米軍機 エンジンから出火、小川原湖にタンク投棄 青森 - 毎日新聞(2018年2月20日)

https://mainichi.jp/articles/20180220/k00/00e/040/279000c
http://archive.today/2018.02.20-044813/https://mainichi.jp/articles/20180220/k00/00e/040/279000c


20日午前8時40分ごろ、米軍三沢基地青森県三沢市)を離陸した同基地所属のF16戦闘機のエンジンから出火するトラブルがあった。米軍から防衛省に入った連絡によると、同機は外付け式の補助燃料タンク2個を基地の北側にある小川原湖に投棄し、約3分後に基地に引き返して着陸した。けが人や被害が出たとの情報は入っておらず、同省が詳しい状況を調べている。
小野寺五典防衛相は同日の記者会見で「飛行は十分に安全確保した上で行うのが基本。米軍に原因の説明を受けると共に再発防止を伝えたい」と話した。
防衛省によると、補助燃料タンクは通常、主翼の下に取り付けられており、着陸時の安全確保のために投棄したとみられる。三沢基地所属の米軍機を巡っては2015年4月や昨年10月にも飛行中に不具合が発生し、洋上にタンクを投棄するトラブルがあった。
小川原湖漁業協同組合によると、落下地点は小川原湖の南側。20日午前9時過ぎ、シジミ漁をしていた漁師から「約300メートル離れたところに落下物があり、水しぶきが上がった」との連絡が入った。湖では午前7時半ごろから約100人がシジミ漁をしていたが、けが人の情報はないという。【前谷宏、隅俊之】

関連サイト)


米軍F16 エンジン火災で湖にタンク投棄 青森 - NHK(2018年2月20日)

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180220/k10011335861000.html

20日午前、青森県三沢市アメリカ軍三沢基地に所属するF16戦闘機が、離陸後まもなく燃料タンクを切り離して基地に近い湖に投棄しました。エンジン火災が発生したため投棄したと見られ、防衛省は詳しい状況を確認しています。

防衛省によりますと、20日午前8時40分ごろ、青森県三沢市アメリカ軍三沢基地に所属するF16戦闘機1機が、離陸後まもなく、燃料タンク2つを切り離して投棄しました。
燃料タンクは基地のすぐ北にある小川原湖に落下し、これまでのところ、けが人の情報はないということです。

この機体でエンジン火災が発生したため燃料タンクを投棄したと見られ、F16戦闘機は離陸して3分後の午前8時42分に基地に戻ったということで、防衛省は詳しい状況を確認しています。

「大きな水しぶきが上がった」漁業者
小川原湖三沢基地の北側にあり、面積が63.2平方キロメートルと東北では2番目に大きい湖です。海水と淡水が入り交じる汽水湖で、この時期は、全国有数の漁獲高を誇るしじみ漁のほか、ワカサギやシラウオの漁が盛んに行われています。

小川原湖の漁業協同組合によりますと、タンクが落下したのは湖の南側と見られ、当時5隻から6隻の船がしじみ漁をしていましたが、けが人はいないということです。

漁をしていた漁業者は「飛行機の大きな音がしたあと100メートルほど離れたところに何かが落下して大きな水しぶきが上がった。怖くなって漁を切り上げた」と話していたということです。

しじみ漁をしていた52歳の漁業者の男性は「冗談じゃない」と怒りをあらわにし「15メートルぐらいの高さの水しぶきがあがった。何かが落ちたと思ったら、湖面にはっていた氷に穴が開いて、辺りにプラスチックのようなものが飛び散った」と話していました。
湖の周辺市道が通行止め
燃料タンク投棄を受けて、警察は有害物質が含まれているおそれもあるとして、湖の東側を通る市道のうち、「市民の森入口交差点」から「市民の森南側交差点」までのおよそ5キロの区間を通行止めにしました。
小野寺防衛相「部品のようなもの浮かんでいると報告」
小野寺防衛大臣は午前11時半前、防衛省で記者団に対し「東北防衛局三沢防衛事務所や航空自衛隊の目視によれば、小川原湖の湖面に油が浮いているとともに、タンクのものかどうかは未確認だが部品のようなものが浮かんでいると報告を受けている。回収、確認する中で、どの部品か調査したい」と述べました。

