森友内部文書 新たに20件 野党、財務省を追及へ - 東京新聞(2018年2月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018020902000276.html
https://megalodon.jp/2018-0209-1527-53/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018020902000276.html

学校法人「森友学園」への国有地売却問題に絡み、財務省は九日、これまでに公表した同省近畿財務局の内部文書五件以外に、新たに文書二十件の存在を公表した。参院予算委員会の理事懇談会で明らかにした。野党は、森友側との交渉記録の文書を「廃棄した」とした財務省の説明との整合性を追及する構えだ。
参院予算委の理事によると、公表された二十件は二〇一三年八月〜一五年四月に財務省内で、法律関係の問題点を検討した際の照会や回答の文書。
財務省は当初、学園との交渉に関する資料を「廃棄した」と説明。だが大学教授による情報公開請求に対応する過程で、法律上の問題点に関して近畿財務局の内部で検討していたことを示す文書五件が見つかったとして、今年一月に開示した。
今国会で野党の追及を受けた財務省は、この他にも内部文書があると認め、早期に開示する意向を示していた。
財務省は開示した文書五件については、内部の検討資料であって「学園との交渉記録ではない」と釈明。だが、文書には交渉の経緯の詳細や「売買金額は、事前調整に努める」との記載もあり、野党は事前の価格交渉を否定してきた政府答弁との矛盾をただしている。

生徒44人の頭髪切る 水橋高教員6人 - 北日本新聞(2018年2月9日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180209-00095990-kitanihon-l16
http://archive.today/2018.02.09-023155/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180209-00095990-kitanihon-l16

水橋高校富山市水橋中村、中田靖弘校長、全校生徒477人)で本年度、生徒の頭髪などの検査の際、校則の基準を満たすように教員6人が生徒44人の頭髪を切っていたことが8日、分かった。教員からの聞き取り調査では生徒の了解はあったとしているが、中田校長は北日本新聞の取材に対し「あってはならない指導だった」と答えた。
同校は月に1回、「服装指導」として生徒の服装や頭髪の検査を実施している。頭髪に関する校則は、男女とも前髪は眉が見える程度の長さとし、男子はもみあげが耳の中間まで、側頭部は耳に掛からない長さに保つなどとしている。
外部からの指摘を受け、同校が今月に全教員に聞き取り調査したところ、基準に満たない生徒の頭髪をはさみで切ったことがあると6人が答えた。生徒には校則を守るように繰り返し指導しており、守られていない場合は生徒の同意を得た上で切ったという。頭髪を切られた生徒は男女ともいる。
中田校長は「管理職として事実を把握していなかったことを深く反省している。生徒や保護者に申し訳ない」と陳謝。県教委教職員課は「行き過ぎた指導で、誠に遺憾だ。今後、適切に対応したい」としている。

「訳の分からない話」青森県知事、不快感/関電・使用済み燃料むつ搬入報道 - デーリー東北新聞社(2018年2月9日)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180209-00010003-dtohoku-bus_all
http://archive.today/2018.02.09-050905/https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180209-00010003-dtohoku-bus_all

「報道だけ流れてきて、訳の分からない話」。青森県三村申吾知事は8日、原子力関連施設が立地する下北半島4市町村長との会談で、関西電力がリサイクル燃料貯蔵(RFS)の中間貯蔵施設(むつ市)に使用済み核燃料の搬入方針を固めたとする報道に不快感を示した。
報道が伝わった1月7日、関電やRFSは一斉に報道内容を否定している。
宮下宗一郎市長は8日の会談で、「地域の事情を無視している。一事業者が決めることではない。現時点で到底受け入れられる話ではない」と改めて強調。その上で「誤報だと思っている私と同じ気持ちでいいか」と知事の見解をただした。
三村知事は「何も言いようがない」「いいも何も寝耳に水」と繰り返し、「国なり何なり、ちゃんとした話がないものには一切答えないことにしている」との立場を鮮明にした。
会談後、宮下市長は「誤報という扱いで、今までもこれからも知事が発言することはないと受け止めた」と説明した。

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関電、使用済み核燃料を青森へ むつ中間貯蔵施設で保管 - 東京新聞(2018年1月7日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018010702000128.html
http://web.archive.org/web/20180107025802/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201801/CK2018010702000128.html


関西電力福井県にある同社の三原発から出た使用済み核燃料を、青森県むつ市の中間貯蔵施設に搬入し一時保管する方針を固めたことが六日、関係者への取材で分かった。近く青森県など地元に要請する見通し。関電は福井県の西川一誠知事から、県外への搬出を求められており、今年中に決定すると明言していた。
使用済み燃料は各原発敷地内のプールなどで保管されているが、容量に限界があり、電力各社は扱いに頭を悩ませてきた。国は今後、関電以外の電力各社にも「相乗り」させ、使用済み燃料をむつ市に集約させる方向で検討している。実現すれば、原子力政策の大きな問題を当面はクリアできるが、地元の同意を得る必要があり、調整が難航する可能性もある。
むつ市の中間貯蔵施設は東京電力日本原子力発電が共同出資して建設。両社の使用済み燃料のみを受け入れる予定だったが、福島第一原発事故の影響もあり、稼働していない。関係者によると、関電が出資する代わりに一部のスペースを使用する計画で、関電など西日本に多い加圧水型原発の燃料を本格的に受け入れるには今後、改造や増設工事が必要になるという。
国の核燃料サイクル政策では、使用済み燃料は再処理してプルトニウムなどを取り出しプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料に加工して再利用する。ただ、青森県六ケ所村で建設中の再処理工場はトラブル続きで完成の見通しが立っていない。各地の原発では使用済み燃料を再処理工場に搬出できず、プールの容量も逼迫(ひっぱく)しているため中間貯蔵施設で一時保管する必要性が検討されていた。

<青森・むつ市の中間貯蔵施設> 原発で燃やし終わった使用済み核燃料を再び燃料として使用できるように再処理するまでの間、一時保管する施設。正式名称はリサイクル燃料備蓄センターで、東京電力日本原子力発電が共同出資するリサイクル燃料貯蔵が運営。2010年に建設開始し、13年8月に貯蔵容量約3000トンの施設が完成した。原子力規制委員会の新規制基準適合性審査中で、18年後半の操業開始を目指している。

