法事に出かけようと玄関を出たとき、布教活動の男性が立っていた。私は、特に断ることもなくパンフレットを受け取り、バッグにしまった。そのあと読経を聞きながら、私はふと姪のことを思い出していた。 夫は一人っ子、私は兄が二人の三人きょうだい。けれど、私の子どもたちにとって“従妹”と呼べる存在は、長男の娘──姪、たったひとりだけだった。 その姪は、もう何年も実家に寄りついていない。今では絶縁状態だと聞く。私の母から、彼女の気持ちを少しだけ聞いたことがある。 兄嫁は、ある“学習会”に強く傾倒していた。宗教ではないと彼女は言っていたけれど、実質的には宗教活動に近いもので、頻繁に集まりに出かけていた。兄もその…