2013年の読書メーター

2013年の読書メーター
読んだ本の数:168冊
読んだページ数:50154ページ
ナイス数:7640ナイス

文明はなぜ崩壊するのか文明はなぜ崩壊するのか感想
マヤ、ローマなどの古代文明はなぜ崩壊したのか。崩壊に至る原因を探ると進化と脳の仕組みに原因があった。現代文明もまた同じ道を辿るのか?となかなかエキサイティングな内容。崩壊の原因をシンプルに整理し、さらにその回避方法まで提案するがトンデモ本でもハウツー本でも自己啓発本でもない。手っ取り早く知るには目次と238ページと288ページを読めばいい。2009年当時のアメリカの諸事情やチンパンジー貨幣経済を教える実験、脳の仕組みなど説明のための話が興味深かった。中でもリサイクルは実は無駄だったという衝撃の事実!
読了日:12月30日 著者:レベッカコスタ
女帝エカテリーナ (下) (中公文庫)女帝エカテリーナ (下) (中公文庫)感想
ロシアの母として慕われ、その死を悼まれた。享年67歳。もし80歳まで生きていたら歴史は変わっただろうか。ピョートル大帝の意志を継ぎ、トルコからクリミヤ半島と黒海の港を奪い、プロイセンオーストリアと共にポーランドを分割、領土を拡大した。西欧諸国と対等に渡り合い怖れられた。女でありながら男、されど女だった。次々と愛人を作り、60歳になり歯がなくなっても若い男なしにはいられない。馬鹿息子のパーヴェル大公の皇位継承権を剥奪出来なかったのが心残りだった。晩年にはフランス革命が起き激動の時代へと変わる。
読了日:12月30日 著者:アンリ・トロワイヤ
やさしい女・白夜 (講談社文芸文庫)やさしい女・白夜 (講談社文芸文庫)感想
自ら好んで状況を悪化させ、周りも巻き込んで不幸のどん底へ転げ落ちる男の混乱した一人称の語りは芥川の「歯車」や「或る阿呆の一生」のようでなんともいいようのない哀しみを感じる「やさしい女」、夢想家は儚くも美しい幻想的な夢を紡ぎ出すが所詮は叶わぬ夢でしかなく、砂漠で見た蜃気楼の街を本当の街だと思い込み、渇いた喉を潤せるとかけつけるも蜃気楼は儚く消え去ってしまったように現実を突きつけられる「白夜」の中篇2篇。男が悪いのかそれとも女がズルいのか。さらりと読めたがどちらもなんとも救いのない哀しい恋物語だった。
読了日:12月26日 著者:ドストエフスキー
教科書でおぼえた名詩 (文春文庫PLUS)教科書でおぼえた名詩 (文春文庫PLUS)感想
近代の詩、俳句、短歌、万葉集、古今・新古今和歌集梁塵秘抄漢詩、翻訳詩が250篇。うろおぼえ索引があるので一部だけでも覚えていれば探し出せる。懐かしいものもあり、知らないものもあり。現代詩は少ないが好みの詩人や歌人俳人を見つけるのにもいいかもしれない。梁塵秘抄大河ドラマ平清盛」の「遊びをせんとや生まれけむ たはぶれせんとや生まれけん 遊ぶこどもの声聞けば わが身さへこそゆるがるれ」があったのが嬉しくてドラマを想い出しつつ唄ってみた。
読了日:12月25日 著者:
女帝エカテリーナ (上) (中公文庫)女帝エカテリーナ (上) (中公文庫)感想
ゾフィが母とロシアの国境を越えたのは13歳の時。ドイツに生まれた彼女はロシアを愛した。ロシア語を覚え、ロシア正教に改宗、結婚時にエカテリーナと改名する。ロシアに溶け込みロシア人になりきろうとしたのだ。権力を握るまでの20年は長く苦しい孤独な戦い。「わたしは非常に誇りが高かったから、自分を不幸だと認めることさえ嫌だった。」古典や啓蒙思想を学び機会を待つ。高い知性と教養、優雅な物腰と美しい容姿は宮廷人だけでなく外国の大使たちをも魅了する。クーデターで女帝となったエカテリーナは啓蒙専制君主として改革を実行する。
読了日:12月24日 著者:アンリ・トロワイヤ
クリスマス・キャロル (光文社古典新訳文庫)クリスマス・キャロル (光文社古典新訳文庫)感想
チャリチャリ、ゴロゴロと足枷に繫がる鎖の先の重い鉄球を引き摺る音と共にスク〜ルジ…と呼ぶ声。子供の頃、朗読テープ付で読んだ覚えがある。子供向けにかなり省略されていたんだなぁ。〈並はずれた守銭奴で、人の心を石臼ですりつぶすような情け知らず〉な〈因業爺〉が童心に返ったように子供の頃を想い出しながら可哀想な子供に涙を流し、貧しくも暖かい家庭のクリスマスに羨望を覚え、楽しいパーティーに心を踊らせ、暗澹たる未来に震え上がった。ちょっと早いけどディケンズからのクリスマスプレゼント。
読了日:12月22日 著者:ディケンズ
悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき (中公新書)悪の引用句辞典 - マキアヴェリ、シェイクスピア、吉本隆明かく語りき (中公新書)
読了日:12月22日 著者:鹿島茂
貧しき人びと (新潮文庫)貧しき人びと (新潮文庫)感想
ドストエフスキーの処女作は恋の苦悩と貧困の苦痛の二重奏からなる、ゴーゴリの「外套」の変奏曲だった。書簡体小説なので行間だけでなく書簡の間の余白に想像の余地がたっぷりとある。書簡をやりとりする2人は隣近所に住んでいるので手渡しだ。同情と憐憫と愛情の複雑に絡まったせつない恋とゴーゴリ描き出したようなペテルブルクの裕福でない下級官吏や市民たちの生活が描かれる。フランス文学、ゴーゴリプーシキンディケンズの影響があるようだ。初めほほえましく読んでいたが途中から煩悶し、悶絶して読み終えた。
読了日:12月20日 著者:ドストエフスキー
ひとさらい (光文社古典新訳文庫)ひとさらい (光文社古典新訳文庫)感想
透きとおったガラス玉の中にはたくさんの匂い、音、視線、沈黙、愛情、悲しみ、苦悩、孤独、青か緑の瞳、真っ黒な瞳、青白い肌が詰まっている。ガラス玉は砕け散り、愛の官能を苦悩と孤独の雲が覆い隠す。葉巻の匂いは南米の広々とした大地に誘い、沈黙は甘い吐息に変わる。甘美な毒は全身に廻り、キリキリと心臓を締め付ける。透明感のある文体、五感に訴えかける描写と視点の移動、心理描写、パリと南米の融合した不思議な感覚など新鮮な読書感覚だった。冒頭からぐいぐいと惹きこまれ、あっという間に読み終えてしまった。これはお勧め。
読了日:12月18日 著者:ジュールシュペルヴィエル
ロシア (ヒストリカル・ガイド)ロシア (ヒストリカル・ガイド)感想
10世紀頃東スラブ人が作った国、キエフ・ルーシからモスクワ大公国ロシア帝国、ソヴィエト共和国連邦、ロシア連邦までのロシアの通史。教科書的な記述でやや退屈だったのでロシア帝国部分をつまみ読みした程度。参考文献は充実しているけど通史として興味をひく本がない。大好きな伝記作者のアンリ・トロワイヤが「イワン雷帝」(モスクワ大公国)、「ピョートル大帝」「エカチェリーナ女帝」「アレクサンドル一世」「帝政末期のロシア」を読めばロシア帝国までは繋がるかな。
読了日:12月17日 著者:和田春樹
図説 帝政ロシア (ふくろうの本/世界の歴史)図説 帝政ロシア (ふくろうの本/世界の歴史)感想
ピョートルの元老院による大帝の授与から十月革命によるニコライ2世と皇帝一家の処刑までの約200年の歴史。地図や写真などが多く、ビジュアルで見る資料集として価値がある。文章はコラム以外はオマケ程度かな。一応全部読んだけど。文化は19世紀の音楽、バレエ、管弦楽がコラムで紹介されている。画家たちは1章を割いて紹介されている。クラムスコーイの「見知らぬ女」という絵画はアンナ・カレーニナのようだ。でもそれ以外はあまり惹かれない。
読了日:12月17日 著者:土肥恒之
ドストエフスキー (1968年) (筑摩叢書〈106〉)ドストエフスキー (1968年) (筑摩叢書〈106〉)感想
ドストエフスキーの生涯と主要作品の考察。背景となる時代、思想、私生活、作家たち、書簡、ロシア人の特性などからドストエフスキー文学の発展の過程を鮮やかに解き明かす。彼の文学の理解に「ロシア人」という属性は欠かせないようだ。また彼の恋愛、結婚、賭博などの私生活が当時の思想によって濾過され蒸留されて作品になる。音楽でいうとベートーヴェンのようだ。彼は19世紀文学と20世紀文学の橋渡しをしている。この本を読んで彼に何よりも惹かれたのが人間性。不器用で欠点も多いがあたたかく心優しい性格で憎めない。また再読したい。
読了日:12月15日 著者:E.H.カー
ピグマリオン (光文社古典新訳文庫)ピグマリオン (光文社古典新訳文庫)感想
シンデレラは灰かぶりからお姫様になりました。キプロス王ガラテアは理想の女を彫刻し、人間にしてもらいました。現代のシンデレラ=彫像は幸せにならず、王子=彫刻家も不誠実でした。二つの物語をヒネリまくったアイロニカルな物語。下層階級が不幸で中上流階級は幸福?気品は生まれもったもの?ショーは既存の価値観をひっくり返したかったのだろう。ト書きが長くて細かいので小説のほうがよかったのではと思った。後日譚は小説だし。映画「マイフェアレディ」の原作だけど別物らしい。訳文が素晴らしく朗読すると楽しそうだ。舞台でも観たい。
読了日:12月14日 著者:バーナード・ショー
交換教授: 二つのキャンパスの物語(改訳) (白水Uブックス)交換教授: 二つのキャンパスの物語(改訳) (白水Uブックス)感想
コーヒーとミルクが注がれて混じり合うカフェオレのCMのように溶け合い、シャッフルされた4人の男女の物語。舞台は60年代のアメリカとイギリスの田舎町。プロットは都会のネズミと田舎のネズミだが様々なギミックとが仕掛けられており最後まで予断を許さない。起承転結のあるサザエさんのような昔の4コマ漫画のようだ。多様な文体(意識の流れ、書簡体、映画の脚本、新聞記事、メタフィクション)の宝庫で想像力を掻き立てられる。アイロニカルなのはナボコフやビンチョン(H.HとLoが隠れてた!)を彷彿とさせるも読みやすい。
読了日:12月10日 著者:デイヴィッドロッジ
狂人日記 他二篇 (岩波文庫 赤 605-1)狂人日記 他二篇 (岩波文庫 赤 605-1)感想
現実と夢が交錯し、夢が現実を浸食しながらすべてが茫洋と霞んでしまう。表題作はソローキンに似ている気がする。芥川の「歯車」みたいに狂気に蝕まれていく様は読んでて痛々しい。表題作が目当てだったが「肖像画」が良かった。絵画が好きな人にお勧めしたい。二部構成で、一部だけでも幻想ものとしていいが二部には作者の絵画論・芸術論が書かれていて一読に値する。この訳者もゴーゴリの作品に思想や教訓めいたものを求めているが、ナボコフのように現実の縮尺のおかしい幻想文学として読むほうがいいと思う。
読了日:12月4日 著者:N.ゴーゴリ
愛 (文学の冒険シリーズ)愛 (文学の冒険シリーズ)感想
短編集⚫︎学校の休み時間や放課後、共同体での仕事風景、森でのキャンプなどよくある光景が淡々と描かれる•••••••••••突然突然突然突然わけがががががががわからないよよよよよよ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎⚫︎平凡な日常生活、でも待てよ!何かがおかしい。いったいこれは…。⚫︎先生のところにー同志よ、ソ連 ー世界はテクストで出来 ー写真のようにコラージューは至高の愛ーれは文学の冒険なんーんゴーゴリナボコフの系譜のよー文学空間という虚構世ーくくくそ騙されれれ… でも嫌いじゃないですよ。こういうスリルと冒険!
読了日:12月3日 著者:ウラジーミル・ソローキン
大尉の娘大尉の娘感想
おお、若さよ!ロシア魂よ!永遠なれ!エカテリーナ女帝治下で起きたプガチョフの反乱を題材にした歴史物語。前半の平和な家庭には安らぎを覚え、主人公にはウェルテルのような情熱を、悪役のプガチョフには人間味を感じる。初めはゆるやかに途中からウォッカを煽ったように心臓は早鐘を打ち、血湧き肉躍る冒険に釘付けになる。これを源流にやがてトルストイ戦争と平和という大河になる。また‘ロシア的反乱’はツルゲーネフの父と子、白痴のイッポーリトの手記などの‘ナロードニキニヒリズム’であるテロへと繋がっていく。
読了日:12月2日 著者:アレクサンドル・セルゲーエヴィチプーシキン
鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)鼻/外套/査察官 (光文社古典新訳文庫)
読了日:11月30日 著者:ゴーゴリ
ニコライ・ゴーゴリ (平凡社ライブラリー)ニコライ・ゴーゴリ (平凡社ライブラリー)感想
これは批評なのか伝記なのか。ゴーゴリの死から書き始め作品を解剖したあと最後は誕生で終わる。傑作の「死せる魂」(とても面白い!)は本来3部構成のはずが第1部しかなく未完なのはゴーゴリの創造力が尽きてしまったかららしい。「検察官」「死せる魂」「外套」を(特に「死せる魂」は詳しく)腑分けしバラバラにして並べて見せてくれる。いわくゴーゴリに象徴的意味や思想を求めるのは無意味であり、不条理の宇宙的深遠を漂うのが正しいようだ。ゴーゴリを読み返したくなった。
読了日:11月28日 著者:ウラジーミルナボコフ
白痴 3 (河出文庫)白痴 3 (河出文庫)感想
波がうねり大きな波にさらわれて高く持ち上げられたかと思うと小さなさざ波に流される。波間を木切れに掴まって漂ってる感じだった。最後は斜面をスキーで直滑降するように一気に読みきった!衝撃的なラストにしばし呆然…。読む人によって様々に読むことができる万華鏡のような小説だ。心理小説、恋愛小説、サスペンス、スパイ小説、思弁小説、政治小説、宗教小説、幻想文学。暗喩に満ちていて様々な思想がパズルのように散らばっている。ストーリーものぞき窓から一部だけ観せられてる感じ。時間も空間も伸縮して歪む。これは夢の世界だ。