憲法70年 自民の抱えるジレンマ - 朝日新聞(2018年2月9日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S13351528.html
http://archive.today/2018.02.09-005537/https://www.asahi.com/articles/DA3S13351528.html

自民党憲法改正推進本部が9条改憲に向けた条文案の作成作業に入った。
戦力不保持と交戦権の否認をうたう2項を維持し、自衛隊を明記する安倍首相の案を軸に検討する方針だ。
一方、党内では石破茂・元防衛相らが2項を削除する案を主張している。
驚かされるのは、案を提起した首相自身の国会答弁の不可解さだ。
自衛隊明記案が国民投票で否決されたら、どうなるか。首相はその場合も自衛隊の合憲性は「変わらない」と語った。
自衛隊を明記しても、しなくても自衛隊は合憲である――。
素朴な疑問がわく。それならなぜ、わざわざ改憲をめざす必要があるのか。
首相自身が言うように、歴代内閣は一貫して自衛隊を合憲としてきたし、国民の多くもそう考えてきた。
それでも発議に突き進むなら、深刻な問題を引き起こしかねない。
改正案の書きぶりにもよるが、仮に自衛隊明記案が国民投票で否決されれば、主権者・国民に自衛隊の現状が否定されたことにならないか。
首相は「現行の2項の規定を残したうえで、自衛隊の存在を明記することで、自衛隊の任務や権限に変更が生じることはない」とも述べている。
「変わらない」ことを、なぜここまで強調するのか。
推進本部特別顧問の高村正彦副総裁が、BS番組であけすけに述べている。
「2項削除は無理だ。国民投票がもたない。その前に公明党が賛成しない」
改憲の国会発議には、9条改憲に慎重な公明党の協力が必要だ。国民投票過半数の賛成も得なければならない。
だからこそ、2項削除案に比べ、首相案は無難だと言いたいのだろう。
高村氏は一方でこうも語っている。「安倍さんが言っていることは正しい。石破さんが言っていることも間違いではない。この二つは矛盾しない」
だが、両者が矛盾しないはずがない。まず首相案で一歩踏み出し、いずれは2項を削除して各国並みの軍隊をめざす方向に進むということなのか。
「変わらない」と言い続ければ、改憲の必要性は見えにくくなる。といって改憲の意義を明確にしようとすれば、どう「変わる」のかを国民に説明しなければならない。
自民党改憲論議は、深いジレンマに陥っている。

通勤事故死 過労が原因 世田谷の会社、遺族に謝罪し和解 - 東京新聞(2018年2月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018020902000133.html
http://archive.today/2018.02.09-011153/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018020902000133.html

商業施設への植物の装飾を手掛ける「グリーンディスプレイ」(東京都世田谷区)に勤務していた稲城市渡辺航太さん=当時(24)=が二〇一四年、ミニバイクで帰宅途中に事故死したのは過重労働が原因として、両親が同社に約一億円の損害賠償を求めた訴訟は八日、横浜地裁川崎支部で和解が成立した。会社側が過労と睡眠不足が原因と認めて遺族に謝罪し、約七千六百万円を支払う。通勤時の事故で会社側が責任を認めて和解が成立するのは異例。
母淳子さん(61)は厚生労働省で記者会見し、過労事故死を防ぐための会社の安全配慮義務の先例として「大きな意味がある」と評価した。和解勧告によると、渡辺さんは一三年十月、アルバイトとして同社で働き始め、一四年三月に正社員になった。翌四月二十四日午前、徹夜勤務を終えて仕事先の横浜市都筑区からミニバイクで帰宅途中、川崎市麻生区で電柱に衝突し死亡。事故当日の労働時間は、前日からの約二十二時間で事故前一カ月間の時間外労働は約九十時間だった。
遺族側の代理人弁護士によると、会社側は訴訟で事故原因に関して渡辺さんの不注意と主張。橋本英史裁判長は和解勧告で、会社側が「適切な通勤方法を指示するなど、事故を回避すべき義務を怠った」と安全配慮義務違反を指摘した。
和解条項には再発防止策として、勤務終了から次の勤務まで十一時間以上の間隔を空ける「勤務時間インターバル」やフレックス制の採用などに取り組むことも盛り込まれた。
同社は「勧告を厳粛に受け止め、ご心配とご迷惑をお掛けしたことをおわび申し上げます」とのコメントを発表。一方、会社側の弁護団も声明を発表し、地裁支部の事実認定に「重要な点の証拠調べを行う前に、事故の原因を居眠り運転とし、会社の責任とする前例のない判断をした」と批判した。遺族は一五年四月に提訴。事故に関して通勤災害として認定されている。

◆隠れた労災企業に責任
「過労死の撲滅は、社会全体の悲願だ」。八日、会社側が過労による事故死と認めた和解勧告で、橋本英史裁判長はそう強調した。現在は過労死防止法に規定がない「過労事故死」への対策が進む先例になってほしい、との関係者の願いも込められている。
背景には、広告大手電通の違法残業で高橋まつりさん=当時(24)=が二〇一五年に過労自殺した事件などを契機に、企業の労務管理に対して社会の目が厳しくなっていることがある。
原告側は、会社の仮眠室が利用できる状態ではなかったことなど、休憩を取れずに長時間労働を強いられた実態を明らかにした。地裁支部は、休憩時間があったとする会社側の主張を退け、拘束時間のほとんどを勤務時間と算定、事故は予見できたと認定した。
遺族側代理人の川岸卓哉弁護士によると、通勤時の交通事故に関して、企業側の管理責任まで問われることはほとんどなかった。帰る方法は本人が決められることに加え、事故と過労との因果関係を立証するのが難しく、本人の病気や不注意による運転ミスの可能性もあるためだ。一四年施行の過労死等防止対策推進法でも、過労事故死は定義されていない。
川岸弁護士は、和解を受け「通勤中の事故はこれまで労働者の自己責任とされてきたが、会社が安全に帰らせることを求めた。過労死の対象を広げ、対策を強化させることになる」と意義を語る。企業側は社員の命と健康を守るため、この教訓をどう生かすかが問われる。 (大平樹)

