Hatena::ブログ(Diary)

Close to the Wall

2020-01-01

2016-04-19

[]向井豊昭アーカイブ更新 2016.04

向井豊昭アーカイブ

今回の更新は、向井豊昭の短篇「モヨロの人たち」です。同人誌『小説集 ここにも』(1976年)収録のもので、自身の血縁者にもかかわらず別姓だった京谷勇次郎という人物の調査をする語り手と、狩猟民族の空想譚がからんだ不思議な作品です。

なお、作中に出てくる網走駅前の「モヨロ人」の像について以下の記事が解説しています。

 この像は、1967年、網走ライオンズ・クラブの認証伝達に合わせ、市の玄関口に設置された。10年後、網走駅の拡張工事のため網走湖畔にある網走湖荘の中庭に移設された。名を「モヨロ人漁撈の像」という。

朝日新聞デジタル:モヨロ人漁撈の像(網走市) - 北海道 - 地域

像は2003年、モヨロ貝塚再調査のさいに網走駅前に再設置されたということです。

2016-03-23

[]向井豊昭アーカイブ更新

向井豊昭アーカイブ

一月の記事権利関係確認のために非公開にしていた記事を再公開しました。

エスペラント誌「La Movado」より向井豊昭関連記事

再度、「La Movado」のエスペラント語の翻訳をしていただいた間宮緑氏と、注と校正をしていただいた峰芳隆さまに重ねて感謝します。

塔の中の女

塔の中の女

日本エスペラント運動人名事典

日本エスペラント運動人名事典

2016-02-29

[][]奥彩子、西成彦沼野充義編 - 東欧想像力

東欧の想像力

東欧の想像力

東欧想像力〉の松籟社から、その叢書名を冠した現代東欧文学ガイドが刊行された。世界文学ガイドで東欧に的を絞ったものはたぶん初めてだろうか。全ページ二段組で300ページ超となっていて、内容は相当詰め込んである。未知の作家がばんばん出てきて、期待感をあおられるのとともに、すでに知名度があったり何かで名前を聞いたことがある作家が東欧出自を持っていたりするのを知ることができ、非常に面白い。私は東欧というと、旧共産圏という経験を経た国、という共産趣味的な見方で見ているけれど、本書ではもうすこし広く見ているのでオーストリアベルンハルトなども扱われている。アルバニア文学についてきっちりページが割かれているのも貴重だ。

基本は、国ごとに文学史の概説をおき、その後に見開きあるいは一ページごとにまとめられた作家の紹介が続き、随所に周辺領域、ソルブ語文学とかギリシア文学その他のコラムが差し挾まれるという構成になっている。

全体の序論に当る、冒頭の沼野充義による「東欧という存在の定義しがたい曖昧さ」について書かれた論文も30ページに及ぶ力の入ったもので、東欧あるいは中欧という存在をめぐる議論の歴史をたどっている。東欧というときの「東」に、西に対する遅れた場所、というニュアンスが漂うこともあり、東欧革命以後自らを「中欧」と呼ぶ動きが大きくなっているというのも既に知られているように、「東欧」という概念はいささか議論になる言葉だ。東欧と呼ばれてきた地域を定義はできずとも、ある程度の特徴の共通性というのはありうるのではないか、として沼野は地政学ならぬ「地詩学」を提唱する。民族国家を持つのが遅れた地域ゆえに、文学愛国精神が強いことや、西に対する後進性をバネにした文学前衛性、あるいは曖昧さ、両義性、なにかの間にあるという性質などなどを指摘する。

個人的に興味があるのは、フラバルについて言われたように、ナチズムスターリニズムの二つの全体主義を経験した、という歴史性や、民族混住地域ゆえの諸問題にある。西欧とロシアに挾まれた地域ゆえの――ポーランドの分割が有名だけれど――さまざまな帝国に土地を奪い奪われ、という経験はアンドリッチ『ドリナの橋』でも描かれ、そこにおける民族共存がテーマとなっていた。そして二〇世紀においてもホロコーストソ連による軍事介入などがあり、苦難の歴史を経てきたわけで、それをどう描いているか、というのが興味深い。東欧という多民族の混住している場所では民族自決による民族国家というのもつねに大きな軋轢を抱え込み、さてまたユーゴスラヴィアのような共存の試みも破綻した。そうした歴史のなかで、移住、追放、亡命等々があり、本書においては終盤に置かれたイディッシュ文学東欧から追放されたドイツ人東欧ドイツ人文学や、コシンスキなどの亡命者を扱った章の存在に現われている。