読了日:11月25日 著者:ドストエフスキー
とりかへばや物語  ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)とりかへばや物語 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 日本の古典)感想
内気でおしとやかな男君と活発で元気な女君。ふたりが男女逆だったらよかったのにと父の大納言が嘆くので「とりかえばや物語」男君は男の娘として宮中に参内し、女君は男装し公達として出仕する。女君がふとしたことから出産したので男女入れ替わる。心情描写が素晴らしい。男君の心情は描かれないが順応性が高くちゃっかりしている。女君は男の考え方をしていたが女に目覚め、女の幸せや子供のこと自身の秘密の露見を恐れて思い悩む。帝や好色な大納言も恋に思い悩む。色々な意味でとても現代的な物語で驚いた。
読了日:11月23日 著者:
おくのほそ道―永遠の文学空間 (NHKライブラリー (62))おくのほそ道―永遠の文学空間 (NHKライブラリー (62))感想
芭蕉は漂白の旅に出る。旅路は幻想的な異空間だった。時に空高く舞い上がり山々を見降ろすかと思えば桜の下では西行法師が歌を詠んでいる。義経木曽義仲が馬で駆け回るのが見え、ふと周りを見渡せば源氏物語の夕顔の家が現れる。深川から日光、福島を経て平泉に。山を越えて秋田の象潟から新潟、富山、金沢を経て大垣までの旅。原文は短くて原稿用紙40枚くらい。緩急自在なリズムの文と俳句は読んでて心地よい。短い語句に和歌、源氏物語漢詩、故事、伝説などが織り込まれていてイメージは限りなく膨らんでいく。まさに俳句そのもの。
読了日:11月21日 著者:堀切実
白痴 2 (河出文庫)白痴 2 (河出文庫)感想
幕が上がるとモノローグの語り。1巻から時間が経過している。主人公の公爵が現れるまで物語は動かない。舞台には大抵公爵がいて舞台の外の出来事は直接描写されず会話などで仄めかされるだけなのだ。登場人物たちは1巻とは職業や考え方が変わり、それぞれの関係にも変化がある。新たな人物も登場。またも大きな陰謀が進むが、モザイクみたいにだんだんハッキリ見えてくる。結婚問題が主題の一つだがもう一つの主題であるロシアの政治、社会制度についての考察も行われる。公爵の周りには人が集まるがあの女が人々の間に暗い影を落とす。2へ。
読了日:11月19日 著者:ドストエフスキー
もうひとつの街もうひとつの街感想
菫色の装丁の本に書かれた文字を読み、闇に蠢く存在を認めた時、日常生活は崩壊する。夜の街は見慣れた街と様相が変わる。街を歩くと小動物に追いかけられ、靴屋は怪しげなオブジェを陳列する雑貨屋に変わる。橋の欄干はバーや小動物の畜舎になり、地下の大聖堂では奇妙な宗教の儀式が行われている。我々は硝子窓の中の世界で生活していたのだ。秘密を知った者は緑色の電車で拉致され夜の世界の住人となる。昼の世界では忘れられた存在として。白い雪、赤や緑の光、煌めく宝石、魔術的な音楽などが美しい、鏡花を彷彿とさせるチェコプラハの物語。
読了日:11月17日 著者:ミハル・アイヴァス
白痴 1 (河出文庫)白痴 1 (河出文庫)感想
叫ぶ!叫ぶ!叫ぶ!カラマーゾフ以来のドストエフスキーは熱い!一癖も二癖もありハイテンションなキャラクターたち、予測のできないストーリーで冒頭から物語の世界へグイグイ引き込まれた。ムィシキン公爵は金と名声の欲望が渦巻く社会に舞い降りた天使なのか?それとも平穏な日常生活を脅かす病原菌なのか?鏡のように向き合う人間の真実の姿を写し出し、白痴と笑われながらも彼の存在は人々を変えてゆく。 登場人物たちの登場の仕方、物語の進行はいくつかの場がある戯曲のようだ。 第一幕は喜劇だった。公爵の後を追いかけながら中巻へ。
読了日:11月14日 著者:ドストエフスキー
カールシュタイン城夜話カールシュタイン城夜話感想
男が4人集まれば女の話をし始める。神聖ローマ帝国皇帝カール4世はモラヴィア辺境伯、ローマ王、ボヘミア王、ローマ王、イタリア王、でありチェコ王であったのでカレル4世と呼ばれる。皇帝と重臣であり親しい友でもある3人が7日間に渡って話をする。帯にある千夜一夜物語というよりはデカメロンのような中世の歴史の枠物語。皇帝は4度結婚しているが妃たちの話、ファムファタルな女の話、画家の話、イタリアの家族の話、グラナダのモーロ人のハーレムの話などバラエティに富んでいて楽しめた。チェコ語の読みに馴染むのに時間がかかったな。
読了日:11月10日 著者:フランティシェククプカ
テス 下 (岩波文庫 赤 240-2)テス 下 (岩波文庫 赤 240-2)感想
下巻に入り錐揉み急降下。読むうちに主人公テスは様々に移り変わる。聖女カタリナ、マグダラのマリア、イヴ、最後は異教の神々への生贄に。エンジェルにとってはピグマリオンベアトリーチェであった。ホルスとイシスの死と再生の物語、悪魔の誘惑に屈したファウスト、運命に翻弄されたオイディプス王などとも重なり、ゲーテの親和力のようにテス、エンジェル、アレクの三人が変性し、化学変化を起こす様を観察する気持ちにもなり冷静に読んだ。テスの移動に伴い季節毎に移り変わるイングランドの風景や牧場、農村の作業風景なども興味深かった。
読了日:11月6日 著者:トマス・ハーディ
更級日記 堤中納言物語 阿部光子の (わたしの古典シリーズ) (集英社文庫―わたしの古典)更級日記 堤中納言物語 阿部光子の (わたしの古典シリーズ) (集英社文庫―わたしの古典)感想
ほのかに薫る香、遠く近く聞こえる琵琶の音、さらさらと衣擦れの音に和歌を詠み上げる声。読み始めると時は1000年以上を越えて平安時代へと誘われる。源氏物語もだが、物語の中に和歌があるとすっと心に入ってくる。国司を勤めた父の娘に生まれ、物語に憧れつつも平凡ながら幸せな結婚をし、宮中での淡い恋など夢幻の如き世を生きた「更科日記」は西洋の回想録のようなもの。短篇集である「堤中納言物語」からは11篇。同じような話がなく、どれも甲乙付けがたい。書の余白のように物語の落ちがないのも趣がある。どちらも原文でも読みたい。
読了日:11月3日 著者:阿部光子
テス 上 (岩波文庫 赤 240-1)テス 上 (岩波文庫 赤 240-1)感想
ああ、魂をひきしぼられるようなもどかしさ!綺麗な顔立ちに生まれたせいで苦しむことになるとは。気だてもよくて可愛らしいのに。墓場まで持っていくほうがいい秘密というものもあるのにバカ正直に打ち明けることはないのに。運命の女神は残酷すぎる。幸福の絶頂まで押し上げておいて一気に後ろから突き落とすつもりなのか?
読了日:10月31日 著者:トマス・ハーディ
ボルヘスのイギリス文学講義 (ボルヘス・コレクション)ボルヘスのイギリス文学講義 (ボルヘス・コレクション)感想
暖炉の傍の安楽イスに座わってパイプをふかしながら「君はイギリス文学を読んでるんだってね。イギリス文学はどのくらい知ってるかね?ご覧のとおり目が見えなくなってしまったので記憶を頼りになるからあまり詳しくは語れないけど覚えている限りでイギリスの文学者たちについて話してあげよう。」ボルヘスはイギリス文学を偏愛していたらしい。元は大学の講義だがこんな授業だったらぜひ聴講したい。古代から20世紀までの文学者、詩人、劇作家たちの略伝を語り、作品の一部を引用したり、時に脱線したり。まるで頭の中が図書館のようだ。すごい!
読了日:10月30日 著者:J.L.ボルヘス,M.E.バスケス
チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫)感想
上流階級と下層階級は対立し、貪欲な金銭という神に支配された機械化された産業社会のセルロイド製のブリキ人間だ。上流階級は進歩思想や精神生活を重視し、男も肉体性を否定している。下層階級の男はボルシェビズムに毒されている。階級に関わらず女は性に消極的で他人の醜聞ばかり気にしている。下層階級出身ながら大尉となり階級差を超えた男と上流階級の令夫人との結び付きは肉体の目覚めと原初の人間性の回復である。完全版ではあるものの訳が良くない。ちくま文庫か原書で読んだ方がいいと思う。
読了日:10月27日 著者:D.H.ロレンス
月と六ペンス (角川文庫)月と六ペンス (角川文庫)感想
平凡な人並みの暮らしと真に生きる人生はどちらが幸せだろう?偽りの仮面を被り続けると仮面は本当の顔になる。素顔を晒して生きることは苦しい生き方だ。美とは怖ろしい。表現せざるを得ないからだ。美を理解できるからといってその美を表現できるとは限らない。美が理解できる分もどかしいかもしれない。彼は美に憑かれ偽りの人生を捨てた。彼の人生は美を捕えることだった。自己満足とは蔑みの表現だが、天才もまた自己満足なのだ。天才画家の波乱万丈の人生に深く感動を覚えた。高尚なるものと下劣なもの。矛盾に満ちた、人間というもの。
読了日:10月18日 著者:サマセット・モーム
悪女という種族 (ハルキ文庫)悪女という種族 (ハルキ文庫)感想
悪女といえば男を破滅させるファムファタルの女が思い浮かぶが、この短篇集の悪女は全てがすべて男を破滅させるわけではない。読んでいるとドンデン返しがありハタと膝を打つような話もあって星新一渡辺温を彷彿とさせる。吉行淳之介は女にモテたらしい。そう考えると自分の体験もあるように思える。「水族館にて」「がらんどう」「寝たままの男」が好み。
読了日:10月15日 著者:吉行淳之介
シェイクスピア全集 (〔37〕) (白水Uブックス (37))シェイクスピア全集 (〔37〕) (白水Uブックス (37))感想
戦争もなく、劇的な場面もない作品。王の寵愛を受け、思うがままに権力を振るった枢機卿ウルジーの凋落ぶりが見所かな。孝謙上皇の元で法王になり権力を振るった弓削道鏡を思い出した。「五つの港を代表する四人の男爵」はイングランドでかつて海賊から身を守るためにドイツのハンザ同盟にならって商人たちが結束したもの。五港同盟はハスティング、ロムニー、ハイス、ドーヴァー、サンドウィッチで後に「古都市」ウィンチェルシー、ライが加わり中世の様々な特権が与えられた。同盟の最高指導者は五港提督で今日でもドーヴァー城にいるらしい。
読了日:10月15日 著者:ウィリアム・シェイクスピア
歴史人 2013年 10月号 [雑誌]歴史人 2013年 10月号 [雑誌]感想
「もしもの戦国史」のみ。「織田がつき羽柴が捏ねし天下餅、座りしままに食うは家康」群雄割拠の戦国時代を終結させ安土・桃山時代、江戸時代を開いた3人の武将がいなかったら?ifは歴史の醍醐味のひとつだと思うけど巷にある本は荒唐無稽な伝奇もの。この特集は政治、経済、戦術、人間性、信念、宗教観、組織、血縁に加えライバルや政敵の行動を踏まえて緻密にシミュレーションしたもの。8つの歴史のifの結末は?CGで再現された戦場、人物相関図、歴史地図、ifの政権組織図など新書一冊分の読み応え。戦国好きにはたまらない。
読了日:10月13日 著者:
アシェンデン―英国秘密情報部員の手記 (ちくま文庫―モーム・コレクション)アシェンデン―英国秘密情報部員の手記 (ちくま文庫―モーム・コレクション)感想
第一次大戦時のヨーロッパを舞台にした短篇のアンソロジー。各短篇は繋がっていて長編にもなっている。モームの体験を元に書かれていてアシェンデンは英国情報部(MI6?)のスパイとして活躍するが暗殺や破壊工作などはせず派手さはない。忍者だと上忍から指令を受け、実行部隊の下忍に指令を与える中忍のような役割だ。上司の大佐、毛なしのメキシコ人、オーストリアの女スパイの男爵夫人、どさまわりの踊り子、革命家の女などキャラクターも個性的で面白い。ナチスの宣伝相はこの作品を引き合いにだして英国情報部の卑劣さを喧伝したらしい。
読了日:10月13日 著者:サマセットモーム
十蘭万華鏡 (河出文庫)十蘭万華鏡 (河出文庫)感想
大空をゆっくりと旋回してるはずがいきなり錐揉み飛行や宙返りをされて吃驚するような読後感のあるものばかりでまさに万華鏡のような短篇集。戦前の仏蘭西はやはり今と違う。こじゃれた雰囲気の「花束一番地」「贖罪」「川波」、「大竜巻」「ヒコスケと艦長」「少年」「天国の登り口」「花合わせ」は太平洋戦争物。「天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山を出でし月かも」阿倍仲麻呂が主役の「三笠の山」は異色。さすが文体の魔術師。引き出しが多い。
読了日:10月9日 著者:久生十蘭
輝ける闇 (新潮文庫)輝ける闇 (新潮文庫)感想
赤や緑の豆電球に囲まれ、ネオン管の光輪を負い真っ白な顔に赤い唇をした黄色い仏陀。赤く塗った棺からはコーヒー色の屍液がねっとりと滴る。死は蠱惑的に誘いかける。ベトナム戦争という腐臭を放つモノに記者として喰い千切り、咀嚼し、嚥下した時、小説家として書かずにはいられなかったのだろう。ベトナムを経験したことで何かが変わってしまったらしい。「ベトナム戦記」は優れたルポタージュだが未完に終わった闇三部作の一作目であるこの作品は優れた文学作品だと思う。先に「戦記」を読んだので作品の構造が垣間見えるのも興味深かった。