過労事故死 和解成立 限界試す働き方間違っている - 東京新聞(2018年2月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018020902000123.html
https://megalodon.jp/2018-0209-1005-11/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018020902000123.html


「人間の限界を試すような働き方は間違っている」。会社員渡辺航太さん=当時(24)=の事故死と過労の因果関係を認めた和解が成立したのを受け、遺族は声を詰まらせて訴えた。過酷な労働環境に対し、異議を唱え続けることが「未来への責任」という遺族の思いが実を結んだ。 (小形佳奈、山本哲正)
法廷での和解成立後、息子を失った母淳子さん(61)は「私は、過労死のある日本社会を恥ずかしく思う」と語った。淳子さんは、事故から四年近くがたつ今も線香をたかない。洗濯物や布団に残る息子の匂いが消えるからだ。「寝ている間に、息子が帰ってくるような気がする」
航太さんはアルバイトをしながら奨学金を得て大学の二部(夜間)を卒業。正社員での就職を目指し、卒業半年後の二〇一三年九月、ハローワークを通じて、商業施設などに植物を飾る「グリーンディスプレイ」に応募した。
「試用期間なし」「就業時間は朝から夕方」「残業は月平均二十時間」
求人票にはそう書いてあった。しかし、アルバイトとして採用後、早朝や深夜勤務もあり、事故直前一カ月間の時間外労働は約九十時間に及んだ。航太さんは「寝るひまもない」「今辞めたら奨学金を返せない」と打ち明けていた。
一四年三月、目指していた正社員になれることになったが、そう報告する航太さんの表情は「へとへとだった」という。最後に話したのは事故四日前の四月二十日。「ゴールデンウイークに休みが取れそうだから、相談に乗ってほしい」。事故が起きた日は前日から約二十二時間、働き通しだった。
裁判では、航太さんが日々の業務を記したメモやタイムカードをもとに、泣きながら過重労働の実態を示す資料を作った。
和解の成立を受け、淳子さんは「事故の原因が過労によるもので、会社側の安全配慮義務違反を認めた前例になったことに意味がある」。
そして、「過労死のない社会を築くことが、息子への本当の報告だと思う」と決意している。

不登校やひきこもり「地域でつながろう」 豊島のNPO法人呼び掛け:東京 - 東京新聞(2018年2月9日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201802/CK2018020902000141.html
https://megalodon.jp/2018-0209-1003-43/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201802/CK2018020902000141.html

不登校やひきこもりの当事者・家族による地域ごとの人の輪「家族会」の誕生が今春、都内で相次いでいる。広域組織のNPO法人楽(らく)の会リーラ(豊島区)が働き掛けているためだ。「仲間とつながれる場所が地域にあれば、孤立防止になる」。楽の会事務局長の市川乙允(おとちか)さん(71)は、家族が連携する意義を説く。 (中村真暁)
楽の会は関東地区を中心に、広域的に活動する家族会。開設への関わりは地元・北区主催の家族の集まりに参加していた市川さんが五年ほど前、他の家族とともに「不登校・ひきこもりの自主家族懇談会『赤羽会』」を設立したのが最初だった。開催日がこれまで平日だったため、より参加できるように赤羽会は休日にした。中村昭子会長(59)は「市川さんのような社会的資源やシステムに詳しい人の関わりが、重要だった。しっかりとした組織になった」と振り返る。
以来、楽の会の家族が中心になったり、一般からの相談を受けたりして、計十カ所の家族会や居場所の開設支援をしてきた。これまでに開設した八王子市と足立区、中野区のほか、二月には荒川区、三月には杉並区、豊島区、練馬区、日野市、国立市でも新設や、現在あるグループに規約を作って組織化したり、活動を拡大させたりするリニューアルがある。
都によると、十五〜三十四歳のひきこもりの推定人口は約二万五千人(二〇〇七年度)。調査や支援は若年層が中心で、中高年向けは手薄だ。楽の会の会員では四十代以上が四人に一人といい、市川さんは「相談場所が見つけづらい人もいる中、家族会が地元にあれば地域資源を活用し、就労など必要な支援につなぎやすくなる」と指摘する。
市川さんには、不登校を経てひきこもった経験がある娘がいる。「『ひきこもりは、怠けや甘え』というイメージから、当事者も家族も自分を責めてしまう。つらさを吐き出し、安心できる場所が近くにあることは大切」とも強調する。
二月十日午後一時半から、「荒川たびだちの会」(荒川区)のリニューアルを記念する講演会が荒川区ムーブ町屋(荒川七)である。KHJ全国ひきこもり家族会連合会事務局長の上田理香さんが「ひきこもりの理解と対応 そして、将来を考える」をテーマに話すほか、当事者らの体験発表もある。
定員四十人。参加費は一人五百円だが、当事者は無料。要予約。問い合わせや申し込みは、同NPO法人=電03(5944)5730=へ。

読書感想文コンクール 本が引き出す「考える力」 - 毎日新聞(2018年2月9日)

https://mainichi.jp/articles/20180209/ddm/005/070/125000c
http://archive.today/2018.02.09-010349/https://mainichi.jp/articles/20180209/ddm/005/070/125000c