そのうえで「東北防衛局長からアメリカ空軍の三沢基地司令に対し、原因究明と再発防止、安全管理の徹底についてまもなく申し入れる予定だ」と述べました。
外務省が再発防止申し入れ
外務省は、20日午前、東京にあるアメリカ大使館に対し、原因究明などについて速やかな情報提供を行うとともに、再発防止の徹底を図るよう申し入れました。
F16 過去には墜落事故も
アメリカ軍三沢基地のF16戦闘機をめぐっては、6年前の平成24年7月に、アラスカに向かっていた1機が千島列島沖の太平洋で海上に墜落し、平成14年と13年には青森県沖の海上で墜落事故が起きています。

裁量労働制 首相答弁データ不適切 厚労省謝罪 - 東京新聞(2018年2月19日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018021902000235.html
http://web.archive.org/web/20180219084144/http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018021902000235.html


安倍晋三首相が裁量労働制の労働時間に関する国会答弁を撤回した問題で、厚生労働省は十九日午前、答弁の根拠となった厚労省の調査データの検証結果を公表した。裁量労働制で働く人については実際の労働時間を調べる一方、一般労働者は「一カ月における残業が最長の日」を調査。異なる手法の結果を比較し、一般労働者の方が長いと結論づけていた。厚労省は午前の野党会合で不適切な手法だったことを認め「おわび申し上げる」と謝罪した。
問題となったのは、厚労省の「二〇一三年度労働時間等総合実態調査」。一般労働者の一日の労働時間が残業一時間三十七分を含め九時間三十七分、裁量労働制の労働時間は九時間十六分となっており、これを根拠に首相は一月二十九日の衆院予算委で「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、一般労働者より短いというデータもある」と答弁した。だが、一般労働者のデータに、一日の労働時間が二十三時間の計算になる「残業が十五時間超の人が九人」といった不自然な点が含まれ、野党の指摘を受けて答弁を撤回、謝罪していた。
厚労省の検証結果によると、一般労働者の労働時間は一カ月のうちで「残業時間が最も多い一日」を聞いていた。裁量労働制は帳簿の記録などにより、実際の労働時間を調査。この結果、一般労働者の時間が不自然に長くなったとみられる。残業が「一日四十五時間」などの誤記もあった。厚労省幹部は記者団に「意図的ではなく、最長という概念が抜け落ちたまま比較してしまった」と説明した。
政府が今国会での成立を目指す「働き方」関連法案には、裁量労働制の対象を営業職の一部などに拡大する内容が盛り込まれており、野党側は「長時間労働を助長する」と批判している。不適切な調査手法が明らかになったことで、法案の見直しや撤回を求める動きを強めるのは確実だ。



◆根拠崩れ「働き方」再議論必要
<解説> 長時間労働の温床とされる裁量労働制を巡り、安倍晋三首相が「一般労働者より短いデータもある」と国会答弁した根拠が崩れた。実態調査を手掛けた厚生労働省は、一般労働者の労働時間が長くなる不適切な方法で調査していたことを認めた。政府はこの調査も参考に、裁量労働制の対象拡大を盛り込んだ「働き方」関連法案を策定しており、内容の妥当性をゼロから議論し直すべきだ。
首相が国会答弁したのは一月だが、厚労省は二〇一五年以降、国会などで調査結果を裁量労働制で働く人が一般労働者より労働時間が短いデータとして繰り返し引用してきた。裁量労働制の対象拡大に対して、難色を示す野党や労働界への反論材料に使ってきたのは明らかだ。この間、労使の代表や有識者による厚労省の審議会でも働き方法案の策定に向けた議論が進み、昨年に衆院解散がなければ、秋の臨時国会で成立していた可能性もある。


調査の手法が不適切だったと認めた以上、国会や審議会の議論でデータがどのように使われ、どう法案に反映されたのかを検証する必要がある。政府は「このデータのみを基礎に法案づくりをしたわけではない」と釈明しているが、ほかに裁量労働制の労働時間の方が短いことを示すデータは存在しないことも認めている。三年間にわたる説明の正当性が揺らいだ事実は重く、政権の責任も問われる。 (木谷孝洋)