読了日:10月9日 著者:開高健
美の世界 愛の世界 (講談社文芸文庫)美の世界 愛の世界 (講談社文芸文庫)感想
国語の授業では和歌や短歌、俳諧や俳句、漢詩が好きだった。詩歌は味わい方を教わらないと良さが分からないと思う。詩歌は苦手で読友さん達の素晴らしい詩の感想が羨ましい。学校の先生のように詩人佐藤春夫が詩歌の世界に案内してくれる。美の世界、愛の世界、童心の世界とカテゴリー別に古今東西の詩や和歌、短歌、俳諧、俳句、漢詩を思いつくまま紹介してくれる。元は新聞に連載したものなので読者から間違いを指摘されて訂正しているのも微笑ましい。音読する。解説を読み、また音読してみる。音の響きと余韻が心地酔い。久々に詩歌を味わえた。
読了日:10月8日 著者:佐藤春夫
こころ (岩波文庫)こころ (岩波文庫)感想
まったくの偶然だが先月読んだ本とリンクしていた。「良心」は「神」なき日本人にもかつてはあったということなのか。それとも英国を知る漱石だからそう書いたのか。「テレーズ」や「海と毒薬」のように直接手を下したわけではないが、間接に親友を死に追いやった「私」の「良心」の痛みはいかばかりであったろうか。また妻を愛するが故に真実を打ち明けられぬ苦悩も辛かったろうと思う。「手紙」とあるが「手記」の形式で告白される物語は「ネジの回転」のようでもあった。
読了日:10月6日 著者:夏目漱石
ねじの回転デイジー・ミラー (岩波文庫)ねじの回転デイジー・ミラー (岩波文庫)感想
天真爛漫で純粋無垢の天使のような兄妹は観るだけで癒される可愛らしさ。無邪気な子供たちが大人以上に狡猾で計算高く詐術を弄するのか?それは憂鬱症のためそうみえるのか?時折現れる幽霊は自分しか見えない幻覚か?ヴィクトリア朝の田舎町での事件が残された手記で語られる「ネジの回転」は時空がねじ曲がるような読後感。天真爛漫で自由奔放なアメリカ娘の「デイジー・ミラー」はレマン湖とローマの都を舞台に燦々と陽光を浴び光り輝く。「マノン・レスコー」のような可愛らしさだった。2篇は闇と光のように対照的だがどちらも素晴らしい。
読了日:10月5日 著者:ヘンリー・ジェイムズ
ベトナム戦記 (朝日文庫)ベトナム戦記 (朝日文庫)感想
ニョック・ナムのニオイが地面に染み込んだ国ベトナム。1964年全土が最前線。都市で仏教徒がデモや抗議の断食をし、泣き女はチョーヨーイと泣く。将軍はクー(デター)を繰り返し、ベトコンはテロを起こして公開銃殺。砦でベトコンの変幻自在の攻撃に怯え、155mm砲が唸る。密林の浸透作戦では頭上を弾丸が飛び交う。ベトナム兵は真赤な花を咲かせ、虫のようにひっそりと死んでいく。僧侶と語り、アメリカ人下士官ベトナム人将校と同じ釜の飯を食う。命がけの取材をした開口と秋元カメラマン。一ノ瀬泰造のように殺されなくてよかった。
読了日:10月3日 著者:開高健
野坂昭如コレクション〈1〉ベトナム姐ちゃん野坂昭如コレクション〈1〉ベトナム姐ちゃん感想
「人生はセックスや、エロやがな」小気味いい大阪弁で語られる「エロ事師たち」にヘラヘラしてたら突然鳩尾に拳をくらい、吊されてアスファルトに叩きつけられた。蹴飛ばされ踏みつけられ地面に這いつくばって泥水を啜り飢えを凌ぐ。周囲は灼熱の炎と瓦礫の山。焦げ臭く黒いユーモアが漂い、底辺に死の影が漂う。物語られる戦争の記憶は小学生の頃よく見せられた東京大空襲のスライドや広島、長崎の原爆写真と重なり、痛々しい最下層の娼婦、男娼たちに乞食坊主の和讃が聞こえれば五木寛之親鸞」を思い出す。一気読みは中々辛い読書体験であった。
読了日:9月30日 著者:野坂昭如
船乗りクプクプの冒険 (集英社文庫 30-A)船乗りクプクプの冒険 (集英社文庫 30-A)感想
おもしろいモノガタリだったなぁ。キソウテンガイマカフシギというやつだ。キタ・モリオは変なやつだけど、北杜夫は面白いなぁ。いわゆるメタ小説というやつ。昔絵本でボトルシップの船に乗り込む話を思い出したよ。題名なんだったかなぁ。コドモ向けの本でもオモシロイものはオモシロイなぁ。イキヌキにピッタリだった。
読了日:9月30日 著者:北杜夫
堀辰雄全集〈第2巻〉 (1977年)堀辰雄全集〈第2巻〉 (1977年)感想
楡の家」と「菜穂子」のみ読んだ。両者は対になっていて「楡の家」は菜穂子の母の日記になっている。「菜穂子」が「テレーズ・デレスケウ」を下敷きに書いたということで読んでみた。堀辰雄は「テレーズ…」を消化し、菜穂子と幼なじみの明の2人は双子のようにテレーズの人格を受け継いだようだ。テレーズが死から生へ向かうのに対し、生から死へ向かうのは短調を好む日本人気質なのだろうか。あまり起伏がなく淡々と語られる物語は淡く水彩画のようで高原の夏の涼しさと冬の寒さがヒシヒシと感じられた。昔は東京も随分雪が降ったんだな。
読了日:9月28日 著者:堀辰雄
どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)どくとるマンボウ航海記 (新潮文庫)感想
たしか中学生の頃読んで以来の再読。まったくといっていいくらい覚えてなかった。北杜夫が船医として海洋調査船に乗り込み、マラッカ海峡スエズ運河を通り地中海へ、大西洋をのぼり北ドイツへ。そこで反転して日本に帰るまでの半年間の航海記。各地の港に寄港するがアジアやアフリカが面白い。くだけた文章の中に文学作品を織り込んであるのが心憎い。面白くはあるけど印象に残らないのでまた忘れそうだなぁ。
読了日:9月27日 著者:北杜夫
テレーズ・デスケルウ (講談社文芸文庫)テレーズ・デスケルウ (講談社文芸文庫)感想
初読では濃い霧の中を手探りで進むように読んだためすぐに再読した。じんわり甘みが拡がる。線路を走る列車のように因習的で単純なボルドーの人々。古い家、財産、結婚は籠の小鳥のような人生だ。テレーズはジープのように道なき道を走りたい。自分自身の心を探り自分らしさを探す物語。またこれは神を探す話でもある。プルーストの小説(同時代)、アンナ・カレーニナボヴァリー夫人タタールの砂漠、路上、海と毒薬などが反響し物語に深みを与えてくれた。遠藤周作は「海と毒薬」を執筆しつつ読み返したという。何度も読める味わい深い小説。
読了日:9月27日 著者:フランソワ・モーリアック
好色一代男 (中公文庫)好色一代男 (中公文庫)感想
江戸の色恋は遊廓の遊び。女郎も客も野暮はいけない。粹でないと。日本全国を旅するも江戸、京の都、大阪はやはり別格。「たわむれし女3742人、少人のもてあそび725人」数だけは勝るがそもそも比べる次元が違った。交接場面はぼかされ想像の世界。訳注がいっさいなくて、古典は素人だが自分なりに訳したという吉行淳之介源氏物語はなんとなく分かるが、伊勢物語古今集西行の和歌を知らないと分からない部分もあり。江戸の色の道は教養も必要なり。雰囲気を楽しんだという感じ。教養身につけ再読したい。
読了日:9月24日 著者:
聞き書き性人伝―この人たちの端倪すべからざる好色魂を見よ聞き書き性人伝―この人たちの端倪すべからざる好色魂を見よ感想
英国紳士がダンディズムなら日本男児はイキだ。刀を鞘に納めるのだ。良き時代のアングラのにおい。著者のいその氏はあの「11PM」のレポーターだったらしい。突き抜けている性のアウトローたちの清々しさ。「てかけ13人半の“女極道”」は色道六十余年の84歳、新宿御苑に君臨する「人呼んで覗きの為五郎」、「男一筋男色人生」、「夫婦交換1000回夫婦」、「汚れ下着収集マニア」、「女の分身コレクター」など性の世界は奥深い。語りの合間のいその氏の解説がまたいい。性は聖なり。自分もいそのファンになった。
読了日:9月23日 著者:いそのえいたろう
我が秘密の生涯 (河出文庫)我が秘密の生涯 (河出文庫)感想
中世の騎士のように突撃を繰り返し、ガトリング砲の如く弾丸を撒き散らす。女中、人妻、娼婦のうち名前が出てくる20人、連れ込み宿7,80人でざっと100人斬り。探求心旺盛で性の形而上学バタイユを彷彿とさせる。知的で行間に教養を漂わせたこの本はポルノではない。女中や娼婦、下層階級の貧民街の様子も興味深い。解説によるとヴィクトリア朝のヘンリー・アッシュビーという著名な英国紳士で大陸中に支店を持つ貿易会社を設立、莫大な財産を築き、稀覯本や美術品の収集家だったらしい。開口健が解説を書いていて丸谷才一も読んだとか。
読了日:9月23日 著者:
狂王ルートヴィヒ―夢の王国の黄昏 (中公文庫)狂王ルートヴィヒ―夢の王国の黄昏 (中公文庫)感想
ルートヴィヒ2世、南ドイツのバイエルン王国の王であり狂気を理由に退位させられ謎の死を遂げたことから狂王ルートヴィヒと呼ばれた。19世紀の激動の時代、ドイツ史の側面や裏側を見るようで面白かったし、何よりルートヴィヒ王自身が大変魅力的だった。アポリネールが月王と名付け、ヴァルレーヌは有名な詩を捧げた。ゲルマンの「白鳥伝説に魅入られた」人生だった。著者は言う、ただの貴族に生まれていれば変わり者の浪費家で一生を過ごしただろう。王であったからこそ悲劇の人生を送ったのだと。政治よりも美と芸術を愛した孤独な王だった。
読了日:9月20日 著者:ジャン・デ・カール
海賊の世界史〈下〉 (中公文庫)海賊の世界史〈下〉 (中公文庫)
読了日:9月16日 著者:フィリップゴス
小説の経験 (朝日文芸文庫)小説の経験 (朝日文芸文庫)感想
読書には時機があり、その本を読む人にとってジャストミートする時があるという。文学にピンとこなかった人の為の文学再入門。文学を読む楽しさ、文学の読み方を平易な言葉で丁寧に語りかける。もし外国人に日本という国、日本人の文化の危機の治癒に最も重要な作者は誰かと問われれば漱石、三島ではなくと答える。なぜなら漱石は言葉を含め外国との出会いに苦しみ、日本の近代人の内面を小説に照らし出したからだ。「行人」の登場人物には日本の近代人の苦悩が書かれていて外国文学と比較することで日本の近代が浮彫りになる。
読了日:9月16日 著者:大江健三郎
新装版 海と毒薬 (講談社文庫)新装版 海と毒薬 (講談社文庫)感想
戦争末期に実際に起きた事件を元に書かれているため発表当時は社会に衝撃を与えた。タイトルに惹かれて読んだがとても重く色々考えさせられた。神(GOD)無き日本人にとって罪とは何か良心とは何かを読者に向かって鋭く問いかける。罪を犯しても社会が罰しなければ良心の呵責は感じないのだろうか?事件は特殊な状況下で起きたものだが事件の起きた原因や関与の仕方など、このテーマは普遍性をもっている。戦争、医療、政治、権力闘争、教育など様々な切口で読むことができる。海外で訳されているかは不明だが、外国人が読んだ感想も気になる。
読了日:9月15日 著者:遠藤周作
蔵書の苦しみ (光文社新書)蔵書の苦しみ (光文社新書)感想
本は場所をとる。本棚を増やしてもすぐ埋まり、溢れた本は床に何本もの塔を建てる。床の本は部屋を占拠し、階段やリビングなど家中を浸食していく。地震がくれば塔は崩れ部屋中を本が飛び交う。二階に本を置きすぎて床がぶち抜けそうになり、火事や空襲で蔵書は焼ける恐ろしさ。持てるがゆえの苦しみ。男は集める生き物だと言っても所詮言い訳に過ぎぬ。本は売るべきでその時点で自分に必要なものだけ残すほうがよいと言うが、手放せば身を切られたような痛みと喪失感が襲いかかりまた買い込んでしまう。繁殖する本の解決策はない。
読了日:9月13日 著者:岡崎武志
フィッシュ・オン (新潮文庫)フィッシュ・オン (新潮文庫)感想
酒を部屋で飲む。釣りながら飲む。釣った魚で飲む。ワイルドだ。世界各地を巡る釣り紀行でめちゃめちゃ面白い。お互いを殿下、閣下と呼び合うカメラマン秋元氏との掛け合い、宿屋の親父、パンティ大王やタイ王太子殿下など個性的な人々との交流も楽しい。釣りはルアーフィッシング。魚と人間の騙し合いと闘争で釣ってみたくなる。アラスカでのキングサーモンスウェーデンでのバイク釣りが熱い。オールカラーの写真がまたいい。風景や魚の描写は美しく、会話や情景描写は臨場感抜群。文章が上手い人の紀行文はいいものだ。北国から南国まで堪能。
読了日:9月12日 著者:開高健
海賊の世界史〈上〉 (中公文庫)海賊の世界史〈上〉 (中公文庫)
読了日:9月9日 著者:フィリップゴス
すし図鑑すし図鑑感想
高級店から回転寿司まで寿司ネタ盛り合わせ。お店で食べられる321種類を掲載。赤身、サーモン、魚卵、光りもの、長もの、白身イカ・タコ、貝、エビ・カニ、その他が1ページ1タネで魚名、すしダネ名、すしと魚の写真、すしダネの説明があって分かりやすい。用語集、索引、参考文献、コラムがある。すしの歴史は奈良時代に東南アジアから渡来。すしと読む漢字の鮨は本来は塩辛のような魚の発酵食品で鮓が正しい。寿司は当て字とか。マグロの部位やいろいろなマグロ鮓も。旨そう。
読了日:9月9日 著者:ぼうずコンニャク藤原昌高
世界文学の名作と主人公・総解説 (わかる・よむ総解説シリーズ)世界文学の名作と主人公・総解説 (わかる・よむ総解説シリーズ)感想
読み友さんと小説の地図について話した時に頭にあった本。有名な欧米文学のあらすじと作家紹介が載っている。作品によって3ページくらい書かれてたり1ページだけだったりするけど概要をつかむのに便利。年表もあるので文学史という大河の流れの地図でもある。針路を決めるのにも役立つ。まだ全部は読んでなくて時々読んでみる感じの使い方をしてる。
読了日:9月4日 著者:

2011年の読書メーター

2011年の読書メーター
読んだ本の数:176冊
読んだページ数:63098ページ
ナイス:292ナイス
感想・レビュー:118件
月間平均冊数:14.7冊
月間平均ページ:5258ページ

失われた時を求めて 7 第四篇 ソドムとゴモラ 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて 7 第四篇 ソドムとゴモラ 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
読了日:12月31日 著者:マルセル・マルセル・プルースト,マルセル・プルースト
荒涼館〈2〉 (ちくま文庫)荒涼館〈2〉 (ちくま文庫)
物語が展開し、今まで平行して進んでいた筋が絡み始めた。語り手の出生のなぞが浮かび上がり焦点を結び始めた。チャーリーがかわいい。マーキュリー(ヘルメス)という名の召使いも出てくるが、ナイアルラトテップのように厄災をもたらす浮浪児ジョーが語り手に病を運んできた!
読了日:12月29日 著者:チャールズ ディケンズ
少女コレクション序説 (中公文庫)少女コレクション序説 (中公文庫)
読みたい本が増え、おりにふれ何度も読み返したくなる。「人形愛の形而上学」「宝石変身譚」「エロスとフローラ」「匂いのアラベスク」「マンドラゴラ」が興味深かった。
読了日:12月25日 著者:澁澤 龍彦
100円ノート『超』メモ術100円ノート『超』メモ術
メモをするだけでなく検索、分析、集計ができるペーパーコンピューターという発想が面白かった。
読了日:12月25日 著者:中公 竹義
READING HACKS!読書ハック!―超アウトプット生産のための「読む」技術と習慣READING HACKS!読書ハック!―超アウトプット生産のための「読む」技術と習慣
ビジネス書を読んでいかにアウトプットにつなげるかをテーマに書かれている。本を買い、線を引いたり書き込みをすることを推奨する読書術は多いが、付箋を活用し本を汚さずに図書館の利用を進めている点は新しい。
読了日:12月24日 著者:原尻 淳一
行動学入門 (文春文庫)行動学入門 (文春文庫)
後書きによると行動学入門と革命哲学としての陽明学は口述筆記したという。口頭でこれだけの内容を理路整然と話せるという知識量と話術に改めて驚いた。著者としては軽く書いたと書いてあるが軽くはなかったが、終わりの美学は軽く読めた。宝石の終わりが特に面白かった。革命哲学としての陽明学は新書で一冊出せるくらいの内容で陽明学の入門書でもある。
読了日:12月24日 著者:三島 由紀夫
荒涼館〈1〉 (ちくま文庫)荒涼館〈1〉 (ちくま文庫)
延々と続く訴訟があり、その中に語り手のエスタの物語や貴族、慈善事業家、弁護士、代書屋、商店などが包含されている枠物語。社会風刺たっぷり。
読了日:12月22日 著者:チャールズ ディケンズ
死せる魂 下 (岩波文庫 赤 605-6)死せる魂 下 (岩波文庫 赤 605-6)
第2部は第4章までで後は第…章になっている。完成していた現行をゴーゴリが死の直前に暖炉に放り込んで燃やしてしまったせいらしい。所々抜けている箇所があって話が飛んでしまっているのも残念。結局チチコフは途中で念願を叶えたらしいがそれも失ってしまい最後はアイデンティティを喪失して去っていく。各地を地主を訪ねて遍歴していくところや地主の屋敷でイベントが起こる箇所などはナボコフも言っているようにドンキホーテの影をみることができる。当初は神曲のような構成にしたかったらしいが煉獄篇で終わってしまった感じ。
読了日:12月16日 著者:N.ゴーゴリ
死せる魂 中 (岩波文庫 赤 605-5)死せる魂 中 (岩波文庫 赤 605-5)
主人公の生い立ちが後から語られるのは今では当たり前だけど、古典文学ではあまり見かけない。チチコフはただの詐欺師ではなく、不撓不屈の精神を持った逞しい人物だったわけだ。青の時代を思い起こした。
読了日:12月10日 著者:N.ゴーゴリ
大いなる遺産 (下巻) (新潮文庫)大いなる遺産 (下巻) (新潮文庫)
「おお、主よ、かの罪人にお慈悲をたれてくださいませ」主人公が金よりも大切なものに気づく教養小説でクリスマスキャロルと同じようなテーマ。芥川の杜子春 を思い起こさせる。底流を流れているテーマは愛と贖罪と許しの物語。ジョーはイエスの暗喩でパンブルチェックは悪魔の暗喩だろう。許しを乞い贖罪をするものとかたくなな心のまま滅ぼされる者の差は何だろうか。カインの末裔なのか。
読了日:12月10日 著者:ディケンズ
プルーストを読む―『失われた時を求めて』の世界 (集英社新書)プルーストを読む―『失われた時を求めて』の世界 (集英社新書)
失われた時を求めて」の入門書であり、読書中の羅針盤であり、読後の解説書でもある。集英社文庫版の訳者による解説書。長い時間をかけて読んでいるので初めの巻の内容はだいぶ忘れていた。いくつものテーマが絡み合い、円環のように最後に一回りする構造らしい。まだ最後まで読んでいないのに始めから再読したい気持ちにさせてくれる。
読了日:12月06日 著者:鈴木 道彦
死せる魂 上 (岩波文庫 赤 605-4)死せる魂 上 (岩波文庫 赤 605-4)
死んだ農奴を譲って欲しいと地主周りをするチチコフ。一癖も二癖もある地主たと言葉巧みに丸め込もうとするチチコフのやりとりが面白い。食事のシーンの描写も詳しいがあまりうまそうじゃない。
読了日:12月06日 著者:N.ゴーゴリ
ナボコフのドン・キホーテ講義ナボコフのドン・キホーテ講義
ナボコフハーバード大学での講義に使った草稿を編集して本にしたもの。「ドン・キホーテ」をバラバラに解体し、構成しているパーツを見せ辛口の批評を交えながら再構築してみせる。後世の文学にドン・キホーテの姿を探すという楽しみ方を知ることができたのは収穫だった。この本の半分はドン・キホーテの要約だが要約でも長かった。講義+要約でドン・キホーテを再読した気になれるのもよかった。 
読了日:12月04日 著者:ウラジーミル ナボコフ
大いなる遺産 (上巻) (新潮文庫)大いなる遺産 (上巻) (新潮文庫)
読了日:12月03日 著者:ディケンズ
もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく (中公新書)もしもあなたが猫だったら?―「思考実験」が判断力をみがく (中公新書)
読了日:11月30日 著者:竹内 薫
ダブリンの人びと (ちくま文庫)ダブリンの人びと (ちくま文庫)
ダブリンの人々日常生活の断片を切り取ってを描いた連作短篇集。バルザックの人物再登場の手法で再登場する人物もいる。ユリシーズにもつながるらしい。どれもよかったが最後の「死者たち」を読み終えて心が洗われた。地図とそれぞれの作品ごとの解説がいい。独立前のアイルランドは革命前のロシアとある意味似ている。上流階級の外国被れとある意味素朴な下層階級。亡命先でダブリンの麻痺する人々を書いたジョイスは外国で「父と子」でインテリゲンツィアを書いたツルゲーネフにもダブる。
読了日:11月28日 著者:ジェイムズ ジョイス
オネーギン (岩波文庫 赤604-1)オネーギン (岩波文庫 赤604-1)
韻文小説というだけあって言葉が美しい。ロシアの田園風景、冬の雪深い野原を橇で移動する情景描写。素朴なロシア娘のタチヤーナなどはトルストイ戦争と平和に受け継がれていくんだなぁ。タチヤーナ編の最後に詩の女神(ミューズ)に義理を果たしているのが面白い。散文訳なのは残念。
読了日:11月27日 著者:プーシキン
トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)トリスタン・イズー物語 (岩波文庫)
中世の伝説を翻案した作品。アーサー王と同じ時代らしい。恋の媚薬を誤って飲んだために起こる悲劇。恋の苦しみ、喜び、悲しみ、嫉妬、憎悪と全てがある。ヨーロッパ人の恋愛観の元になったとか。なぜか講談調なのが気になった。悲劇なのに勧善懲悪的なのは19世紀だからか。元の伝説もそうなのかやたら長い気がする。ランスロットと王妃ギニヴィアの物語みたいな話なのだろうか。筋は面白かったが、デュマとシェイクスピアを足して薄めた感じ。悲劇の演出でシェイクスピアはやはりすごいと改めて思った。
読了日:11月22日 著者:
ヘーシオドス 仕事と日 (岩波文庫)ヘーシオドス 仕事と日 (岩波文庫)
読了日:11月19日 著者:ヘーシオドス
バートン版 千夜一夜物語 4 (ちくま文庫)バートン版 千夜一夜物語 4 (ちくま文庫)
読了日:11月16日 著者:
未来のイヴ (創元ライブラリ)未来のイヴ (創元ライブラリ)
史上初めてのアンドロイドはアナログな造り。指輪がスイッチになっているなど浪漫を感じる。反(〈自然〉主義)。
読了日:11月15日 著者:ヴィリエ・ド・リラダン
ナボコフ短篇全集〈2〉ナボコフ短篇全集〈2〉
全集1と比べ密度が濃く、読みにくい。最後の10編は英語で書かれているのでテイストが違う。心に残ったのは「動かぬ煙」「スカウト」「フィアルタの春」「北国の果て」「孤独な王」「時間と引潮」
読了日:11月13日 著者:ウラジーミル ナボコフ
ソポクレス コロノスのオイディプス (岩波文庫)ソポクレス コロノスのオイディプス (岩波文庫)
オイディプス王」の続編。自ら盲目になった後、テーバイを追われ娘のアンティゴネと共に放浪生活をしていたオイディプス。信託により最後の地であるコロノスにたどり着く。オイディプス追放後の王位を巡る争いに利用利用しようとする叔父と息子。アテナイテセウスの庇護により神々と和解し自らハデスの元へと去っていく。残酷な運命に翻弄されたオイディプスは最後は自分の意志を貫き通した。辛い放浪生活がオイディプスを強くさせたのだろう。
読了日:11月13日 著者:ソポクレス
エセー 1 (岩波文庫 赤 509-1)エセー 1 (岩波文庫 赤 509-1)
読了日:11月13日 著者:モンテーニュ
完訳 グリム童話集〈5〉 (岩波文庫)完訳 グリム童話集〈5〉 (岩波文庫)
読了日:11月13日 著者:W. グリム,J. グリム
哲学マップ (ちくま新書)哲学マップ (ちくま新書)
古代から現代までの哲学を図式化し、哲学探索の地図になっている。内容よりも各哲学の立ち位置を確認するのにいい。近代までの哲学を大ざっぱに図式化する(哲学的思考図式1〜4)。現代哲学は大きく3つに分けられる。日本人に馴染みのある東洋思想の簡単なまとめがあり、現代の哲学と社会科学の融合した事例があり哲学のマッピングが完成する。ニーチェまでは分かりやすいが現代哲学はわからなかったので読み飛ばした。
読了日:11月06日 著者:貫成人
西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)西洋哲学史―古代から中世へ (岩波新書)
読了日:11月06日 著者:熊野 純彦