東欧に住んでいたけれども、ドイツの自民族保護の口実による侵略を防ぐために追放されたり、戦後ソ連に追放されたり、生地がドイツでなくなったドイツ人というのがおり(フラバル『わたし英国王に給仕した』にも出てくる)、そうした故郷喪失の経験にさらされたクリスタ・ヴォルフ、ギュンター・グラス、ジークフリート・レンツといったドイツ作家も興味深い。ドイツ語だからか訳書も多い。しかし、東欧ドイツ語文学があるのに、東欧ロシア語文学が項目ないのは何故だろう。アレクサンドル・グリーンやオレーシャ、マンデリシュタームとか、取り上げられて良さそうだけれど。

久野量一の論考では、クンデラを引きつつ、東欧ラテンアメリカをともに「西」の「植民地」だと指摘するくだりが面白い。東欧ソ連ラテンアメリカアメリカという「帝国」支配下にある両地域は、ある意味で双子だ、というのがクンデラの指摘のようだ。そしてここで思い出すのは大日本帝国朝鮮等のアジアだったりする。「外地」出身者の故郷喪失の経験、あるいは本国に帰れない「在日」というポストコロニアルの問題。本書で書いている西成彦はゴンブロヴィチ論があるし、コシンスキら亡命文学、イディッシュ文学などについても書いているけれど、外地出身の後藤明生についても評論を書いていて、私の関心領域の行く先々で遭遇する恐ろしい人物だ。

トリエステで生まれたスロヴェニア人作家ボリス・パホルは、1913年生まれで今も存命というのが非常に驚いたところ。

コソヴォ出身でカナダ在住の亡命作家ダヴィッドアルバハリは『ユーラシア世界2』の奥彩子の論考で知ったのだけれど、本書で作家記事を執筆している栃井裕美がかなり論文を書いていて、アルバハリで検索するとそのうちPDFウェブ公開されているものがいくつか読めるのでご参照。

ユーラシア世界2 ディアスポラ論

ユーラシア世界2 ディアスポラ論

一ページ以上与えられた作家だけでもちょうど百人を紹介する本書では、そうした多様性と広がりがこの地域に存在することを見て取ることができる。各頁には既訳の紹介もあり、そんな雑誌に邦訳があったのか、という発見も多々あった。特に、おととしシュルツ、ゴンブロヴィチの記事でヴィトキェヴィチに邦訳がない、と書いたのは間違いで、「ヴィトキエヴィチ」で探したら出てこないだけだったし、去年初の単独訳書が出ている*1。そして久山宏一によれば、ヴィトキェヴィチの近未来小説の傑作だという『非充足』は、なんと工藤幸雄による訳稿が存在しており、松籟社から刊行予定だというから驚く。工藤幸雄といえば『サラゴサ手稿』の完訳版が十年近く近刊予告されたままだけれど、まだ未刊の訳稿があるとかすごい。没後十年経とうというのにあの世からの新刊がまだ出るというのか。

本書で予告されているのは他に、ハンガリーノーベル賞候補と噂されるナーダシュ・ペーテル『ある一族の物語の終わり』(簗瀬さやか訳)、そしてオーストリアのトーマス・ベルンハルトの自伝五部作最終作、『ある子供』(今井敦訳)がある。どれも〈東欧想像力〉シリーズなのかな。いや面白そうだ。しかし、タタルカ『籐椅子』、ラディチコフ短篇集、ヒューレ『ヴァイゼル・ダヴィデク』も、予定という話を聞いてから結構たつけれど、出ますでしょうか?