「私が今、幸せに生きていることが、私とつながる人の喜びになり、支えになっていることにも気付いた」
秋田県の横手北中3年、伊藤紬(つむぎ)さんは「ホイッパーウィル川の伝説」(あすなろ書房)を読んで、家族や友人との絆の意味を改めて考えた。
物語は、姉を亡くした妹の視点を中心に、家族の絆や愛情を描いた米国のファンタジーだ。
登場人物と対話し、自らの心情を素直につづった「つながりの中で今を生きる」は、第63回青少年読書感想文全国コンクール(公益社団法人国学図書館協議会毎日新聞社主催)の中学校の部で、内閣総理大臣賞に選ばれた。
伊藤さんは、小学6年時と昨年に続き、3回目の同賞受賞だ。母親の読み聞かせを経て、小学1年から読書感想文を書き始めたという。
「一冊を何度も読み、深く理解して書くと達成感がある」と話す。考える力は、言語力が基礎になる。それは本を読むことで養われる。表現力とともに読書感想文が育む力だ。
今回のコンクールには、小中高校など2万5847校が参加し、430万編余りの応募があった。きょう東京で受賞者の表彰式が開かれる。
家庭とともに、子供と本を結ぶ機会を増やす学校教員の役割は大きい。横手北中も始業前の読書活動のほか、生徒が読んだ本の魅力を自ら全校生徒に紹介する取り組みも始めており、子供たちに好評という。
全校一斉の読書活動に取り組む学校は多い。文部科学省の調べでは、小学校で97%、中学でも89%が実施しており、始業前の「朝読書」はこのうち7割ほどにも上る。
子供の読書を学習支援にもつなげる学校図書館の役割も重要だ。全国学図書館協議会毎日新聞社が協力してまとめた昨年の学校読書調査では、小学生では6割が学校図書館を利用しているが、中学では32%、高校では13%と減少している。
年齢が上がるにつれて本から離れていく状況も浮かぶ。部活動や塾通いなど、校内外の生活の多忙化も影響していそうだが、残念な傾向だ。
本や教科書で得た知識を基に、議論を重ねて学びを深める。そんな学習の拠点としても学校図書館の充実が必要だ。蔵書の見直しや学校司書のさらなる配置が求められる。

ホイッパーウィル川の伝説

ホイッパーウィル川の伝説

(大弦小弦)世紀のスクープを出した新聞社ではなく、先を越された… - 沖縄タイムズ(2018年2月9日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/207233
https://megalodon.jp/2018-0209-1001-38/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/207233

世紀のスクープを出した新聞社ではなく、先を越されたライバル社が物語の舞台。後追いのつらさは痛いほど分かるだけに、必死に食らいつく姿に心がざわつく

ベトナム戦争の内幕を記した米国防総省の機密文書を巡る映画「ペンタゴン・ペーパーズ」を都内であった試写会で見た。1971年、文書の存在を先に報じたニューヨーク・タイムズが出版差し止め命令を受ける中、ワシントン・ポストは国家反逆罪に問われかねない重圧と、政府のうそを暴く報道の使命の間で揺れ動く

▼掲載に踏み切ると、他の新聞も追随。ニクソン政権はポスト紙を提訴したが、最高裁はこう退ける。「報道機関は統治に仕えるものであり、政権や政治家に仕えるものではない」

▼米国政府にもさまざまな過ちや矛盾はあるが、それでも、政策決定過程を記録し、後世の検証を可能にするという最低限の誠実さはある。日米間の密約も発覚は大概、米公文書からだ

ペンタゴン・ペーパーズも、当時のマクナマラ国防長官が失敗の教訓として、より客観的に戦況を分析する文書の作成を指示していたからこそ、報道につながった

▼それに引き換え、国民の疑念に「記録は破棄した」と国会で堂々と言い続ける官僚が組織のトップに出世する日本政府。歴史の評価に耐えられるのか。何をか言わんやだ。(西江昭吾)

地毛証明賛否割れる 不要51人、必要47人 那覇の高校生100人聞き取り - 琉球新報(2018年2月9日)

https://ryukyushimpo.jp/news/entry-661905.html
http://archive.today/2018.02.09-010221/https://ryukyushimpo.jp/news/entry-661905.html

生まれつきの髪の色やくせの状態を示すため学校が生徒に提出させる「地毛証明書」について、琉球新報は8日までに沖縄県那覇市内の県立高校9校の生徒100人から話を聞いた。地毛証明書への賛否は割れたが、提出した生徒からは「自分が否定されているようで嫌」などと不満の声が上がった。中には証明書を出した上、「おしゃれは駄目だが縮毛矯正はいい」として学校公認でストレートパーマをかけ、直毛にした生徒もいた。一方、証明書の提出を求める高校の多くは「生まれつきの髪の色や特徴を認めるため」と理由を説明している。
調査は1月中旬から2月初旬にかけて各校約10人の生徒から聞き取った。地毛証明書については51人が「必要ない」、47人は「必要」と答えており、賛否は分かれている。実際に地毛証明書を提出している生徒は4人だった。
「必要ない」と答えた生徒は「地毛が否定されているようでかわいそう」などと証明書による個性の否定を指摘した。「必要」とする生徒は「染髪者と区別するために仕方ない」などと理由を挙げた。
琉球新報が1月、ツイッターで一般対象に行ったアンケートを実施したところ、地毛証明書に否定的な意見が88%に上った。現役の高校生の方が校則を受容している傾向がある。
各校が制服の着こなしや頭髪などを規定する「身なり指導」に関しては、「自由にしすぎると風紀が乱れる」などの理由から70人が「何らかの指導は必要」と答えた。
ただ、このうち34人は「学校によって基準が違うのはおかしい」「無理やり従わせられている」と指導内容や方法に疑問を呈した。残る36人の中にも「最初から決まっていたので仕方がない」とあきらめの気持ちをにじませる声があった。
染髪禁止などを指導する学校の中には教室に入れないなど学校活動の一部を制限する事例もある。学校側は「社会が求める理想的な高校生像に照らして指導している」などとしている。

<金口木舌>性的虐待、禁錮175年の罪 - 琉球新報(2018年2月9日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-661892.html
http://archive.today/2018.02.09-010048/https://ryukyushimpo.jp/column/entry-661892.html