オイディプス王 (岩波文庫)オイディプス王 (岩波文庫)
筋と結末を知っていても心をうたれた。運命からは逃れられないのか。国を救った英雄であり王から一転して二重に罪深い罪人への転落。死ぬことも能わず生きて贖わねばならない。真実を追求し正義を行うことにより自ら墓穴を掘ってしまい、善意が逆に仇となる。ライオスは自らの所行に対する罰だが、運命に翻弄されたオイディプス、イオカステに何の罪があったのか。盲目の予言者テイレシアスの知っているとはなんと恐ろしいことかという言葉は重い。知っていても避けられないものが運命だから。
読了日:11月06日 著者:ソポクレス
バートン版千夜一夜物語〈3〉 (ちくま文庫)バートン版千夜一夜物語〈3〉 (ちくま文庫)
前巻からのオマル王とふたりの息子の話が長かった。ドン・キホーテサンチョ・パンサの元ネタがあった。その中のタジ・アル・ムルクとドゥニャ姫の物語の中のアジズとアジザーの物語はせつない恋の物語、動物が出てくる寓話はイソップのよう、狐と狼の掛け合いは面白い。狐だけでなく狼がなぜそんなに諺に詳しいんだと突っ込みたくなる。最後の話は今までにないパターン。先が読めずページを繰るのがもどかしい。結末はかなり残念。この巻だけでないけれどアラブ人はすぐに失神する。感情の起伏が激しいのだろうか。
読了日:11月02日 著者:リチャード・F. バートン
エセー〈第1〉 (1965年) (岩波文庫)エセー〈第1〉 (1965年) (岩波文庫)
読了日:10月29日 著者:モンテーニュ
神統記 (岩波文庫 赤 107-1)神統記 (岩波文庫 赤 107-1)
オリュンポスの神々と人間たちの父ゼウスは正当に父クロノスから王位を継承し、全知全能で正義であり詩歌、学芸の栄える文化的で平和な社会を創造した。短いので手っ取り早くギリシア神話の概要を知るのにもいいかも。巻末に神々の系譜付き
読了日:10月27日 著者:ヘシオドス
縛られたプロメーテウス (岩波文庫 赤104-3)縛られたプロメーテウス (岩波文庫 赤104-3)
読了日:10月26日 著者:アイスキュロス
ロミオとジュリエット (新潮文庫)ロミオとジュリエット (新潮文庫)
あらすじは知っていたけどこんな話だったとは。ボタンの掛け違いの生んだ悲劇。どうしても避けられない運命ってあるんだよな。訳には苦心してるが、なんまんだぶとか南無はないだろう。アーメンアーメン言ってる箇所もあるのに。
読了日:10月25日 著者:シェイクスピア
眠れる美女 (新潮文庫)眠れる美女 (新潮文庫)
強く「和」を感じた。デカダンよりはシュルレアリスムに近いと思う。エロスとタナトスの融合。眠れる美女はハンスベルメールの人形を、片腕はマン・レイの写真を連想させる。散りぬるをは蒲団を想い起こした。三編に共通するのは「物」への愛。
読了日:10月23日 著者:川端 康成
はじめてのギリシア悲劇 (講談社現代新書)はじめてのギリシア悲劇 (講談社現代新書)
読了日:10月22日 著者:丹羽 隆子
ク・リトル・リトル神話集 (ドラキュラ叢書 第 5巻)ク・リトル・リトル神話集 (ドラキュラ叢書 第 5巻)
黄の印 R・W・チェンバースなんともいやな話だった。ヒアデス星団、ハストゥールが出てくる。ラヴクラフトが影響を受けたこの話が読みたかった。
読了日:10月22日 著者:H.P.ラヴクラフト,荒俣 宏
ヴェニスに死す (岩波文庫)ヴェニスに死す (岩波文庫)
死と再生の物語。生の世界からカロンの渡し守に運ばれてエリュシオンへ。そして新しく生まれ変わる。時間は変容し拡張現実のようにヴェニス古代ギリシャの世界が重なる。メフィストフェレスが魔法をかける。甘い匂いと共に神々の物語が再生され、ソクラテスが愛を語り、プラトン的な愛(プラトニックラブ)に溺れる。メフィストフェレスによるワルプルギスの夜の終わりと共に世界が終わる。主人公は20世紀のファウストだ。心象風景の描写が美しかった。古代ギリシャへの強い憧れとゲーテへの心酔があると思った。
読了日:10月21日 著者:トオマス マン
ナボコフ短篇全集〈1〉ナボコフ短篇全集〈1〉
ベルリンに逃れてきた亡命ロシア人の話が多い。サラリとしたものから濃密なもの、ダメージを負うものまで様々。90度くらい捻りがある。心に残ったのは森の精、港、雷雨、ラ・ヴェネチアーナ、ロシアに届かなかった手紙、けんか、ベルリン案内、おとぎ話、オーレリアン、忙しい男、未踏の地
読了日:10月20日 著者:ウラジーミル ナボコフ
ポオ小説全集 4 (創元推理文庫 522-4)ポオ小説全集 4 (創元推理文庫 522-4)
読了日:10月16日 著者:エドガー・アラン・ポオ
芥川龍之介全集〈4〉 (ちくま文庫)芥川龍之介全集〈4〉 (ちくま文庫)
なんとはなしに後味の悪い話が増えた気がする。良かったものは「杜子春」「好色」「俊寛」「神々の微笑」「トロッコ
読了日:10月16日 著者:芥川 龍之介
ドルジェル伯の舞踏会 (新潮文庫)ドルジェル伯の舞踏会 (新潮文庫)
人形劇を観る時、初めは操り糸が気になるが物語に惹き込まれると見えなくなるようにいつしか作者の操り糸が見えなくなっていた。作中にも出て来たが確かにフランス心理小説を継承している。「肉体の悪魔」もよかったがそれ以上だ。二十歳で書いたのは正に早熟の天才だ。三島由紀夫が心酔したのもよくわかる。アンビバレンツなマオはこの後どうするのだろう?夫婦とも無宗教なので悲劇にはならないだろう。
読了日:10月13日 著者:ラディゲ
世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)世界史 下 (中公文庫 マ 10-4)
大航海時代から現代まで。限られたページ数に凝縮してあるため再構成されているがよくまとまっている。コスモポリタリズムとして国境、民族がボーダレスになる様はヘレニズムに似ているが経済格差、宗教、民族意識のために似て非なるものだということがよくわかる。この本が書かれた30年前の1990年代よりも現在は歴史の流れがますます加速している。何十年か後に同じような視点で今が書かれたらどんな風に論じられるのかと思いながら読み終わった。
読了日:10月12日 著者:ウィリアム・H. マクニール
恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)恋愛指南―アルス・アマトリア (岩波文庫)
「恋愛の師匠」オウディウスが軽妙洒脱に恋の駆け引きを歌う。今にも通じるところがあってふつうに面白い。当時はパロディだったのに中世ヨーロッパではバイブルとなって真面目に読まれていたというのがまた面白い。中世ヨーロッパ文学を読む際のキーブックかも。
読了日:10月10日 著者:オウィディウス
完訳 グリム童話集〈4〉 (岩波文庫)完訳 グリム童話集〈4〉 (岩波文庫)
読了日:10月07日 著者:W. グリム,J. グリム
ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)ドリアン・グレイの肖像 (新潮文庫)
冒頭から甘く澱んだ堕落して退廃的な香りがする。しかし堕落したドリアンは実在感が薄い。「さかしま」のデゼッセントのように蒐集するものの熱心ではないし退廃ぶりの具体的な描写もない。ロード・ダンセイニの「魔法使いの弟子」のように影(魂)を絵に取られてしまったからなのか。そう考えるとラストは魂を取り戻したから実体化したことになる。様々な要素が寄せ木細工のように入り組んでいる。サロメのようにきれいに纏まらないのは長編だからなのか。会話は面白いがヘンリー郷の詳しい心理描写は欲しかった。
読了日:09月30日 著者:オスカー ワイルド
世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)世界史 上 (中公文庫 マ 10-3)
文明のはじまりから1500年までの世界の歴史を俯瞰的に書いている。4大河文明が周りに伝播し、蛮族が壊してまた再生しつつ1500年まではユーラシア大陸の諸文明は均衡していた。極西のヨーロッパと極東の日本だけは独自の発展をして近代に他の文明を抑えこむ元になったというのがあらすじ。日本については若干違う気がするがインド、中国については納得。西欧諸国が中世からルネサンスにかけてなぜ近代化の準備ができたのかという点もよくわかる。インドのインド化の過程が興味深かった。
読了日:09月25日 著者:ウィリアム・H. マクニール
カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1)カメラ・オブスクーラ (光文社古典新訳文庫 Aナ 1-1)
ナボコフ。「アンナ・カレーニナ」を現代風にして「居酒屋」「ナナ」「椿姫」「マノン・レスコー」が混じり合ったイメージ。小説というよりは映画を観ている感じだけどそれは意図したものらしい。プロットは「マノン・レスコー」だけどアイロニーで味付けしてある。題名はラテン語で「暗室」という意味で解説によると「見ること」が隠されたテーマらしい。ナボコフ初期の作品で源ロリータらしいがかなり面白い。時間をおいて再読してみよう。キーワードに注意して。
読了日:09月25日 著者:ナボコフ
群盗 (岩波文庫)群盗 (岩波文庫)
荒削りながらも熱さと重厚さが堪らない。イリアスの翻案、黙示録とエジプト神話らしき描写、オセロー、ハムレットのような展開はいい。5幕の劇で4幕からは勢いが加速する。まさに疾風怒濤。ただラストはいただけなかった。熱さが足りないのだよ。勢いに任せて思い切り…
読了日:09月19日 著者:シラー
アドルフ (岩波文庫)アドルフ (岩波文庫)
恋愛小説だが倦怠期に入り冷めながらも別れられない男の心理が描かれている。ラファイエット夫人の「クレーヴの奥方」に続くフランス心理小説の系譜の一つ。コンスタン自身ラファイエット夫人と関係があったらしい。「危険な関係」でもそうだったが、よく気絶したり病気に倒れたりするけどヨーロッパ人はそれだけ感情の起伏が激しいんだろうか?
読了日:09月15日 著者:コンスタン
完訳 グリム童話集〈3〉 (岩波文庫)完訳 グリム童話集〈3〉 (岩波文庫)
読了日:09月15日 著者:W. グリム,J. グリム
芥川龍之介全集〈3〉 (ちくま文庫)芥川龍之介全集〈3〉 (ちくま文庫)
三四郎」、「青年」の大正版といった趣の「路上」。大正時代なのでカッフエに女給がいる。続編が書かれなかったのが残念。心に残ったもの。「蜜柑」「沼地」「路上」「魔術」「女」「黒衣聖母」「南京の基督
読了日:09月13日 著者:芥川 龍之介
ボトルネック (新潮文庫)ボトルネック (新潮文庫)
どこか懐かしい日本SFを想い起こさせる。パラレルワールドもの。どこか湿り気を帯びている。
読了日:09月10日 著者:米澤 穂信
西洋学事始 (中公文庫)西洋学事始 (中公文庫)