「裁量労働」と「一般」異なる基準 厚労相、11日後に報告 - 東京新聞(2018年2月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018022002000121.html
https://megalodon.jp/2018-0220-0940-46/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018022002000121.html


安倍晋三首相が裁量労働制の労働時間に関する国会答弁を撤回した問題で、加藤勝信厚生労働相は十九日の衆院予算委員会で、答弁の根拠となった調査と集計方法について不適切だったと認め、陳謝した。厚労省が同日に公表した調査データの検証結果では、裁量労働制の人と一般労働者との間で、基準が異なる調査を比べていたことが分かった。野党は、裁量労働制の対象拡大を含む「働き方」関連法案の撤回を求めた。(中根政人) 
検証結果によると、裁量労働制の人については実際の労働時間を調査した。一般労働者に関しては一カ月のうちで「残業時間が最も長い一日」を聞き取ったが、調査結果をまとめる段階で「最長」を「平均」の数字として扱い、裁量労働制で働く人と比べていた。その結果、一般労働者の方が労働時間が長くなっていた。さらに、残業が「一日四十五時間」などの誤記が三件もあった。
加藤氏は十九日の衆院予算委で「一般労働者と裁量労働制で、異なる方法で選んだ数値を比較したのは不適切だった」として陳謝した。また、加藤氏は集計方法に不備があることについて今月七日に報告を受けていたと明らかにした。しかし、首相に正式に報告したのは、十一日後の十八日夜だったと説明した。
立憲民主党高井崇志氏は「(検証内容を)知っていて答弁しなかったのは虚偽ではないか」と批判し、辞任を求めた。加藤氏は「どういう形で調べていたのか精査していた」と釈明を繰り返した。
加藤氏は「最終的には責任は全て私にある」と述べるにとどめた。データを不適切に集計した経緯を改めて調べる考えを表明した。
野党六党は国対委員長らの会談で、働き方法案の提出は認められないとの認識で一致。菅義偉官房長官は記者会見で「今国会での成立方針に全く変わりはない」と強調した。
衆院予算委は加藤氏が七日に報告を受けていたことを巡って紛糾し、質疑が断続的に中断した。
首相は調査データを基に、一月二十九日の衆院予算委で「裁量労働制の労働時間は、一般労働者より短いというデータもある」と答弁したが、十四日に撤回した。

「働き方」法案 野党、提出断念求める - 東京新聞(2018年2月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018022002000118.html
https://megalodon.jp/2018-0220-0942-00/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018022002000118.html


政府は十九日、裁量労働制で働く人が一般労働者より労働時間が短いとしたデータの比較は不適切と認める一方、裁量労働制の拡大を含む「働き方」関連法案を今国会に提出し、成立させる方針は変わらないと強調した。野党は、法案の根拠が揺らいだとして、提出を断念するよう要求を強めた。 (清水俊介)
菅義偉(すがよしひで)官房長官は十九日の記者会見で「異なる仕方で選んだ数値を比較したことは極めて不適切だった」と指摘。一方で、同法案について「労働政策審議会労政審)でしっかり議論された」として、今国会で提出、成立させる方針は不変と明言した。
菅氏は、問題の比較データは「労政審の審議に提供していない」とも強調。政府高官は「議論の前提は崩れていない」と話す。労政審で不適切なデータを基にした議論が行われていない以上、法案に欠陥はないという立場だ。
政府は、裁量労働制の拡大や、残業時間の罰則付き上限規制導入を盛り込んだ労働基準法改正案など八本の改正案を一括法案として、今国会に提出する方針だ。政府関係者は「一括で提出する方針は変わらない」と指摘する一方「国会提出後のことは、国会で決めてもらえばいい」とも話す。
立憲民主、希望、民進などの野党六党は十九日の国対委員長会談で、法案の提出は認めない方針で一致した。立民の辻元清美国対委員長は記者団に「根幹のデータがごまかしだったら、法案はボツだ」と強調。「労政審に差し戻し、議論し直すべきだ」と求めた。
共産党小池晃書記局長も会見で「首相の責任は極めて重大。一連の経過は捏造(ねつぞう)と言わざるを得ず、厳しく追及していきたい」と指摘。立民、希望などは十九日の衆院予算委員会で、加藤勝信厚生労働相の答弁を不服として一時退席した。
十九日の政府与党協議会では、公明党井上義久幹事長が「緊張感を持ってやっていただきたい」と話し、一連の政府の対応に苦言を呈した。

