはきちんと漂白されたジョーカーと悪党として夫婦生活を営んでいる妄想なのですよ!なのでそんな健全な家庭を理想とするハーレイはおかしい!

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 今回は「バットマン」シリーズだけでなくアメコミを代表するヴィランである犯罪界の道化師ジョーカーが出てくる。実写作品では「ダークナイト」のヒース・レジャーの強烈なジョーカーの後を受けてなので演じたジャレット・レトも大変だったと思うのだけれど、ヒースやジャック・ニコルソンジョーカーとは別に新たなジョーカー像を描いていたと思う。今回のジョーカーに関しては出番が少ないとか邪悪さが足りないとか文句も出ているけれど、出番がそんなに多くないのは予告編見れば予想はつくだろうし、これまでの実写映画での一本限りの出演となる悪党ジョーカーと比べると今後もちょこちょこ他のDCEU作品に顔を出しそうなジョーカーはどちらかと言えばコミックスやアニメジョーカーに近いのではないのかと思う。あのくらいの身軽さ(設定的にもアクションとしても)でむしろ良かった。「ダークナイトトリロジー」でのスケアクロウみたいなメインを張るというよりはいろんな作品で気軽に悪を働く感じ。ジョーカーはこの30年くらいでちょっと邪悪な存在になりすぎた。その邪悪さと存在感の大きさと引き換えにかつて持っていた自由さを失ったような気もする。ジョーカーがハーレイにあんなに執着するのはおかしいのではないか?と言う意見も見たが、個人的にジョーカーは自分が興味をもつうちは自ら奪還しにも行くし飽きればあっさり撃ち殺すタイプだと思う。

 で、今回は紹介編でもあるのでジョーカーの情婦という側面がクローズアップされているが、個人的にハーレイクインの魅力が発揮されているのはジョーカーと居るよりもポイズンアイビーと一緒に居る時。ハーレイはアイビーの前では幼児性を全開にするし、アイビーもそんなハーレイの前ではいつもの冷たい側面が緩和して丸くなる。

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 ポイズンアイビーは昔からいるキャラクターだが、ハーレイの他にもブルース・ティムの作りだした女性キャラクターは全部魅力的で「スーパーマン」の方のライブワイヤーやロキシー・ロケットもそれぞれ魅力的。そしてすでにDCEUでは死んでしまったマーシー・グレイヴスも…(ザック許すまじ!)

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 アマンダ・ウォーラーはある意味でこの映画の一番の悪人というようなキャラクターでそのふてぶてしさが憎々しい。このアマンダ・ウォーラーは個人的にバットマンと並ぶDCユニバース最強の常人と言うイメージもあって、あくまで個人事業として犯罪者と戦っているバットマンブルース・ウェインと比べると国を動かして具体的に大作に取り組んでいる女傑。映画ではいろいろ説明ハブられている部分もあるのだが、この人は夫を犯罪で亡くした後5人の子供を育てながら自分も大学に行って政府の高官まで上り詰めた人である。彼女の鉄の意志はそのあだ名「ザ・ウォール(壁)」からも明らかであろう。そんな彼女なので口封じにスタッフを自ら射殺するようなシーンが必要だったかはともかく、最後は彼女を殺して大団円とするのはちょっと違うだろうと思うので彼女は厳然としてそこに存在するラストで良かったと思う。

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 この映画は予告編が最高によく出来ているので、その期待のまま観るとちょっとテンポが悪い、と感じてしまうかもしれない。クイーンの「ボヘミアン・ラプソディ」はじめとした楽曲の使い方はかなりベタなんだけれど、多分自分がセレクションしても似たような感じになりそうな気はする。

 自分的にはここまでで作られたDCEU作品の中では一番好きです。MCUにはない混沌さは健在。こじんまりとした話かと思ったら意外と無駄に壮大だったのも悪くない。待っている「ジャスティス・リーグ」への橋渡しとしても良かったと思います。ただジョーカーロビン殺しとか「BVS」時点で臭わせる必要はなかったよ。

 今後は「ワンダーウーマン」「フラッシュ」「アクアマン」が待機。「ワンダーウーマン」は第一次大戦をメイン舞台に「BVS」の前日譚的な作りになるの。MVUで言うところの「キャプテン・アメリカ ファースト・アベンジャー」のような立ち位置になるんですかね。後は本作のラストでも「ジャスティス・リーグ」への布石が。個人的には「ワンダーウーマン」がDCEUのなかでは珍しいくらい「きちんとした」作品になりそうな気がします。

 さて、批判の一つとして、なんでこの事態においてバットマンたちスーパーヒーローが出張ってこないの?という意見も見たのだが、(それ言ったらヴィランによるチームって設定が成り立たないだろってのは置いといて)簡単にいえば舞台となるミッドウェイティゴッサムでもメトロポリスでもセントラルシティもないからだよ!*1

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*1ミッドウェイティホークマンホークガールホームタウン。DCEUにこの二人が出てくるかは不明