「いいかね、こうしてまん中に穴を空けるんだ」 左手には大根の尻尾寄り十五センチほとを、右手には割箸を持っている。上に向けた切口の中央に割箸を突刺して見せる。彼も真似した。赤銅色に陽焼けした四十恰好の男で、頭にはタオルで鉢巻きしている。肉体労働の現場仲間だろうか。とにかく二人は猛烈に空腹なのである。 「その穴へな、こうして酒を注ぐんだ、こぼさねえように、ほれこうしてっと」 男も注意深く、大根の穴に酒を注入する。 「かじってみな。こうやって食うと甘過ぎねえから」 「ほんとだ。甘過ぎねえや」 突如として相手が変る。 「いいかい、まん中に穴をあけるんだ。ほらね」 小学低学年くらいの男の子を相手に、そっ…