(「裁量労働」誤データ)運用実態に疑義広がる - 沖縄タイムズ(2018年2月20日)

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/212100
https://megalodon.jp/2018-0220-0946-27/www.okinawatimes.co.jp/articles/-/212100

データの信ぴょう性に根本的な疑義が出た。政府が都合のいいように利用したとの疑念も拭えない。
働き方改革関連法案の柱の一つである裁量労働制の拡大を巡り、安倍晋三首相が答弁の根拠にした厚生労働省の「2013年度労働時間等総合実態調査」である。
安倍首相は1月29日の衆院予算委員会でこの調査を基に「裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方に比べれば一般労働者より短い」と答弁した。
だが、データに疑義があると野党に追及され、今月14日に答弁を撤回した上で、陳謝するという異例の事態に追い込まれた。
厚労省が19日、衆院予算委員会理事会などで説明したところによると、調査は一般労働者には「1カ月で最も長く働いた日の残業時間」を尋ねる一方で、裁量労働制の人には単純に1日の労働時間を質問していた。
一般労働者にはパートも含まれ、法定労働時間が8時間より短いケースもある。調査では残業時間の平均値に単に8時間を足していた。この手法では一般労働者が長時間になりがちだ。
厚労省がデータは不適切だったと認めて謝罪したのは当然である。加藤勝信厚労相も約2週間前から不備を知っており、不誠実極まりない。
安倍首相は裁量労働制で働く人は1日当たり9時間16分、一般労働者は9時間37分と言及。政府は野党への反論材料として15年から引用しており、都合のよい数字がつくられた疑いが拭えない。

■    ■

一般労働者と裁量労働制で働く人の時間を比較したデータは、厚労省所管の独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査にもある。
調査結果は「裁量制の労働者の方が長時間労働の割合が高い」だった。なぜこれは取り上げなかったのだろうか。
裁量労働制は実際に働いた時間に関係なく、あらかじめ労使で合意した時間を働いたとみなし、賃金を支給する仕組みである。弁護士などの「専門業務型」と、企画や調査などを担う事務系の「企画業務型」の2種類がある。
政府や経済界は「多様で柔軟な働き方につながる」と裁量労働制のメリットを強調する。働き方改革関連法案では、企画業務型の対象を一部営業職などに広げる方針だ。
経済界からの要望が強く、労働者の立場の弱さを考えれば、企業が人件費を抑制するため長時間労働させることになりかねない。

■    ■

法案の必要性の土台が大きく揺らいでいるというのに、菅義偉官房長官は「今国会での法案提出と成立の方針は全く変わりない」との姿勢だ。
厚労省によると、11〜16年度に、裁量労働制で働き、過労死や、未遂を含む過労自殺で労災認定された人は13人もいる。法案によって長時間労働はほんとうに是正されるのか。実態調査が先である。
労働時間規制を緩和する裁量労働制を、残業規制を強化する法案と抱き合わせて提出するのは整合性がとれない。裁量労働制働き方改革関連法案から切り離すべきだ。

(筆洗)裁量労働制の対象を拡大したい政府の思惑か - 東京新聞(2018年2月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018022002000147.html
https://megalodon.jp/2018-0220-0943-17/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2018022002000147.html

一八九八年の米西戦争の期間中、米海軍の死亡率は千人につき九人だったそうだ。一方で、同じ期間のニューヨーク市内における死亡率は千人につき十六人。米海軍はこの数字を使って、海軍に入った方が安全だと宣伝していたそうである。
数字のわながある。海軍の大部分が健康な青年であるのに対しニューヨーク市民には赤ん坊もいれば、高齢者や病人もいる。当然死亡率は高くなる。
『統計でウソをつく法』(講談社)にあった。二つの死亡率の比較に意味はないが、数字で示されるとつい信じてしまいやすい。
意図的だとすれば、見え透いた数字のトリックを使ったものである。裁量労働制の労働時間をめぐる、厚生労働省のデータである。一般労働者よりも、裁量労働制で働く人の労働時間の方が短いとするデータを示していたが、調査方法に問題があった。
裁量労働制の人については実際の労働時間を、一般労働者には残業が最長の日の労働時間を調査している。これなら、裁量労働制の労働時間の方が短くなりやすいだろう。二つは比較できない数字である。
裁量労働制の対象を拡大したい政府の思惑か。厚労省は陳謝したとはいえ、ひいきの引き倒しで、裁量労働制といえば、怪しげな統計まで使って、政府が対象を拡大しようとしているものという印象と警戒が広がってしまったはずだ。統計をとるまでもない。