後書きにあるように、西洋知の原形質のようなものカタログ。西洋においては事象の関連性が深く、既存のものが発展して新しいものを生み出している。教会内部の統制のためにあったカノン法が国家の行政法の母体となったり、イコンのための学であった図象学が、絵画にコードを埋め込む技法となり、ロマン主義象徴主義シュルレアリスムへと受け継がれたこと、古代ローマアプレイウスが書いたクピドとプシュケーの話がフロイトを経て心理学になり、ユングはヘルメス主義者の錬金術師と繋がるなど。
読了日:09月10日 著者:樺山 紘一
バートン版 千夜一夜物語 2バートン版 千夜一夜物語 2
読了日:09月08日 著者:
大菩薩峠〈13〉 (ちくま文庫)大菩薩峠〈13〉 (ちくま文庫)
読了日:09月08日 著者:中里 介山
ポオ小説全集 3 (創元推理文庫 522-3)ポオ小説全集 3 (創元推理文庫 522-3)
心に残ったのは幻想的で美しく物悲しい「エレオノーラ」、異端査問で処刑される恐怖を描いた「陥穽と振子」、サスペンスのような大どんでん返しの「眼鏡」
読了日:09月08日 著者:エドガー・アラン・ポオ
ラテンアメリカ五人集 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)ラテンアメリカ五人集 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)
パチェーコの砂漠の戦いとバルガス=リョサの子犬たち。映画を観ているように南米の空気、生活感が伝わってくる。アメリカだけどアメリカじゃない。パスの白は通して読むというよりぱっと開いて目に飛び込む文字を感じる方がいい。アストゥリアスグアテマラ伝説集は岩波文庫版で読む。
読了日:09月04日 著者:リョサ,パチェーコ,アストゥリアス,オクタビオ・パス,オカンボ
ガリア戦記 (講談社学術文庫)ガリア戦記 (講談社学術文庫)
まるでエイジ オブ エンパイアを観ているかのよう。簡潔で客観的な描写は読みやすい。大八巻だけは別の作者が書いたものでカエサルの文章よりも劣る。巻末の専門用語略解に絵があるので戦闘の様子が想像しやすかった。ガリア人がケルト人のローマ読みだったのを初めて知った。ガリア人とローマ(カエサル)はアケメネス朝とイオニア人に、ブリテン島のガリア人やゲルマン人はアケメネス朝とアテネ、スパルタの関係に似ている。イオニア人よりも文明度が低い分、アグレッシブだったのだろう。
読了日:09月02日 著者:カエサル
獄中記 (岩波現代文庫)獄中記 (岩波現代文庫)
512日に渡る拘留の記録であり、佐藤氏の著作の原点。房内で400冊も専門書を読んだという。外部の支援と共に信仰が大きな支えになったようだ。ソクラテスも魂の生まれ変わりを信じていた。信仰というものは非常時にこそ力を発揮するものなのだろう。
読了日:08月28日 著者:佐藤 優
失われた時を求めて 6 第三篇 ゲルマントの方 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて 6 第三篇 ゲルマントの方 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
読了日:08月26日 著者:マルセル・プルースト
黒ミサ異聞黒ミサ異聞
読了日:08月25日 著者:J.K. ユイスマンス
ローマの歴史 (中公文庫)ローマの歴史 (中公文庫)
ローマ市の建国から帝国の崩壊まで1冊で読める。簡潔な記述ながら生き生きとした描写で飽きずに読める。興味深いのは古代ローマには既に銀行があり、ディオクレティアヌス社会主義・計画経済の実験までしていたということ。家族の崩壊と避妊、中絶の普及で人口が減ったなど現代と同じだ。「全ての道はローマに通ず」は街道だけではないようだ。
読了日:08月25日 著者:I. モンタネッリ
椿姫 (岩波文庫)椿姫 (岩波文庫)
かきむしりそうになりながら読んでいたが、最後は救いがあり読後感は爽やかだった。「マノン・レスコー」が出てくるのが心憎い。おかげで何倍も増幅されてストーリーに厚みが出ている。罪深い女でも悔い改めれば云々はマグダラのマリアを思い起こす。構成も見事で現在と語られる過去、書簡と3部構成で複線を張るところなどサスペンスのようだ。「マノン・レスコー」「椿姫」「ナナ」プルーストのオデットというのがフランス文学の高級娼婦(ココット)の系譜らしい。マノン、ナナの残響を聴きつつ物狂おしく読了。
読了日:08月23日 著者:デュマ フィス
ジャンル別文庫本ベスト1000 (学研M文庫)ジャンル別文庫本ベスト1000 (学研M文庫)
読了日:08月21日 著者:
新恋愛講座―三島由紀夫のエッセイ〈2〉 (ちくま文庫)新恋愛講座―三島由紀夫のエッセイ〈2〉 (ちくま文庫)
読了日:08月20日 著者:三島 由紀夫
オデュッセウスの世界 (岩波文庫)オデュッセウスの世界 (岩波文庫)
読了日:08月20日 著者:M.I. フィンリー
クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ)クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ)
読了日:08月14日 著者:H.P. ラヴクラフト
アリストテレス入門 (ちくま新書)アリストテレス入門 (ちくま新書)
アリストテレスの体系をプラトンと比較して書いてあり分かりやすい。全ての物事の原因に神を考えている点や生きる目的としての徳は愛である点などがキリスト教と親和性が高い原因であるのだろう。入門書として読むのに良い。アリストテレスの現代的な意義は彼の思考のプロセスをトレースすることにあると書かれている。
読了日:08月13日 著者:山口 義久
歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)
大スペクタクルロマン。ペルシアという国が興り周りの国々を併合し、ギリシアに侵入、アテネ、スパルタなどの連合軍に破れるまでの歴史。神意はあるが神々は出ず主役は人間たち。脱線も多いがそれが話に厚みを加えている。君主制と民主制の戦いで民主制が勝つストーリーの原型か。
読了日:08月13日 著者:ヘロドトス
歴史(中) (岩波文庫 青 405-2)歴史(中) (岩波文庫 青 405-2)
読了日:08月09日 著者:ヘロドトス
歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)
読了日:08月04日 著者:ヘロドトス
オウィディウス 変身物語〈下〉 (岩波文庫)オウィディウス 変身物語〈下〉 (岩波文庫)
宇宙の始まりからアウグゥストゥス帝まで変身譚をモチーフに切れ目なくつなぎ合わせている。恋や怒りの感情などの心理描写は近代文学を読んでいるかのようだ。
読了日:08月01日 著者:オウィディウス
ローマ帝国の神々―光はオリエントより (中公新書)ローマ帝国の神々―光はオリエントより (中公新書)
ローマの神々がギリシアの神々に同化し、エジプト、シリア、イラン、小アジアから渡来した。ユダヤ教からキリスト教が生まれ、グノーシス主義が生まれた。そしてキリスト教だけが残った。オリエント由来の神々たちは秘儀があり人気があったというのは興味深い。グノーシス主義キリスト教由来のもの以外にもあったとは。参考文献も載っているので入門書として最適。
読了日:07月28日 著者:小川 英雄
オウィディウス 変身物語〈上〉 (岩波文庫)オウィディウス 変身物語〈上〉 (岩波文庫)
読了日:07月27日 著者:オウィディウス
メノン (岩波文庫)メノン (岩波文庫)
読了日:07月25日 著者:プラトン
悪徳の栄え〈続(ジュリエットの遍歴)〉 (1959年)悪徳の栄え〈続(ジュリエットの遍歴)〉 (1959年)
読了日:07月23日 著者:マルキ・ド・サド
国家〈下〉 (岩波文庫 青 601-8)国家〈下〉 (岩波文庫 青 601-8)
正義とは何か、正しい国家とは何かについて語られる。哲人王の統治や有名な洞窟の比喩もコンテクストの文脈で語られると意義深い。広範に渡って語られるため全貌を掴むにも何度も読み込む必要がありそうだ。理想の国家から堕落していく国家のあり方はアテネだけでなく、古代ローマフランス革命などと照らし合わせても正しいと感じられ洞察力には舌を巻いた。また、魂の不死を説いたエルの物語は現代人にも説得力を持つように感じられた。
読了日:07月20日 著者:プラトン
東京ブックストア&ブックカフェ案内 (散歩の達人ブックス大人の自由時間)東京ブックストア&ブックカフェ案内 (散歩の達人ブックス大人の自由時間)
個性的な本屋の本。写真を眺めているだけで幸せな気分になれる。この本を片手に本屋巡りがしたくなる。
読了日:07月17日 著者:
完訳 グリム童話集〈2〉 (岩波文庫)完訳 グリム童話集〈2〉 (岩波文庫)
読了日:07月16日 著者:W. グリム,J. グリム
モンテ・クリスト伯〈7〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈7〉 (岩波文庫)
おお、おお!神よ!悪人たちは報いを受けたのでした。そしてモンテクリスト伯爵は再び幸せになることができるのでした。思わず涙があふれてきたというわけでして。
読了日:07月15日 著者:アレクサンドル デュマ
失われた時を求めて 5 第三篇 ゲルマントの方 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)失われた時を求めて 5 第三篇 ゲルマントの方 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
ブルジョワたちだけでなく、貴族たちもスノブだった。
読了日:07月13日 著者:マルセル・プルースト
モンテ・クリスト伯〈6〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈6〉 (岩波文庫)
読了日:07月12日 著者:アレクサンドル デュマ
モンテ・クリスト伯〈5〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈5〉 (岩波文庫)
読了日:07月08日 著者:アレクサンドル デュマ
ポオ小説全集 1 (創元推理文庫 522-1)ポオ小説全集 1 (創元推理文庫 522-1)
読了日:07月06日 著者:エドガー・アラン・ポオ
モンテ・クリスト伯〈4〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈4〉 (岩波文庫)
読了日:07月04日 著者:アレクサンドル デュマ
モンテ・クリスト伯〈3〉 (岩波文庫)モンテ・クリスト伯〈3〉 (岩波文庫)
読了日:07月03日 著者:アレクサンドル デュマ
モンテ・クリスト伯〈2〉 (岩波文庫)

