戦国時代という混沌の時代に、強烈な個性を放ち続けた武将がいた。甲斐の虎、武田信玄。その名は「風林火山」の旗印とともに、今なお語り継がれている。 信玄は単なる戦の名将にとどまらない。巧みな政治、経済政策、民政への配慮。武田信玄の功績は、単に領土を拡大したというだけではなく、「戦国という過酷な時代に、民と領地を守り抜いた賢者」であったことにある。 ■1. 軍略の天才 ― 信玄の戦術眼 「疾(と)きこと風の如く、徐(しず)かなること林の如く、侵掠すること火の如く、動かざること山の如し」 信玄を語るうえで、最も有名なフレーズが「風林火山」である。これは孫子の兵法から引用されたものであり、信玄の軍事思想…