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教育無償化へ「国に努力義務規定」 自民の改憲条文素案 - 朝日新聞(2018年2月20日)

https://www.asahi.com/articles/ASL2M632ZL2MUTFK019.html
http://archive.today/2018.02.19-223231/https://www.asahi.com/articles/ASL2M632ZL2MUTFK019.html

自民党が検討する教育無償化に関する改憲条文素案の概要が明らかになった。教育を受ける権利をうたう26条の1項と2項はそのまま維持。3項を新設して、国に教育環境を整備する責務があるとする努力義務規定を置く内容。20日の党憲法改正推進本部の執行役員会で提示される予定だ。
昨年末に推進本部がまとめた論点整理には、1項に「経済的理由によって教育を受ける機会を奪われない」という旨の文言を加える案も含まれていた。これは改憲による教育無償化実現にこだわる日本維新の会改憲原案に明記された文言の引用だった。改憲への協力を引き出すための配慮と見られていたが、自民の素案では見送った。
現行の26条は、1項で等しく教育を受ける権利を、2項で親が子どもに教育を受けさせる義務と、義務教育の無償を定めている。
素案では、新設する3項に、2012年の自民党改憲草案で「国は、教育が国の未来を切り拓(ひら)く上で欠くことができないものであることに鑑み、教育環境の整備に努めなければならない」とした文言に沿った内容を盛り込む。党内の議論で、無償化に対する財源への不安などが噴き出したため、努力義務規定にとどめた。私学助成に関連する89条の一部も改正する内容となっている。

自民「合区」解消 憲法改正とは関係ない - 琉球新報(2018年2月20日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-668454.html
http://archive.today/2018.02.20-004440/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-668454.html

自民党憲法改正推進本部が参院選の「合区」解消に向けた改憲条文案を了承した。9条など改憲を目指す4項目のうち、条文案がまとまったのは初めてだ。
二つの県を1選挙区にする合区は2016年の参院選で導入された。それ以前は各都道府県に一つ以上の選挙区があった。参院選後、「地域住民の声が国会に適切に反映されない」などとして解消を求める方向性は定まっていた。
さらに改憲本部の合区解消案は、1票の価値の平等や衆参両院の役割分担などの重要な論点に応えていない。拙速に改憲に結び付けるのでなく、まずは国会議員の定数の見直しなど、現行憲法の下で可能な方法を探る必要がある。
改憲本部の合区解消案は改選ごとに各都道府県から最低1人を選べるようにすることが柱だ。国政選挙制度の根拠となる憲法47条を改正し、行政区域や地域的な一体性などを「総合的に勘案」して定めると明記する。
16年の参院選では鳥取・島根と徳島・高知の県境をまたいで合区となった。その結果、島根を除く3県で投票率が過去最低となった。有権者の関心の低下を招いたからだ。人口減少が進む地方で、声をどう国政に伝えていくかは重要な課題だ。
ただ、憲法論議としてはこの条文案には疑問が残る。参院に地域代表の意義付けをするならば、衆参両議院は「全国民の代表とする」という43条との整合性が問われる。「法の下の平等」を定めた14条に基づく「1票の価値の平等」はどうなるのか、という論点もある。
もし自民党参院は「地域代表」、衆院は「全国民の代表」と役割分担を図ろうというのなら、まだ分かる。そうであれば衆参両院が憲法上ほぼ対等な権限を持つ現行規定も議論されるべきである。これらの抜本的な論点を避けてまとめられた条文案では、自民党が強い地方の選挙区を守ろうとする党利党略だとの批判も出るだろう。
合区も、17年衆院選で定数を0増10減としたのも1票の格差の是正策であった。それを止めようとする今回の素案は1票の格差憲法違反に問われないようにする意図があるのではないか。
安倍晋三首相は国会答弁で、戦力不保持を定めた9条2項を残したまま自衛隊の存在を明記する「加憲」が妥当だと踏み込んだ。自民党改憲論議には真の狙いとする9条の改定の前に、国民の抵抗が少ない条項で「お試し」をしたい思惑も見える。
国の最高法規である憲法の改正には、その目的と効果、憲法全体としての整合性、国民意見など広く精緻な議論が必要だ。衆参両院は近く今国会での憲法審査会を再開する。合区解消は現憲法下でできる。そして憲法については広く国民を巻き込んだ議論を進めねばならない。