部活に明け暮れた学生時代。けがで思うように練習に参加できなくなった友人が、「マッサージでよくなる」と別の部活の顧問に1人だけ呼ばれるようになった

▼卒業後、久々に再会した友人はあの時、胸を触られ、性的な話をされたと明かした。でも「誰にも言えなかった」と。怒りと悔しさ、何より彼女の苦痛を思い、叫びたくなった
▼被害を訴える証言に、同じ感情が湧き起こる。20年以上にわたり、治療と称して少女らを性的に虐待した米体操連盟の元スポーツ医師ラリー・ナサール被告。被害者は265人に上る。裁判では胸をかきむしられるような証言が続いた
▼ある女性は被害を警察に訴えた際、被告が「体に自信のなかった彼女が治療を誤解しただけだ」と弁明したことに「最低だ」と声を振り絞った。被害当時、15歳だった別の女性は「死んでしまおうと思った」と語った
▼医師という社会的信用を隠れみのに卑劣な行為を繰り返した被告。それを隠蔽(いんぺい)した組織。性暴力の背後には力関係と支配欲がある。指導者と選手、教師と生徒、上司と部下、仕事の取引先、家庭内。力の強い側がつけ込み、被害者は声を出せずにいる
▼証言に立った女性たちに、裁判官は「あなたは強く勇敢です」と寄り添った。被告に言い渡されたのは、性的虐待の罪で最長175年の禁錮刑。他の罪状でも判決が出た。罪は重く、消えない。

(教えて 憲法)国会で改憲機運、安倍首相の登板で再び - 朝日新聞(2018年2月6日)

https://www.asahi.com/articles/ASL256VJ2L25UTFK027.html
http://archive.today/2018.02.09-005825/https://www.asahi.com/articles/ASL256VJ2L25UTFK027.html


教えて!憲法 基本のき:1

ことしの政治の最大のテーマは、憲法改正だといわれます。私たちは近い将来、賛成か反対か、改憲案への意思表示を国民投票で迫られることになるかもしれません。そもそも憲法とは何か。何が書いてあるのか。憲法の「基本のき」を全8回でおさらいします。
ここ数年、憲法改正の議論が盛んになった直接のきっかけは、改憲を悲願とする安倍晋三氏が首相になったことだ。
首相は今国会がはじまった1月22日も、「わが党は結党以来、憲法改正を『党是』(政党の根本方針)としてかかげ、長い間、議論を重ねてきた。いよいよ実現するときを迎えている」と決意を語った。
ただし、首相の言い方は、少し大げさだ。
政界で、憲法改正はどのように論じられてきたのだろうか。
1955年に生まれた自民党は、綱領の下にある政綱で「現行憲法の自主的改正」とうたった。これが「党是」といわれるゆえんだが、つねに前面に押し出してきたわけではない。
結党当初、改憲論を主導したのは、鳩山一郎岸信介の両元首相だ。ともに連合国軍によって公職追放されている間に新憲法が制定されたことを「押し付け」と批判。自らの手で憲法を制定しようと訴えた。
安倍氏の祖父でもある岸氏は、内閣に「憲法調査会」をつくり、自主憲法制定に向けて力を注いだ。だが、60年安保闘争を受けて退陣。後をついだ池田勇人内閣が経済成長優先の路線をとると、自主憲法論は政治の表舞台から消えていった。
70年代に入ると、国会では改憲論自体がタブーになった。9条を中心に多くの国民が憲法を支持し、社会党など護憲政党が一定の勢力を占めていたからだ。
82年には、根っからの改憲論者の中曽根康弘氏が首相になったが、改憲を実行に移せなかった。

     ◇

〈押しつけ憲法論〉 米国を中心とした連合国軍による占領下で制定された日本国憲法について、日本の主権が制限されるなかで国民の意思に基づかずに連合国軍総司令部(GHQ)に「押しつけられた」とする考え方。実際にGHQが1週間程度で作った総司令部案(マッカーサー草案)を日本側に手渡し、それを指針として憲法は作られた。
実際には、戦後の帝国議会の審議で独自の修正も重ねられたが、1955年の自由民主党結党メンバーのうち、鳩山一郎岸信介首相は制定経緯を問題視。「現行憲法の自主的改正」を党是とする自民党が、改憲をめざす主な理由とされてきた。
その後、9条をはじめとして憲法が国民に定着するようになり、押しつけ憲法論は徐々に弱まっていった。

自社連立時代には歩み寄り

憲法をめぐる状況に大きな変化が起きたのは、90年代だ。
野党に転落していた自民党が94年、社会党新党さきがけとの連立で政権に復帰。自衛隊違憲としてきた社会党村山富市委員長が首相につき、自衛隊合憲、日米同盟堅持を打ち出した。「自衛隊の最高司令官の首相が違憲だとは言えない」との考えだった。
これにこたえるかのように自民党も方向を変えた。
河野洋平総裁は95年の党大会で「新宣言」を採択。憲法について、「すでに定着している平和主義や基本的人権の尊重などの諸原理を踏まえて議論を進めていく」との方針を打ち出した。自主憲法制定論の事実上の棚上げだった。党内の若手からは「自民党自民党でなくなってしまう」との強い異論が出たが、戦争経験のある重鎮・後藤田正晴氏が河野氏に力を貸した。
かつてのライバル政党の歩み寄りで、憲法をめぐる政党間の対立はうすれた。9条を中心とした国会での論争はしずまり、区切りがついたと見られた。

世論の変化も背景に

ところが国会での改憲機運が再び高まるのには、そう時間はかからなかった。
2000年、衆参両院に「憲法調査会」がもうけられた。岸政権の時代には内閣の組織だったものが、50年近くの時をへて国会にできた。憲法問題を専門的に議論する場が国会にできたのはこれが初めてだった。
背景にあったのは、世論の変化だ。若い世代を中心に、「憲法改正は必要だ」と考える人たちが増えてきた。社会党に代わる野党第1党の民主党も、議論そのものは拒まない姿勢をとるようになった。
さらに改憲論の中身も、自主憲法制定論から国際貢献のあり方や環境権などの「新しい人権」に軸足が移っていった。
憲法調査会は05年に憲法調査特別委員会へと衣替えし、憲法改正のための国民投票の手続きをルール化した国民投票法を制定した。これで改憲に向けた法的制度が初めて形としてととのった。そして発足したのが改憲原案の審議もできるいまの「憲法審査会」だ。
こうした歴史的な曲折の末にあるのが、安倍首相の改憲論だ。ただし、9条改正にこだわる主張の中身は、60年あまり前に岸元首相がかかげた自主憲法制定論に「先祖返り」しているともいえる。(石松恒、編集委員・国分高史)