8月に読んだ本のまとめ

2011年8月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:6053ページ
ナイス数:29ナイス

■獄中記 (岩波現代文庫)
512日に渡る拘留の記録であり、佐藤氏の著作の原点。房内で400冊も専門書を読んだという。外部の支援と共に信仰が大きな支えになったようだ。ソクラテスも魂の生まれ変わりを信じていた。信仰というものは非常時にこそ力を発揮するものなのだろう。
読了日:08月28日 著者:佐藤 優
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/13041056

失われた時を求めて 6 第三篇 ゲルマントの方 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
読了日:08月26日 著者:マルセル・プルースト
http://book.akahoshitakuya.com/b/408761025X

■黒ミサ異聞
読了日:08月25日 著者:J.K. ユイスマンス
http://book.akahoshitakuya.com/b/493862026X

■ローマの歴史 (中公文庫)
ローマ市の建国から帝国の崩壊まで1冊で読める。簡潔な記述ながら生き生きとした描写で飽きずに読める。興味深いのは古代ローマには既に銀行があり、ディオクレティアヌス社会主義・計画経済の実験までしていたということ。家族の崩壊と避妊、中絶の普及で人口が減ったなど現代と同じだ。「全ての道はローマに通ず」は街道だけではないようだ。
読了日:08月25日 著者:I. モンタネッリ
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/12997874

■椿姫 (岩波文庫)
かきむしりそうになりながら読んでいたが、最後は救いがあり読後感は爽やかだった。「マノン・レスコー」が出てくるのが心憎い。おかげで何倍も増幅されてストーリーに厚みが出ている。罪深い女でも悔い改めれば云々はマグダラのマリアを思い起こす。構成も見事で現在と語られる過去、書簡と3部構成で複線を張るところなどサスペンスのようだ。「マノン・レスコー」「椿姫」「ナナ」プルーストのオデットというのがフランス文学の高級娼婦(ココット)の系譜らしい。マノン、ナナの残響を聴きつつ物狂おしく読了。
読了日:08月23日 著者:デュマ フィス
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/12963353

■ジャンル別文庫本ベスト1000 (学研M文庫)
読了日:08月21日 著者:
http://book.akahoshitakuya.com/b/4059020044

■新恋愛講座―三島由紀夫のエッセイ〈2〉 (ちくま文庫)
読了日:08月20日 著者:三島 由紀夫
http://book.akahoshitakuya.com/b/4480030387

オデュッセウスの世界 (岩波文庫)
読了日:08月20日 著者:M.I. フィンリー
http://book.akahoshitakuya.com/b/4003346416

クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ)
読了日:08月14日 著者:H.P. ラヴクラフト
http://book.akahoshitakuya.com/b/4915333507

アリストテレス入門 (ちくま新書)
アリストテレスの体系をプラトンと比較して書いてあり分かりやすい。全ての物事の原因に神を考えている点や生きる目的としての徳は愛である点などがキリスト教と親和性が高い原因であるのだろう。入門書として読むのに良い。アリストテレスの現代的な意義は彼の思考のプロセスをトレースすることにあると書かれている。
読了日:08月13日 著者:山口 義久
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/12773707

■歴史 下 (岩波文庫 青 405-3)
大スペクタクルロマン。ペルシアという国が興り周りの国々を併合し、ギリシアに侵入、アテネ、スパルタなどの連合軍に破れるまでの歴史。神意はあるが神々は出ず主役は人間たち。脱線も多いがそれが話に厚みを加えている。君主制と民主制の戦いで民主制が勝つストーリーの原型か。
読了日:08月13日 著者:ヘロドトス
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/12764513

■歴史(中) (岩波文庫 青 405-2)
読了日:08月09日 著者:ヘロドトス
http://book.akahoshitakuya.com/b/4003340523

■歴史 上 (岩波文庫 青 405-1)
読了日:08月04日 著者:ヘロドトス
http://book.akahoshitakuya.com/b/4003340515

オウィディウス 変身物語〈下〉 (岩波文庫)
宇宙の始まりからアウグゥストゥス帝まで変身譚をモチーフに切れ目なくつなぎ合わせている。恋や怒りの感情などの心理描写は近代文学を読んでいるかのようだ。
読了日:08月01日 著者:オウィディウス
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/12563200


読書メーター
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4月に読んだ本のまとめ

2011年4月の読書メーター
読んだ本の数:21冊
読んだページ数:7678ページ

澁澤龍彦 西欧文芸批評集成 (河出文庫)
読了日:04月30日 著者:澁澤 龍彦
http://book.akahoshitakuya.com/b/4309410626

■洞窟の女王 (創元推理文庫 518-2)
洞窟の女王2000年もの間、ひたすら恋人が転生して戻ってくるのを待ち続けた女。圧倒的な美貌で男を虜にし、全知全能に近い力を持ちながらも愛する恋人と再会するも束の間の幸福しか許されていなかった。かつての恋敵の呪いの力のせいで。アフリカの奥地にある謎の古代文明の跡を探検する幻想的な冒険小説。女王と語り手が宗教、政治制度、善悪について問答をするが、ソクラテスの対話を思わせる。魂の転生、永遠の真理などハガードはプラトン主義者だったのではないだろうか。
読了日:04月30日 著者:H.R.ハガード
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10893148

プラトン―哲学者とは何か (シリーズ・哲学のエッセンス)
読了日:04月30日 著者:納富 信留
http://book.akahoshitakuya.com/b/4140093021

女の一生 (新潮文庫)
救われない話だけど描写が美しい。ボヴァリー夫人は破滅していく女だったが、ジャンヌは追い討ちをかけられる女だ。俗っぽい司祭と狂信的な司祭、したたかな小作人たち。美しい自然。ペシミズムにあふれていながらも筆致は暖かい。トルストイドストエフスキーを足して二で割った感じだ。ジャンヌや父親に自由主義的神学の影が見える。
読了日:04月27日 著者:モーパッサン
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10846534