合区解消改憲案 法の下の平等に反する - 東京新聞(2018年2月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018022002000146.html
https://megalodon.jp/2018-0220-0944-55/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018022002000146.html

憲法改正によって「一票の不平等」を積極的に容認することになれば、憲法が定める「法の下の平等」に反する。議会制民主主義の根幹を脅かす権利の侵害だ。こうした改正は断じて認められない。
自民党憲法改正推進本部が参院選選挙区の「合区」解消に向けた改憲条文案を了承した。衆参両院の選挙について定める四七条に大幅に加筆し、参院では三年おきの改選ごとに各都道府県から一人以上を選出すべきだと定める内容である。
参院では「一票の不平等」縮小のため、二〇一六年の選挙から、別の選挙区だった徳島・高知、鳥取・島根がそれぞれ一つの選挙区に「合区」された。
しかし、合区対象の県関係者や全国知事会などは「地方の声が国政に届きにくくなる」と反発。自民党は合区解消を含む改憲四項目を一七年衆院選公約の重点項目に挙げていた。四項目中、条文案がまとまったのは初めてだ。
国土の均衡ある発展のために、地方の声を国政に反映させることの重要性は十分に理解するが、憲法上の要請であり、議会制民主主義の根幹を成す「法の下の平等」をないがしろにしていいわけはあるまい。自民党の条文案からは、自らの地盤である地方の議席を維持する思惑が見えなくもない。
条文案には衆院選の区割りについても人口を基本としつつ、行政区画や地域的一体性などを総合的に勘案することも盛り込まれた。
仮にこの改正が実現すれば、衆参両院の選挙でどんなに「一票の不平等」が広がっても、違憲性を問えなくなる。特に参院が地域代表の性格を強くすれば、国会議員を「全国民の代表」と定める四三条とも相いれない。
与党の公明党が「一票の価値の平等が最も重要な選挙制度の基本ではないか」(井上義久幹事長)と慎重姿勢を示すのも当然だ。
もちろん参院を地域代表とすることも一案ではある。そのためには衆参両院の役割分担や権限、選挙制度を含め、二院制の在り方を根本から議論することが前提だ。そうした議論を経ずに、改憲で合区解消を図ろうとするのはあまりにも短絡的である。
「一票の不平等」を解消する参院選挙制度改革については公明党が全国を十程度、共産党が九ブロックに分ける案を提唱している。
自民党のように憲法上の要請ではない都道府県に固執する必要がどこにあるのか。法律で対応できることを怠り、やみくもに改憲を急ぐとしたら本末転倒である。

担任「いじめ見て見ぬふり」 茅ケ崎の小学生不登校 - 神奈川新聞 (2018年2月20日)

http://www.kanaloco.jp/article/312047
https://megalodon.jp/2018-0220-0952-33/www.kanaloco.jp/article/312047