周辺領域をカバーするために、イタリア文学の和田忠彦、アメリカ文学都甲幸治ラテンアメリカの久野量一といった意外な人が東欧文学とのかかわりを書いてもいて、そこらへんも面白いので、目次PDFを参照。

図書出版松籟社ホームページ :: 東欧の想像力

これまでは明石書店の『○○を知るための○○章』とか弘文堂の『もっと知りたい○○』シリーズあるいは『現在×世界×文学――作家ファイル』とかを拾って来なければならなかったような記述が一挙に一冊にまとまっているわけで、非常に便利で素晴らしい。出ると知って、自分のためにあるような本だ、と思ったくらいだ。

しかし、邦訳なしの作家が、ここからどれだけ訳出されるのだろうか。前述の作家ファイルを見ると、まだ未訳だなあ、という人が結構いる。〈東欧想像力〉はコンスタントに未訳の作家をどんどん訳していて、是非ともがんばってほしいと思います。

以下の作家ファイルと読み比べても面白いかと。本書とかぶっていたり(執筆者も同じだったり)、本書になくてこっちには見開き与えられている作家もいたり(イヴァン・クリーマとか)する。また、ノーベル賞本ではチェコ出身のトム・ストッパードが、東欧英国作家として注目。僭越ながらカダレについて私も書いています。

世界×現在×文学―作家ファイル

世界×現在×文学―作家ファイル

気づいた点としては、アンドリッチはアンソロジー(『動物文学全集』とか『東欧怪談集』とか)に他にも翻訳がある、とか、フラバルはかなり網羅的だけれど、知る限り雑誌にも短篇の邦訳があるとか、カルタレスクは『ヨーロッパは書く』にも訳があるとか気がついたけれども、これたぶんスペース的に入らないから落としたように見える。

個別の項目がなく概説ページで言及した作家の場合、既訳があることが言及されていないのも紙幅との兼ね合いか。ユーゴの概説部分で名前が出るブラトーヴィッチは既訳が三冊くらいあったり、東欧ドイツ語文学の章で出てくるサーシャ・スタニシチや、アメリカ亡命したテア・オブレヒトは最近訳書が出ている。

本書は研究者によるガイドで、現時点での注目すべき作家がならんでいると思うのだけれど、反面、現代東欧文学全集その他で訳されたような作家が必ずしも言及されているわけではなかったりする。本書は作家別による紹介が主なので、既に訳があるような東欧文学ブックガイドがまた別に作れそう。

このブログでも「現代東欧文学全集」の紹介とかやってみたりしているので、興味のある方は検索してください。またそうした読者の側からの〈東欧想像力〉ガイドとして、私たちの同人サークル幻視社によるカダレと〈東欧想像力特集をした、「幻視社第五号」もよろしくお願いします。電子版しかありませんけれども。宣伝。

2011 幻視社第五号PDF版
同人文芸サークル「幻視社」 on Gumroad

本書は松籟社木村さんから恵贈いただきました。ありがとうございます。フラバル本等も送ってもらっていたらしいのですけれど、引っ越しを通知しておらず不達となっていたようで、ご迷惑をおかけしました。

なお、検索のため自分用もかねて一ページ以上を与えられた作家名をPDFの目次からすべてテキスト化したので、これをコピペしていろんな検索に投げ込んでいこう。その場合、表記揺れに注意。ヴィッチorヴィチとか。リヴィウ・レブレアヌは既訳は「リビウ・レブリャーヌ」or「リビウ・レブリヤヌ」名義だとか。

続きを読む

*1:これは名義が「ヴィトキェーヴィチ」

2016-01-24

[]向井豊昭アーカイブ更新 2016.01

向井豊昭アーカイブ

今回の更新は短い文章を二つ公開します。エスペラント誌「La Movado」に掲載された向井豊昭同人たちとのやりとりと、「北海道ローマ字研究会」に掲載された書簡の一節です。エスペラント語でのやりとりでは特に、向井豊昭の立ち位置がどのようなものなのかが浮かび上がっています。

「La Movado」のエスペラント語の翻訳をしていただいた間宮緑氏と、注と校正をしていただいた峰芳隆氏、「北海道ローマ字研究会」の書簡を文字起ししていただいた星田淳氏のみなさまに感謝します。

※「La Movado」記事において、公開の同意がとれていない著者がいらっしゃいましたので、一時非公開とします。著者の方には申し訳ありませんでした。