     ◇

国民投票法〉 国会が発議した憲法改正案の賛否をきめる国民投票の具体的な方法を定めた法律。正式名称は「日本国憲法の改正手続に関する法律」。憲法は96条で改正の手続きを定めているが、国民投票を実施するための法律は長年整備されず、2007年になって制定された。
投票権を持つのは18歳以上の日本国民となる。国民投票は発議した日から60日以後180日以内の、国会の議決した日におこなう。
発議後、衆参両院の各10人でつくる「国民投票広報協議会」で広報活動のあり方をきめる。国民投票のための運動は原則として自由だ。賛否を呼びかけるテレビ、ラジオCMは投票日前の14日間だけ禁止されるが、それ以外の広報活動は自由にできる。
改正案は関連する事項ごとにまとめて提案される。そのため、自民党憲法改正草案のように憲法を丸ごと改正することはできない。
投票は改正案ごとに1人1票で、「賛成」「反対」のいずれかに丸をつける。有効投票数の過半数が賛成すれば承認される。

     ◇

〈衆参両院の憲法審査会〉 2007年の国民投票法の成立とあわせて衆参両院にもうけられた。与野党の対立もあって、実際に動き出したのは民主党政権の11年11月だった。
国会に提出された憲法改正原案を審査し、過半数が賛成すれば本会議にかけられる。国会法では、憲法改正原案や改正の発議、国民投票に関する法律案などの審査のほか、「憲法及び憲法に密接に関連する基本法制」の広範かつ総合的な調査が審査会の役割とされる。
審査会の構成メンバーは衆院が50人、参院が45人で、両院の議席数に応じて各会派に配分される。審査会の日程や議題に関する協議は、各会派の代表からなる幹事会や幹事懇談会でおこなわれる。

(教えて 憲法)最高法規、反する法律は無効 - 朝日新聞(2018年2月8日)

https://www.asahi.com/articles/ASL27621LL22UTFK01L.html
http://archive.today/2018.02.09-005702/https://www.asahi.com/articles/ASL27621LL22UTFK01L.html


教えて!憲法 基本のき:2

日本国憲法は98条でみずからを「最高法規」と位置づけている。憲法がさだめているきまりに反する法律や命令をつくることはできないということだ。
でも、「最高法規」の意味を、日々の生活のなかで感じるのはむずかしい。憲法とは何か。ほかの法律とはどう違うのか。日本国憲法ができたときのことを振り返ると、わかりやすいかもしれない。
日本は第2次世界大戦に負けた後、明治時代にできた大日本帝国憲法明治憲法)の改正を、日本を占領した連合国軍総司令部(GHQ)にせまられた。政府がGHQの草案をもとにつくった改正案は、帝国議会での審議で修正が加えられ、日本国憲法ができた。

GHQの草案をもとに改正

憲法の制定経緯そのものについては、多くの研究がある。しかし、当時の吉田茂内閣が同時に「臨時法制調査会」をもうけて、たくさんの法律づくりや法改正を大急ぎで進めたことは、それほど知られていない。
国をおさめる権力を持つ主権者が天皇から国民に代わる。貴族院を廃止して新たに参議院をもうける――。新憲法の規定に合わない法律をあらためなければならなかった。皇室典範や内閣法、民法、刑法、戸籍法。臨時法制調査会が法律づくりや改正のポイントをまとめたのは、主な法律だけで約20にのぼったという。
法律や命令が憲法に反していないか、審査するのが裁判所だ。その権限を「違憲立法審査権」といい、最終的な権限をあたえられている最高裁判所は「憲法の番人」と呼ばれる。これまでも法律のさだめを無効としたり、改正をせまったりした。
その一例が、遺産相続のときに、結婚していないカップルの間に生まれた子(婚外子)の取り分を、結婚したカップルの子の半分とする、とさだめた民法の規定だ。人種や信条、性別などで差別されない「法の下の平等」をうたう憲法14条に反しているとして、最高裁が見直しをせまった。
両親や祖父母などを殺害した場合に通常の殺人より重い刑とする刑法の「尊属殺人」規定も、14条に照らして無効とされた。

反する法律を無効とする最終権限、最高裁

憲法とは、平等や自由といった個人尊重の原理をしめしたものともいえる。
この原理に反する法律を無効とする最終権限を最高裁にあたえることで、最高法規としての安定性をたもっている。しかも、法律は衆参両院の過半数の賛成で変えられるが、憲法改正には衆参両院で3分の2以上の賛成で憲法改正を発議し、国民投票で有効投票の過半数の賛成を得ることが必要だ。「改正しづらい=硬い」という意味で、硬性憲法と呼ばれる。
条文を変えられないため、歴代内閣は平和主義をさだめた9条の読み方を変え、自衛隊の増強や海外派遣を進めた。解釈改憲だ。安倍内閣は歴代内閣が禁じてきた集団的自衛権の行使を認める解釈改憲をおこない、強い批判をあびた。(岩尾真宏)

(教えて 憲法)国家権力しばる「立憲主義」 - 朝日新聞(2018年2月9日)

https://www.asahi.com/articles/ASL257F90L25UTFK02D.html
http://archive.today/2018.02.09-005527/https://www.asahi.com/articles/ASL257F90L25UTFK02D.html