神奈川県茅ケ崎市立小学校4年の男子児童(10)が同級生からのいじめが原因で約2年間不登校になっている問題で、当時担任の女性教諭が学校の聞き取りに対し「いじめを見て見ぬふりをした」「注意するのが面倒」と話していたことが19日、分かった。いじめを認識していなかったとする当初の同教諭の報告に虚偽があったとして、市教育委員会が今月2日付で同教諭に文書訓告、当時の校長に厳重注意の措置を取っていたことも判明した。
市教委などによると、2016年3月に男子児童の保護者の訴えで事態を把握した学校は、同教諭への聞き取りを実施。同教諭は「けんかになっていた認識はあるが、いじめとして気付けなかった」と話し、保護者にも同様の説明をした。
しかし、市教委の第三者委員会による調査開始後、17年夏から学校が同教諭に再び聞き取りを行ったところ一転、同年12月に同教諭は「いじめだったと認識していたが『遊びの延長だ』と思い込むことで、いじめを見て見ぬふりをして何事もなかったかのように過ごしていた」と語った。
また「同級生たちが一方的にたたく、蹴る、追い掛ける、時には殴るなどを繰り返していたが、だんだん注意することが面倒になった」と述べたという。
男子児童は神奈川新聞社の取材に対し「先生に何度も『助けて、助けて』と大声で言ったけれど、一回も助けてくれなかった。もう何もできないと思った」と話していた。児童は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、療養中。
現在の校長は「担任の説明を詰め切れていなかった。申し訳ない」と謝罪。市教委は「学校、市教委ともに十分な対応ができていなかった。児童、保護者には心からおわびしたい」と改めて陳謝した。
同問題を巡っては、市教委の第三者委員会が今月13日、日常的ないじめと認定する調査報告書を市教委に答申し、報告書の中で「教職員の適切な指導・支援が十分に働かず、そのことが事態の長期化・重大化につながった」と学校側の対応を批判していた。

<対談「薩長史観」を超えて>(1)日露戦争 正しい戦史を伝えなかった軍部 - 東京新聞(2018年2月20日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018022002000116.html
https://megalodon.jp/2018-0220-0951-37/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201802/CK2018022002000116.html

今年は明治百五十年。安倍晋三首相が今国会の施政方針演説を維新の話題から切り出すなど、明治時代を顕彰する動きが盛んだ。維新を主導した薩摩(現鹿児島県)、長州(現山口県)側の視点で「明るい時代」と明治期をたたえる「薩長史観」は根強い。来年四月末に平成が終わり、改憲の動きが活発化する時代の節目に、近現代史に詳しい作家の半藤一利さん(87)とノンフィクション作家の保阪正康さん(78)が語り合った。
米国の仲介で薄氷を踏む形で講和に至った日露戦争について、半藤さんは大正、昭和の軍人に正しい戦史が伝えられなかったと指摘。司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」では「正しい戦史は資料として使われなかった」と語り、人気小説がノンフィクションと思われていることに懸念を示した。「太平洋戦争は維新時の官軍(の地域出身者)が始めて賊軍(の地域出身者)が止めた。これは明治百五十年の裏側にある一つの事実」と強調した。
保阪さんは「日露戦争の本当の部分が隠蔽(いんぺい)された。昭和史を追うとそこに行き着く」と指摘。日清戦争で国家予算の一・五倍の賠償を取り、軍人は味を占めたと述べ、「日中戦争初期の停戦工作が不調に終わったのも政府が賠償金のつり上げをやったから」と分析。「軍部に強圧的に脅され、昭和天皇は皇統を守る手段として戦争を選んだ。太平洋戦争の三年八カ月を一言でいうと『悔恨』。今の陛下はその苦しみを深く理解しているはずだ」と語った。

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−「明るい明治、暗い昭和」という歴史観を持つ人が多い気がします。日露戦争を描いた司馬遼太郎<注1>さんの「坂の上の雲」<注2>の影響もあるようです。生前の司馬さんと交流があった半藤さんはどう捉えていますか?

半藤 日露戦争後、陸軍も海軍も正しい戦史をつくりました。しかし、公表したのは、日本人がいかに一生懸命戦ったか、世界の強国である帝政ロシアをいかに倒したか、という「物語」「神話」としての戦史でした。海軍大学校陸軍大学校の生徒にすら、本当のことを教えていなかったんです。

海軍の正しい戦史は全百冊。三部つくられ、二部は海軍に残し、一部が皇室に献上されました。海軍はその二部を太平洋戦争の敗戦時に焼却しちゃったんですね。司馬さんが「坂の上の雲」を書いた当時は、物語の海戦史しかなく、司馬さんはそれを資料として使うしかなかった。