イーリアス〈上〉 (1953年) (岩波文庫)
読了日:04月26日 著者:ホメーロス
http://book.akahoshitakuya.com/b/B000JB8B1U

■禅と日本文化 (岩波新書)
読了日:04月26日 著者:鈴木 大拙
http://book.akahoshitakuya.com/b/4004000203

■D列車でいこう (徳間文庫)
D列車で行こう何かを始めるのに遅すぎるなんてない。誠意があれば必ず通じる。そんなことを感じさせてくれた。ハゲタカのようなビジネス小説。万年赤字のローカル線を三人組が立て直そうとする。ストーリーも面白いし出来過ぎた話に見えるが、ビジネスへのヒントに満ちている。アイデアの出し方、ロングテールマーケティングWeb2.0の活用、メディア戦略、異業種とのタイアップ、地方ならではのメリット、団塊世代へのマーケティングなど。
読了日:04月24日 著者:阿川 大樹
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10801214

■読書術 (岩波現代文庫)
読了日:04月23日 著者:加藤 周一
http://book.akahoshitakuya.com/b/400603024X

■白鯨 下 (岩波文庫 赤 308-3)
エイハブは異教の神々を崇拝し、神を冒涜した罪で、また拝火教の神官により生贄として滅ぼされた。様々な人種の異教徒たち、狂った黒人の少年、不気味な拝火教徒、狡猾で悪魔的な白鯨はダゴンや深き者どもを彷彿とさせる。モービィ・ディックはレビヤンタンを狩る人間への神の罰でもあるのだろう。運命の輪が回されエイハブと船は終末に向けて突き進んでいく。最期の場面で海上にハンマーを握りしめた突き出した手がトウゾクカモメをマストに打ちつけるのが印象的だった。
読了日:04月21日 著者:ハーマン・メルヴィル
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10750936

ソフィーの世界―哲学者からの不思議な手紙
いつからだろう。なんで?どうして?と周りの大人たちに聞かなくなったのは。古代ギリシャから現代までの哲学の歴史は世界はどうしてこうなっているのかという問いかけだった。色々な説が考えられたが、どれも少し正しかった。大切なのはなぜという問いかけと自分の頭で考えること。フィロサフィーとは知性だから。ソフィーの世界はメタメタフィクション哲学史のファンタジーでSFで文学だ。色々な仕掛けとイロニーに満ちている。神が死んで自由を得た人間の代償は?アルド・ナリスが死んだのも行間に原因があったからか?
読了日:04月19日 著者:ヨースタイン ゴルデル
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10723438

■白鯨 中 (岩波文庫)
鯨を仕留め、解体しながら鯨の体の解剖学的知識や鯨の生態まで鯨学が述べられる。鯨には顔がないためまるで無貌の神のようだ。西洋人は鯨油と鯨骨だけ取り肉は鮫にくれてやっていたらしい。もったいない話だ。
読了日:04月16日 著者:ハーマン・メルヴィル
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10675092

■はじめての宗教論 左巻―ナショナリズムと神学 (NHK出版新書 336)
近代という啓蒙主義の時代、宗教(キリスト教)はかつての力を失ったかに見える。しかし地面に降り注いだ雨が地面に吸い込まれて地下水脈として蓄えられるようにキリスト教も天上から人間の心の中への「神の場の転換」というパラダイムシフトにより依然強い影響力を持つ。ナショナリズムナチスの思想的背景に自由主義的神学が関わっていた。近代という現代社会を理解するにはキリスト教の理解が欠かせない。
読了日:04月16日 著者:佐藤 優
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10667564

■行人 (岩波文庫)
ドン・キホーテ前編の「愚かな物好きの話」がモチーフになっているようだ。お直の心境は書かれていないがやはり二郎に好意を持っていたんだろうか。手紙の最期に暗示してあるように兄は死んでしまうのだろうか。二郎は結婚せずに外国に行き戻ってこないのだろうか。自分の中に神がいて苦しむさまは神の場を天上から心の内に取り込んでしまった近代人の苦悩を表現しているように思う。
読了日:04月16日 著者:夏目 漱石
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10667005

久生十蘭短篇選 (岩波文庫)
万華鏡のような後味は他の作家にはないかもしれない。アコーディオンの伴奏にのせて物悲しく奏でられるBGM。モノクロの八ミリ映画の哀愁。ラジオから流れる雑音混じりの音声。懐かしい昭和の香り。「鶴鍋」「無月物語」が特に印象的だった。
読了日:04月13日 著者:
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10626757

芥川龍之介全集〈2〉 (ちくま文庫)
地獄変がなんといってもいい。芸術至上主義の極致なのか狂気に蝕まれているのか。続編の邪宗門が未完なのが残念。
読了日:04月10日 著者:芥川 龍之介
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10580296

■白鯨 上 (岩波文庫)
この巻は丸々導入部。主要人物の説明と目的と目標が語られる。ボーの影響とシェイクスピアの影響がある。唾棄すべきとか名状し難いなどはラヴクラフトを読んでるよう。主人公と高貴なる野蛮人クゥイークェグの関係はファーマーのリバーワールドにおけるクレメンズとカズのようだ。
読了日:04月10日 著者:ハーマン・メルヴィル
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■もっとも美しい数学 ゲーム理論 (文春文庫)
未来の予知はできるのか?アシモフが予言した心理歴史学ができるかもしれない可能性の物語。経済学で使うために作られたゲーム理論は生物学、脳神経学、人類学に統合され、ネットワーク、社会物理学、量子論、確率論、統計力学とも統合されつつある。各分野の最先端がちょっとだけ齧れて知的興奮を味わえる。
読了日:04月10日 著者:トム ジーグフリード
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10570570

草枕 (岩波文庫)
筋を追っていくと辛いが、細部に目を凝らしてみると文章が美しい。
青味を帯びた羊羹の描写、那美さんが鮮やかな振袖を着て行きつ戻りつする描写、深山椿の艶然とした毒婦の描写が印象的だった。
画工が云うように適当に開いて文章を眺めてみるほうがいいのかもしれない。
読了日:04月03日 著者:夏目 漱石
http://book.akahoshitakuya.com/cmt/10467608

ドン・キホーテ〈後篇3〉 (岩波文庫)
サンチョは夢であった島の領主を投げ出し、ドン・キホーテも一騎打ちに敗れて羊飼いになる決心をするが、正気に戻って死んでしまう。
偽作 ドン・キホーテ続編でドン・キホーテを精神病院に送り込んだ人物まで出てくるし、最後にはドン・キホーテ自身が物語の登場人物だということを自覚している。ニョルニールのように村に戻ってくるドン・キホーテはあるいは神話をなぞっているのかもしれない。SFとファンタジーの元祖なんだな。
読了日:04月03日 著者:セルバンテス
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■はじめての宗教論 右巻~見えない世界の逆襲 (生活人新書) (生活人新書 308)
近代の終焉というパラダイム転換の認識のフレームワークとしてキリスト教が必要だ。目に見える世界だけでなく見えない世界もあるので近代的合理主義だけでは不足である。宗教とは多様な価値観に基づくものなので土着化したものは自ずと形を変える。
仏教、カトリック正教会プロテスタントの対比による思想の違いや、神道創世神話と創世記の類似性からキリスト教の受容が進んだというのが興味深い。安土から江戸のキリシタンについては触れられていないのが残念。
読了日:04月01日 著者:佐藤 優
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ヴェニスの商人 (新潮文庫)
悲劇よりも読みやすい。
一休さんばりの機転で恩人の危機を救うばかりか指輪を使って旦那を尻に敷くなんてしたたかなお嬢様だ。一生頭が上がらないだろうな。
読了日:04月01日 著者:シェイクスピア
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読書メーター
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底辺に流れるもの ジェーン・エア

一見すると様々な恋愛模様を描いているようだが、実はピューリタニズムがテーマである。
主人公のジェーンは不幸と虐待という過酷な運命に晒されながらも、気がふれたり、心根が捻じ曲がったりしなかったのは神を信じていたからではないか。
信じるものは救われる。

神の課する過酷な幾多の試練を乗り越え、真実の愛に目覚めていく物語である。
節目節目に天使が現れジェーンを優しく導く。
ヨブのように神に訴えかけるわけではなく、耐え忍ぶことによって神の慈愛が示される。

子供の頃、孤児となり親戚に引き取られるが、叔母や従兄弟たちや召使いたちにまで
憎まれ、蔑まれ、不当な扱いを受ける箇所は子供の頃に読んだ「にんじん」や「路傍の石」を読んだことを思い出した。

彼らがジェーンを敵視していたのと同じ様に、彼女もまた彼らを憎んでいた。
「汝の敵を愛せ」という言葉の通り、従兄弟たちと和解するが叔母は憎しみを捨て去る事ができずに不幸のまま死んでいく。
従兄弟の中でも長男は堕落したあげく破滅し命を落とす。
また従兄弟の長女は常に神の声を聴こうとし、静かな祈りの中に生きて行くために修道院に入る。

ジェーンに求婚したロチェスター氏は真実を隠し、重婚しようとしたため再び後悔と絶望の淵に立たされる。しかし自分を犠牲にしてまでも狂った妻を救おうとしたことで、天罰は与えられたもののジェーンを得るという再び恩恵をいただいた。

セント・ジョンは使徒たちのように、パウロの伝道のように異邦人の異教徒たちに神の教えを伝えるために、神に殉じる神の戦士としての生き方を選択した。
自己を厳しく抑制し、他人にも同じ神の僕としての義務を全うするよう要求する。

ジェーンは神の導きにより片輪となったロチェスター氏と生涯を共にすることを選択する。あたかもイエス・キリスト癩病患者と一緒に食事をし、病を癒したように。

まだキリスト教の理解が足りないが、作者はクリスチャンとしての生き方には様々な道がある。
神に奉仕し、神との対話の中に身を置く生き方。
神の教えを広く伝え、私心を捨て、神に殉じる生き方。
でもそんなピューリタニズムな生き方は神が希給うことなんだろうか。
神の子であるイエス・キリストが伝えた神の意思は「愛」に生きること、
隣人を愛し、敵でさえも愛するそんな生き方ではないかと作者は言いたかったように思う。

書簡集

佐伯彰一「読書という悪徳」という本に手紙が文学になるときという章があった。
なるほどと思い、「漱石書簡集」を購入。
三島由紀夫レター教室」という本もあった。往復書間の形式を借りた小説でなかなか面白い。
今、アンリ・トロワイア「ツゥルゲーネフ伝」を読んでるが、書簡が引用されている。
書簡文学がマイブームになりつつある。
読んでみたい書簡は三島由紀夫川端康成の往復書間、太宰治の書簡、坂本龍馬の書簡、谷崎潤一郎の書簡。

シャルビューク夫人の肖像について

この作品は色々な書物とリンクしている。
気づいたかぎりでは以下のようになる。

ギリシアローマ神話から

千夜一夜物語から

聖書から

ファウストから


史実から

その他

伏線について

途中まで気付かなかったが、ピアノ線を張り巡らせるかのようにあちこちに伏線が張られている。
気づいたものでは以下のとおり。まだあるかもしれない。

  • うりふたつの雪の結晶
  • シャルビューク夫人の双子
  • そのむかしスルタンのもちものだったきらびやかなランプ
  • 「ジキルとハイド」の伏線として双面神ヤヌス
  • ナツメグの芳香

影について

シャルビューク夫人の話に出てくる「影」は、キリスト教では魂を表すらしい。
ロード・ダンセイニの「魔法使いの弟子」でも影が重要な役割を果たしている。(原題はTHE CHARWOMAN'S SHADOW)