教えて!憲法 基本のき:3

人は生まれながらにして天からあたえられた権利、自由を持っている。この考え方を天賦人権説という。しかし、国家権力はときに暴走し、こうした権利を踏みにじったり、うばったりすることがある。だから、憲法でルールを定め、権力をしばる――。これが立憲主義だ。憲法に欠くことのできない要素とされる。
日本国憲法では、個人の権利保障というかたちで、国家が守るべきものをしるしている。
たとえば、思想の自由や表現の自由だ。「基本的人権」「侵すことのできない永久の権利」と表現される。仮に選挙でえらばれた多数派が国会できめたとしても、国家は個人からこれらの権利をうばうことはできない。
立憲主義という考え方は、西欧で17〜18世紀に市民革命が絶対王制を打ち破るなかで生まれた。国王が「朕(ちん)は国家なり」と称し、ほしいままに人民を支配することができる絶対主義の考え方を否定し、国家権力と市民の関係を新たに位置づけるものとして宣言文書にも明記された。
フランス人権宣言はその一つだ。「権利の保障が確保されず、権力の分立がさだめられていないすべての社会は、憲法をもたない」。立憲主義のもう一つの特徴の権力分立もしるされた。
日本国憲法も、国家権力を法律を作る立法(国会)、法律を執行する行政(内閣)、法律を適用して紛争を解決する司法(裁判所)の三つにわけ、たがいにチェックし合うしくみにしている。
憲法で国家権力をしばるという考え方は、天皇主権の大日本帝国憲法明治憲法)のもとでも受け入れられた。欧州で各国の憲法立憲主義を学んで旧憲法をつくった伊藤博文は、「第一君権(君主の権力)ヲ制限シ、第二臣民ノ権利ヲ保護スルニアリ」と語っている。
こうした西洋由来の立憲主義に疑問を投げかけたのが、「天賦人権説にもとづいた規定はあらためる必要がある」と主張する自民党憲法改正草案だ。
西洋での経験を踏まえて基本的人権の獲得を歴史的な成果とした憲法97条を、「重複がある」と全面的に削除し、日本国憲法が政治家や公務員ら権力を行使する側に課した憲法尊重の義務を国民の側にも課した。
これらは憲法学者らから「本来、権力をしばるはずの立憲主義を理解していない」と批判された。
立憲主義をめぐる考え方は、国会での憲法論議でも焦点になっている。
先月22日の施政方針演説で安倍晋三首相は憲法について、「国のかたち、理想の姿を語るもの」と主張した。これに対して、立憲民主党枝野幸男代表が「憲法は公権力のあり方についてきめたルール。定義がまちがっている」と批判。首相は今月6日の衆院予算委員会で、「いわば権力の手をしばるものだ。同時に国のかたち、理想を語るものでもある」と言いかえた。(石松恒)

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〈市民革命〉 経済力を持つが参政権を持たない市民階級が主体となり、封建国家や絶対主義国家を打ち倒した革命。代表的なものはイギリス名誉革命アメリカ独立革命フランス革命など。
市民革命の背景には、哲学者による人権思想の発展があった。17世紀のイギリスのロックは、人は生まれながらにして生存権自由権などの権利を持ち、それを確保するために契約を結んで国家をつくったと説いた。国家が権利を侵害する場合には、人々は抵抗して政府を変えることができる抵抗権を主張した。
18世紀のフランスでは、モンテスキューが立法、行政、司法の三権分立論を主張し、互いに牽制し合うことで権力の腐敗と乱用をふせぐことができると説いた。ルソーは主権者は人民であり、政府はその行政権を契約によってゆだねられたにすぎないとする「人民主権国民主権)」の考え方を唱えた。
アメリカ独立宣言やフランス人権宣言にはこうした思想が取り入れられたり、影響を与えたりした。

     ◇

自民党憲法改正草案〉 自民党が野党だった2012年4月、谷垣禎一前総裁のもとでつくられた。保守色が強いのが特徴で、現行憲法のすべての条項を見なおし、前文は全面的に書きかえた。
天皇を元首とし、憲法9条には国防軍を保持することを規定。武力攻撃や大規模自然災害などでの緊急事態条項を新たにもうけ、憲法改正発議の要件を衆参それぞれの3分の2から過半数にゆるめた。「家族は互いに助け合わなければならない」と家族の尊重を義務づけた。
個人の尊厳や幸福追求権は、「公益および公の秩序に反しない限り尊重される」とした点をめぐっては、「公益が何かを決める政府の恣意(しい)的な判断で人権を制限することが可能」との指摘が相次いだ。
野党は草案を「復古的」と批判し、撤回を要求。自民党は16年、草案の取り扱いを「公式文書の一つ」と位置づけ、衆参の憲法審査会にそのまま出さないと説明する一方で、撤回はしないときめた。

(憲法を考える)国民投票、経験国からの警鐘 首相退陣に追い込まれた英伊を視察、衆院議員団報告書 - 朝日新聞(2018年1月30日)

https://digital.asahi.com/articles/DA3S13336284.html
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憲法を考える 視点・論点・注目点

今年の国内政治の焦点は、安倍晋三首相が執念を燃やす憲法改正に向け、国会が改正案を発議できるかどうかです。発議されれば、憲政史上初めてとなる国民投票で、その賛否が直接私たちに問われることになります。衆院憲法審査会(森英介会長)の議員団は昨年、ともに2016年に国民投票を経験した英国、イタリアを視察しました。国民投票を主導した首相がいずれも意図せぬ結果で退陣に追い込まれた両国の経験から、どんな教訓をくみ取れるのでしょうか。審査会がまとめた報告書をもとに考えてみました。(編集委員・国分高史)

■感情に左右される危険性ある 英国―僅差でEU離脱

欧州連合(EU)離脱か、残留か――。英国が国民投票を実施したのは、16年6月。両派の激しい運動の末、わずかの差で離脱派が上回った。
国民投票の実施を決めたのは当時首相で保守党党首だったデービッド・キャメロン氏。残留派だったキャメロン氏は、国論を二分する論争に敗れて退陣した。
キャメロン氏が得た教訓は何だったのか。
キャメロン氏はまず「最も注意を払うべきは、国民投票が政府に対する信任投票になってしまったり、他の政策的な問題に対する投票になってしまったりするのではなく、『投票用紙に書かれた質問文』に対する投票となるようにする点だ」と議員団に語った。
さらに日本で憲法9条が焦点になっていることを念頭に「英国のような島国では、EUから離脱するか残留するかは、感情的な問題になってしまいがちだ。日本にもよく似た問題があるように思う」と指摘。「憲法改正では、『理論的な側面』と『感情的な側面』の両面に訴えることが大事だ」と助言した。
自民党自衛隊明記案を疑問視したのが労働党のヒラリー・ベン下院EU離脱委員長だ。自民議員の説明に対して、「いままで自衛隊が活動できたのであれば、自衛隊憲法に明記されていないことは、それほど大きな問題ではないように私には見受けられる」と話した。
一方で、政府にことさら反対するために国民投票が利用される危険性も指摘。「何をテーマに国民投票を行うかについて、よく注意しなければならない。国民投票を行って負けた場合、もう議論の余地がなくなってしまうから」。やはり労働党で英日議連会長のロジャー・ゴッシフ下院議員も「国民投票の危険な点は、国民はそれがどんなテーマの投票であれ、自らの望むことについて投票する点だ」と同様の見方を示した。
国民投票の正統性を担保する方策について語ったのは同議連副会長のポール・ファレリー下院議員だ。「例えば賛成票が全有権者数の50%以上でなければならない、といった最低ラインを設けなければ、国民投票の結果に正統性がないのではないか。次に、最低投票率を66%とか70%とかに設定するべきではないか」と述べた。
英国では国民投票の後、EUへの負担金がなくなれば多額の資金を福祉に回せるといった離脱派の主張に誇張があったことなどが問題視された。選挙委員会が投票後に実施した世論調査では、52%が「投票運動が公平に行われたとは思わない」と答えた。
ケンブリッジ大学のデービッド・コープ教授は、過熱した運動が展開された投票をこう総括した。
「いま英国の政治家、産業界、学会の有識者に聞けば、ほぼ100%の人たちが『もう国民投票などすべきではない』という強い意見を持っているだろう」