◆小説と全然違う
ところが、昭和天皇が亡くなる直前、皇室に献上されていた正しい戦史は国民に見てもらった方がいいと、宮内庁から防衛庁(現防衛省)に下賜されたんです。私はすぐ飛んでいって見せてもらいました。全然違うことが書いてある。日本海海戦東郷平八郎がロシアのバルチック艦隊を迎え撃つときに右手を挙げたとか、微動だにしなかったとか、秋山真之の作戦通りにバルチック艦隊が来たというのは大うそでした。あやうく大失敗するところだった。
陸軍も同じです。二百三高地の作戦がいかにひどかったかを隠し、乃木希典と参謀長を持ち上げるために白兵戦と突撃戦法でついに落とした、という美化した記録を残しました。日露戦争は国民を徴兵し、重税を課し、これ以上戦えないという厳しい状況下で、米国のルーズベルト大統領の仲介で、なんとか講和に結び付けたのが実情でした。
それなのに「大勝利」「大勝利」と大宣伝してしまった。日露戦争後、軍人や官僚は論功行賞で勲章や爵位をもらいました。陸軍六十二人、海軍三十八人、官僚三十数人です。こんな論功行賞をやっておきながら国民には真実を伝えず、リアリズムに欠ける国家にしてしまったんですね。

爵位を得るため
保阪 昭和五十年代に日米開戦時の首相だった東条英機<注3>のことを調べました。昭和天皇の側近だった木戸幸一<注4>がまだ生きていて、取材を申し込みました。なぜ、東条や陸海軍の軍事指導者はあんなに戦争を一生懸命やったのか、と書面で質問しました。その答えの中に「彼らは華族になりたかった」とありました。満州事変<注5>の際の関東軍司令官の本庄繁は男爵になっています。東条たちは、あの戦争に勝つことで爵位<注6>が欲しかった。それが木戸の見方でした。
当たっているなあと思いますね。何万、何十万人が死のうが、天皇の名でやるので自分は逃げられる。明治のうその戦史から始まったいいかげんな軍事システムは、昭和の時代に拡大解釈され肥大化したのです。

■注1 司馬遼太郎 1923〜96年。坂本龍馬を主人公とした「竜馬がゆく」、幕末を舞台にした「峠」「翔ぶが如く」など、歴史上の人物や出来事を描き「国民的作家」と呼ばれた。「街道をゆく」などのエッセーでも文明批評を展開した。

■注2 坂の上の雲 司馬遼太郎さんの歴史小説。陸軍の秋山好古と海軍の真之兄弟と俳人正岡子規が主人公。陸軍の乃木希典第三軍司令官や海軍の東郷平八郎連合艦隊長官らも登場し、日本が日露戦争でロシア軍を破るまでを英雄的な視点で描いた。明治百年の1968年に産経新聞で連載が始まった。

■注3 東条英機 1884〜1948年。41年、陸相のまま首相に就任し、対米開戦を決定した。44年のサイパン陥落を機に辞職した。戦後、極東国際軍事裁判東京裁判)でA級戦犯として起訴され、有罪判決を受けて死刑となった。

■注4 木戸幸一 1889〜1977年。主に宮中で活動した戦前の政治家。幕末、明治初期に活躍した木戸孝允(長州出身)の孫。内大臣などを務め、昭和天皇の最側近として実権を握り、戦局が悪化すると和平に動いた。東京裁判A級戦犯として終身禁錮の判決を受けた。

■注5 満州事変 1931年に日本の関東軍南満州鉄道の爆破事件を自作自演し、中国東北部への軍事侵攻に踏み切った。翌32年には軍事力を背景にかいらい国家の「満州国」をつくり上げた。国策として27万人の日本人が移住。敗戦時のソ連軍侵攻の混乱の中、逃避行中の8万人が死亡した。残された幼児は残留孤児となった。

■注6 爵位 明治憲法下では公家や大名の家系の他、明治維新の功労者や実業家など、国家に功績があった者は「華族」という特権的な身分とされた。栄典として公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵という五等の爵位を授与された。1947年、現憲法施行により廃止された。

<はんどう・かずとし> 1930年、東京都出身。東京大卒。「文芸春秋」編集長などをへて作家に。「日本のいちばん長い日」「幕末史」「ノモンハンの夏」など近現代史関連の著書多数。

<ほさか・まさやす> 1939年、札幌市生まれ。同志社大卒。出版社勤務をへて、昭和史を中心とする著述活動に入る。「昭和陸軍の研究」「昭和史七つの謎」など。