宗教と人間社会の二面性──光と影の狭間で 古来より、宗教は人々の心の拠り所であり、道徳と倫理の基盤として、共同体の絆を強めてきました。困難に直面した人々に希望と救済を与え、多くの信仰者から深い敬意と信頼を集めてきたのです。 しかし、宗教の歴史を丹念に辿ると、その光彩の陰で、しばしば見過ごされてきた暗い側面が浮かび上がります。それは、宗教が時に権力構造と結びつき、支配と搾取の装置として機能してきたという、否定できない事実です<sup>注1</sup>。 権威の世襲と富の集中 たとえば、中世ヨーロッパのある地域で長きにわたり信仰の中心であった教会組織では、指導者の地位が血縁によって継承され、「聖な…