■全国民による改革でなくては イタリア―上院権限めぐる改憲、大差で否決

上下両院がまったく同じ権限を持つため、両院で多数派が異なる「ねじれ」がたびたび生まれ、政治の停滞を招いてきたイタリア。16年12月の国民投票で、上院の定数や権限を大幅に削る憲法改正への賛否を問うたが、大差で否決された。
イタリアの国民投票から得られる教訓は明確だ。
自己批判的にかえりみると、国民投票は多数派が自己の権力を強化する手段として使ってはいけないということを指摘できる」。民主党のアンナ・フィノッキアーロ議会関係担当相は振り返った。
イタリア政府は国民投票に先立つ13年、憲法改正に対する国民からの意見聴取をインターネットで実施。約20万人の回答から、上下両院の権限が対等な「完全二院制」を支持しているのは約9%にすぎないことがわかった。
レンツィ首相(当時、民主党)は14年に改憲案を国会に提出。下院だけでなく、権限が縮小されることになる上院の賛同も得た。ところが、自らの足場を固めようと、改憲の成否に進退をかけるとレンツィ氏が表明すると、その後の政治情勢の変化もあり、国民投票は政権の信任投票の様相を帯びた。レンツィ氏は退陣を余儀なくされた。
ステファニア・ジャンニーニ前教育・大学・研究相は「残念であったのは、国民投票の段階でレンツィ政権に対する賛否を表すという政治的な内容と、国家の機能の簡略化、効率化及び透明性を図るという憲法改正の純粋な内容とを、明確に分離することに失敗したことだ」と総括した。
一方、野党側の見方はこれとは少し異なる。
憲法改正に反対した新興勢力「五つ星運動」のダニーロ・トニネッリ下院憲法問題委員会副委員長は、改正の範囲が幅広く、国民投票が複雑になった点を問題視。日本へのアドバイスとしてこう語った。
憲法は国民すべての財産であり、憲法改正は『だれかの改正』であってはならない。国会の勢力を含めて、国民すべてが共有する改革でなくてはいけない」
国民投票には、たいへんな時間とコスト、エネルギーが要る。野党フォルツァ・イタリアのレナート・ブルネッタ下院議員はこう言って苦笑いを浮かべた。
国民投票によって賛成派も反対派も本当に疲れてしまっている。国会で採決されるまでに2年間の議論が続き、さらにその後の国民投票に向けての活動があり、本当に疲れた。その時々の政治的な多数だけに頼るような憲法改正は不可能だ」
イタリアでも英国と同様、社会に疲労感が広がっていた。

■大多数の納得が前提。政権信任投票ではないですぞ――ケンポウさんに聞く

英国とイタリアの国民投票の経験を私たちはどうとらえるべきなのでしょうか。日本国憲法を擬人化した当欄のキャラクター「ケンポウさん」と考えました。

    ◇

――両国の経験から、どんな教訓が得られるのでしょうか?

まずは憲法改正についての与野党を超えた幅広い合意を得ること。それと時の政権に対する信任投票にならないように注意することですな。

――でも自民、公明の与党と改憲に前向きな姿勢の野党を合わせれば、改正の国会発議に必要な3分の2以上の勢力はすでにありますよね?

国会の議席数と憲法についての世論の分布は必ずしも一致していない。幅広い合意というのは、大多数の国民が「なるほどこれなら改正すべきだ」と納得できるような内容でなければ、やるべきではないということだ。
仮に国民投票が51対49の結果になれば、49の側には大きな不満が残る。国の最高法規の改正でそんなことになっては禍根を残す。実際、僅差(きんさ)でEU離脱を決めた英国では残留派の不満が渦巻いた。

――「政権の信任投票にならないように」とは?

イタリアでは今回の改憲案は上下両院でそれぞれ2度可決された。ただ、3分の2以上の賛成を得られなかったため、レンツィ前首相はあえて投票を実施することにして「その成否に進退をかける」と表明した。実はレンツィさんは与党の党首だったけれど、選挙で選ばれた国会議員ではなかったんだ。そこで国民投票で承認を得られれば、自身の政治基盤を強化できると思ったようだ。その思惑が裏目に出た。

――自業自得というわけですか。

ただ、それによってイタリア政治の長年の懸案を解決するための二院制改革がつぶれてしまった。改革そのものにはイタリア国民の9割が支持していただけに、もったいなかったという見方もできますなあ。

■視察報告書、サイトで公開 

衆院憲法審査会の議員団は昨年7月11日から同月20日まで、英国とイタリア、スウェーデンを訪問。スウェーデンでは教育無償化などに関して調査した。森会長以外の参加議員(前議員を含む)は中谷元上川陽子(以上自民)、武正公一民進)、北側一雄(公明)、大平喜信(共産)、足立康史(維新)の各氏。議員団が昨年11月にまとめた報告書は約400ページ。衆議院ウェブサイトで公開されている。